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6章 不老者とクラス召喚

第113話 スキル訓練1

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 必要な物は見つけたし、気も使えるようになってきた。
 あとはスキルが使えるように練習だ。

「ということで、スキルの練習をしようと思うが!」
「が?」

 どうやって練習するんだ?

「やり方がわからない!」
「知ってた」

 だよな。
 前からわからないって言ってたし。
 とにかくやってみるしか無いよな。

「おそらく魔力が関係してると思うんだ。賦活みたいに流してみるから、感じてみてくれ」

 まんま受け売りの内容を、さも俺がわかったように伝えて行く。
 横でピースが白い目で見てるが気にしない!
 気の練習と同じように、1人ずつ魔力を流す。

「前に1度試したのですね」
「やっぱり先生早い」

 海野さんは、すぐに感じたのか理解している。
 気も弱めて魔力が通りやすくしている。

「あぁ! わかりました!」

 嘘だろ!?
 俺はわからないんだけど?

「そ、そうか。じゃあ皆んなに言ってあげてくれ」
「お前が知ったかぶりなのは皆んな知ってる。ダサいからやめとけ」

 ピースめ!
 わざわざ言わんでも良いことを。

「とりあえずわかったことを伝えますね」

 海野さんの話では、魔力を巡らせると自動で発動するタイプらしい。その状態になると、記憶に焼き付けられたスキルを感じられ、念じると使える。

「おぉ!」
「わかる!」
「私も!」

 わからん。おじさん置いてけぼり。前に孤児院で魔力を教えてもらった時もこんなことがあったな。いつの時代も取り残される者はいるものだ。
 それよりも、どんな能力なんだ?

「みんなのスキルは何が使えるの?」

 カオルの従魔術は、魔力を使った使役。気力と違って主従関係がはっきりする。試しに使役中の浮きくらげにやってもらったが、力が足りずに使役できなかった。むしろ、返って怒ってしまったらしい。
 ピースのやり方も魔力の方で、基本的に魔力が優位の状態じゃないと使役できないと言っていた。
 ただし、ただ使えなかったわけじゃなく、生物の弱点や魔物の言葉がはっかりわかるようになっていた。

 トモエの絵師。絵を描く能力が向上し、魔力を込めると動くようになる。さっそくやってもらうと、小さなウサギが飛び出して、トモエの頭に乗っかっていた。飛び出した絵は、ある程度意識が共有できるみたいで、使い勝手が良さそう。ただし、弱めに魔力を入れたようで、5分もたたずに消えてしまった。

 あおい君の変装士。なんとなくイメージがあったので、いくつか予備の服を渡していた。それに変装してもらうと、気づけば一瞬で服が変わっている。隠れることもなく変わっているし、微妙に柄を変えたりも出来るみたい。更に、魔力で化粧したり、多少なら体型も変更出来ている。

 海野さんの指導士。何もしない状態で物覚えが良くなる。覚えた内容を教える時に、魔力を使うことで、相手の上達を促進出来るという。地味に良い効果を持っている。

「こうやって聞くと、あおい君のスキルが怖いな」
「そうだな。この子ならあたしの国でも欲しがるよ」

 4人はイメージがわかないようだ。

「でも、戦闘能力は無いですし、カオルさんとかトモエさんの方が強そうですよ?」

 城の様子が印象的だったのか、良い能力だと思ってない。

「勇者君みたいに強くてわかりやすい能力は、確かに目立つしシンプルに使える」
「だったらそっちのほうが良く無いですか?」
「強いのは他にもいっぱいいるんだよ。それに、強い人は他の強い人と引き合うからなぁ」
「はぁ……そうですか」
「とにかく使い方次第だよね。みんな良いスキルで良かったね」

 褒められて嬉しかったのか、飛び跳ねている。

 スキルもわかったし、すぐに戻っても良かったんだが、時間もあるので練習していくことになった。
 期限は1週間。

 カオルとトモエは、ピースと行動。カオルは従魔探し、トモエは魔物のスケッチ。
 あおい君には、隠れる技術を教える。海野さんには、その様子を見てもらいつつ、魔法を練習してもらう。
 うまく行けば俺が教えてなくても、海野さんが指導してくれるようになる。そうなれば、ようやく余裕が出てくるから、ここは気合いの入れどころだ。

 遠くに海が見える位見通しの良い木々の中で、俺たちから少し離れた木の影に猪が見えている。

「気配を消す時もタイミングがある」
「はい。前に言ってたことですね。相手に気づかれている状態だと、返って違和感を与えてしまうという」
「そう。今は気づかれているかどうか、どっちだと思う?」
「鼻息が荒くて少し興奮気味?これは気づかれているかな」

 確かにフゴフゴ鳴きながら興奮しているのがわかる。
 だけど、あれは気が立っているわけではない。

「あれは食べ物を見つけて喜んでいるんだよ。試しにゆっくり気配を消してみよう」

 3人で、気配を弱めていき、最終的に遮断する。
 猪は変わらず穴掘りして気づいていない。

「本当だ。なんでわかったんですか?」
「まずは目線が一点に集中していることだね。警戒をしている時は、全体を俯瞰するように見るようになる。見られているけど、相手の位置がわからない時ってどうする?」
「周りの様子を見ます」
「そうだね。加えて相手を刺激しないようにするんだ。だから、体は強ばるし、5感をフルに使っていつでも動けるようにする。野生動物は特にそれが強い。試しに相手に気づいてもらおう」

 気配を強めたり弱くしたりを繰り返す。

「あぁ。それやられたら嫌ですね」
「これは気持ち悪いだろうね。目の前でカメレオンが点滅してるようなもんだから。ほら、気づいたよ」

 首を上げて一度周りを見渡しすと、今度はジッと動かず息を殺している。

「あれが警戒状態だから、あの様子を覚えておいて。頭の良い奴は、意識的のこれを無くそうとするんだけど、若干は出てしまう。うまい人間はそれを極限まで減らすんだ」

 しばらく動かなかった猪が、こちらを見つけると後退りして去る。

「襲ってきませんでしたね」
「野生が強い動物程、理解していることがある」
「何ですか?」
「よくわからない者に接触しない」

 これには納得してくれたみたいだ。

「じゃあ、変装士のあおい君はどうすれば見つからない?」
「色で背景に混じるかなぁ? あ! あと匂いだ」

 優秀で良いことですな。
 鼻が効く猪だったのが良かったかもしれない。

「良いね。まずはそれからやってみよう」
「はい。それは良いんですけど、実さんは隠れる時どうしてたか気になります」
「スキルを使わない方法ってことか」
「はい」

 これは実際に見せた方が良いかな?

「ちょっと隠れるから探してみて。海野さんも一緒にね」
「は、はい!」

 近くの木に飛び乗った後、気配を弱めて隣の木へ移り、更に見えないように降りる。そこから背の高い草に隠れながら、2人の背後にある岩に溶け込んだ。

「あそこの木に移った後からわからない」
「私もそこまでですね。気配を探ってみましょう」

 最初は前方ばかり見ていたが、次第にこちらへ向かってくる。やっぱり優秀だなぁ。
 小さなトカゲがいるので、そいつを突っついて2人の方へ向かわせる。

「やや! こっちだと思いましたがこの子でしたか」
「いや、当たってるよ」
「本当にこっちだった!」
「こんな風に、あらかじめ誤魔化せる方法も用意しておくと隠れやすい」

 2人とも理解するのも早くなったな。
 もう1つだけ教えておくか。

「ちょっと面白い隠れ方もある。やってみよう」

 魔力を指に集めて精霊達を呼び寄せる。

 ”隠れさせて。”

 それだけ伝えると、俺の周りを周りだし、精霊の魔力が薄く包み込んでくる。

「見えてるよね?」
「は、はい。一応? 見えて……ます」
「そこに……居るんですよね?」

 海野さんが目を細めながらこちらを見ている。精霊の魔力を散らしながら、2人のもとへ歩いて行く。

「ちゃんとこっちを見ていたよ」
「今のは何ですか?スキルじゃないですよね?」
「精霊魔法だよ。前に教えてもらったんだ」
「やっぱり凄いなぁ。あれで歩いていたとしても気づかないですよ」

 やっぱり精霊魔法が一番わかりづらいよね。だけど、気配だけでも近づけることはある。

「精霊魔法は自然だから、ほとんど同化するんだ。それを気で近づけると似たようなことも出来る。あくまで似たようなだけどね」
「僕の目指すところはそこなのかな」
「それは、あおい君が1番合う使い方を探せば良いよ。さて、海野さんどうだった?」

 いきなり呼ばれて驚いたのか、すぐには返答がなかった。

「はい。その精霊魔法はわかりませんでした。スキルの感覚だと、まず覚えられないです。理解も出来ませんでした」

 精霊を見ることも出来無かったのかな。
 今日は遅くなるから、今度見せやすいのを出してみようか。

「これは仕方ないかな。じゃ、今日は戻ろう」
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