上 下
9 / 165
1章 修行不定期

第8話 閑話 ある国家公務員の話

しおりを挟む
 私の名前は森野敬《もりのたかし》。林野庁に所属している公務員だ。
 上司に言われて、ある山の調査を始めた。それがきっかけで高橋氏と繋がりを持つことが出来た。

 高橋氏と初めて会った時は、冴えない顔だと思ったが、存在感は異様に大きく感じていた。
 ちなみに高橋氏には当初から官僚と言われていたが、まだまだ下っ端だった。隣にお偉いさんがいたから勘違いしたのだろう。その時、陸将とも知己を得たことで、新しい課の出世コースに乗って万々歳。
 山守り管理課は少人数で始めたが、農林系の部から最低一人ずつ配属さるようになり、今ではそれなりの規模になっている。
 山守りの仕事は多い。山林の最低限の間伐、害獣調査、生物調査。他にも遭難救助や近隣住民との情報共有がある。それに加えて、小屋作りも行っていた高橋氏は超人の成せる体力だろう。


 高橋氏と仕事して1年もすると、本当に天狗じゃないかと思い始めてきた。なんでこの人は1ヶ月飯も水も取らずに瞑想出来るのか。寝ずに山中を見回ったり、私を担ぎながら追いかけてきた熊から逃げ切るなど……。この人基準にしたら、誰も山守りできないぞ。
 なので、山守りは数名体制を提唱している。新しい課長には、代わりのいない高橋氏には、最大限の希望の考慮と昇給を伝えた。

 ここ最近は全国を飛び回り、なかなか疲れが取れない。うちの課はそれなりに人数いるはずなのに、他の課との合同調査やら報告やらが多くて、体がいくつあっても足りないのだ。私はまだ良い方かもしれない。統計の奴は、高橋氏の新しい調査報告の書類を見るたびに発狂している。なぜか高橋氏の文字はスキャニング出来ないんだ。外部に回せない情報も多くて、我が課だけで読み込むことになる。最近の奴の口癖は「もじもじもじもじもじ……。」人員増加を望む。

 久しぶりに高橋氏に会った。しばらく中国へ行くという話だ。前々から聞いていたので、それに合わせて私も長期休暇を申し出ている。そろそろダウンしそうだったので、本当に助かる。
 ついでに高橋氏の親戚の子が山守りを目指しているというので、我が部署に来ないかと声かけしておいた。ここ数年で高橋氏の機密情報がかなり増えたので、親類の確保は前々から言われていたのだ。

 帰り際に渡された塗り薬だが、塗ってから自宅に帰ると、妻にしつこく詰め寄られて半分渡してしまった。最初は訝しんでいたが、数日後には「肌の調子が良い」と上機嫌になり、もっと寄越せとねだってくる。作った人は海外に行っているので、国の機密でもう手に入らないと言って、諦めてもらった。




 最近、夫婦共に見た目が若返ったせいか、仲が良い。子供も生まれて、昇進もした。高橋氏に貰った薬のお陰だろうか?ははっ、まさかな。ただ縁起物でもあるから、あの小さなケースは大事にとってある。彼が日本に帰ってきたら、盛大に祝おう。そして子供を抱いてもらおう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

最弱能力「毒無効」実は最強だった!

斑目 ごたく
ファンタジー
 「毒無効」と聞いて、強い能力を思い浮かべる人はまずいないだろう。  それどころか、そんな能力は必要のないと考え、たとえ存在しても顧みられないような、そんな最弱能力と認識されているのではないか。  そんな能力を神から授けられてしまったアラン・ブレイクはその栄光の人生が一転、挫折へと転がり落ちてしまう。  ここは「ギフト」と呼ばれる特別な能力が、誰にでも授けられる世界。  そんな世界で衆目の下、そのような最弱能力を授けられてしまったアランは、周りから一気に手の平を返され、貴族としての存在すらも抹消されてしまう。  そんな絶望に耐えきれなくなった彼は姿を消し、人里離れた奥地で一人引きこもっていた。  そして彼は自分の殻に閉じこもり、自堕落な生活を送る。  そんな彼に、外の世界の情報など入ってくる訳もない。  だから、知らなかったのだ。  世界がある日を境に変わってしまったことを。  これは変わってしまった世界で最強の能力となった「毒無効」を武器に、かつて自分を見限り捨て去った者達へと復讐するアラン・ブレイクの物語。  この作品は「小説家になろう」様にも投降されています。

ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです

一色孝太郎
ファンタジー
 前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。  これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。 ※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します ※本作品は他サイト様でも同時掲載しております ※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ) ※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

実家が没落したので、こうなったら落ちるところまで落ちてやります。

黒蜜きな粉
ファンタジー
ある日を境にタニヤの生活は変わってしまった。 実家は爵位を剥奪され、領地を没収された。 父は刑死、それにショックを受けた母は自ら命を絶った。 まだ学生だったタニヤは学費が払えなくなり学校を退学。 そんなタニヤが生活費を稼ぐために始めたのは冒険者だった。 しかし、どこへ行っても元貴族とバレると嫌がらせを受けてしまう。 いい加減にこんな生活はうんざりだと思っていたときに出会ったのは、商人だと名乗る怪しい者たちだった。 騙されていたって構わない。 もう金に困ることなくお腹いっぱい食べられるなら、裏家業だろうがなんでもやってやる。 タニヤは商人の元へ転職することを決意する。

ワタシ悪役令嬢、いま無人島にいるの。……と思ったけどチート王子住んでた。

ぷり
ファンタジー
私の名前はアナスタシア。公爵令嬢でいわゆる悪役令嬢という役回りで異世界転生した。 ――その日、我が学園の卒業パーティーは、豪華客船にて行われていた。 ――ですが。  もうこの時点でお察しですよね。ええもう、沈みましたとも。  沈む直前、ここにいるヒロイン、クソ王子withその他攻略対象の皆さんに私は船上で婚約破棄イベントで断罪されていた。 その最中にタコの魔物に襲われて。これ乙女ゲームですよね? そして気がつけば見知らぬ無人島。  私はそこで一人の青年に出会うのです。 ネタバレすると10年前に行方不明になった第一王子だったんですけどね!!  ※※※  15Rですが品がない方面に舵を切ってますので、何でも許せる方向け予定です。  下品系が許せない方はご注意ください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...