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新たな出発
小さい奴ら
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「まったく。暴走した時はどうしたことかと思ったけど、結果良ければ全てよし」
「ぷゅーん」
ヤマトを撫でるとツルツルして冷たい感触がある。
一息入れてから先へと続く穴へ入って行く。
壁沿いに触れながら進んでいくと、とうとう足下すら見えないほどの闇に包まれてしまった。
「まずいな。先に松明取り出しておけばよかった」
ヤマトの機械的な足音は聞こえているので近くにいることはわかる。
その点は安心しているが、正確な位置はわからない。
「ヤマト。一応周囲に敵対生物がいないか警戒していてくれ」
ゆっくりとした足音を耳に入れつつカバンを探っているが、手探りだけだとどれが松明かわからない。
さらに火打石か他の鉱石かもわからない。
「おっかしぃなー。アイテムの名前表示を切ったつもりないんだけど……松明あった! あとは火だけなんだけど」
「ぷゅーん」
その後もブツブツと呟きながらカバンを探っていると、後ろからクイックイッと服を引っ張られる感覚があった。
「ヤマト。何かあった?」
警戒音は出してないので、敵がきたわけじゃないはずだとカバンを探り続ける。
それでも引っ張ることは止めない。
後ろを見ようと振り返る前、わずかに離れたところから機械的な足音がかすかに響いてくる。
となれば後ろで引っ張っているのは誰だ?
恐る恐る首だけを捻る。
見えたのは服の裾を掴んだ白い手。
明らかにヤマトじゃない!
「ぎゃぁぁぁああああああ!」
怖くなって思いっきり駆け出してしまった。
「や、ヤマト! たすけてぇぇぇええええ!」
洞窟の壁に頭をぶつけ、肩を擦り付けても足を止められない!
まだ掴まれたままだ!
「早く離れてくれー!」
「ぷゅーん! ぷっぷぷぷ」
腰元から聞こえる異音など気にしている余裕はない!
「ぷぷ?」
「ぷ、ぷゅーん」
「ぷぷう!」
全方位から異音が攻めてきた!
「こ、これが四面楚歌……や、ヤマトー! あ、灯りは!?」
ボッボッボッと小さな火が灯り出し、壁だけでなく天井まで点々とゆらめく光。
「お……おぉぉぉお、鬼火じゃぁぁぁあああああ! 百鬼夜行じゃぁぁぁあああ! 助けてエビスさまぁぁぁぁあああ!」
腰が抜けて立てない。
しかも、徐々に近づいてくる鬼火とともにずんぐりとした白い妖怪が迫ってきている。
「もはやここまでか……なむさん」
目を瞑って待ってみても、一向に終わりが来ない。
そうなると、はっきり敵を見たいという好奇心が勝ってしまった。
取り囲まれた火に照らし出された敵は、デフォルメされた小さな人間みたいな見た目をしている。
「な、なんだお前ら。敵じゃないのか?」
「ぷぷぷーん」
何言ってるのかわからん。
小人みたいだな。
「ぷっぷぷゅーん」
「何言ってるのかわからないけど、敵じゃなさそうだな。脅かすなよ」
全力で走った上に、あちこち体をぶつけて体力も残りわずかだ。
仰向けになって寝ていると、ズリズリと何かを引きずる音が近づいてきた。
「新手か!?」
「ぷぷ!?」
「ぷーぷーぷー!」
小人どもと一緒に警戒していると、音の正体が見えてくる。
「な、なんだ。ヤマトか……荷物ありがとね」
点滅する目で「どういたしまして」と返事していることがわかる。
「ぷぷーん」
「おぉ。君もありがとう」
「ぷゅーーん」
「うん。全然わからない」
こっちの言葉がわかってるみたいだから良いけど、全く通じなかったら大変だったな。
とにかく今のうちに松明を灯そう。
明かりを点けている間に、小人とヤマトが遊び始めてしまった。
代わりばんこでヤマトに騎乗して楽しむ小人。
見てて面白いけど、そろそろ外に出る方法を……会話できる人でもいないかな。
「ねえねえ。小人くん」
「ぷぷ?」
「会話できる人いない? えっと……精霊言語かな」
「ぷぺ!」
よしよし。
この反応は何か知ってるな。
周りの小人たちにも伝え終われば案内してくれるだろう。
様子を見ていたら、なぜか議論らしきものが始まってしまった。
いるのかいないのか、それか何箇所もあってどにに連れていくかで言い合っているのか。
どちらにしても時間はかかりそうだな。
ちょっと横になっていようか。
……
…………
ゆさゆさと揺られる感覚で目を開けると天井が見える。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「んー……ん!?」
体が動かない!
がっちりと石で固められた体が見える。
「なんじゃこりゃー!」
「ぷゅゆーん」
「ぷぷーん」
相変わらず何を言ってるかわからんが、ギリギリ目の端に捉えられる小人どもは楽しそうに担いでいる。
何を?
俺しかいないでしょ!
「は、はなせー! やめろー! やめるんだー! 繝弱�繝�!」
全然うごかねぇ!
力もかなり上がってるはずなのに、どんな材料使ってやがるんだ。
「は……な……せぇ!」
「ぷぷぅーん」
「ぷーんじゃない! 開放しろぉ!」
ぷーんぷーん騒ぎながら楽しそうに運ばれてると、原始人に狩られたマンモスの気持ちに寄り添えそうになってきた。
「はっ!?」
まさか俺を食うつもりか?
まずいまずい!
「ヤマトォォォオオオオ! 助けてくれぇ!」
動かない。
これじゃダメなのか!?
だったら別の言葉で。
「何て伝えれば……ん? 止まった?」
なんだか聞き覚えのある轟音が耳に入ってくる。
首を捻ってもに見えない地面が恐ろしい。
チラリと視界に入るのは、先ほどとは比べものにならないほどの大きな穴。
「ぷぅーん」
「あっ」
ふわりと浮かぶ体に、カシっと俺の上に着地したヤマトの顔が見える。
「ぷゅーん」
ヤマトを撫でるとツルツルして冷たい感触がある。
一息入れてから先へと続く穴へ入って行く。
壁沿いに触れながら進んでいくと、とうとう足下すら見えないほどの闇に包まれてしまった。
「まずいな。先に松明取り出しておけばよかった」
ヤマトの機械的な足音は聞こえているので近くにいることはわかる。
その点は安心しているが、正確な位置はわからない。
「ヤマト。一応周囲に敵対生物がいないか警戒していてくれ」
ゆっくりとした足音を耳に入れつつカバンを探っているが、手探りだけだとどれが松明かわからない。
さらに火打石か他の鉱石かもわからない。
「おっかしぃなー。アイテムの名前表示を切ったつもりないんだけど……松明あった! あとは火だけなんだけど」
「ぷゅーん」
その後もブツブツと呟きながらカバンを探っていると、後ろからクイックイッと服を引っ張られる感覚があった。
「ヤマト。何かあった?」
警戒音は出してないので、敵がきたわけじゃないはずだとカバンを探り続ける。
それでも引っ張ることは止めない。
後ろを見ようと振り返る前、わずかに離れたところから機械的な足音がかすかに響いてくる。
となれば後ろで引っ張っているのは誰だ?
恐る恐る首だけを捻る。
見えたのは服の裾を掴んだ白い手。
明らかにヤマトじゃない!
「ぎゃぁぁぁああああああ!」
怖くなって思いっきり駆け出してしまった。
「や、ヤマト! たすけてぇぇぇええええ!」
洞窟の壁に頭をぶつけ、肩を擦り付けても足を止められない!
まだ掴まれたままだ!
「早く離れてくれー!」
「ぷゅーん! ぷっぷぷぷ」
腰元から聞こえる異音など気にしている余裕はない!
「ぷぷ?」
「ぷ、ぷゅーん」
「ぷぷう!」
全方位から異音が攻めてきた!
「こ、これが四面楚歌……や、ヤマトー! あ、灯りは!?」
ボッボッボッと小さな火が灯り出し、壁だけでなく天井まで点々とゆらめく光。
「お……おぉぉぉお、鬼火じゃぁぁぁあああああ! 百鬼夜行じゃぁぁぁあああ! 助けてエビスさまぁぁぁぁあああ!」
腰が抜けて立てない。
しかも、徐々に近づいてくる鬼火とともにずんぐりとした白い妖怪が迫ってきている。
「もはやここまでか……なむさん」
目を瞑って待ってみても、一向に終わりが来ない。
そうなると、はっきり敵を見たいという好奇心が勝ってしまった。
取り囲まれた火に照らし出された敵は、デフォルメされた小さな人間みたいな見た目をしている。
「な、なんだお前ら。敵じゃないのか?」
「ぷぷぷーん」
何言ってるのかわからん。
小人みたいだな。
「ぷっぷぷゅーん」
「何言ってるのかわからないけど、敵じゃなさそうだな。脅かすなよ」
全力で走った上に、あちこち体をぶつけて体力も残りわずかだ。
仰向けになって寝ていると、ズリズリと何かを引きずる音が近づいてきた。
「新手か!?」
「ぷぷ!?」
「ぷーぷーぷー!」
小人どもと一緒に警戒していると、音の正体が見えてくる。
「な、なんだ。ヤマトか……荷物ありがとね」
点滅する目で「どういたしまして」と返事していることがわかる。
「ぷぷーん」
「おぉ。君もありがとう」
「ぷゅーーん」
「うん。全然わからない」
こっちの言葉がわかってるみたいだから良いけど、全く通じなかったら大変だったな。
とにかく今のうちに松明を灯そう。
明かりを点けている間に、小人とヤマトが遊び始めてしまった。
代わりばんこでヤマトに騎乗して楽しむ小人。
見てて面白いけど、そろそろ外に出る方法を……会話できる人でもいないかな。
「ねえねえ。小人くん」
「ぷぷ?」
「会話できる人いない? えっと……精霊言語かな」
「ぷぺ!」
よしよし。
この反応は何か知ってるな。
周りの小人たちにも伝え終われば案内してくれるだろう。
様子を見ていたら、なぜか議論らしきものが始まってしまった。
いるのかいないのか、それか何箇所もあってどにに連れていくかで言い合っているのか。
どちらにしても時間はかかりそうだな。
ちょっと横になっていようか。
……
…………
ゆさゆさと揺られる感覚で目を開けると天井が見える。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「んー……ん!?」
体が動かない!
がっちりと石で固められた体が見える。
「なんじゃこりゃー!」
「ぷゅゆーん」
「ぷぷーん」
相変わらず何を言ってるかわからんが、ギリギリ目の端に捉えられる小人どもは楽しそうに担いでいる。
何を?
俺しかいないでしょ!
「は、はなせー! やめろー! やめるんだー! 繝弱�繝�!」
全然うごかねぇ!
力もかなり上がってるはずなのに、どんな材料使ってやがるんだ。
「は……な……せぇ!」
「ぷぷぅーん」
「ぷーんじゃない! 開放しろぉ!」
ぷーんぷーん騒ぎながら楽しそうに運ばれてると、原始人に狩られたマンモスの気持ちに寄り添えそうになってきた。
「はっ!?」
まさか俺を食うつもりか?
まずいまずい!
「ヤマトォォォオオオオ! 助けてくれぇ!」
動かない。
これじゃダメなのか!?
だったら別の言葉で。
「何て伝えれば……ん? 止まった?」
なんだか聞き覚えのある轟音が耳に入ってくる。
首を捻ってもに見えない地面が恐ろしい。
チラリと視界に入るのは、先ほどとは比べものにならないほどの大きな穴。
「ぷぅーん」
「あっ」
ふわりと浮かぶ体に、カシっと俺の上に着地したヤマトの顔が見える。
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