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6章 不老者とクラス召喚
第119話 救出作戦2
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あとはナイトを待つだけ。
だったのだが、一向にナイトが動く気配は無い。その代わりに警備の兵士が増え、他の気配も感じる。
ちょっと良く無い状況。このままだと悪化するだけか。
最近作戦考えて良い気になっていたが、こういう時に案が出てこない。
いや、案は出てきたが、考えなしの案なだけ。
「よし。強行突破で逃げ出そう」
こういう時になると、思考を放棄して動き出すのは悪い癖だ。
すると、外の様子が変わった。兵士2人が離れて別の気配が3つ。
下手くそな警戒でラッキー。
そう思って出てみると、例の3バカが居た。2人はヌボーっと見ているだけだが、1人が目に魔力を纏《まと》っている。
そいつの目線が俺のところで止まる。
「そこがおかしいぞ。何かいるように見える」
はっきりとは見えないが、何かいるとはわかるようだ。
見分けるスキルだろうか?
良いスキルだが、こちらにとっては良く無いぞ。
「そこね。私の投擲見せてあげるわ」
アホ女がナイフを投げてきた。方向もスピードも甘いから簡単に避けられる。
そう思ってたが、避けようとするとその方向に軌道が変わる。
追尾まではいかないが、命中の補正が掛かるようだ。
「ナイフの動きが変わったわね。やっぱり何かいるわ」
「それなら俺が止めを刺してやるか」
今度はアホ男2が、持っていた槍で突いてくる。
訓練で見た時を覚えているが、かなり成長しているな。
3段突きの真似事までやってくるレベル。担いだままで相手にすると当たりそうだ。
やはり逃げるが勝ちだな。体を軽くして跳ねながら華麗に離脱。お土産に胡椒爆弾をあげるよ。
「ぐぁ。ごっほごっほ」
「の、のどが」
「目に入った! 見えねぇ」
当たりどころが良かったな。
周囲を警戒しつつも、素早く城壁に寄り、外の気配を探る。
「もう少し門側で待機しているな。そこで渡すか」
気配の位置に向かうと、勇者チームがいやがった!
意外と鼻が効くじゃないか。だけど、ここ以外は受け渡し無理そうだし…。
勢いでやるしかないか。
自身の最速で、駆け抜け田中君を壁の外に放り投げる。
「なんだ!?」
「そこに誰かいるわ!」
「おらぁ!」
その動きは予想してた。
とりあえず攻撃するの止めて欲しい。
どいつもこいつも頭に魔力乗せやがって。
心の中で愚痴を吐いていると、奥の少女が使う魔法に出遅れてしまった。
「聖域展開!」
弱い光がドーム状に広がると俺達を包み込む。
「覆面野郎! 現れたな!」
やっべ。
姿を引き出されたか。
「覆面なんてつけやがって! 誰だお前は!」
昔の特撮ドラマで聞いたセリフ。
まさか、お前。見た目に似合わず特撮マニアか?
よかろう。
話にのってやろうじゃないか。
「ふっふっふ。よくぞ見破った。さすがは勇者だ!」
「そっちじゃない! こっちだ!」
見えてはいる! だが、直視したく無いだけだ!
「おい! こっち見ろ!」
「嫌だ! お前! その格好恥ずかしく無いのか!?」
目の端っこに映る勇者は、ピッカピカの鎧に、ゴテゴテに装飾された剣と盾を持っている。
「これのどこがおかしい?」
「そんなにキラキラ光らせて、目が痛くなるだろうが! おいたん大人として恥ずかしいぞ!」
「覆面までつけた奴に言われたく無い!」
それはもっともな話だ。
仕方ないから見てやろう。
「ぷっ」
「今笑ったろ?」
「いや」
「笑ってたぞ!? なぁ?」
仲間に同意を求めるが、同じチームの奴もその周囲も笑いを堪《こら》えている。
「そ、そんなことより捕まえた方が…っぷ」
「そうだぞ! そいつの言うことなんて効く必要ない。ぶふ!」
思いっきり吹き出してるじゃねーか!
説得力無いぞ。
後ろでワーワー言っているところに新しい気配がやってきた。
「勇者様。その者が怪しい人ですか?」
「王女様! そうです。ちょうど捕まえるところです」
勇者君がこちらに向き直ると、剣を構えて魔力を練り出した。
こちらも応戦しようと腰を探ったが、持っていたのは枝が一本。
手に持って何度も見てみるが、どこからどう見ても枝。
「お前巫山戯《ふざけ》ているのか!?」
「巫山戯《ふざけ》て出すわけあるか!」
仕方がないから、こいつでやったるか。
いつも以上に気で全身を包み、強化完了!
「いつでも掛かってくるが良い」
「今更大物ぶるんじゃない!」
勇者が剣を振り下ろすと、閃光が地面を抉りながら近づいてくる。
「うぉぉぉ!」
「こっちがうぉぉだよ!」
めっちゃこぇぇ。
早くは無いけど威力半端ないな。
だが、こいつには冷静に対応しているように見せないと。
これ以上自信をつけさせたら面倒だ。
「ま、まぁやるじゃないか」
「当たると思ったのに!」
遅いからさすがに当たらない。だけど連携をされたら負けそう。
ナイト助けてくれないかな?
1人で切り抜けるのは厳しいんだけど、目まぐるしく動く視界の中で、ギリギリ見える程度に首を振るナイトが見えた。
やるしかないか。
「やっとやる気になったか」
「ふぅぅ」
逃げるにしても、もう少し気を散らせないと難しいので、勇者君には疲れてもらおう。気合いを入れ直した勇者君が、再度光を放つ。
「うぉぉぉ!」
地面を滑るように移動して、勇者君に近付き、枝で剣の腹を叩く。
「弾かれた!?」
弾いた剣の同じところを何度も叩くと、次第にヒビが入っていく。
「えぇ!?」
「うっそ?」
こっちも驚いたよ。
なんで枝で剣が折れるの?
その剣ボロ過ぎでしょ。
「うそ? 聖剣にヒビが入るなんて、仲間の方々も助けを!」
王女の声で仲間も混ざってきて良いタイミング! 持っていた煙幕と唐辛子爆弾をあたりに撒き散らし、被害を拡大させる。いたるところから、助けの声と痛みの訴えが聞こえても俺の知ったことではない。
「ほっほっほ。未熟者共め」
奥にいた3人組が何か気づいたようだ。
「この痛みと臭い」
「この前は痛みなかったけど、似ている気がする」
「こいつが異臭騒ぎの犯人か!」
異臭とは失敬なことを言う。
「そんなに好きならいくらでも嗅がせてあげるよ!」
厳重に密閉していた臭気爆弾。
蓋を開けたら即退散の危険兵器だ。
「せいぜい香りを楽しんでくれい!」
城壁に投げつけると、一足飛びで壁を超える。
去り際に、ナイトが鼻を摘みながら、俺が渡した小瓶を振ってる様子が見えた。それなりに良い材料使ってるから、捨てられたら泣くぞ。
外に出たら即座に精霊魔法で消えて、振り返らずに森へ一直線。
そこから半日はひたすら走り続け、気づくと先行組に追いついた。
「海野さん、まだここにいたの?」
「実さん? そっちが来るの早かったんですよ」
良く見ると、結構な人数で護衛している。
カオルとトモエが更に前方を進んでいるようで、両方に2人ずつ要救助者がいる。
容態は落ち着いているが、時々賦活してあげたほうが良いだろう。
海野さんにそれを伝え、前方にも伝えるよう頼んだ。
それから、1人立ち止まってアオイ君を待つ。
今頃、城は大変なことになっているだろうが、あれを使わなかったら俺が捕まってた。
生徒達だけなら良かったけれど、兵士達が動き出したら軽くやられてしまう。
謎メイドも居たけど、ナイトの横にいた巨体の男は特に怖かった。どこの国も化け物を飼っているから、動きづらくて嫌になる。
「あの勇者君。もっと強くなるんだろうな」
力の制御も上手くなってるし、足の運びや膝の使い方まで、短期間で急成長している。チームの他の子も出だしの動きが良かったので、教えてる奴が上手なんだろうな。
「やっぱり才能ある奴とは、戦わないのが良いな。うん」
だったのだが、一向にナイトが動く気配は無い。その代わりに警備の兵士が増え、他の気配も感じる。
ちょっと良く無い状況。このままだと悪化するだけか。
最近作戦考えて良い気になっていたが、こういう時に案が出てこない。
いや、案は出てきたが、考えなしの案なだけ。
「よし。強行突破で逃げ出そう」
こういう時になると、思考を放棄して動き出すのは悪い癖だ。
すると、外の様子が変わった。兵士2人が離れて別の気配が3つ。
下手くそな警戒でラッキー。
そう思って出てみると、例の3バカが居た。2人はヌボーっと見ているだけだが、1人が目に魔力を纏《まと》っている。
そいつの目線が俺のところで止まる。
「そこがおかしいぞ。何かいるように見える」
はっきりとは見えないが、何かいるとはわかるようだ。
見分けるスキルだろうか?
良いスキルだが、こちらにとっては良く無いぞ。
「そこね。私の投擲見せてあげるわ」
アホ女がナイフを投げてきた。方向もスピードも甘いから簡単に避けられる。
そう思ってたが、避けようとするとその方向に軌道が変わる。
追尾まではいかないが、命中の補正が掛かるようだ。
「ナイフの動きが変わったわね。やっぱり何かいるわ」
「それなら俺が止めを刺してやるか」
今度はアホ男2が、持っていた槍で突いてくる。
訓練で見た時を覚えているが、かなり成長しているな。
3段突きの真似事までやってくるレベル。担いだままで相手にすると当たりそうだ。
やはり逃げるが勝ちだな。体を軽くして跳ねながら華麗に離脱。お土産に胡椒爆弾をあげるよ。
「ぐぁ。ごっほごっほ」
「の、のどが」
「目に入った! 見えねぇ」
当たりどころが良かったな。
周囲を警戒しつつも、素早く城壁に寄り、外の気配を探る。
「もう少し門側で待機しているな。そこで渡すか」
気配の位置に向かうと、勇者チームがいやがった!
意外と鼻が効くじゃないか。だけど、ここ以外は受け渡し無理そうだし…。
勢いでやるしかないか。
自身の最速で、駆け抜け田中君を壁の外に放り投げる。
「なんだ!?」
「そこに誰かいるわ!」
「おらぁ!」
その動きは予想してた。
とりあえず攻撃するの止めて欲しい。
どいつもこいつも頭に魔力乗せやがって。
心の中で愚痴を吐いていると、奥の少女が使う魔法に出遅れてしまった。
「聖域展開!」
弱い光がドーム状に広がると俺達を包み込む。
「覆面野郎! 現れたな!」
やっべ。
姿を引き出されたか。
「覆面なんてつけやがって! 誰だお前は!」
昔の特撮ドラマで聞いたセリフ。
まさか、お前。見た目に似合わず特撮マニアか?
よかろう。
話にのってやろうじゃないか。
「ふっふっふ。よくぞ見破った。さすがは勇者だ!」
「そっちじゃない! こっちだ!」
見えてはいる! だが、直視したく無いだけだ!
「おい! こっち見ろ!」
「嫌だ! お前! その格好恥ずかしく無いのか!?」
目の端っこに映る勇者は、ピッカピカの鎧に、ゴテゴテに装飾された剣と盾を持っている。
「これのどこがおかしい?」
「そんなにキラキラ光らせて、目が痛くなるだろうが! おいたん大人として恥ずかしいぞ!」
「覆面までつけた奴に言われたく無い!」
それはもっともな話だ。
仕方ないから見てやろう。
「ぷっ」
「今笑ったろ?」
「いや」
「笑ってたぞ!? なぁ?」
仲間に同意を求めるが、同じチームの奴もその周囲も笑いを堪《こら》えている。
「そ、そんなことより捕まえた方が…っぷ」
「そうだぞ! そいつの言うことなんて効く必要ない。ぶふ!」
思いっきり吹き出してるじゃねーか!
説得力無いぞ。
後ろでワーワー言っているところに新しい気配がやってきた。
「勇者様。その者が怪しい人ですか?」
「王女様! そうです。ちょうど捕まえるところです」
勇者君がこちらに向き直ると、剣を構えて魔力を練り出した。
こちらも応戦しようと腰を探ったが、持っていたのは枝が一本。
手に持って何度も見てみるが、どこからどう見ても枝。
「お前巫山戯《ふざけ》ているのか!?」
「巫山戯《ふざけ》て出すわけあるか!」
仕方がないから、こいつでやったるか。
いつも以上に気で全身を包み、強化完了!
「いつでも掛かってくるが良い」
「今更大物ぶるんじゃない!」
勇者が剣を振り下ろすと、閃光が地面を抉りながら近づいてくる。
「うぉぉぉ!」
「こっちがうぉぉだよ!」
めっちゃこぇぇ。
早くは無いけど威力半端ないな。
だが、こいつには冷静に対応しているように見せないと。
これ以上自信をつけさせたら面倒だ。
「ま、まぁやるじゃないか」
「当たると思ったのに!」
遅いからさすがに当たらない。だけど連携をされたら負けそう。
ナイト助けてくれないかな?
1人で切り抜けるのは厳しいんだけど、目まぐるしく動く視界の中で、ギリギリ見える程度に首を振るナイトが見えた。
やるしかないか。
「やっとやる気になったか」
「ふぅぅ」
逃げるにしても、もう少し気を散らせないと難しいので、勇者君には疲れてもらおう。気合いを入れ直した勇者君が、再度光を放つ。
「うぉぉぉ!」
地面を滑るように移動して、勇者君に近付き、枝で剣の腹を叩く。
「弾かれた!?」
弾いた剣の同じところを何度も叩くと、次第にヒビが入っていく。
「えぇ!?」
「うっそ?」
こっちも驚いたよ。
なんで枝で剣が折れるの?
その剣ボロ過ぎでしょ。
「うそ? 聖剣にヒビが入るなんて、仲間の方々も助けを!」
王女の声で仲間も混ざってきて良いタイミング! 持っていた煙幕と唐辛子爆弾をあたりに撒き散らし、被害を拡大させる。いたるところから、助けの声と痛みの訴えが聞こえても俺の知ったことではない。
「ほっほっほ。未熟者共め」
奥にいた3人組が何か気づいたようだ。
「この痛みと臭い」
「この前は痛みなかったけど、似ている気がする」
「こいつが異臭騒ぎの犯人か!」
異臭とは失敬なことを言う。
「そんなに好きならいくらでも嗅がせてあげるよ!」
厳重に密閉していた臭気爆弾。
蓋を開けたら即退散の危険兵器だ。
「せいぜい香りを楽しんでくれい!」
城壁に投げつけると、一足飛びで壁を超える。
去り際に、ナイトが鼻を摘みながら、俺が渡した小瓶を振ってる様子が見えた。それなりに良い材料使ってるから、捨てられたら泣くぞ。
外に出たら即座に精霊魔法で消えて、振り返らずに森へ一直線。
そこから半日はひたすら走り続け、気づくと先行組に追いついた。
「海野さん、まだここにいたの?」
「実さん? そっちが来るの早かったんですよ」
良く見ると、結構な人数で護衛している。
カオルとトモエが更に前方を進んでいるようで、両方に2人ずつ要救助者がいる。
容態は落ち着いているが、時々賦活してあげたほうが良いだろう。
海野さんにそれを伝え、前方にも伝えるよう頼んだ。
それから、1人立ち止まってアオイ君を待つ。
今頃、城は大変なことになっているだろうが、あれを使わなかったら俺が捕まってた。
生徒達だけなら良かったけれど、兵士達が動き出したら軽くやられてしまう。
謎メイドも居たけど、ナイトの横にいた巨体の男は特に怖かった。どこの国も化け物を飼っているから、動きづらくて嫌になる。
「あの勇者君。もっと強くなるんだろうな」
力の制御も上手くなってるし、足の運びや膝の使い方まで、短期間で急成長している。チームの他の子も出だしの動きが良かったので、教えてる奴が上手なんだろうな。
「やっぱり才能ある奴とは、戦わないのが良いな。うん」
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