ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

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日本初イベント大会

開始前のひととき

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 天幕から出て緊張を解かれると、周りからヤジが飛んでくる。

「いつものおっチョコチョイが出てたな」
「ミングスさんカッコ良かった?」
「生エミリーちゃんは?」

 うっせ。

「ミングスさんめちゃカッコよかったし、エミリーちゃんは可愛かった! だけど生じゃないだろ!」
「そりゃそうだ」

 やることもやったし、あと1時間くらいは空いてるから他のマップも見回ってみるか。
 イベント会場本営の近くのポータルで各地をパッと見てきたが、どこもよく作り込まれている。KOKKAはドーナツ状の浮遊島が観客席になっていて、中心のお立ち台が動き回る仕組みっぽい。そうスタッフらしき人が話していた。
 クリケットはリアルのスタジアムっぽく作られていて、真円のグラウンドに芝が植わり、あまり見たことない形状だからか新鮮味を感じる。
 惑星ライブ会場はプラネタリウムのような形で、置かれている多数の操縦席に乗り込んでロボットを動かすらしい。早く動かしたい。

「おうおう。久しぶりー」
「ウーゴ! 戻ったきりだけど、もうアルフヘイムには来ないのか?」
「戻るのも大変だったけど、行くのもなかなか大変なんだよ」
「そうなのか。まぁ、どうしても必要な物があったら言ってくれ」

 ウーゴ事態も目立っていて、いろんな人に振り返られていたが、後から来たオーク集団が特に注目を集めていた。

「それが例にハッチて人?」
「ドワーフ全員がヒゲモジャでは無いのか」
「それも面白いけど、鳥人とか魚人も面白いよ」

 この人たちの感覚のほうが面白い。一応鳥人や魚人は獣人の選択の一部にあって、数は少ないが知名度はそれなりにある。オーク族の方が非公開だった分ドマイナーだと思うのは間違っているだろうか。

「せっかくウーゴの知り合い見つけたんだ。間違えないように名前書いておこうぜ」
「そうだそうだ」

 そう言って、俺の背中で筆を走らせる。

「おい! 勝手にやるなよ。ハッチすまん」
「ん。あー、まぁ良いさ」

 多少名前は売れてるし、イベント中くらいは別に良いだろう。
 そろそろイベント開始だから戻らないといけないな。

「俺は釣り会場に戻るわ。みなさんも良かったら釣りに来てくれ。竿はレンタルもあるからな」
「おう」
「後で行くわ」
「じゃあねー」

 釣り会場に戻ってくると、伊勢さんが出迎えてくれた。

「おい! どこで出すか決めてから行けよ!」

 お出迎えじゃなくて、お怒りだったわ。

「あ、すんません」
「あ、じゃねーって。俺らの作品なんだぞ」
「すぐ場所決めしましょ、いきましょー」

 伊勢さんの背中を押して個人ブースへ行くと、ほとんど埋まっていた。釣具だけじゃなく、一般の雑貨や武器防具、料理まで並べられている。
 夏祭りのテキ屋を彷彿させる彩りに、ちょっとテンションが上がってきた。

「おい! 遊びは後だぞ!」
「はいぃぃぃ!」

 何年も同じクランにいると、多少の考えは見抜かれてしまうか。伊勢さんに急かされて場所を探す。
 なんで俺が探すのかと言うと、伊勢さんの作ったアイテムも全部預かってしまったから。こんなことなら個別に出品すれば良かったと後悔している。

「あった。ここで出しましょう」
「中間あたりか。端じゃないだけマシだな。よし、どんどん突っ込め」
「あいあいさー」

 置いたルアーたちを使っても記録に残らないが、イベント後のワールドできっと活躍してくれる。そう願って出品開始のボタンをプッシュ。

【イセとハッチの特性ミノー】5000G
【イセとハッチの特性フロッグ】12000G
【イセとハッチの特性ポッパー】8000G

「おい! こんな高いの誰が買うんだよ。値付け間違ったんじゃ無いのか?」
「おっかしいな。確かに倍率1.1倍にしたはずなんだけど」

 間違ってない。原価の1.1倍になっている。他に要因があるなら……。

「あ」
「どうした?」
「初めて釣竿作った時、ボロだったんですけど」
「それが何だ」
「品質が最低なのに、べらぼうに高かったことがあったんです」
「ん? 何の関係が……あ!」

 気づいてくれた。
 どのジャンルでも似たようなものだが、ホビー系の新アイテムは希少なほど価値が跳ね上がる。
 値段を下げようと思ったら、もっと大量投下しないといけない。つまり手持ちを全部突っ込んだ今、俺たちに値下げさせる方法は無かった。

「誰かが道楽で買ってくれるのを期待しましょう」
「くそぉ。こうなったら作ったルアーでデカイの釣ってくるぞ!」
「えぇぇぇ!? これイベントのポイントにならないんですけど?」
「知るか! お披露目しなきゃこいつらが腐っちまうだろ!」

 こうなったら止められそうに無いな。テキトーに釣ってイベントに参加するか。

 <間も無く、1st フィッシングのイベント開始時刻となります。参加者は受付を済ませ、指定ポイントに集合してください。>

 伊勢さんが通信画面を開き、ゲキを飛ばす。

「NIPPON鯖の釣りクソども! 送ったルアーで釣りまくれ! ポセイドンの釣力を見せつけるぞ!」
「「「「おうよ!」」」」
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