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4章 国の波乱
第64話 厩舎での一時
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探索者ギルドから、そのまま厩舎方面へ向かう。
「思ったより時間かかっちゃったな」
予想外の出来事に独り言も溢れてしまう。
街の雰囲気が違うだけで、新鮮な為、ついつい横道に外れそうになる。
まっすぐ厩舎へ向かうんだと、気合いを入れ直して再び歩き出す。
「おっちゃん。その香りなんだい?」
あぁ、好奇心には勝てなかった。
「良く気づいたな。こいつは帝国産の乾燥キノコだよ。見た目は良く無いんだが香りが良くてね」
「ほうほう。嗅いでみても良いかな?」
「悪いね。こいつはちょっとばかし高級品なんだ。切れっ端だから安い方なんだがね」
どうしようか、気になってしょうがない。
騙されても良いから少し買うか。
「じゃあ、金1だけとか買える?」
なんて言ってみるけど、少し悩んでいた。
「んー。このままじゃ買い手もなさそうだしなぁ。まぁ、特別に良いだろ。でも1じゃ少ないからな?」
そういって小指爪サイズのスライスされたキノコを5枚程、小さな巾着に詰めてくれた。
「あぁ、巾着じゃ香りが漏れるな。小瓶置いてある店知らない?」
「それなら3件隣の店にあるぞ。初の買い手だからな、こいつはおまけだ」
オレンジを放り投げてきた。
「サンキュー!」
買った小瓶に詰め直してみると、ちゃんと密閉できていた。
しかし、見た目も歪《いびつ》だし、シワシワだ。
ちょっと記憶にないやつだ。
眺めながら歩いていると厩舎に到着したようだ。
中に入ると2匹ともいる。
他の魔物と遊んでいるのか?
そう思っているとメサがブルブル震えてこっちに飛んできた。
「おぅ。どうしたメサ?」
そう声をかけたのだが、触手が伸びて小瓶を掴んでいる。
「それはダメだ! これだけで金1もするんだぞ!?」
そう言っても中々離さない。
こういう時は……。
反対の手で背嚢に手を突っ込み巾着を取り出す。
その中から一粒アレを取り出して。
「ほれ。これ何に見える?」
ブルブルブルブル。
「これを……取ってこーい!」
ピューンと飛んで行ったニンニクを取りに、今までに無いスピードで飛んでいく。
ついでに、何個か別方向に投げておく。
くゎくゎ。
とオスクもやれやれのポーズ。
お前もどこでそんなの覚えてるんだ?
「しかし、危険は去ったな。ふぅ」
「なぁにが『ふぅ。』やボケェ」
振り返るとカエデが居た。
「カエデか? 久しぶり、変わらず元気なようだね。」
「そう言う時は、美人になったね。くらい言わんかい!? あんたも変わらず冴えない顔しとんなぁ」
そんな呆れた顔しなくても良いじゃないか?
「メサが居たからな。あんたも居るのは分かってたわ。ところで、その魔鴨はあんたのか?」
「そうだよ。オスクって言うんだ」
「そうかそうか。最近ここも魔鴨が増えたんよ。そいつらと仲良うしとるから、同じとこかと思ってな」
話をしているとキール爺さんがやってきた。
「あぁ、いらっしゃい。オスク君も仲良くやってるよ。あっちの鴨達はベン君のだよ。知り合いなんだって言ってたよ」
「ベン達の子か。それで仲良いのね。こいつもブルーメンの森で見つけたんだよ」
そう言うとカエデが驚いていた。
「何や。あんたブルーメン行ってたのか? あっこ、めっちゃヤバいやんか?」
「今は犯罪都市なんだっけ? 街にはほとんど居なかったから、わかんないや」
「はぁ。ほんま使えんな? 久しぶりに戻ったんやから、もっと良い情報無いんか?」
そう言われてもなぁ?
「王国が無くなりそうとか?」
「アッホ。そんなんニールセンじゃ常識や!」
「そんな詳しく知りたいなら、もっと上の人に聞けば良いじゃん。ギルマスとか……役所のダインさんとか?」
そう言ったら止まってしまった。
「ノールさんは知り合いかも知れないですが、ダイン様は中々会えないお方ですよ」
「そうなの?」
「せやな」
おっと、この低い声は知らないぞ?
振り返ると大柄な髭男が居た。
「あんたがノールさんか。カエデが世話になっとる」
そう言って頭を下げてきた。
「父ちゃん! 仕事終わったんか?」
「ついさっきな。だが、夕方にはまた出んといかんのや」
「何や。たまには休めると思ったんだけどな」
「今は忙しい時期やからな。あと半年は動きっぱなしや」
カエデの親父さんは結構落ち着いた雰囲気だな。
とりあえず挨拶はしておこうか。
「初めまして。探索者のノールです」
「よう知っとる。カエデとベン君から聞いとるよ」
「ベン君は良く来てね。色んな人に声かけて魔物の話を聞いてるんだよ」
キール爺さんが教えてくれる。
ベン達も魔鴨も、ここでは評判が良く、徐々に顔が広くなってる。歳が近いせいか、カエデとも仲良くしており、たまに遊んでいるらしい。共通の知り合いということで、俺の名前がちょくちょく出ているとか。
人様の話題になる程、大層な人間では無いのでちょっと恥ずかしいな。
親父さんもその話を聞いてるので、俺のことを知っていたということだ。浮きクラゲを初めて従魔にした奴としてなら、前から話題に出たらしいが、俺個人の話題はここ最近だとか。
浮きクラゲの従魔だが、何人か出来ているようだ。だが、育成が面倒らしく、餌集めで苦労しているらしい。
メサもそうだが、基本的に毒を含む物を好んでいる。魔ネズミも生だと微量の毒が入っていたし、森でも毒草や毒持ちの生き物を好んでいた。
普通の食べ物も食べられないわけじゃないんだが、定期的に鮮度の良い毒物をあげないと勝手に逃げてしまうらしい。
「そういうわけで、浮きクラゲを飼い続けているのは、貴族や金持ちが数人だけですな。従魔としても優秀ですが、餌の問題と見た目の好みで、そこまで人気は無いのです」
「餌の問題が無ければ、俺も使うてみたいんやが」
「ニンニクじゃダメなの?」
「あれは、臭いだけで嫌がる者がおるからな。俺は好きなんだが」
「あれはアカン! あれ食うて帰った時は、臭うて臭うてかなわんわ!」
ニンニク布教の道遠し……。
メサが戻ってきた。
「そんなプルプルしても、これはダメだぞ!」
そう言って小瓶を隠す。
「それは何や?」
「せや! うちもそれを聞こうと思うとったんや」
「街で買ったキノコだよ。帝国産の高級のやつで、これだけで金1したんだよ」
そう言うと、2人して大口開けて呆けてしまった。
「私も見るのは久しぶりですが、帝国の毒キノコですな」
「え?俺毒キノコ買わされたの?」
「うっひゃ! あんたアホやな」
「いやいや、それは毒抜きした後だから大丈夫ですよ。長時間かけて毒抜きするから、どうしても高価になってしまうんだとか。味は特別ありませんが、香りが良くて少量ずつ使いましたな。もう30年も昔の話ですがね」
「それなら俺も知り合いに聞いたことある。シワ茸《たけ》やな。シワシワの見た目のキノコで毒持ちやけど、特殊な方法で毒抜きするとウマイて。そりゃ高価なわけや」
メサがちょこちょこ隙《すき》を狙ってくるので、躱しながら聞く。
「あんた意外と動けるんやね。腐っても探索者やな」
カエデはもっと言い方何とかならないのか。
毒舌持ちだからメサと相性は良さそうだな。
「あんた! 今失礼なこと考えとったやろ!」
「カエデ! お前の方が先に失礼しとるんや!」
親父さんが叱る。
「ちゃうねん! こいつノホホンとしとるから、そう見えてしまうんや! 本当はやる奴なんか? 知らんけど」
「ほんまお前は……。失礼しました」
最初からこんな感じだったしな。
「特に気にして無いですよ」
そういえばオスクはどこ行った?
「ところでオスクは?」
「あっこで仲間と変なポーズ決めとるで」
カエデが指す方を見てみると。
くわっ!
ビシッ
くぇぇぇ!
ビシビシッ
敬礼の練習をしている。
それならばしっかり見てやらないとな。
「オスク曹長! 出来はどうかな?」
くわ! くわわっくわ!
オスクが叫ぶと、魔鴨達が整列する。
オスクが頷いて一拍後に再度叫ぶ。
くわー! くわ!
ビシ! ビシ! ビシ! ビシ!
4匹の魔鴨は、気を纏った綺麗な敬礼をする。
「綺麗な30度、良い角度だ。オスク曹長は、少尉へ昇格とする! 正しい敬礼の普及に邁進されたし!」
くわっ!
ビシッ
「君達も二等兵から一等兵へ格上げだ」
くわー! ビシ
くわわ! ビシ
くえっ! ビシ
ぐぁ!ビシ
「よろしい。それでは君たちに新しい形を教えよう。これも相手に敬意を伝える時に使うのだ。『拱手《きょうしゅ》』オスは左羽で右羽を包む。メスは右羽で左羽を包むのだ」
そう言って見せてやる。
バシッ!
くえええ! っくわ!
バシバシバシバシバシッ!
「よろしい! 更に精進されたし!」
「あれは何やっとるんや?」
「だから言うたやろ? のほほんや。頭がお花畑なんや。たぶんベンも同じこと言うで?」
「ほっほっほ、中々面白いお方ですよ?」
「そうだ。カエデもダインさんに会いたいなら手紙書いてやるよ。【なんか聞きたいことあるようだから、聞いてあげて】っと。俺だって分かった方が良いよね。漢字で名前書くか。【高橋 実】っと。ついでにベンにもあげよう。サラサラリ」
書いたやつをはいと渡す。
「何やこれ? テキトーにも程があるやろ!」
「たぶん大丈夫だよー。ベンにも一枚渡しておいてあげて」
「まぁ、貰える物《もん》は貰っとく主義やからな。一応ありがとさん!」
「よ、良かったな?」
「植物性の紙とは珍しい。カエデちゃん良い物もらいましたな」
「お。そうなんか? へへ。キール爺さんの話なら信用できるわ」
俺が書いたんだけど……。
メサも良い加減諦めろよ。
今度食事に使ったら食わせてやると約束したら、なんとか落ち着いた。
最初から食い意地張ってたからな……。
浮きクラゲって食い意地悪い種族なんじゃ?
「さて、メサとオスク。明日出発するから、仲良い奴いたら挨拶しておいてね」
ぷるぷる。
くわ!
「思ったより時間かかっちゃったな」
予想外の出来事に独り言も溢れてしまう。
街の雰囲気が違うだけで、新鮮な為、ついつい横道に外れそうになる。
まっすぐ厩舎へ向かうんだと、気合いを入れ直して再び歩き出す。
「おっちゃん。その香りなんだい?」
あぁ、好奇心には勝てなかった。
「良く気づいたな。こいつは帝国産の乾燥キノコだよ。見た目は良く無いんだが香りが良くてね」
「ほうほう。嗅いでみても良いかな?」
「悪いね。こいつはちょっとばかし高級品なんだ。切れっ端だから安い方なんだがね」
どうしようか、気になってしょうがない。
騙されても良いから少し買うか。
「じゃあ、金1だけとか買える?」
なんて言ってみるけど、少し悩んでいた。
「んー。このままじゃ買い手もなさそうだしなぁ。まぁ、特別に良いだろ。でも1じゃ少ないからな?」
そういって小指爪サイズのスライスされたキノコを5枚程、小さな巾着に詰めてくれた。
「あぁ、巾着じゃ香りが漏れるな。小瓶置いてある店知らない?」
「それなら3件隣の店にあるぞ。初の買い手だからな、こいつはおまけだ」
オレンジを放り投げてきた。
「サンキュー!」
買った小瓶に詰め直してみると、ちゃんと密閉できていた。
しかし、見た目も歪《いびつ》だし、シワシワだ。
ちょっと記憶にないやつだ。
眺めながら歩いていると厩舎に到着したようだ。
中に入ると2匹ともいる。
他の魔物と遊んでいるのか?
そう思っているとメサがブルブル震えてこっちに飛んできた。
「おぅ。どうしたメサ?」
そう声をかけたのだが、触手が伸びて小瓶を掴んでいる。
「それはダメだ! これだけで金1もするんだぞ!?」
そう言っても中々離さない。
こういう時は……。
反対の手で背嚢に手を突っ込み巾着を取り出す。
その中から一粒アレを取り出して。
「ほれ。これ何に見える?」
ブルブルブルブル。
「これを……取ってこーい!」
ピューンと飛んで行ったニンニクを取りに、今までに無いスピードで飛んでいく。
ついでに、何個か別方向に投げておく。
くゎくゎ。
とオスクもやれやれのポーズ。
お前もどこでそんなの覚えてるんだ?
「しかし、危険は去ったな。ふぅ」
「なぁにが『ふぅ。』やボケェ」
振り返るとカエデが居た。
「カエデか? 久しぶり、変わらず元気なようだね。」
「そう言う時は、美人になったね。くらい言わんかい!? あんたも変わらず冴えない顔しとんなぁ」
そんな呆れた顔しなくても良いじゃないか?
「メサが居たからな。あんたも居るのは分かってたわ。ところで、その魔鴨はあんたのか?」
「そうだよ。オスクって言うんだ」
「そうかそうか。最近ここも魔鴨が増えたんよ。そいつらと仲良うしとるから、同じとこかと思ってな」
話をしているとキール爺さんがやってきた。
「あぁ、いらっしゃい。オスク君も仲良くやってるよ。あっちの鴨達はベン君のだよ。知り合いなんだって言ってたよ」
「ベン達の子か。それで仲良いのね。こいつもブルーメンの森で見つけたんだよ」
そう言うとカエデが驚いていた。
「何や。あんたブルーメン行ってたのか? あっこ、めっちゃヤバいやんか?」
「今は犯罪都市なんだっけ? 街にはほとんど居なかったから、わかんないや」
「はぁ。ほんま使えんな? 久しぶりに戻ったんやから、もっと良い情報無いんか?」
そう言われてもなぁ?
「王国が無くなりそうとか?」
「アッホ。そんなんニールセンじゃ常識や!」
「そんな詳しく知りたいなら、もっと上の人に聞けば良いじゃん。ギルマスとか……役所のダインさんとか?」
そう言ったら止まってしまった。
「ノールさんは知り合いかも知れないですが、ダイン様は中々会えないお方ですよ」
「そうなの?」
「せやな」
おっと、この低い声は知らないぞ?
振り返ると大柄な髭男が居た。
「あんたがノールさんか。カエデが世話になっとる」
そう言って頭を下げてきた。
「父ちゃん! 仕事終わったんか?」
「ついさっきな。だが、夕方にはまた出んといかんのや」
「何や。たまには休めると思ったんだけどな」
「今は忙しい時期やからな。あと半年は動きっぱなしや」
カエデの親父さんは結構落ち着いた雰囲気だな。
とりあえず挨拶はしておこうか。
「初めまして。探索者のノールです」
「よう知っとる。カエデとベン君から聞いとるよ」
「ベン君は良く来てね。色んな人に声かけて魔物の話を聞いてるんだよ」
キール爺さんが教えてくれる。
ベン達も魔鴨も、ここでは評判が良く、徐々に顔が広くなってる。歳が近いせいか、カエデとも仲良くしており、たまに遊んでいるらしい。共通の知り合いということで、俺の名前がちょくちょく出ているとか。
人様の話題になる程、大層な人間では無いのでちょっと恥ずかしいな。
親父さんもその話を聞いてるので、俺のことを知っていたということだ。浮きクラゲを初めて従魔にした奴としてなら、前から話題に出たらしいが、俺個人の話題はここ最近だとか。
浮きクラゲの従魔だが、何人か出来ているようだ。だが、育成が面倒らしく、餌集めで苦労しているらしい。
メサもそうだが、基本的に毒を含む物を好んでいる。魔ネズミも生だと微量の毒が入っていたし、森でも毒草や毒持ちの生き物を好んでいた。
普通の食べ物も食べられないわけじゃないんだが、定期的に鮮度の良い毒物をあげないと勝手に逃げてしまうらしい。
「そういうわけで、浮きクラゲを飼い続けているのは、貴族や金持ちが数人だけですな。従魔としても優秀ですが、餌の問題と見た目の好みで、そこまで人気は無いのです」
「餌の問題が無ければ、俺も使うてみたいんやが」
「ニンニクじゃダメなの?」
「あれは、臭いだけで嫌がる者がおるからな。俺は好きなんだが」
「あれはアカン! あれ食うて帰った時は、臭うて臭うてかなわんわ!」
ニンニク布教の道遠し……。
メサが戻ってきた。
「そんなプルプルしても、これはダメだぞ!」
そう言って小瓶を隠す。
「それは何や?」
「せや! うちもそれを聞こうと思うとったんや」
「街で買ったキノコだよ。帝国産の高級のやつで、これだけで金1したんだよ」
そう言うと、2人して大口開けて呆けてしまった。
「私も見るのは久しぶりですが、帝国の毒キノコですな」
「え?俺毒キノコ買わされたの?」
「うっひゃ! あんたアホやな」
「いやいや、それは毒抜きした後だから大丈夫ですよ。長時間かけて毒抜きするから、どうしても高価になってしまうんだとか。味は特別ありませんが、香りが良くて少量ずつ使いましたな。もう30年も昔の話ですがね」
「それなら俺も知り合いに聞いたことある。シワ茸《たけ》やな。シワシワの見た目のキノコで毒持ちやけど、特殊な方法で毒抜きするとウマイて。そりゃ高価なわけや」
メサがちょこちょこ隙《すき》を狙ってくるので、躱しながら聞く。
「あんた意外と動けるんやね。腐っても探索者やな」
カエデはもっと言い方何とかならないのか。
毒舌持ちだからメサと相性は良さそうだな。
「あんた! 今失礼なこと考えとったやろ!」
「カエデ! お前の方が先に失礼しとるんや!」
親父さんが叱る。
「ちゃうねん! こいつノホホンとしとるから、そう見えてしまうんや! 本当はやる奴なんか? 知らんけど」
「ほんまお前は……。失礼しました」
最初からこんな感じだったしな。
「特に気にして無いですよ」
そういえばオスクはどこ行った?
「ところでオスクは?」
「あっこで仲間と変なポーズ決めとるで」
カエデが指す方を見てみると。
くわっ!
ビシッ
くぇぇぇ!
ビシビシッ
敬礼の練習をしている。
それならばしっかり見てやらないとな。
「オスク曹長! 出来はどうかな?」
くわ! くわわっくわ!
オスクが叫ぶと、魔鴨達が整列する。
オスクが頷いて一拍後に再度叫ぶ。
くわー! くわ!
ビシ! ビシ! ビシ! ビシ!
4匹の魔鴨は、気を纏った綺麗な敬礼をする。
「綺麗な30度、良い角度だ。オスク曹長は、少尉へ昇格とする! 正しい敬礼の普及に邁進されたし!」
くわっ!
ビシッ
「君達も二等兵から一等兵へ格上げだ」
くわー! ビシ
くわわ! ビシ
くえっ! ビシ
ぐぁ!ビシ
「よろしい。それでは君たちに新しい形を教えよう。これも相手に敬意を伝える時に使うのだ。『拱手《きょうしゅ》』オスは左羽で右羽を包む。メスは右羽で左羽を包むのだ」
そう言って見せてやる。
バシッ!
くえええ! っくわ!
バシバシバシバシバシッ!
「よろしい! 更に精進されたし!」
「あれは何やっとるんや?」
「だから言うたやろ? のほほんや。頭がお花畑なんや。たぶんベンも同じこと言うで?」
「ほっほっほ、中々面白いお方ですよ?」
「そうだ。カエデもダインさんに会いたいなら手紙書いてやるよ。【なんか聞きたいことあるようだから、聞いてあげて】っと。俺だって分かった方が良いよね。漢字で名前書くか。【高橋 実】っと。ついでにベンにもあげよう。サラサラリ」
書いたやつをはいと渡す。
「何やこれ? テキトーにも程があるやろ!」
「たぶん大丈夫だよー。ベンにも一枚渡しておいてあげて」
「まぁ、貰える物《もん》は貰っとく主義やからな。一応ありがとさん!」
「よ、良かったな?」
「植物性の紙とは珍しい。カエデちゃん良い物もらいましたな」
「お。そうなんか? へへ。キール爺さんの話なら信用できるわ」
俺が書いたんだけど……。
メサも良い加減諦めろよ。
今度食事に使ったら食わせてやると約束したら、なんとか落ち着いた。
最初から食い意地張ってたからな……。
浮きクラゲって食い意地悪い種族なんじゃ?
「さて、メサとオスク。明日出発するから、仲良い奴いたら挨拶しておいてね」
ぷるぷる。
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