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3章 国内小旅行。

第45話 王都観光

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 とりあえず歩き出したは良いけど、道がわからんなぁ。
 従魔ギルドで見たい場所を聞いておけば良かった。
 近くの屋台で探索者ギルドを聞いてみた。

「探索者ギルドなら北門の方だよ。ギルド関係は北門側にあるからね」

 親切な男だ。
 ついでに串焼きを2本買って、食べながら歩く。
 魔ウサギとか言ってたな、シンプルな塩味だけど旨味が強い。
 魔物肉って美味しいのが多いのかね?
 ちょうど2本目を食べ終える頃に、見慣れた靴のナイフのマークが見えてきた。

 やっぱり王都のギルドはでかいんだな。
 ニールセンの3倍くらいは大きそうだ。
 中に入ってみると、受付の数が多い。
 どこに行けば良いかわからない、と思ってると声をかけられた。

「ここは初めてか? 他の街から? それとも登録?」

 若めの金髪細マッチョ男。
 整った顔立ちで自信が見える。

「他の街からきました。登録は済ませてるんですけど、受付が多くて……」
「それなら右手の受付で一度ギルド証を出すと良い。依頼は下級は1階、中級は2階は同じだ。じゃあな」

 手を振って行ってしまった。

「ありがとうございます!」

 聞こえたかな……。
 難聴系の人じゃないことを祈る。
 さっそく言われた受付に行くか。

「すみません。ニールセンから来ました。ノールです」
「受け付けます」

 ギルド証をカウンターで隠れている何かにかざすと返してくれた。
 いつも思うんだが、何をしてるのかな?

「ようこそ王都へ。9級のノールさんで合っていますね?」
「はい」
「失礼ですが、ずいぶん前に8級昇級試験の許可が出ていますよ?」

 ん? 初耳だな。

「いえ。知りませんでした。ここ最近来てなかったからかな?」
「こちらでも受けられますがどうしますか?」
「いつ頃できますか?」
「8級ならこれからでも可能ですよ」

 なんと早いことだ。
 市場をみたかったけど、早めに済ませてしまおうかな。

「ではお願いします」
「そちらの椅子でしばしお待ちください」

 後ろの椅子を指される。
 座って5分もすると、試験監らしき人がやってきた。

「待たせたな。北門から森に向かって、動きをみる。今日中に問題なく薬草3種を拾えれば合格だぁ」

 鬣《たてがみ》がもっさりしてる。
 獅子人族かな? 初めて会ったかも。

「今日初めて王都に来たので、森の方向がわかりません」
「そうか……。森は門出たら見えるし、俺も行くから問題はない。しかし、来て初日に試験かよ。やめとくかぁ?」
「んー。知ってる人がいるなら、試験代払ってもお得なのかな?受けておきます」
「そういう考えもありかぁ。基本口出しはしない。ギブアップなら言ってくれぃ」

 北門を出ると、奥に森が見えた。
 1時間かからずに到着したので近かった方かな?
 この森に着いてすぐに分かったが、人に管理された森だな。
 森の手前の草場を触ってみると、あちこち手入れがされている。
 心配なく森に入るとすぐに魔物の気配がある。
 一足飛びに木に登り、監督と様子を見ると、スモールスネークだった。他にもコッコ、フォレストモールなど基本無害なものばかり。
 一応、敵対しそうな反応はいくつかあるが、縄張りや風向きを見るだけで簡単に躱せる奴だ。
 俺の知る薬草もたくさんあったが、試験通り良くある3種だけ取ってくる。

 帰り道で気になったことを監督に話してみる。

「王都の森ってどこもあんなに安全なんですか?」
「ほんとは試験終わるまで言わないんだが、お前は良いだろう。あの森は特別でなぁ」

 昔はあの森で死者がいっぱい出ていたらしい。それでも、ここらでは一番危険度が低かった。だが、森に行ける人材が全く育たないので、兵士も巻き込んで整備したと言う。
 探索者の8級も王都レベルが基準なので、他の街は少し厳しいくらいなんだとさ。他国も同様だと言っている。

「俺は、バートってんだぁ。6級の探索者だぁ。よろしく」

 戻ったらすぐに合格を貰えた。
 これで俺も8級だな。

「ノールよぅ。今度俺のパーティーと遺跡行ってみようやぁ」
「俺はまだ8級ですよ? 迷惑じゃありませんか?」
「邪魔にならないと思ったから誘ってるんだぁ。知らない奴と初遺跡よりはマシだろう」
「そうですね。では、お願いします」
「1週間程、他の依頼があるから、早くてその後だなぁ」
「では、その位にギルドに来ますね」
「今日と同じくらいの時間にいてくれぃ。じゃあなー」

 去り際もあっさりしていて付き合いやすい人だな。
 それを見ていた受付が話しかけてきた。

「良かったですね。王都の結構有名なパーティーの人なんですよ」

 なるほどなって感じ。

「やっぱりそうですよね。とても良い動きしてましたもんね」

 話している時にふと思い出した。
 薬の調合を知りたいんだった。
 薬師ギルドはやっぱり上街だったので、せめて薬屋で完成品を見てみよう。

「すみません。薬屋ってどこにありますか?」

 ……
 …………

 王都南側の中央あたりに綺麗な建物がある。
 この近辺は街並みも綺麗だけど、ここはガラスをふんだんに使っていて、警備員も多い。

「ここが王都1番の薬屋か」

 大きな扉を開けて入る。

「「いらっしゃいませ」」

 うお!
 店で待ち受けられるとデジャブが……。
 軽く会釈して歩いて行く。
 中はかなり広いな。
 陳列棚に丁寧に並べられていて見やすい。
 ガラスケースに入ってるのは高級品かな?
 いくらだろう……大金貨8枚!?
 見たこともないよ。
 陳列棚の方は、安くても金貨1枚かぁ。
 買える人少ないんじゃないか?
 とか思ってると話しかけられた。

「何かお探しでしょうか?」

 中肉中背のカイゼル髭、ちょっと成金っぽい。

「いえ。薬草を取ってるものでして。完成品を見ておきたかったんです」
「ほほう。よろしければ薬草を見せていただいても?」

 店の人かな?

「失礼かと思いますが、こちらの店員の方ですか?」
「これは申し遅れました。一応この店の店主を勤めています」
 
 店主だったか。
 それならばと奥に案内され、薬草を見せる。

「なるほど、この位の薬草ですと我が店では扱っていませんね。もう少し高級な薬草なら買取できるのですが」
 
 そうだろうなとは思ってた。

「私も先ほどそう思いました。念の為と思ってのことです。ご迷惑おかけしました」

 丁寧に返すと驚いていた。
 あまり丁寧に話す売主はいないのか、それなりに好印象だったようだ。
 帰りに小指の先ほどのビンに金1の薬を入れて譲ってもらった。
 お礼を言って、良い薬草が取れたら来ると社交辞令を言う。

 悪い店では無いのだろうな。
 だが、これからも関わりは薄いだろうなぁ。

 


 西門の方に市場があったので巡ってみる。
 この雰囲気は好きだなぁ。
 香辛料も色々見つけたが、やっぱり名前がわからん。
 今までもそれっぽい名前を当てつけていたが、もしかしたら違うのかな?
 クミンやオールスパイス系の香りなんだが……。
 色々呼び方はあるけど、聞いてみるとどれとも違う。
 香辛料で使うから問題無いんだけどね。
 ハーブ類も豊富にある。
 ロールというハーブがローズマリーと似ていた。
 良くみると俺が持ってる薬草を置いてる出店もあった。
 薬屋が買いに来ることもあるとか、他にも薬屋あるのか?
 訪ねてみると、わざわざ南側に行かなくても北側にあったらしい。
 受付さん……。

 
 

 北側の薬屋に到着。
 建物が古くて蔦が絡まってる。
 ここまで古めかしくする必要も無いと思うんだけどね。
 店内に入ると薬草の匂いが漂ってくる。

「ぃらっしゃい」

 ひぇ! 妖怪!
 机に突っ伏してるし!
 完全に髪で顔が隠れているし!
 変なモヤかかってるし!
 怪しすぎだろ!?

「好きに見てって」

 静かに頷く。

 ふむふむ。
 一番安いので大銅貨2枚ね。
 あっ。これ胃薬じゃないか?
 何の薬かもはっきり書いてあるし、わかりやすくて良いね。
 一番高いのが銀貨3枚『下級ポーション』。
 ポーションってなんだ?

 色々見て回ってると、店主が起き出した。

「ふぃー。二日酔い辛いわぁ」

 そう言って小瓶を飲み干した。

 んー。角生えてるから、サグの同族かな?
 とりあえず、そのモヤやめろや。

「んー。お客さん買い物?」

 さっきも似たようなこと聞かれたな。前の薬屋と同じことを返すと、同じパターンに入った。

「この薬草買うよー。綺麗に処理してあるから、全部で銀2枚ね。はい」

 そう言いながら渡される。
 まだ売るとは言ってないんだが、まぁいいか。

「あっちの高級店はねー。魔法薬しか扱ってないから高いのよ。ポーションよポーション」

 なんとポーションというのが魔法薬という。魔力有りの薬草が高価だから、自然と値段も上がってしまうらしい。最高級品になると病気から手足の欠損まで直すとか。
 ほとんど出回らないらしいけどな。
 俺も調合したいなーと、チラチラ言ってみる。

「あたしは作ってないから教えられないよ?」

 お前できねーのかよ!? ただの店主か!
 思わせぶりな格好とかしてるなよ!
 思いっきり魔女じゃねーか!

「この服?あたしの趣味よー」

 何このガッカリ感。

「でも、今度作ってる奴に聞いても良いわよー?」

 ここで流れが変わった。

「3日後くらいにまた来てみてー」

 あまり期待せずに待つか。
 そろそろ戻ろう。
 どこにって厩舎だ。
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