サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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4章 国の波乱

第67話 ケープ村の1日

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 ここを出たのもつい最近だと思ったが、みんなに「久しぶり」と言われて、結構長く出てたんだと実感した。

 今日も村のみんなと街の話をしていると、仲良かった奴がいない。

「そういえばベアさんはどこ行ったの? 仕事?」

 そう聞くと、みんな苦笑いして一人が話してくれた。

「彼は隣村に行ってるんだよ。場合によっては村ごと引っ越すかもしれないからね。その連絡さ」

 そういえば、そんな話もあったな。

「ベアさん頼りがいあるからね。ベアさんが引退したら大変なことになりそうだ」
「本当にそこなんだよね。息子さんもがんばってるけど、他にも人材がいればね」
「各族で後進は育ててるんだけどね」

 みんな後継には苦労してるようだ。
 やりたいと思わせないと伸びも悪いからな。
 親は苦労しているな。
 俺はほら。
 あれだ。
 そう! 孤児達がいるからな!


 そんな会話をしていると思ってもなかった質問が来た。

「薬人はスキル貰わなかったのか?」

「あ!」
「その反応は貰って無いんだね。ははっ」
「他に良い技を持っておるから、薬人には必要無いじゃろう」

 ヤギさんの言う通りだな。
 決して、欲しかったとかは思ってない。

 人族にはあまり広まってないが、スキルや魔法だと感知されやすくなるという欠点があるらしい。獣族は体感でそれを知っている為、技術として体得する努力もしているそうだ。
 ちなみに獣族だからと言って、魔法が使えない訳ではなかった。魔法よりも優秀な肉体があるから、体を動かす方が好きらしい。
 マーガレット先生も獣族の話はしてなかったけど、詳しくなかったのかね。それを聞いてみると、獣族も獣人族も元は同じなんだとか。獣成分が強いかどうかで言い分けている。その為、種族の特徴は獣人族の説明と同じになる。
 そうすると半亜人はどうなるんだと聞いてみた。
 半亜人も同じなんだってさ。
 それならなんで差別されるんだろうな?

「それは匂いだね」
「いやいや、波長でしょ」

 と2つに別れた。
 どちらにも言えたのは、元種族の匂いや波長を2つ持ってて、それを感じ取っていると言う。
 なぜ差別されるのかと言うと、単純に優秀だからだそうだ。
 2種の特徴を併せ持つ為、才能に恵まれている。
 その為、自分達とは違うと区別が悪化していったという。

「そんなことがあったんだねー。南村の人達も苦労してたんだな」

 そう言うとみんなも興味を示し出した。

「そこの村はちょっと行ってみたいな」
「私も気になる」
「同じ苦労をしたのじゃ。何か助けになれば良いが」

 そこにタヌキ族のタルポがやってきた。

「あぁ! ここにいた! 探してたんですよ。屋台のことで聞きたいことがあるので、ちょっと来てください」
「呼ばれたから行ってくるねー」

 そう言いながらも、襟首を捕まれ引きずられる。

 ……
 …………

「おう、来たっすね」
「狐族の……」
「フォッコっす。相変わらず名前覚えるの苦手っすね。それよりも、ここの金属なんすけど」

 そういって屋台の付属品について聞いてきた。
 樽乗せ等、木材加工でなんとか出来る場所は良い。だが、金属部分や魔道具を使ってる場所は難しいという。
 俺も魔道具はわからないんだよな。
 ドワーフを引き込めたら良いんだが、森に住み込む物好きは見たことがないと言っている。
 パーツだけ外注するか、技術を教えてもらうしかないだろうな。

「獣族はこの国周辺だと煙たがられてるっす。村に売りに行く時も……」

 っぽん!
 と音をたてて、獣人族に変身した。

「こんな風に化けるっす」

 前に聞いた気はするけど、変化するのは初めて見た。

「すげぇぇぇ」

 思わず拍手する。

 全部の特徴を消すのは大変なので、基本は獣人に変化するらしい。長時間は難しいのと、見た目だけで感触はそのままな為、触れられるとわかってしまうという欠点がある。

「タヌキ族長のボンゴさんは、数週間変化してられるっすけど、村外の対応担当なので動かせないっす」
「じゃあ、外注するしかないよね」

 そう言って、蛇口を注文した時のことを伝えた。

「たまたま、魔法陣を描ける人がいたって、運が良いっす。しばらくは水壺か樽で代用して使うしか無いっすね」
「そんなぁ。せっかく馬車を改造できると思ったのに……」

 タルポが相当残念がってるが、どうしようも無いな。
 無理に誰かを街に行かせるわけにもいかないし。
 というか屋台あげるか?
 長距離移動には耐えられ無いし、良いかな?
 そう思ってるとオスクの目がウルウルしだした。

「だ、大丈夫だ。ちゃんとこいつも持って行くからな!」

 そう言うと屋台にしがみついて、クワクワ鳴き出した。
 そんなに大事なのかよ。
 しかし、旅のことを考えるとそのままってのもなぁ。

 するとタルポが察したのか、声をかけてきた。

「何か考え事ですか?」
「んー。この屋台が獣王国まで持って行って、壊れないか心配になってな?」
 くわわっ!
「しょうがないじゃん。元々の耐久力が無いんだし」
「そういうことなら村長に相談すると良いですよ。あの人は魔術も長けているので……ん! 村長ならこの水が出るのも作れるか!?」
「ぬおぉぉぉ! 早速聞きに行くっす!!」

 みんなで村長の家に向かう。

 ……
 …………

 くわっくわわ!
 くわくわ!
「ちょっと! 玄関前陣取らないで。」

「はいはい。お待たせ」

 ギィィ。

 くわわ!
「ん? ターさん所の鴨君だね。何か用?」
 くわーっくわ!
 くわわ!
「え? 移動する家が壊れそう?」
 くわぁ。くわくわ!
「長旅に耐えられて便利にねぇ? それならターさん出来たんじゃない?」

 村長がそう言うと、オスクが飛びかかってきた。

 くわぁ!?
「え? 何? 知らないよぉ!」
「ほらほら、あれだよ。前に種に保護かけてたでしょ。それと小さくするの」

 保存と縮小化の術か?

「確かに縮小化は使えるかも。でも、保存はダメだよ。あれは元の耐久力に依存するからね。これが新品ならまだ生命力もあったんだけど、中古だからなぁ」
 く、くぁ。
「あぁ。それなら私が元気にしてあげるよ。そういうのは得意なんだ」

 村長は屋台に近づいていく。

 一通り触って調べるとブツブツ呟き出した。

「ちょっと古いな。新しい芽がいるかもな」

 袖の中を探っていくつか種を取り出すと、屋台の土台に付けて魔法を放つ。

【ほーれほれ。育って枯れ木を元気にしてちょうだい】

 精霊が集まってきて、種に力を注ぎ込み始める。

【あっちもこっちも手伝って!魔力があるから遊びに来な】

 世界樹に居た精霊も寄ってきて、一緒に力を注ぐ。
 すると種が芽吹いて、大きくなる。
 それに釣られるように屋台の木材からも新芽が生える。

「おぉ! 久しぶりに村長の精霊術を見たけど、やっぱり凄いっす!」
「精霊語がわかれば、何言ってるか理解できるのですが」

 そうか、あれは精霊語か。
 言語覚えすぎて訳わからなくなってきたな。

「ほら。これでターさんでも強化できるよ」
「おう。お前かなり成長したなぁ」

 声をかけるとポン! という音と一緒にブドウが成った。
 お前どういう構造してるん?

「良い感じだね。多少もっさりしてるけど、雨漏りの心配も無いよ」
「こんだけ天井が茂ったら漏れないでしょうよ」

 一周見て回ったが、問題なさそうだな。

「ターさんも精霊語出来るんだからやってみたら?」
「え? 俺に出来るかな?」
「精霊語話しながら魔力を流すんだよ」
「じゃ、じゃあ」

 巾着からニンニクの種を取り出し、どこに植えようか迷ってしまった。

 キョロキョロ見回すと、空いてる大きめの鉢があった。
 それに植え付けて精霊語を話す。
 何て言ってたっけな。

【そいやそいや! 強く育て! せいやせいや! 精霊こっちゃこーい】

 すると周りの土から小さなおっさんが出てきた。
 よっ久しぶりと片手をあげて挨拶してくる。
 そして種に向かって、おもむろにシャドーボクシング。
 パンチしながら力を送ってるようだが、それで良いのか?

「え? 何その子達? 土の精霊ってもっと……そうそうあの子達みたいのだと思ってたけど」
「ここの精霊って、とんがり帽子で小人感があってかわいいよな。だが、俺が居たところの土精さんは、小さいおっさんだ」

 風精(羽虫)、水精、火精、場所によっては光闇雷。
 その他色々、みんな結構可愛いんだよ。
 だけど土精さんだけ、おっさんだ。

「しかし、このおっさん達が一番働き者なのも事実なんだよな」

 そう言うと仕事も終わったのか、額を手で拭いつつお互いにサムズアップ。
 そして土に溶けて行く。
 鉢に植えた種を見てみるが小さな芽が出ている程度。

「失敗したかな?」
「でも魔力量は半端ないよ」

 村長と顔を見合わせていると変化があった。
 芽が急激に太くなり球根の上部が顔を出す。

「大丈夫だったみた……」

 すぽん!

「「「「へ?」」」」

 鉢から球根が飛び出した。
 良くみると球根に顔がついており、目は一文字で口は文字通り口の形。
 そいつがブルブル震え出し一声あげる。

「マシマシ!」

 そう言うと、ぶっとい4本の根を足のように使って走り去ってしまった。

「ターさんは新種の魔物を作ってしまった」

 ……
 …………

「オスク。屋台が立派になって良かったな!」
 くわぁぁぁぁ!







 数十年後、元王国の領地に新種のトレントが出たと、騒ぎになったとかならなかったとか。
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