サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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6章 不老者とクラス召喚

第116話 王弟と依頼完了

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 ギルドへ行くと、普段と違って閑散としている。
 いつものハ……おやっさんのところを見ると、むくれた顔で頬杖をついていた。
 誰も得しない状況で近寄りたくない。

「どうしよう。帰りたくなってきた」
「いやいや。せっかく来たんだからダメですよ」

 海野さんに宥《なだ》められながらカウンターへ向かう。

「ようやく帰ってきたか」
「予定通りですよ。それより査定お願いします」
「はいはい」

 仏頂面《ぶっちょうづら》は変わらず、俺たちから受け取った採取物を、ぶつくさ呟《つぶや》きながらと査定している。

「久しぶりに戻ったと思えば、種類多過ぎだろ。くそっ、他に人いねえし面倒くせえな」

 聞こえないフリしながら、壁際の依頼表を見ておく。
 討伐は範囲外だからパス。
 あとは護衛依頼か。これもパスだな。
 ん?これって勇者とか書いてあるけど…。

「その依頼が原因でこんな人いねぇんだよ!」

 おやっさんが怒りながら話しかけてくる。
 良く見ると頭部に血管が浮き出して、顔まで赤いぞ。

「ステイステーイ。落ち着けハゲ」
「ハゲじゃない! 剃ってるんだ! 殺すぞ!」
「いまのは実さんが悪いです」

 他の子もうんうん頷いている。
 まぁ、失言だったな。

「ごめんごめん。ところでこの依頼は何?」
「勇者達が魔物倒すから案内しろってさ」
「兵士達がいるじゃん。教官もいたよ?」
「だからイラついてんだよ! 勇者が冒険者に会いたいとか言ってたらしいが……。全員に付ける必要ねーだろがぁ!」

 そんなにテーブル叩いたら壊れるよ。
 あっ、ヒビ入ってる……。

「それでいないわけね。ふーん」
「ふーんじゃねぇ。ほら、査定終わったぞ」

 怒りながらも手は動いてたけど、査定してたのか!?
 器用なことをするなぁ。

「そっちの4人は、まぁまぁだな。状態はかなり良かった。あとは種類を覚えれば十分だろ」

 その言葉にハイタッチしながら喜んでいる。

「で、お前のは……どうするか」
「え? 変なの入ってた?」
「確かに変なのだが、金額がなぁ。なんで寄生植物を2種類も持ってくるかねぇ」

 寄生って言うと、魔蔓《まつる》と冬虫夏草か。

「たまたま見つけたからだよ。いらないなら自分で使うけどさ」
「いや、買い取る! 滅多に無いからな。これを逃したら何年後になるか」

 そのまま俯《うつむ》いて数秒考え込むと指を2本立てる。

「これでどうだ?」
「良いですよ」
「よし! ちょっと待ってろ!」

 値段で迷ってたから、金貨くらいにはなるかな?
 それだったらかなり楽になる。
 ウキウキしながら待ってると、おやっさんがパンパンに膨らんだ巾着を持ってきた。
 銀貨で持って来るとか気が効くじゃ無いか。
 そのまま受け取る。

「中身見ないのか?」
「必要ないよ。へへ。まいどあり!」
「……小物臭がするから、その言い方やめろ」

 小物で良いんだよ。
 大物になれないんだから、小物界の大物を目指すんだ。
 他のメンバーもそれぞれ受け取ると、笑みをこぼしていた。

「これからどうするんだ?暇なら仕事していくか?」
「俺は城の依頼があるから届けてくる。それに、そろそろ国を出るから依頼は受けない」
「マジかよぉ! 採取出来る奴あんまりいないんだよなぁ。新しい奴探すか……」

 しおらしい顔してもダメだぞ。
 そういうのに同情すると後が面倒になるんだからな。
 4人にも受けないように、念押ししておく。

 ギルドから出た後、他のメンバーと別れて1人で城へ向かった。

「あんまり良い思い出無いから、城に向かう道すら嫌になる」

 そんなことを呟きながら、鈍る足を前に出していく。
 しばらくすると見えてくるのは、代わり映えのない門番。

「またあんたらなの? それともずっと門番?」
「またとか言うが、門番はそれなりに重要箇所だぞ」
「おうとも。俺達は誇りを持ってやっている」

 確かに、城の一番最初だから重要か。

「それよりも依頼は終わったんだな?」
「ちゃんと依頼の品を持ってきましたよ」
「よし。上から話は来ている。そのまま向かって良いぞ」
「俺が伝令を出しておくか」

 門番の片方が近くの詰所に行くと、従者が駆け出していった。

「そんなに急がなくても」
「そう言ってやるな。王弟様の依頼なら張り切るもんさ」

 そんなに怖い人なのか?
 何回か依頼受けてるけど失敗したかな。
 まぁ、もうこの国出るから良いけどさ。

 勇者達に出会わないように、気配を消しつつ前回と同じ部屋へ向かう。
 訓練場には生徒の半数ほど居たが、下位だった5人がいない。
 こっちのメンバーと比べて、どのくらい違うか見たかったが仕方ない。確か話したことある男の子が下位だったよな?帰りに寄ってみよう。

 目的の部屋に着くと、中に3人の反応がある。料理長と謎メイドはわかるけど、もう1人は知らない。
 わからない人がいるならノックと挨拶した方が良いかな?

「料理長からの依頼品を持ってきました」
「入って来なさい」
「失礼します」

 言葉の雰囲気からして、挨拶して正解かな。
 中に入るとパッと見、小綺麗な服装だと思ったが、よく見ると作りが凝っていて素材も良い。

「突然で驚いたかもしれないが、会いたくなってね。私が君に依頼した者だよ」

 この人が王弟様か。
 穏やかな気をまとっているが、内に秘める強さと溢れ出る聡明さで納得してしまった。
 こういう時の対応が面倒なんだけど、あれだけ従魔に見せていたからな。今こそ拱手見せるべきだろう。

 この作法が面白かったのか、詳細を尋ねてきた。

「見たことない所作だが、自然と不快感が無いな。どのような意味があるのかな?」
「はっ。私が行った『拱手』は、相手に対する敬意を表します。この度のお辞儀は高位の方に向けたものを行いました」
「なるほど、その敬意受け取った」
「ありがとうございます」

 その様子を見ていた料理長が驚いていた。

「もっと雑な奴かと思ったが、意外としっかりしたものだ」
「俺は相手に合わせるぞ。面倒な相手には会わない主義だけどな」
「もういつも通りに戻っちまった。王弟様。こんな奴ですよ」

 その王弟様は、俺達のやりとりが面白いのかクスクス笑っている。

「なかなか面白い奴だな。さて、さっそくだが依頼の品を頼む」

 持ってきたベイリーフの枝をいくつも取り出して見せる。
 1つ1つ手に取り確認すると、ゆっくり頷きこちらを見つめてきた。

「良い仕事だ。使い道も考えて採取してきたのだろう。長さから形まで最適だ」
「ありがとうございます。そちらもですが、料理長からの希望の品もあります」

 横から歓声が上がり、料理長が早く出せと急かしてくる。

「やっぱり見つけてきたか! おぉ! ん? 匂いが少し濃いな」
「全く同じの種類は無かったが、同じ系譜のシナモンを見つけてきた。これも返すぞ」
「渡した地図じゃねーか。ん? この丸はシナモンか?」
「そこで取った奴だよ。俺はそろそろこの国を出るからな」

 謎メイドの気配が一瞬殺気立ったが、それを王弟様が止めた。

「止めなさいナターシャ。残念だが仕方ないだろう。シナモンの地図だけでも、十分な収穫だよ」
「そういうことなら引きますが、あまり調子に乗らない方がいい」

 ナターシャちゃん怖ロシヤ!
 これだから強い奴ってのは……。
 さっさと国を出よ。

「ほら、ナターシャのせいで更に寄り付かなくなるじゃ無いか」
「申し訳ありません。お前、たまに遊びに来い!」

 本当にありがとうございました。
 二度と会うことは無いでしょう。

 シナモンの加工方法も伝えると、更に喜んで報酬を弾んでくれた。でかいコインが入ってるから大金貨かもしれない。さっきの報酬と合わせるともう仕事しなくて良いんじゃないかな?
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