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6章 不老者とクラス召喚
第109話 報復からデザート
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これで集め終わった。
あとは作って夜に行動するだけ。
「小さく切った布に、この液体と粉末をまぶして、ぐぉお。保存だ。気で何重にもかけておかないと」
俺は凶悪な平気を作り出してしまったのかもしれない。
念入りに体を洗って一度家に戻る。
「ノールさんどうしたんですか?」
「あおい君か。明日から遠征に行くことになった。」
「また行くのぉ?」
「トモエちゃん。ここが頑張りどころですよ。最近調子良いでしょ?」
「トモエさん頑張ってるもんね」
「え? そうね。じゃあ早めに寝ようかしら」
お前チョロくなってないか?
こっちは楽で良いんだけどさ。
「最近慣れてきたし、行きがけにスキルも練習してみようか」
「やった! やっとスキルだ」
「先に道具買っておいて良かったですね」
みんな喜んでるな。
毎日やってたおかげか、薄ら賦活は出来る程度なので、まだスキルは使えるだろう。
魔力も教えてあげないとな。
ワイワイしているとピースがやってきた。
まとまった時間が出来たから教えてくれってさ。
明日から依頼だと言ったら、付いてくると言ってきた。
「良いですよ」
「僕らより強そうだし助かります」
「私も従魔のこと聞きたい」
「問題ないわ」
それなら付いてきてもらおう。
明日の早朝に出発だ。
その後はみんな早めに寝ていた。
俺だけを除いて。
「お待ちかねの時間だ。例の3人衆よ。待っててくれよ? へへへ」
極限まで気配を殺し、魔力も気力も漏らさない。
門番の意識が緩んだ瞬間にすり抜けて入城する。
勝手知ったるという程じゃないが、それなりに把握している。
強烈な力はいくつもあるが、目的地はそこじゃない。
それよりも数段弱い生命力の所。
知っている少し歪んだ力を目印に、その部屋まで一直線。
「まずは1人目」
扉を開けて閉めるまで、音だけでなく風も一切起こさない。
寝ているそいつの鼻に作った物を突っ込むと、一瞬だけ体を跳ねさせて「ふごっ」と鼻を鳴らしたら動きが止まった。
いや、若干ピクピクしている。
お疲れ様でした。
「2人目」
そちらの青年も同様に突っ込む。目を覚まして全力で見開いた先にあるのはゴブリンの腰巻き。
「ぐっ。くっ」
何かを言おうとしてたが、そのまま意識を失ってしまった。
こいつもピクピク指が動いている。
感度良好。
ちゃんと嗅覚が働いていて良かったな。
「次が最後」
女の部屋に入ってセクハラとか言われたら困るので、扉を開けたら投げて貼り付けるしかない。
ダメだったら散布になってしまう。
扉の隙間から、顔面目掛けて布を投擲!
くそ。やっぱり少しズレた。
もんどり打って転がってるが、散布するしかない。
俺特性のニンニクとゴブリンの腰巻き濃縮エキス。
更に森で見つけた強烈な臭いのキノコ汁も混ぜ込んだ液体。
こいつを投げ入れて、扉に保存をかける。
ちょっと騒がしくなったせいか、何人か起きてきた。
気配を殺して、さぁ帰ろう。
むむ。
例のメイドさんもいるな。
俺は帰るので後はよろしくお願いしまっす。
うぉ!
チラッとこっち見てきたぞ。
声出そうになった。
「気のせいですか。それにしても変な臭い。なんでクソ勇者のお守りなんて。全部消して仕舞えば良い」
本当にこいつメイドかよ!?
物騒すぎるわ。
途中ですれ違った子の中で、何人か青アザを作ってるのが見えた。
確か田中君だっけ?
下級組は訓練きついのかな?
ちゃんと休むんだぞ。
難なく門まで到着し、そのまま出ていく。
この城のセキュリティ大丈夫か?
今まで居たどこの街よりも練度低いんだけど…。
下手すると冒険者ギルドのチンピラの方が能力高いんじゃないか?
家の前で気づいたことがある。
俺の体も結構臭い。
特性の石鹸を使って全身洗浄。
まだ少し鼻に残ってるけど、これ以上は無理かな。
まだ日は登ってないから、屋根の上で少しだけ休もう。
朝日が体にあたる感覚が気持ちいい。
「おーい。おーい。ノール!」
目を開けるとピースと仮弟子達が居た。
「もう準備出来てるぞー」
上を見ると日が高い。
「ごめん。日光浴が気持ちよかった」
「かなり良い顔してたもんね」
「城を出てから一番晴れ晴れしてたんじゃない?」
「それより行きましょう」
「そうね」
いざ、出発という所でピースが1つだけ言う。
「ノール。ちょっと臭くないか?」
「気にするな」
「まぁ、その程度なら良いけどさ」
◆ ◆ ◆
その日の城は悲惨だった。
勇者達の訓練は中止となり、一日掛けて城を掃除する。
「あの3人のこと聞いたか?」
「異臭騒ぎのターゲットになったんだろ」
「色んなところから嫌われてて目処がつかないってさ」
「仕方ないよな」
「下級組は全員医務室だったし、他の奴もアリバイがある」
「外部の可能性もあるらしいぞ」
「ここの人達が認めるわけないじゃん」
「「「そうだな」」」
こんな会話が至る所で行われている。
「兄さんはどう思う?」
メイがノボルに訪ねてもわからない様子。
「気配も感じなかったし、少し慌ただしいと思った時には全部終わってたよ」
「そうだな。俺もその後見張ったけど、怪しい影も見つけられなかった」
「立花君も後藤君もわからないなら、私達では厳しいわね」
ノボルが考え込んでしばらくすると、ポツポツと話出す。
「もしもだけど、城を出た奴が強くなってやったってことは」
「スキルは開示されたじゃない。いくらスキル外でも成長出来たとしても、使った感覚からすると無理があるわ」
「明石の言う通りだな。強くなって欲しいが、期待しすぎも相手の負担になるぞ?」
「ぐっ。確かにそうだな」
「兄さんの悪い癖です。周りでセーブしないとね」
妹の言葉に少しだけムッとするが、いつものことだと表情はすぐに戻った。
ただし、あの男だけはちょっと気に入らない。
そこは自覚し始めている。
「勇者様方は本日ゆっくり休養なさってください」
「良いのか?」
「王女様からのお言葉ですので、問題ありません」
「そういうことなら」
3人がすぐに部屋に戻るのを見送り、明石だけが他の生徒達を見ている。
「私はスキル使った方が伸びるから、みんなに掛けてくるわ」
「お好きにどうぞ」
「休養してなくても良いの?」
メイドは肩をすくめるだけで何も言わない。
それなら良いかとクラスメイト達に回復をかけていく。
「疲れが取れたらまだ頑張れるよ」
「ありがとうね」
「私はスキル使ったら休むもの。気にしないで良いわ」
クラスメイトの1人が、私の後ろを気にしながら尋ねてきた。
「あのメイドさんって1体何者なの? 他のメイドさんとは違うよね?」
「私もわからないわ。メイド長ってわけでも無さそうだし」
「まぁ、そうだよね。変なこと聞いてごめんね」
「いいえ。後を頼むわね」
先程のクラスメイトの言葉が気になる。
だけど直接本人には聞けない雰囲気。
他の仲間や従事者達に回復をかけて回ると、1人の料理人に声をかけられた。
「聖女さんのおかげで捗《はかど》ったからな。お礼に良い物食わせてやるよ。こっち来な」
周りを見ると執事やメイドも笑顔で頷いている。
そういうことならと、後を付いていくと、厨房に辿り着いた。
「料理長! この方に例の奴お願いします!」
「なんだぁ? あれは貴重品だぞ」
「今日、城の人ほとんど回復してくれたんですよ。みんなの気持ちを送りたいんです」
それを聞いた料理長は頬をポリポリ掻く。
「聖女さん。これは内緒だぞ?」
「え? はい」
引っ込んだ料理長が数分で戻ってくると、両手に1皿ずつデザートを持ってきた。
「フルーツケーキと焼き菓子だ」
「うわぁ! デザートなんて久しぶり!」
「王弟様でも数日に1度だけの物だ」
「そんな大事な物良いんですか!?」
「王弟様の配慮だな。食べない日の分をがんばった侍従に食べさせるんだ。今日はあんただ」
目の前にあるデザートから目が離せない。
用意してくれた小さめ椅子に腰掛け、じっくりゆっくりと、一口ずつ味わう。
ほのかな酸味とフルーツの優しい甘みが全身を駆け巡る。
彼らが誠実に仕事する原動力がわかった。
私の貰う料理はクラスの中だと最上級。
だけど、それに付いてくるフルーツは小さなベリーやブドウ1片くらい。
召喚前は我慢して食べない選択してたけど、今では願っても食べれない1品。
「料理長。ノールって奴でしたっけ。交渉出来たんですか?」
「ん? あぁ。いくつか手に入ったが、それでお手上げだったよ。もし見つけたらと頼んでいる。それと祝い品も頼んでおいた」
「え? それまで取って来れるんですか?」
「ギルド長は出来るって言ってたぞ。戦闘は苦手らしいが、採取は完璧にこなしてくるらしい。場所も教えたし問題ないだろ」
小耳に挟んだノール。
明石にも聞いたことがあった。
「ちょっとすみません。ノールという方は城から出た」
「そうですよ」
料理人がすぐに答えてくれたが、料理長のゲンコツが飛んできた。
「バカ野郎! 王弟様の依頼なんだ。ホイホイ言うんじゃねぇ!」
「ごめんなさい。城から出た後が気になっていて。元気なら良いんです」
「そういうことか。元気にやってるよ。なんでも、他の奴らを鍛えてるとか言ってたな」
「そうなんですか。危なくないと良いですけど」
「どうだろうな。最下級組だっけか?」
「そうですね」
「残っても訓練で死ぬだけだ。それを考えると、城を出たのは正解だな。」
そんなに過酷な訓練をさせるのかと、怪訝な表情になる明石を見て料理長が弁明する。
「いや、スキルの問題だよ。戦闘スキルが無いと付いてけないんだ。手加減にも限度があるから、耐えられることが最低条件なわけよ。無駄飯食らいは残せないからな」
その言葉にも若干裏があるように感じられたが、明石は言葉を飲み込む。
「ノールは逃げる訓練とか言ってたな。探索がメインだろうから、下手するとお前らより稼ぐかもしれないぞ。それより、乾く前に食っちまった方が良いぞ?」
そうでした。
今はこのケーキを味わいましょう。
譲ってくれた皆んなと、久しぶりの至福をくれた運命に感謝。
あとは作って夜に行動するだけ。
「小さく切った布に、この液体と粉末をまぶして、ぐぉお。保存だ。気で何重にもかけておかないと」
俺は凶悪な平気を作り出してしまったのかもしれない。
念入りに体を洗って一度家に戻る。
「ノールさんどうしたんですか?」
「あおい君か。明日から遠征に行くことになった。」
「また行くのぉ?」
「トモエちゃん。ここが頑張りどころですよ。最近調子良いでしょ?」
「トモエさん頑張ってるもんね」
「え? そうね。じゃあ早めに寝ようかしら」
お前チョロくなってないか?
こっちは楽で良いんだけどさ。
「最近慣れてきたし、行きがけにスキルも練習してみようか」
「やった! やっとスキルだ」
「先に道具買っておいて良かったですね」
みんな喜んでるな。
毎日やってたおかげか、薄ら賦活は出来る程度なので、まだスキルは使えるだろう。
魔力も教えてあげないとな。
ワイワイしているとピースがやってきた。
まとまった時間が出来たから教えてくれってさ。
明日から依頼だと言ったら、付いてくると言ってきた。
「良いですよ」
「僕らより強そうだし助かります」
「私も従魔のこと聞きたい」
「問題ないわ」
それなら付いてきてもらおう。
明日の早朝に出発だ。
その後はみんな早めに寝ていた。
俺だけを除いて。
「お待ちかねの時間だ。例の3人衆よ。待っててくれよ? へへへ」
極限まで気配を殺し、魔力も気力も漏らさない。
門番の意識が緩んだ瞬間にすり抜けて入城する。
勝手知ったるという程じゃないが、それなりに把握している。
強烈な力はいくつもあるが、目的地はそこじゃない。
それよりも数段弱い生命力の所。
知っている少し歪んだ力を目印に、その部屋まで一直線。
「まずは1人目」
扉を開けて閉めるまで、音だけでなく風も一切起こさない。
寝ているそいつの鼻に作った物を突っ込むと、一瞬だけ体を跳ねさせて「ふごっ」と鼻を鳴らしたら動きが止まった。
いや、若干ピクピクしている。
お疲れ様でした。
「2人目」
そちらの青年も同様に突っ込む。目を覚まして全力で見開いた先にあるのはゴブリンの腰巻き。
「ぐっ。くっ」
何かを言おうとしてたが、そのまま意識を失ってしまった。
こいつもピクピク指が動いている。
感度良好。
ちゃんと嗅覚が働いていて良かったな。
「次が最後」
女の部屋に入ってセクハラとか言われたら困るので、扉を開けたら投げて貼り付けるしかない。
ダメだったら散布になってしまう。
扉の隙間から、顔面目掛けて布を投擲!
くそ。やっぱり少しズレた。
もんどり打って転がってるが、散布するしかない。
俺特性のニンニクとゴブリンの腰巻き濃縮エキス。
更に森で見つけた強烈な臭いのキノコ汁も混ぜ込んだ液体。
こいつを投げ入れて、扉に保存をかける。
ちょっと騒がしくなったせいか、何人か起きてきた。
気配を殺して、さぁ帰ろう。
むむ。
例のメイドさんもいるな。
俺は帰るので後はよろしくお願いしまっす。
うぉ!
チラッとこっち見てきたぞ。
声出そうになった。
「気のせいですか。それにしても変な臭い。なんでクソ勇者のお守りなんて。全部消して仕舞えば良い」
本当にこいつメイドかよ!?
物騒すぎるわ。
途中ですれ違った子の中で、何人か青アザを作ってるのが見えた。
確か田中君だっけ?
下級組は訓練きついのかな?
ちゃんと休むんだぞ。
難なく門まで到着し、そのまま出ていく。
この城のセキュリティ大丈夫か?
今まで居たどこの街よりも練度低いんだけど…。
下手すると冒険者ギルドのチンピラの方が能力高いんじゃないか?
家の前で気づいたことがある。
俺の体も結構臭い。
特性の石鹸を使って全身洗浄。
まだ少し鼻に残ってるけど、これ以上は無理かな。
まだ日は登ってないから、屋根の上で少しだけ休もう。
朝日が体にあたる感覚が気持ちいい。
「おーい。おーい。ノール!」
目を開けるとピースと仮弟子達が居た。
「もう準備出来てるぞー」
上を見ると日が高い。
「ごめん。日光浴が気持ちよかった」
「かなり良い顔してたもんね」
「城を出てから一番晴れ晴れしてたんじゃない?」
「それより行きましょう」
「そうね」
いざ、出発という所でピースが1つだけ言う。
「ノール。ちょっと臭くないか?」
「気にするな」
「まぁ、その程度なら良いけどさ」
◆ ◆ ◆
その日の城は悲惨だった。
勇者達の訓練は中止となり、一日掛けて城を掃除する。
「あの3人のこと聞いたか?」
「異臭騒ぎのターゲットになったんだろ」
「色んなところから嫌われてて目処がつかないってさ」
「仕方ないよな」
「下級組は全員医務室だったし、他の奴もアリバイがある」
「外部の可能性もあるらしいぞ」
「ここの人達が認めるわけないじゃん」
「「「そうだな」」」
こんな会話が至る所で行われている。
「兄さんはどう思う?」
メイがノボルに訪ねてもわからない様子。
「気配も感じなかったし、少し慌ただしいと思った時には全部終わってたよ」
「そうだな。俺もその後見張ったけど、怪しい影も見つけられなかった」
「立花君も後藤君もわからないなら、私達では厳しいわね」
ノボルが考え込んでしばらくすると、ポツポツと話出す。
「もしもだけど、城を出た奴が強くなってやったってことは」
「スキルは開示されたじゃない。いくらスキル外でも成長出来たとしても、使った感覚からすると無理があるわ」
「明石の言う通りだな。強くなって欲しいが、期待しすぎも相手の負担になるぞ?」
「ぐっ。確かにそうだな」
「兄さんの悪い癖です。周りでセーブしないとね」
妹の言葉に少しだけムッとするが、いつものことだと表情はすぐに戻った。
ただし、あの男だけはちょっと気に入らない。
そこは自覚し始めている。
「勇者様方は本日ゆっくり休養なさってください」
「良いのか?」
「王女様からのお言葉ですので、問題ありません」
「そういうことなら」
3人がすぐに部屋に戻るのを見送り、明石だけが他の生徒達を見ている。
「私はスキル使った方が伸びるから、みんなに掛けてくるわ」
「お好きにどうぞ」
「休養してなくても良いの?」
メイドは肩をすくめるだけで何も言わない。
それなら良いかとクラスメイト達に回復をかけていく。
「疲れが取れたらまだ頑張れるよ」
「ありがとうね」
「私はスキル使ったら休むもの。気にしないで良いわ」
クラスメイトの1人が、私の後ろを気にしながら尋ねてきた。
「あのメイドさんって1体何者なの? 他のメイドさんとは違うよね?」
「私もわからないわ。メイド長ってわけでも無さそうだし」
「まぁ、そうだよね。変なこと聞いてごめんね」
「いいえ。後を頼むわね」
先程のクラスメイトの言葉が気になる。
だけど直接本人には聞けない雰囲気。
他の仲間や従事者達に回復をかけて回ると、1人の料理人に声をかけられた。
「聖女さんのおかげで捗《はかど》ったからな。お礼に良い物食わせてやるよ。こっち来な」
周りを見ると執事やメイドも笑顔で頷いている。
そういうことならと、後を付いていくと、厨房に辿り着いた。
「料理長! この方に例の奴お願いします!」
「なんだぁ? あれは貴重品だぞ」
「今日、城の人ほとんど回復してくれたんですよ。みんなの気持ちを送りたいんです」
それを聞いた料理長は頬をポリポリ掻く。
「聖女さん。これは内緒だぞ?」
「え? はい」
引っ込んだ料理長が数分で戻ってくると、両手に1皿ずつデザートを持ってきた。
「フルーツケーキと焼き菓子だ」
「うわぁ! デザートなんて久しぶり!」
「王弟様でも数日に1度だけの物だ」
「そんな大事な物良いんですか!?」
「王弟様の配慮だな。食べない日の分をがんばった侍従に食べさせるんだ。今日はあんただ」
目の前にあるデザートから目が離せない。
用意してくれた小さめ椅子に腰掛け、じっくりゆっくりと、一口ずつ味わう。
ほのかな酸味とフルーツの優しい甘みが全身を駆け巡る。
彼らが誠実に仕事する原動力がわかった。
私の貰う料理はクラスの中だと最上級。
だけど、それに付いてくるフルーツは小さなベリーやブドウ1片くらい。
召喚前は我慢して食べない選択してたけど、今では願っても食べれない1品。
「料理長。ノールって奴でしたっけ。交渉出来たんですか?」
「ん? あぁ。いくつか手に入ったが、それでお手上げだったよ。もし見つけたらと頼んでいる。それと祝い品も頼んでおいた」
「え? それまで取って来れるんですか?」
「ギルド長は出来るって言ってたぞ。戦闘は苦手らしいが、採取は完璧にこなしてくるらしい。場所も教えたし問題ないだろ」
小耳に挟んだノール。
明石にも聞いたことがあった。
「ちょっとすみません。ノールという方は城から出た」
「そうですよ」
料理人がすぐに答えてくれたが、料理長のゲンコツが飛んできた。
「バカ野郎! 王弟様の依頼なんだ。ホイホイ言うんじゃねぇ!」
「ごめんなさい。城から出た後が気になっていて。元気なら良いんです」
「そういうことか。元気にやってるよ。なんでも、他の奴らを鍛えてるとか言ってたな」
「そうなんですか。危なくないと良いですけど」
「どうだろうな。最下級組だっけか?」
「そうですね」
「残っても訓練で死ぬだけだ。それを考えると、城を出たのは正解だな。」
そんなに過酷な訓練をさせるのかと、怪訝な表情になる明石を見て料理長が弁明する。
「いや、スキルの問題だよ。戦闘スキルが無いと付いてけないんだ。手加減にも限度があるから、耐えられることが最低条件なわけよ。無駄飯食らいは残せないからな」
その言葉にも若干裏があるように感じられたが、明石は言葉を飲み込む。
「ノールは逃げる訓練とか言ってたな。探索がメインだろうから、下手するとお前らより稼ぐかもしれないぞ。それより、乾く前に食っちまった方が良いぞ?」
そうでした。
今はこのケーキを味わいましょう。
譲ってくれた皆んなと、久しぶりの至福をくれた運命に感謝。
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