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6章 不老者とクラス召喚

第111話 マイナール国 西部森林地帯2

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 採取や訓練を続けていても、スピードは落ちていない。
 予定だと今日中に到着のはず。

「あそこが目的の村だよ」

 森の中にしては、似つかわしく無い防壁が見えてきた。
 隙間は埋めてあるが、表面がササクレ立っていて荒さが目立つ。

「誰だ」

 防壁の上から声を掛けてきたのは、不健康そうな男。
 顔は青白く明らかに血色が悪い。声に覇気も無く、ただ声をかけたような音量だった。

「すみません。ちょっと食料とか分けてもらえないかと思いまして」
「あたしは前に来たことあるんだ」
「待ってろ。今開けてやる」

 こんなに簡単に開くのか?
 ピースは警戒が強いって言ってたよな。
 当人もお手上げでわからないと言った表情をしている。
 村の風潮が変わったのか、良く無いことがあるか。

「ちょっと警戒したほうが良いね」

 みんなが頷くのを確認して、扉へ向かう。
 ギシギシと重みのある音が響く。

「待たせたな。小さい集落だから人手が少ないんだ」

 驚くことに、この重さの扉を1人で開けていた。

「あんた凄い力持ちだな」
「良く言われるよ。見た目に合わないだろ?」
「失礼だけど、その通りだよ」
「気にして無いさ。それより入りなよ。一応食い物はあるつもりだ」

 男の案内で中に入ると、中は予想より広かった。
 外観では想像出来なかったが、奥行きが広く、畑まで内包されている。

「何度驚かされれば良いのやら」
「あたしも入ったことなかったけど、こいつは驚いた」

 男は気にせず先に進むので、後についていく。
 辿り着いたのは少し大きめの平家。

「長《おさ》! 人が来たぞー。食料くれってさ」
「うっせー! なんだよ。まだ昼だってのに」

 奥から出てきたのも青白い中年男性。
 ピースを見ると知らないという顔をしている。
 前に来た時と人が変わったのか?
 色々考えていたが、村人同士で話が進んでいく。

「そっちの嬢ちゃんが来たことあるって?」
「そう言ってたよ」
「まぁ、来たけどさ。2人には会ったこと無いかな」

 村人が顔を見合わせるといきなり笑い出した。

「ぶははは!そりゃそうだ!」
「ここは譲ってもらったんだよ」
「じゃあ前に人達は?」
「もっと南側の開けた場所と交換したんだ」

 ほぉ。そんなこともあるんだな。
 それにしてもこの人達は、面白い体してるな。
 生命力が無くて、魔力で生きてるみたい。

「あんた、半仙人だろ?」
「え? あ、はい」

 突然当てられると反応が遅れるな。

「どうして知ってるんだ?」
「あんたの友達と繋がってるからだよ。ほら、俺らの種族わからないか?」
「青白くて力持ちで」

 ニィと笑った時に鋭い犬歯が見える。

「もしかしてアンデッド?」
「大枠では合ってますが、もうちょっと言って欲しかった。ダンピールだよ」
「へぇ。ダンピールは初めて会ったな」
「だけど、もっと上を知ってるんじゃないか?」
「へ?」

 頭を捻っても出てこない。
 周りは呆けたままで会話に入ってこないし。

「わからん」
「あの方の言う通りだな。教えてやれ」
「長が言えば良いのに。……昔ヴァンパイア様と仲良かったんだろ?」

 言われても記憶が。

「ヴァンパイア様は友達だって言ってたぞ。ほら、どこかの島で一緒にゴーレム作ったって」
「ノールはゴーレム作れるのか!?」
「いや、作れないよ」

 そこで長が間に入ってきた。

「ゴーレムじゃないだろ!ロボットを一緒に作った。って……書いてある」

 カンペあるなら先に使ってくれ。
 だけど、ロボットか。

「んー? 島でロボットを一緒に!」

なんだか思い出してきたぞ。青っ白い顔でトマト啜ってる変な奴。

「どうだ? 思い出したか?」
「ドラちゃん!」
「やっぱり知ってるじゃないか」
「ドラちゃん元気してる?」
「ここから西側に行った国にいるよ。まさかと思ったけど、似顔絵通りだったな」

 見せてくれたカンペに俺が描かれている。

「まんまノールさんだね」
「でも、名前違くない?」
「本当だ。高橋実だって」
「偽名だったんですか?」

 一気に言わないで欲しいな。

「ノールは間違えて覚えられたのを、そのまま使ってたんだよ。そっちでギルド証作ってるし、変えるのは面倒でな」

 それよりもダンピール達と話を進めないとな。

「俺は聞きたいことあるから、ピースは青年と食料の交渉しててくれない?」
「え?ダンピールだぞ。大丈夫なのか?」
「ドラちゃんの知り合いなら大丈夫でしょ。ね?」

 長に向かって言う。

「もう人の血は無くても大丈夫だ」
「ということだ」
「わ、わかった」

 やっと納得してくれたか。
 さて、話を進めよう。

「ドラちゃんのことはわかったけど、そのロボットはどうしてるの?」
「いや、詳しいことは俺も知らん。ただ、自由にさせているという話は聞いたな」
「ゴンの奴。どこに行ったのやら」
「あまり文句言わん方がいいぞ。ヴァンパイア様も気楽に言ってたが、一部から機械神と呼ばれている」

 あいつが神様?
 まさか?

「ぶふ。神様は無いでしょ」
「実際神様かどうかわからんが、そう言ってる奴らが煩いってことだよ」
「む。確かにそれは面倒だ。気をつけよう」

 話がひと段落して、後ろを向くと4人が疲れた顔をしていた。

「疲れたなら賦活しようか?」
「ノールさんの話についていくだけで疲れました」

 海野さんの言葉に全員頷いている。
 話に疲れたなら、頭に賦活すればいいのか?
 どっちにしろ、もうすぐ夜だから泊まらせてもらおう。
 長も2つ返事で許可をくれたし、更に空いてる小屋まで貸して貰った。
 久しぶりの宿なので、ゆっくり休めそうだ。

 長との会話を知りたそうにしていたので、ドラちゃんとSK-ゴンのことは、夜に伝えてある。
 それでも、良くわかってなかったけど、理解してもしなくても変わらないんだよなぁ。


 翌朝は皆起きるのが遅かったので、ゆっくり目に出発する。

「あんたらに早くしろとは言わないけど、一度は顔出してあげてくれ」
「わかってる。ドラちゃんにはその内行くって言っておいてよ」
「伝えておく」

 ゆっくり休んだおかげか、進行スピードは早くなっている。
 遅れた分はすぐに取り戻し、1ヶ月の予定が3週間程で到着しそうだ。

「私達もかなり体力ついてきたわね。賦活も前より出来てると思うの」

 トモエの言う通り、かなりのペースで成長している。気の強弱も多少出来ているので、もう少し上手くなったら、スキルの訓練に入れるだろう。

「到着したら、カオルは私と従魔探しだな」
「良いの?」

 従魔に関してはピースに任せることにしたから、わざわざ確認しなくて良いのに。

「前にも言ったけど、従魔はピースの方が詳しいんだ。任せるよ」
「そういうこと。現地には数種類運搬タイプがいるんだよ。こういう機会はあまりないからな?」

 採取はこちらでやるとして、ベイリーフを覚えてもらわないとな。
 スケッチした絵を見てもらう。
 各々感想はあったが、一応見たことはあったので良かった。

「先に言っておくけど、覚えた野草とかは、量を守って取ってくるんだよ?」
「「「はい」」」

 個人で採取したものは、あとでそのまま報酬の上乗せになる。みんなが自立する時の資金になるから大事だ。
 あとどのくらいで独り立ちできるのか。
 初めの様子から考えると、予想以上の成長だから、早く自立出来るかもしれないな。
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