サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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5章 獣王国

第85話 首都到着

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「やっと到着じゃな」
「魔物とか出なかったし、結構治安は良いんだな」
「兵士が巡回してるからな。それに害獣の駆除は、常時依頼に出されてるんだ」

 なるほどな。
 辿り着いた首都は、一言で表すと巨大。
 前に王都に行った時よりも、2倍の高さはある壁に囲まれている。
 門も8方向に設置されていて、それに合わせて壁も8角形。
 周辺国も首都は同じような形らしい。
 俺らが辿り着いたのは北門。

「次のやつ」

 呼ばれて進むと、理由を聞かれる。

「また鉱石を運びんできたぞい」
「付き添いだ」

 ドリー達は通されたが、俺は止められる。
 またか。

「人族か。通行証あるか?」

 そういえば初めては時間かかるんだった。
 無いことを伝えると、やっぱり別の列へ。
 先に行ってくれと声かけると「途中で話した食堂で集合な!」とドリーは言って進んでいった。

 指示されたところへ向かって30分。
 ちょっとばかし、空の様子が良く無いな。

「おい。人族! お前だ!」
「え? すみません」

 ちょっと空を見てたら、意識がそれてしまった。

「呼んでるんだから来いよ」
「ちょっと雨降りそうだったもので」

一緒に空を見上げるが、不思議そうにしている。

「この天気でか?」
「雲の方向と流れが早いんでね。1時間しないうちに雨降るかと思いまして」
「ほーん、そうか。それより! 名前とあれば仕事。それと来た目的は?」
「探索者のノールです。目的は知り合いに会いに」

 ギルド証とバートの紹介状を渡す。

「7級か。名前と証明はよし。紹介状は……ん? あんたバート殿の知り合いか!」
「えぇ。そうです」
「それなら向こうで、これ渡してたら良かったのに。無駄足だったな」

 ニカっと笑いながら返してくれる。

「俺は忙しいから、中の詰所で紹介状見せな。そしたら場所教えてくれるよ。行ってよし! 次!」

 5分もかからなかったな。
 ちょっと拍子抜けだが、楽で良いか。

 中に入ると相当カオス空間だ。
 地面は人でごった返しているし、空も飛べる鳥系の種類が荷物を運んでいる。
 この街だと屋根上通ったら、文句言われそう。
 これは慣れるまで大変だなぁ。

 だけど空から運ぶって良いな。
 俺も屋根通って配達してたら、もっと昇給早かったかもしれない。
 次に機会があれば試してみよう。
 もちろん他の街でね。

「おっとごめんよ」

 ぶつかって来た人が懐に手を入れてきたので、潰したニンニクを掴ませてあげた。
 後ろで歓喜の声が聞こえる。
 美味しく召し上がってくれ。


「えっと1本路地入った北西側って言ってたから、左かな」

 こっちも人が多いし、みんなぶつかってくる。
 ちゃんとあげるから、当たってこなくても良いのにな。

(ぐぁぁ。)
(鼻がもげる)
(ただのカモじゃねーぞ。)
(ぶっは。)
(くっせ! 近寄るな!)

 次第に誰も寄ってこなくなった。
 右手で潰していたせいか、右手がニンニクパーリーしている。

 近くの犬男がこっちを見ていたので、嗅がせてあげようとしたら倒れてしまった。

「これがうまいのにな」

 そう言いうと、あたりから人が消えてしまった。
 行きたい店も見つからないので、寝てる男を起こして聞く。

「ちょっと起きてよ! 『爪と洞穴』って酒場知らない?」
「うっぷ。ちかよ……るな! それなら大通りの向こうだよ!」
「そっか。反対来ちゃったか。ありがとう」
「二度とくるな!! くっせ。この服もうダメか。とほほ」
「そうだ! お礼にこれあげようか!」

 ニンニクを見せると、何も言わずに走って行ってしまった。
 遠慮しなくて良いんだけどな。

 大通りに戻るとやっぱり人が多い。
 だけど心なしか、歩きやすいな。
 難なく反対側へ到着して一本内側へ。

 こっちは閑散としてるな。
 少し歩くとお目当ての看板があった。

「あったあった! 洞窟と爪。まんま名前通りだな。ドリーいる?」

 扉を開けながら声を掛ける。

「おお、来たか。思ったより早く……すげー臭いしてるな」
「どうかした?」
「ノールからヤバい臭いがするぞ」

 服を見ても嗅いでもわからない。
 すると後ろの扉が開く。

「ちょっと失礼ここに…。うお。こいつだ! 捕まえろ!」
「え?」
「「「ぐ」」」
「い、いけぇぇぇ」
「え? え?」

 いきなりで反応出来ずに、ロープで縛られてしまった。

「事情を聞くので同行してくれ」
「えぇぇ! これって同行じゃなくて連行でしょ!」
「連れてけ」

「「「うっす」」」
「お騒がせした。続けて飲んでくれたまえ。では」



 降り始めた雨に当てられながら、大通りを引きずられていく。

「あの人何したのかしら」
「普通歩かせるだろ」



「無実だぁ!」
「良いからある…。引きずられてろ!」

 こういう時こそ無心だ。



◆◆◆



「それで? 何をどうしたらあんな異臭がでるんだ」
「だから、異臭じゃないって。ほら」
「くっさ! 良いからしまえ!」

 お気に召さないようだ。
 首都に入って呆けていたところから話す。




「とすると、スリに……そのニンニクを持たせてたらこうなったと」
「そうです」

 そこで横にいた兵士が話し出した。

「それ、多分本当ですよ」
「ん?」
「さっき気絶してた男を見たら、結構有名なスリでした。他の奴も、誰かしら捕まえたことある奴でしたし」

「信憑性はあるか。だが騒ぎが大きくなってしまったからな。そのまま出すってわけにもいかん」
「じゃあ、もう夕方だし泊めてください。あとさっきの酒場のドリーってモール族に、事情だけ説明を」
「そうするか。ここに居るなら、後からわかっても対応できるしな。よし、誰か伝えてきてくれ」






 兵士と晩飯食ってる時に、門番の男が入ってきた。

「くっそ! マジで降りやがった。ビショビショだよ。……なんでここにいるの?」

 実は、と事情説明する。

「いやいや、紹介状見せとけって言ったじゃん」

 そういえばそんなこと言ってたな。
 紹介状を取り出して見せる。

「お前! こういうのは先に見せるんだよ!」

 と警備隊長が怒ってしまった。

「もう遅いから仕方ないな。朝一で連絡するから、早めにバート殿のところへ行けよ?」

 場所がわからないと言うと、丁寧に地図を書いてくれた。








 よく見ろよ?


 5分かけて出来た地図がこれだ。





 _______________

       (ココ)
         ↓
         ↓
         ↓
         ↓
      ↓←←←
      ↓
      ↓
  ↓←←←←
  ↓
 (バート殿)

 _______________



 書いてる時の隊長の顔が真剣過ぎて、誰も何も言えない。

「あ、ありがとう」
「うん。会心の出来栄えだ」

 めっちゃ突っ込みたい!


 隣からボソっと聞こえた。

「隊長って方向音痴じゃなかったか? あれ大丈夫?」

 そいつはヤバいんじゃないか?

「いや、間違ってはいない。正確じゃないだけだ」

 全然大丈夫じゃない!
 隊長がいなくなった後、必死に頼み込んで、無事書き足して貰うことが出来た。


 _______________

       (ココ)
         ↓中
         ↓央
         ↓通
         ↓り
     1↓ ←○
     本↓  噴水
     西↓
 3↓←←←○靴屋
 本↓      _____(門)
 西↓     /
 _(門)_ /
  ↓
  ↓       
(バート殿)  
 ______________

 これなら辿り着けるだろう。
 明日も迷子になるところだったな。

 知らない兵士君。
 グッジョブ!


 ところで俺ってどこで休めば良いの?
 誰か教えてー!
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