81 / 111
日本初イベント大会
ババウオ
しおりを挟む
イベントは特設された別マップで行われる。以前の告知にあったように、4つのマップがあり、転送装置で各会場からどこへでも行ける形になった。
なかなか時間調整はシビアだが、惑星旅行以外に長めの休憩時間を設けることで、参加者だけでなくイベンター側も多少周ることができる。俺も他を見たいと言ってたけど、KOKKAに出る多くの歌手からも同じような話が出たのが大きいだろう。
俺のお目当ての惑星現地映像が予想以上の交渉を運営とやってきた。ゲームで使ってるキャタピラ型のロボットを操作して見れるのかと思えば、運営専用の浮遊タイプのロボットを取って来てしまった。
それをゲーム内とリアル映像の2画面で見れるというじゃないか。まぁ、それでも盛り上がりは、専門家や地図マニア界のファンと限定的となっている。応援したいと思う反面、あまり盛り上がり過ぎても俺が見れなくなってしまうと困る。こればっかりは当日になってみないとわからないだろう。
そしてイベントまで残すところ3日。ようやくイベント用のアイテムが作り終わったと一息ついているところだ。
「イベントアイテム作るだけでこんなに大変だと思いませんでした」
「規模がデカいからね。だけど、その分報酬貰えたでしょ?」
作れないリールなんかは運営が用意してくれてたし、高品質のは会場の露店もできるから、損することは無い。時間だけは溶けてしまったけどね。
今話しているぶち猫さんは、サビ猫さんと揃って釣竿職人のトップに立っている。ただケットシーと戯《たわむ》れたいが故に、俺がリアル忙しくしている間に抜かれてしまった。
だが、釣りバカとしては負けていられない。今力を入れて作り始めているアイテムを明日の露店で置くつもりだ。竿で負けているなら他で勝つまでのことよ。
先日ようやく連絡のついた『釣りゾンビの伊勢さん』と新しく開発したコイツがイベント会場を騒がせるはずに違いない。
「また気持ち悪い顔してる」
「例の猫団子の時の?」
ふっふっふ。大会の始まりが楽しみで仕方ない。
ピロリンと小気味良い音をたてて、メッセージが届いた。
メッセージの主は中島さん。
_______________
<大会ルールについて>
・指定の釣り具のみ使用可能
(それ以外の釣り具で釣った場合はカウントに入れられない)
・釣った魚の中で1匹を選んで最大重量を競う
・各会場ごとにずらして休憩時間は3回入る。
(惑星現地映像は連続稼働)
こちらが基本のルールになります。
この項目で告知していただき、詳細や質問は公式HPへ飛ぶよう追記をお願いします。
ご希望通り当日の挨拶はありませんので、そのままイベントをお楽しみください。
_______________
ペペペイとUPしたら、これで告知も終わりだ。
準備も終わって、あとはイベントにのぞむだけと考えると少し寂しくなる。
「あ、ハッチさん。小汚い水路見つけたんだけど、糸垂らしに行く?」
「おっほ。行かない選択肢無し!」
「さっすがぁ。こっちこっち」
テンションMAX。
めっちゃ楽しみだわ。小魚たくさんいるかな?
「ここだよ。整備されてないけど」
「確かに汚い」
「じゃ、俺は戻るから」
「ありがとなー」
あいつの名前なんだっけな。
そんなことより、早く釣り始めるか。
「でかい魚はいなさそうだから、針は小さくするか」
取り出したのは特性の針金バリ。これの便利な点は、柔軟性が高めにしてあるので、曲げて針サイズを変えられることだ。
「これでバッチリ。餌はストレージにパンがあったはず」
【硬パン】(腐敗度80)
「こいつ腐ってやがる。ま、まぁ一応つけてみるか」
幅1mほどの水路に針を落とすと、流れが早くて数秒で遠くに行ってしまった。その位置をキープしつつ様子を見るも、まったく当たり無し。
「ここは微妙だな。ちょっと探るか」
数メートル置きに針を垂らしていると、ところどころポコポコと空気が出てくる。
カーブしている所を狙って垂らすと、コツコツと針に触れる感触があった。
「ここらで少し粘ってみるか」
1時間ほどカーブで釣りしていると、徐々に当たりが増えてきた。
ピクピク……ビビィ!
「キタキター!」
予想以上に走る魚で、小さな針で心配になる。
「外れないでくれよー」
そうは言っても2分ほどの格闘で弱ってきた。ここだと言うときに引き上げると、魚の全貌が見えてきた。
小さな口と長い胴体。短い髭がちょろちょろと出ている。
「ほーい。そいつからすぐ離れろーい」
「へ?」
振り返ると年配のドワーフがいる。
「そいつ危険だぞー」
こいつが?
10cmも無いどじょうだぞ?
ちょっと眺めていると、どじょうが膨らんできた。
「お、おい!」
釣り師の性《さが》と言うか習性だろうか。初めて見る生物は、多少見た目が悪くても観察してしまう。
だけど、これは間違いだった。
ボンっ!
「ぶはぁ。くっせぇぇぇぇ」
パンパンに膨れ上がった魚が破裂し、中身が顔にかかる。
異常な臭さだが、嗅いだことがある臭い。
「ババギョかぶったか。あれはキツいぞぉ」
「うぷ……」
水水水! 水路!
「あ! そこはダメじゃ!」
水路の水をかぶると、更に臭い。
しかも視界が青くなりだし、バッドステータスが付く。
毒、五感障害、病気。
ここまでの状態異常は薬屋以来の酷さ。
手も動かなくなって視界が暗転すると、広場のど真ん中にいた。
しばらく放心していると、さっきのドワーフがやってくる。
「ここにいたか。お前さん、なんで下水路で釣りしとったんじゃ?」
「下水!?」
ってことは、俺はウンコとションベンを被りに行ったのか。
付いてる一日だな。
<魚図鑑にPooh puff loachが追加されました>
プー・パフ・ローチ
通称:糞魚《ばばうお》、クソフグドジョウ
下水に生息する魚で、普段は泥の中で過ごしている。
汚物に潜む菌や虫を摂食し、汚れたものを好み、排泄物は浄化された砂になる。
危険を感じると膨らみ、最終的に破裂して外敵に害を与える。
調理実績:なし
なかなか時間調整はシビアだが、惑星旅行以外に長めの休憩時間を設けることで、参加者だけでなくイベンター側も多少周ることができる。俺も他を見たいと言ってたけど、KOKKAに出る多くの歌手からも同じような話が出たのが大きいだろう。
俺のお目当ての惑星現地映像が予想以上の交渉を運営とやってきた。ゲームで使ってるキャタピラ型のロボットを操作して見れるのかと思えば、運営専用の浮遊タイプのロボットを取って来てしまった。
それをゲーム内とリアル映像の2画面で見れるというじゃないか。まぁ、それでも盛り上がりは、専門家や地図マニア界のファンと限定的となっている。応援したいと思う反面、あまり盛り上がり過ぎても俺が見れなくなってしまうと困る。こればっかりは当日になってみないとわからないだろう。
そしてイベントまで残すところ3日。ようやくイベント用のアイテムが作り終わったと一息ついているところだ。
「イベントアイテム作るだけでこんなに大変だと思いませんでした」
「規模がデカいからね。だけど、その分報酬貰えたでしょ?」
作れないリールなんかは運営が用意してくれてたし、高品質のは会場の露店もできるから、損することは無い。時間だけは溶けてしまったけどね。
今話しているぶち猫さんは、サビ猫さんと揃って釣竿職人のトップに立っている。ただケットシーと戯《たわむ》れたいが故に、俺がリアル忙しくしている間に抜かれてしまった。
だが、釣りバカとしては負けていられない。今力を入れて作り始めているアイテムを明日の露店で置くつもりだ。竿で負けているなら他で勝つまでのことよ。
先日ようやく連絡のついた『釣りゾンビの伊勢さん』と新しく開発したコイツがイベント会場を騒がせるはずに違いない。
「また気持ち悪い顔してる」
「例の猫団子の時の?」
ふっふっふ。大会の始まりが楽しみで仕方ない。
ピロリンと小気味良い音をたてて、メッセージが届いた。
メッセージの主は中島さん。
_______________
<大会ルールについて>
・指定の釣り具のみ使用可能
(それ以外の釣り具で釣った場合はカウントに入れられない)
・釣った魚の中で1匹を選んで最大重量を競う
・各会場ごとにずらして休憩時間は3回入る。
(惑星現地映像は連続稼働)
こちらが基本のルールになります。
この項目で告知していただき、詳細や質問は公式HPへ飛ぶよう追記をお願いします。
ご希望通り当日の挨拶はありませんので、そのままイベントをお楽しみください。
_______________
ペペペイとUPしたら、これで告知も終わりだ。
準備も終わって、あとはイベントにのぞむだけと考えると少し寂しくなる。
「あ、ハッチさん。小汚い水路見つけたんだけど、糸垂らしに行く?」
「おっほ。行かない選択肢無し!」
「さっすがぁ。こっちこっち」
テンションMAX。
めっちゃ楽しみだわ。小魚たくさんいるかな?
「ここだよ。整備されてないけど」
「確かに汚い」
「じゃ、俺は戻るから」
「ありがとなー」
あいつの名前なんだっけな。
そんなことより、早く釣り始めるか。
「でかい魚はいなさそうだから、針は小さくするか」
取り出したのは特性の針金バリ。これの便利な点は、柔軟性が高めにしてあるので、曲げて針サイズを変えられることだ。
「これでバッチリ。餌はストレージにパンがあったはず」
【硬パン】(腐敗度80)
「こいつ腐ってやがる。ま、まぁ一応つけてみるか」
幅1mほどの水路に針を落とすと、流れが早くて数秒で遠くに行ってしまった。その位置をキープしつつ様子を見るも、まったく当たり無し。
「ここは微妙だな。ちょっと探るか」
数メートル置きに針を垂らしていると、ところどころポコポコと空気が出てくる。
カーブしている所を狙って垂らすと、コツコツと針に触れる感触があった。
「ここらで少し粘ってみるか」
1時間ほどカーブで釣りしていると、徐々に当たりが増えてきた。
ピクピク……ビビィ!
「キタキター!」
予想以上に走る魚で、小さな針で心配になる。
「外れないでくれよー」
そうは言っても2分ほどの格闘で弱ってきた。ここだと言うときに引き上げると、魚の全貌が見えてきた。
小さな口と長い胴体。短い髭がちょろちょろと出ている。
「ほーい。そいつからすぐ離れろーい」
「へ?」
振り返ると年配のドワーフがいる。
「そいつ危険だぞー」
こいつが?
10cmも無いどじょうだぞ?
ちょっと眺めていると、どじょうが膨らんできた。
「お、おい!」
釣り師の性《さが》と言うか習性だろうか。初めて見る生物は、多少見た目が悪くても観察してしまう。
だけど、これは間違いだった。
ボンっ!
「ぶはぁ。くっせぇぇぇぇ」
パンパンに膨れ上がった魚が破裂し、中身が顔にかかる。
異常な臭さだが、嗅いだことがある臭い。
「ババギョかぶったか。あれはキツいぞぉ」
「うぷ……」
水水水! 水路!
「あ! そこはダメじゃ!」
水路の水をかぶると、更に臭い。
しかも視界が青くなりだし、バッドステータスが付く。
毒、五感障害、病気。
ここまでの状態異常は薬屋以来の酷さ。
手も動かなくなって視界が暗転すると、広場のど真ん中にいた。
しばらく放心していると、さっきのドワーフがやってくる。
「ここにいたか。お前さん、なんで下水路で釣りしとったんじゃ?」
「下水!?」
ってことは、俺はウンコとションベンを被りに行ったのか。
付いてる一日だな。
<魚図鑑にPooh puff loachが追加されました>
プー・パフ・ローチ
通称:糞魚《ばばうお》、クソフグドジョウ
下水に生息する魚で、普段は泥の中で過ごしている。
汚物に潜む菌や虫を摂食し、汚れたものを好み、排泄物は浄化された砂になる。
危険を感じると膨らみ、最終的に破裂して外敵に害を与える。
調理実績:なし
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
230
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる