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3章 国内小旅行。

第39話 新しい日記帳、変わらず不定記

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 先生がいなくなった時が5月のことだ。
 その3ヶ月前、街に到着しているから、2月頃からニールセンに居るのかな。

 その後、新しい日記帳をサグから貰ったので、また書いていこうと思う。
 この日記帳だが、なんと紙製だ。
 サグの住んでる国には少量だが生産できるようで、少し誇らしそうだ。
 価格は気にするなと言っていたが、そこそこ高価なのだろう。
 保存術を掛けながら大事に使いたい。

 王国歴290年6月1日
 月の始めでキリが良いので、今日から書こう。
 代わりの先生に来てもらったが、俺は変わらず魔力が使えなかった。
 孤児達に教えているのを横で聞いていたので、色んな魔法を見れて良かったけどね。
 魔力操作の魔法はメサで見てるから分かってるつもり。
 なので詠唱する魔法が面白く見えた。
 声に魔力を乗せているようなんだが、歌のように独特なメロディーを奏でながら、言葉を紡いでいくんだ。
 俺は歌が下手みたいで、それだけで向いていないと言われてしまったよ。
 下水は奥に行くとゾンビがまた見つかったそうだ。
 またしばらく俺の手から離れるな。

 6月9日
 孤児達の棒がやっと揃った。
 まさか30本も作るとは思っていなかったので、武器屋に素材が無かったんだ。
 ちなみに武器屋はマーカスさんに教えてもらった場所だ。
 初日なので、構えと中段突きだけしか教えてない。
 というか、2ヶ月はこれで良いんだけどな。

 6月15日
 孤児達がもう突きに飽きたらしい。
 下段突きを教えて終わりだ。
 魔法の練習は飽きて無いんだけどなぁ。

 7月5日
 勝手に振り下ろしを練習してた子が棒を折ってしまった。
 頑丈じゃないから仕方ない。
 泣いていたが安物なので気にしなくてもいいんだよな。
 武器屋に行くと5本程予備があったので買っておく。
 ついでに30本注文しておく。
 何気にクワとピッチフォークの柄にも使ってるんだよね。

 7月10日
 ふと畑を見た時に、香辛料を増やしたくなった。
 街に出て、店に置いてある物を探してみるが、あまり種類が多く無いな。
 胡椒、唐辛子、シナモンに似た物はあったが、ハーブ類は壊滅的だな。
 胡椒なんぞ高過ぎて手が出ないぞ?
 畑も巡って、無かったら森で採取するか……。

 8月
 畑は唐辛子だけ見つけられたが、他のやつは輸入品という話で見つからない。
 唐辛子農家とは仲良くなって、畑仕事も手伝ってきた。
 シシトウと唐辛子系の2種を育てていて、辛味を増やす方法を考える。
 確かリン酸をどうにかすると辛くなるんだよな……。
 骨粉でも撒いてみようかと、畑の一画で試作をしている。
 北森に向かったが、思ったよりハーブ類が多かったな。
 ミントとレモングラス、バジルが見つかった。
 こいつらは勝手に増えるから、食べる分と種を持って帰る。
 メサと出会った海辺の森にも行ったぞ。
 そこで見つけたのはウコンとシナモンの木!
 シナモンも粉しか置いて無かったから、ここら辺の人は気づいてないのかもしれないな。
 これらを持ち帰って、早速植える。
 俺とメサの成長促進付きの高立地だぜぇい!

 10月
 ここらへんは年間通して温か目の気候だった。
 亜熱帯系の植物も良く育つが、土に栄養を与える必要があるな。
 そんなことを考えていたが、街中では限界を迎えたので困った。
 シスターにもその話をしていると、孤児院を卒業した子が農家をやっていると聞いた。
 しかも、土地が空いていれば貸してくれるかもしれないという。
 今はその話待ちかな。
 植えたハーブの繁殖力がすごい。
 ここのところ毎日ハーブばっかりで飽きてきたが、運良く売ってるオリーブを発見。
 これで食が広がる。
 種も植えて増やすのを忘れない。

 11月
 ノーリとトーマスが、それなりに気を感じられるようになった。
 思っていたより早かった。
 次は賦活を教えながら気の操作を覚えてもらう。
 農家からはまだ返事は無い。
 下水の状況についてだが、セルジオさんから時折情報が入ってくる。
 最近になって更に下層が発見された。
 正直この街の人たちは自分の街を知らな過ぎじゃないか?
 他にも地下道とかあるんじゃなかろうか。
 下水路の入り口で魔ネズミは狩っているが、そろそろメサがネズミに飽きてきた。
 他の魔物を探さないといけないかな。

 12月
 寒くなってきたが、そこまででは無いかな。
 作務衣の上に一枚着ればなんとかなる程度。
 孤児達の棒術もそれなりの形になってきたので、組手を始めた。
 ごくごくゆっくりと、突く方、棒を使って払う方の2人組で行う。
 少しずつ早くしていくが、これも時間かかるかな。
 ここでは年末年始は静かに過ごすらしく、聞いた話でも質素なものだった。
 その2日を過ぎたらすぐに働き出す。

 王国歴291年2月
 卒業した農家から連絡があった。
 今まで空いてなかったが、農家1組が移転したようで、かなりの空き地が出るようだ。
 その場所を孤児院の所有にして良いとの話だ。
 懐の大きな話だと思っていたら、例の唐辛子農家が口添えしてくれたらしい。
 代わりに、育てている野菜類を他の農家に分けることで、領主の許可が降りたとか。
 大事になって無いなければ良いんだがなぁ。
 久しぶりにキアヒとテンコに会った。
 話してみると最近8級に昇格したそうだ。
 俺らの中じゃ一番若いのに、最初に抜けたな。
 2人とも謙遜しているが、出世頭がそれじゃいかんな。
 と言うと謙遜してないと言っている。
 お祝いにニンニクパーティーを勧めたが断られた。
 遠慮までしなくても良いのにな。
 とりあえず海辺の森で見つけた光石をあげる。
 松明よりは薄いが熱源無く光るので便利だぞ。

 4月
 孤児達の動きも様になってきたので、ここらで足捌きを教える。
 俺が教えるのはここまでかな。
 あとは自分に会ったやり方を覚えてくれぃ。
 畑に農作物を移動し終わった。
 孤児院に残しているのは各種少量ずつと貰った果物かな。
 唐辛子農家さんと話ている時に教えてもらったんだが、孤児院に農地を渡すのは都合が良かったんだとか。
 孤児がそのまま農家になってくれるし、食料もある程度浮くだろうと言う打算で領主が乗っかって来たらしい。
 あとで聞いた農家達も寝耳に水だったようだ。
 移動した作物については、孤児と交渉して交換するように言っておいた。
 ちなみに辛めの唐辛子は出来ずに、甘いシシトウが出来上がった。
 解せぬ。

 6月
 マーガレット先生が戻ってきた。
 誇らしげに魔力を流そうとしたが、前と同じだ。
 それでも笑顔で頷いているのがわからん。
 それよりも、先生が言ってた食べ物の話が気になったな。
 南の街に独特な香りの料理があり、王都には他国の辛い料理があるとか。
 俺が育てていたハーブ類も充実してきたので、近所に振る舞ったら好評だったしな。
 香り系はもっと欲しい。
 醤油が無いことも気づいた。
 豆類は見かけているんだよな。
 他の街を巡って、無かったら作らないとな。
 米は無い。
 小麦もある。
 スパゲティの太いのやら平たいのはあるが、中華麺は無い。
 考え出したら止まらないや。
 思い立ったが吉日と、周りの人に出かけることを伝えよう。

 7月
 思ったより引き止められ、依頼をこなしていた。
 他にできる人はいないのだろうか?
 それも2週間程で区切りがついたので、やっと行ける。
 まずは南の街かなぁ。
 ブルーメンの街と言う城塞都市らしい。
 ペトラさん、ダインさん、アルゲンさんの連名で手紙を預かった。
 届け先は道具屋のアリエルさんね。
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