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4章 国の波乱
第61話 ニールセンの変化
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俺たちは、翌朝早めに動き出した。
日が上る前に準備を済ませ、日の出とともに出発する。
昨日言ったから挨拶も良いかな?
なんて考えていたんだが、見送りに待ってたらしい。
「早く出るって、分かってたにゃ!」
イアさん達もミーア達も、森の前で待ってたようだ。
「そんなに気を使わなくても良いのにさ」
ちょっと恥ずかしいな。
とか考えていたんだが……。
「そんなことより、ベンに伝言お願いします」
そんなことは無かった。
「オーインから?」
「ミーアからでも、どっちでも良いですよ。一度戻って来て欲しいってだけですから」
「それくらいなら受けても良いよ」
「じゃあ、お願いします」
その後の別れもさっぱりしていた。
イアさんなんて、「そのうち戻ってくるのじゃろ。はよ行け」
なんて言う始末だ。
いざ、と出発したが、2日目も午前中には着いてしまった。
オスクのおかげで、移動が早くて助かるな。
「次のやつ、前へ」
門番に呼ばれてギルド証を確認してもらう。
この人見たことある気がするなぁ。
「ノール? 久しぶりだなぁ」
「あ、やっぱり知ってる門番さんだったか」
「お前が初めて街に来た時もオレだったんだよ」
「なるほど、よく覚えてましたね」
「名前だけな。発音が面白かったから印象に残ってるんだ」
そう言いつつも門番さんはギルド証の確認を続けている。
心なしか、周りの人のチェックも厳しくなってるか?
「よし。入って良いぞ。街は雰囲気変わってるけど、お前は大丈夫だろう」
意外と早かったと思ってると、横から暴言が聞こえてきた。
「オレらはこんなに時間かかってるのに、なんであいつは早えんだよ!!」
俺を指で指して怒っている。
そっちの門番も俺を見て、
「んー? あまり見かけない奴だけど……。そっちの早かったようだけど、大丈夫かぁ?」
こっちの門番に声かける。
「こいつはこの街の探索者だから良いんだよー!こいつが草取りだから覚えとけよー」
「そいつがかー。わかった。ということだから、問題なし。お前のチェックは続けるぞ」
「あいつ最近来たから、お前のこと知らないんだよ。出入りするなら早めに覚えてもらうと良いぞ」
「はぁ、わかりました。では失礼します」
軽くお辞儀して進む。
「おっと、言い忘れてた!」
去り際に話しかけられる。
「ようこそ。『ニールセンしょうこく』へ」
自慢げに言ってニヤリと笑っている。
「しょうこく? まぁいっか」
何をするにしても、2匹を一度厩舎に預けないとね。
オスクなんて屋台引っ張っているし。
「厩舎に行くよ」
プルプル。
くわっ。
ここの厩舎は変わりないようだ。
そこで見知った顔を見つけた。
「キールさん! 久しぶり!」
「1年ぶりですかな? お元気そうでなにより。そっちも元気かい?」
プルプル!
「そちらはお初ですかな? キール爺と呼んでくださいな」
くわっ!
「こいつはオスクって名前です」
「オスク君、よろしく。ちょっと前に魔鴨連れた子達が来たから、仲良くなれると良いねぇ」
ベン達の子かな?
見回してもいないから、今は仕事中かな?
「2匹ともお願いできますか?」
「構わんよぉ。カエデちゃんも会いたがってたから、喜ぶね」
カエデともしばらく会ってないなぁ。
その前にやることやっとくか。
「じゃあ用事があるので行ってきます。明日には一回顔見せに来るからね」
プルプルプル。
くわっく!
大通りに出ると、懐かしい街並みが……。
ちょっと違うなぁ。
前はもっと若々しい感じだったけど、レトロ感が増した?
散策しようかと考えていると、ノーリに出会《でくわ》した。
「ノール! やっと来おったか! すぐにダイン様の所に行くぞ!」
「わわ! そんな急かさなくても……」
「ずいぶんと待っとったんじゃ! それに後にすると、お主は忘れるからの」
腕を引っ張って、いつもの場所へ向かう。
と思ってたんだが、違った。
見慣れていたんだけど、縁が無かった門。
「ここって上街じゃない? ダインさん上街にいるの?」
「そうじゃ。ダイン様は、今やこの国の上役になったからの」
「え? そんなにお偉いさんなの? また今度に……」
「そんなわけ行くか! ほれ! はよう歩け!」
門まで行くと衛兵に止められる。
「身分証を見せてください」
全身甲冑の門兵に声をかけられた。
「ほれ」
「はい」
2人して見せると通してくれた。
「そっか、俺中級になったんだっけ」
「やっとか。儂とトーマスはあの後すぐ昇格したぞ」
「えぇ? 早いなぁ。俺なんてつい最近だよ?」
「お主のは級で考えても意味無いからのぅ。それより行くぞ」
急かされて着いたのは、落ち着いた雰囲気の大きな館だ。
中に入ると、大きなエントランスがある。
「ノーリ殿。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付にいた執事服を着た男が、俺たちを見つけると声をかけてくる。
「ダイン様に頼まれてな。こいつが来たら会わせに来いとな」
「どうも7級探索者のノールです」
「確認させて来ますので、あちらのソファでお寛ぎください」
壁際にある毛皮が掛かったソファに案内された。
「ダインさんって、親方じゃなかったの?」
「親方も兼ねておる。役人になったのは、人手不足じゃな」
「大変だねぇ」
10分程軽く旅先の話をしていると、今度は上質な服の青年に声をかけられる。
「お待たせしました。ダイン様のところへ案内します」
そう言ってゆっくりと歩き出した。
その後を着いていくと、部屋がいくつもある。
部屋に出入りする人達を見ると、種族はバラバラなようだ。
「改めて思うけど、この街は亜人種が多いよね」
「亜人にとって、住みやすいからなぁ」
「それでも獣族は少なめだけどね」
「今まではな。これからは入りやすくなるぞ」
そんな話をしていると着いたようだ。
「ダイン様、ノール様を案内してきました」
「入ってくれ」
「どうぞ」
青年が扉を開けてくれる。
「失礼しまーす」
ダインさんは仕事机を前に座っており、いかにも役人のようなビシっとした服を着ていた。
「久しぶりじゃな。というかお前に連絡するのは苦労したぞ」
「はぁ、それはご迷惑?おかけしました」
「それはもういいわい。それより……どこじゃったか」
机の横にあった箱を、ガサゴソと探り出し、1枚のカードを取り出した。
「これじゃ! ほれ!」
そう言って、俺に放り投げてくる。
「ちょ! おっと。金属製?」
ピカピカ光っているが、魔力がありそうだ。
「この国の通行許可証じゃ」
「ほぅ? 許可証?」
獣王国に行くと知ってたのかな?
「ダイン様。こいつわかっとらんぞ?」
「だろうな。門で言われなかったのか? ここは『ニールセン小国』じゃと」
「言われましたよ? いつの間にか微妙に名前が変わってるなと」
そう俺が言うと、2人してため息をつく。
「良いか? ニールセンはスーメルグ王国から独立したんじゃ! 国に変わったこともあって、やることが増えた。だから儂が役人までやっとるんじゃ」
「え? ここの国になったの? 出世したってことかな?おめでとうございます」
「全くめでたくない! 王国が滅ぶから仕方なくじゃ! とりあえず、帝国と聖教国に使者を送って認めさせた。それが3ヶ月前くらいか」
「へぇ。じゃあ王国全体がニールセンになるんですか?」
「いや、ニールセン周辺だけじゃな。帝国も聖教国も新たな土地が欲しいから、奪うまで止められんのじゃ。ちなみにブルーメンも半独立国じゃな。あそこを狙っても、うま味が少ないからのぉ」
この国は、◺二等辺三角形をしており、90度が左下。
その90度端っこにブルーメン。
その上にニールセンがある。
端っこ2つの都市程度が残っていても、気にならないのだろう。
南の山側や西の海側には、魔物が多く住みづらくなっている。
「ニールセンには儂らの長命会があるからの。それなりに顔は広いんじゃ。攻めても消費がデカイから、うまく使った方が得だと思ったんじゃろ」
「なるほどねー」
「ダイン様だけじゃなく、他の方々も何かしらの役職についておる。おかげで儂も使いっ走りで大忙しじゃわい」
「悪りぃとは思うが、もうちょっとだけ手伝ってくれい。もうすぐ、2国から返礼の使者が来る。それまでは仮だからのう」
話を続けていたら、突然ノックされる。
「誰じゃ? まだ、前の客がおるが」
「失礼します。帝国から伝令がきました」
「早いのう。待たせられるか?」
「それが、もう……」
そう言いかけた所で『ズバン!』と扉が勢いよく開く。
「ノール。こっちじゃ」
ノーリに壁際へ引っ張られ、床に座らされる。
「ダイン殿! いきなりですまんな! だが、私は待つのが嫌いなんだ。はっはっは!」
日が上る前に準備を済ませ、日の出とともに出発する。
昨日言ったから挨拶も良いかな?
なんて考えていたんだが、見送りに待ってたらしい。
「早く出るって、分かってたにゃ!」
イアさん達もミーア達も、森の前で待ってたようだ。
「そんなに気を使わなくても良いのにさ」
ちょっと恥ずかしいな。
とか考えていたんだが……。
「そんなことより、ベンに伝言お願いします」
そんなことは無かった。
「オーインから?」
「ミーアからでも、どっちでも良いですよ。一度戻って来て欲しいってだけですから」
「それくらいなら受けても良いよ」
「じゃあ、お願いします」
その後の別れもさっぱりしていた。
イアさんなんて、「そのうち戻ってくるのじゃろ。はよ行け」
なんて言う始末だ。
いざ、と出発したが、2日目も午前中には着いてしまった。
オスクのおかげで、移動が早くて助かるな。
「次のやつ、前へ」
門番に呼ばれてギルド証を確認してもらう。
この人見たことある気がするなぁ。
「ノール? 久しぶりだなぁ」
「あ、やっぱり知ってる門番さんだったか」
「お前が初めて街に来た時もオレだったんだよ」
「なるほど、よく覚えてましたね」
「名前だけな。発音が面白かったから印象に残ってるんだ」
そう言いつつも門番さんはギルド証の確認を続けている。
心なしか、周りの人のチェックも厳しくなってるか?
「よし。入って良いぞ。街は雰囲気変わってるけど、お前は大丈夫だろう」
意外と早かったと思ってると、横から暴言が聞こえてきた。
「オレらはこんなに時間かかってるのに、なんであいつは早えんだよ!!」
俺を指で指して怒っている。
そっちの門番も俺を見て、
「んー? あまり見かけない奴だけど……。そっちの早かったようだけど、大丈夫かぁ?」
こっちの門番に声かける。
「こいつはこの街の探索者だから良いんだよー!こいつが草取りだから覚えとけよー」
「そいつがかー。わかった。ということだから、問題なし。お前のチェックは続けるぞ」
「あいつ最近来たから、お前のこと知らないんだよ。出入りするなら早めに覚えてもらうと良いぞ」
「はぁ、わかりました。では失礼します」
軽くお辞儀して進む。
「おっと、言い忘れてた!」
去り際に話しかけられる。
「ようこそ。『ニールセンしょうこく』へ」
自慢げに言ってニヤリと笑っている。
「しょうこく? まぁいっか」
何をするにしても、2匹を一度厩舎に預けないとね。
オスクなんて屋台引っ張っているし。
「厩舎に行くよ」
プルプル。
くわっ。
ここの厩舎は変わりないようだ。
そこで見知った顔を見つけた。
「キールさん! 久しぶり!」
「1年ぶりですかな? お元気そうでなにより。そっちも元気かい?」
プルプル!
「そちらはお初ですかな? キール爺と呼んでくださいな」
くわっ!
「こいつはオスクって名前です」
「オスク君、よろしく。ちょっと前に魔鴨連れた子達が来たから、仲良くなれると良いねぇ」
ベン達の子かな?
見回してもいないから、今は仕事中かな?
「2匹ともお願いできますか?」
「構わんよぉ。カエデちゃんも会いたがってたから、喜ぶね」
カエデともしばらく会ってないなぁ。
その前にやることやっとくか。
「じゃあ用事があるので行ってきます。明日には一回顔見せに来るからね」
プルプルプル。
くわっく!
大通りに出ると、懐かしい街並みが……。
ちょっと違うなぁ。
前はもっと若々しい感じだったけど、レトロ感が増した?
散策しようかと考えていると、ノーリに出会《でくわ》した。
「ノール! やっと来おったか! すぐにダイン様の所に行くぞ!」
「わわ! そんな急かさなくても……」
「ずいぶんと待っとったんじゃ! それに後にすると、お主は忘れるからの」
腕を引っ張って、いつもの場所へ向かう。
と思ってたんだが、違った。
見慣れていたんだけど、縁が無かった門。
「ここって上街じゃない? ダインさん上街にいるの?」
「そうじゃ。ダイン様は、今やこの国の上役になったからの」
「え? そんなにお偉いさんなの? また今度に……」
「そんなわけ行くか! ほれ! はよう歩け!」
門まで行くと衛兵に止められる。
「身分証を見せてください」
全身甲冑の門兵に声をかけられた。
「ほれ」
「はい」
2人して見せると通してくれた。
「そっか、俺中級になったんだっけ」
「やっとか。儂とトーマスはあの後すぐ昇格したぞ」
「えぇ? 早いなぁ。俺なんてつい最近だよ?」
「お主のは級で考えても意味無いからのぅ。それより行くぞ」
急かされて着いたのは、落ち着いた雰囲気の大きな館だ。
中に入ると、大きなエントランスがある。
「ノーリ殿。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付にいた執事服を着た男が、俺たちを見つけると声をかけてくる。
「ダイン様に頼まれてな。こいつが来たら会わせに来いとな」
「どうも7級探索者のノールです」
「確認させて来ますので、あちらのソファでお寛ぎください」
壁際にある毛皮が掛かったソファに案内された。
「ダインさんって、親方じゃなかったの?」
「親方も兼ねておる。役人になったのは、人手不足じゃな」
「大変だねぇ」
10分程軽く旅先の話をしていると、今度は上質な服の青年に声をかけられる。
「お待たせしました。ダイン様のところへ案内します」
そう言ってゆっくりと歩き出した。
その後を着いていくと、部屋がいくつもある。
部屋に出入りする人達を見ると、種族はバラバラなようだ。
「改めて思うけど、この街は亜人種が多いよね」
「亜人にとって、住みやすいからなぁ」
「それでも獣族は少なめだけどね」
「今まではな。これからは入りやすくなるぞ」
そんな話をしていると着いたようだ。
「ダイン様、ノール様を案内してきました」
「入ってくれ」
「どうぞ」
青年が扉を開けてくれる。
「失礼しまーす」
ダインさんは仕事机を前に座っており、いかにも役人のようなビシっとした服を着ていた。
「久しぶりじゃな。というかお前に連絡するのは苦労したぞ」
「はぁ、それはご迷惑?おかけしました」
「それはもういいわい。それより……どこじゃったか」
机の横にあった箱を、ガサゴソと探り出し、1枚のカードを取り出した。
「これじゃ! ほれ!」
そう言って、俺に放り投げてくる。
「ちょ! おっと。金属製?」
ピカピカ光っているが、魔力がありそうだ。
「この国の通行許可証じゃ」
「ほぅ? 許可証?」
獣王国に行くと知ってたのかな?
「ダイン様。こいつわかっとらんぞ?」
「だろうな。門で言われなかったのか? ここは『ニールセン小国』じゃと」
「言われましたよ? いつの間にか微妙に名前が変わってるなと」
そう俺が言うと、2人してため息をつく。
「良いか? ニールセンはスーメルグ王国から独立したんじゃ! 国に変わったこともあって、やることが増えた。だから儂が役人までやっとるんじゃ」
「え? ここの国になったの? 出世したってことかな?おめでとうございます」
「全くめでたくない! 王国が滅ぶから仕方なくじゃ! とりあえず、帝国と聖教国に使者を送って認めさせた。それが3ヶ月前くらいか」
「へぇ。じゃあ王国全体がニールセンになるんですか?」
「いや、ニールセン周辺だけじゃな。帝国も聖教国も新たな土地が欲しいから、奪うまで止められんのじゃ。ちなみにブルーメンも半独立国じゃな。あそこを狙っても、うま味が少ないからのぉ」
この国は、◺二等辺三角形をしており、90度が左下。
その90度端っこにブルーメン。
その上にニールセンがある。
端っこ2つの都市程度が残っていても、気にならないのだろう。
南の山側や西の海側には、魔物が多く住みづらくなっている。
「ニールセンには儂らの長命会があるからの。それなりに顔は広いんじゃ。攻めても消費がデカイから、うまく使った方が得だと思ったんじゃろ」
「なるほどねー」
「ダイン様だけじゃなく、他の方々も何かしらの役職についておる。おかげで儂も使いっ走りで大忙しじゃわい」
「悪りぃとは思うが、もうちょっとだけ手伝ってくれい。もうすぐ、2国から返礼の使者が来る。それまでは仮だからのう」
話を続けていたら、突然ノックされる。
「誰じゃ? まだ、前の客がおるが」
「失礼します。帝国から伝令がきました」
「早いのう。待たせられるか?」
「それが、もう……」
そう言いかけた所で『ズバン!』と扉が勢いよく開く。
「ノール。こっちじゃ」
ノーリに壁際へ引っ張られ、床に座らされる。
「ダイン殿! いきなりですまんな! だが、私は待つのが嫌いなんだ。はっはっは!」
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