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3章 国内小旅行。

第44話 馴染みの街と再出発

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 ブルーメンの街でアリエルさんは見つからなかった。
 街中は一見静かに見えるが、裏路地には生気の無い人体がいくつも転がっている。
 こんな怖い街は早めにおさらばするに限る。
 長命会に一度謝罪しないといけないな。
 ついでに、門番から薬をくれと言われたので、帰りに詰所で売ってきた。
 もう持ってないよー。
 もっと欲しかったら鴨に乗ってる子供と交渉してくれ。

 ちなみに森から出る時に、大きめの魔鴨が一匹ついてきた。
 お前は最初に捕まえた奴だっけ、なんか怒ってるんだよね。
 使役状態になってるしなぁ。

「一緒に来るなら名前をつけるか」

 そう言ったら機嫌が良くなった。
 鴨にしては足がしっかりしてるし、ダチョウっぽい。
 オストリッチとダックでオスクだ!

「クワァー!」

 ふふっ。羽を広げて喜んでるのか?
 とにかく一度ニールセンに戻って、長命会に謝らないと。

「メサとオスク! 向こうの街に行くぞー」

 ニールセンまではオスクに乗って2日で帰れた。
 道よりも検問が時間かかったなぁ。
 ニールセンの探索者だったからマシだった方かもしれない。
 俺の斜め前に並んでた奴はもっとかかりそうだったよ。

 戻ったらオスクの従魔登録をしないと。
 魔鴨は珍しくも無いので、さらさらと終わったよ。
 次は長命会。
 ダインが入り口で待ってた。

「お前が戻ったと聞いて待っておった。さっそく行くぞ」

 先導してくれる。
 いつもの部屋にたどり着くと知らないエルフがいるな。

「どうも初めまして?」

 プリプリと怒っている。
 なんで怒ってるの?

「はぁ。あっ。この手紙返しますね。ブルーメンの街にアリエルさんいなかったんですよ」
「あたしがアリエルよ! もっと早く来なさいよ! ってか森にいる子供達なんなのよ? 警戒心強すぎ!」
「そんな一気に言われましても……」
「まぁ、ゆっくり聞きましょう。食べ物も用意しましたよ。」

 ペトラさん優しい。

 ケッツに街道で絡まれた話から始めた。
 丁寧に話したつもりだったが、ちょこちょこ質問が入るな。
 

 ……
 …………


「それで、やっとこ戻ってきたわけです」
「……ふむ。なんとも災難じゃったな」
「そうねー。でも、早めにアリエルの所に行った方が、便利だったと思うよー?」

 アルゲンさん。そういうのは早めに言って欲しい。
 いや、言われていたか?

 渡した手紙に街での便宜を図るように書かれていたようだ。
 ちょっとはマシかもしれないけど、あの街の様子じゃ焼石に水だったかもなぁ。
 小言を言われる程度で済んで良かった。

「次はどこへ行くんじゃ?」

 おや。また出かけるのわかりますか?

「聖教国の香辛料が気になってるんですが、王都も捨てがたい。南の山越えも良さそうですし」
「聖教国は最近きな臭いから、先に王都行けばー? 山越えは戻ってこない人ばっかりよー?」
「アルゲンさんがそう言うなら、王都から行ってみようかな」

 次は王都だな。
 あと意味が無かったと、手紙はもう渡されなかった。


 長命会から孤児院へ行く。
 謎の木が気になってたんだよね。
 シスターもお変わりなく、マーガレット先生も居着いているみたい。
 ジャンは卒業して探索者になったそうだ。
 そして謎の木。

「おぉ!? お前は桃だったのか!」

 見事に小ぶりな桃。
 これは品種改良が必要だな。
 良い感じに熟れてるから子供達と食べてしまおう。
 ちょい酸味が強めで、桃とすももの中間みたいだな。
 種はいくつか保存して持っていこう。

「残りは好きにしていいよ。この木も頼むな」

 さて、王都に行くぞー!
 プルプル!
 クワァー!

 ……
 …………




 王都まで馬車で2週間とは知らなかった。
 今回は護衛無しだぞ?
 前みたいに変なのに当たったら困るからな。

「おっさん従魔士なのか?」
「すみません! こら、失礼だろう。お兄さんと言いなさい」

 10歳に満たない少年が話しかけ、その母親らしき人が謝ってきた。

「別に気にしませんよ。従魔士ではあるぞ」

 従魔士の仕事したこと無いけどな。

「すげー! どうやったら従魔にできるんだ!?」

 そんなこと聞かれてもなぁ。

「俺も良くわかってないんだよ。人を襲わない魔物と仲良くなれば良いのかな? 従魔ギルドで聞いてみたらどうだ?」
「失礼かと思いますが、仕事の種を教える人は少ないんです。」

 母親が返してきた。
 そうなのか……。

「お前達はなんで従魔になったんだ?」

 2匹に聞いてみる。

「クァ。クワック!」
 プルプルブルブル。

「そうだった。お前らは食い物に釣られてたな。好きな食べ物だって言ってるぞ。」
「しゃべれるのか! すげー! おれもさがす!」

 喜んでるが、母親が心配そうだ。

「そうかー。それなら先輩からのアドバイスだ」
「うんうん」

 真剣に聞いてるな。

「魔物のほとんどは危険だ。人を襲う奴も多いんだ」
「うへぇ」
「だから勉強するんだ! 魔物に詳しくなって、自分も周りも守れるようにな」
「べんきょうする!」

 後ろで母親が頷いている。俺の答えは正解だったらしい。


 ……
 …………


 今回の馬車は良いねー。
 何事もなく、のんびり旅。
 村2つと小街1つを過ぎた。
 どっちも特筆すること無い所だったな。
 あとは村→小街→村→王都だな。
 うん。なげぇ。
 あと10日くらいかぁ。

 次の村に行く途中、止まっている馬車を見つけた。
 御者が事情を聞くと、乗客が腹痛《はらいた》で動かせないと言う。
 御者同士だから助けたいが、専門じゃないからわからない。
 と話しているので声を掛ける。

「腹痛程度なら見れるぞ? 様子を見せてくれ。」

 見てみると、腹を押さえている。
 症状が軽めの人に食べたものを聞いてみると、毒草のあたりがついた。

「その毒なら時間で治るが、場所がなぁ」

 次の村まで半日程度らしいので、腹痛を弱める薬草を噛ませる。

「こいつは痛みを和らげる効果がある。噛み続けて飲み込むなよ」

 1枚ずつ渡す。

 1時間くらいで動けるようになったので、同乗して進み出した。
 それから3時間程かかったが、なんとか村に到着する。

「あとは下して毒を出すから、水は多めにとっておきな」

 弱めの漢方を渡して自分の方の馬車へ戻って行く。

「薬も詳しいのですか?」

 母親に聞かれる。

「もともと植物を調べるのが好きでしてね。自然と覚えたんですよ」
「にいちゃんすげー!」
「こっちは素直に自慢できるかもな」

 笑ってやった。

 残りの道で子供が植物にも興味を示したので、道草で教えてやった。
 わかりやすい薬草と毒草、食べれる草も結構ある。
 なかなか物覚えが良い。
 これなら探索者の簡単な採取はできるかもな。
 その後は特に何事もなく王都へ到着した。

 しかし、何でまた俺は何回も門で止められるんだろうな。

「おい。従魔持ちはこの門じゃないぞ! あっちだ」

 指された方はかなり遠く2km先くらいに見える。
 仕方なく向かうが、オスクに乗ればすぐだ。

「次。魔鴨と……浮きクラゲ! お前が草取りか!? いや。すまんな」

 なぜかテンション高めだ。

「まぁ。そう言われることもありますね……」
「従魔士は新しい噂が届くの早いからな、この界隈だと結構有名だぜ?」
「おい。早く受け付けと説明してやれよ。待たせちゃ可哀想だろー」

 合いの手、助かった。

 木簡《もっかん》を渡されて説明を受ける。
 王都内には、騎士団以外の従魔は持ち込めないようになっている。
 俺の従魔も、しっかりと石壁に囲まれた巨大な厩舎に、預けられることになった。
 貴族の厩舎とは別なので、基本的に絡まれることは無いが、珍しい魔物は見にくることもあると言う。
 俺は知っている。
 そういうのをフラグって言うんだ。

「いや、その浮きクラゲの情報は回ってるんだよ。捕獲方法もね」
「だからそのうち増えるんじゃないかな? 今は少ないだけさ。貴族も見にくるだけだと思うぞ」

 教えてもらった情報は助かる。
 とりあえず知らずにビクビク過ごすということは無さそうだな。

 厩舎は食の好みごとにいくつも分かれており、全部で何棟あるかわからないな。
 併設のギルドで登録して、1泊銀貨3って高いな。
 仕方ないので預ける。

「良い子にしてろよー!」

 くわっ!
 ぷるぷる。
 お前の方が心配だと言ってるようだ。

「ちょっと市場見てくるだけだって。あと王都の探索者ギルド。どんな依頼かも気になるね」

 城の大きさも半端ないけど、城下町も広いなぁ。
 ブルーメンも大きかったけど、倍以上の広さはありそうだ。
 完全におのぼりさんだな。

___________________
___/          \____
|○/ ⇦厩舎     \  |
 /              \
       ______
      |      |
      |   城□ |
      |______|

 \              /
| \            /  |
___\          /___」
___________________

 王都は正方形を2つ重ねたように城壁で守られています。
 その中に、他の街と同じように上街があります。
 ○飛び出した角に厩舎があるイメージです。
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