72 / 111
日本初イベント大会
クモモ森の光虫にご用心
しおりを挟む
「斧とツルハシとナイフ。3セットよーし」
あとは例のドリアード店で作ってもらった麻の糸。
草原に生えているものを採取してきて頼み込んだ。
あまり性能が良く無いと言われたものの、俺のスキルレベルならこれで十分でしょう。
ヤマトを起動して、約束の正門へ向かう。
「まだ早かったかな?」
誰もいないので、糸術のスキル上げでもやっておこうか。
手に持った糸を狙った場所に振り下ろす。
そして近くの雑草に糸の先を当てるんだけど、これがなかなかに難しい。
ウーゴがやってくれた時は、糸で草を切り飛ばしていた。
俺がやっても葉っぱが揺れるだけ。
ただこれだけやってても飽きてしまったので、今は新しい方法を試している。
これが意外とスキルの伸びが良い。
「ヤマト! 次行くぞ!」
振り下ろした糸が地面を叩く。
小さな砂埃が出る程度だけど、成長した方でしょ。
「良い避け具合だ! さぁ、次だ」
「何してますの?」
声の主はモウカさん。
その後に……見たことはあるんだけど名前がわからない。
木工所に居たとんがり帽子のキミ。
「えっと、糸術のスキル上げかな」
「そんなやり方があったんですね」
「知り合いに教えてもらったんだよ。覚えてたらやってみて」
「私は持ってませんが、会員の中に持ってる子がいるので、教えてあげてみましょう」
後ろの人が気になって仕方ない。
とりあえず、自己紹介した方が良いかな?
「えっと、ハーフドワーフのハッチです。よろしくお願いします」
「え? よろしくお願いします」
……え? それだけ?
もしかして名前聞いたことあった人か!?
名前なんだろ?
アルデンさんのところのお弟子さんは、名前が普通だったり変わってたりするからわからんぞ。
「モジョコさん。もしかして、自己紹介したこと無いんじゃありませんの?」
自己紹介したことあるのか、無いのか。
どっち!?
「あぁ! すみません。私モジョコって名前です」
「良かった。がっつり紹介されたことがあったのかと思いましたよ」
「たまに配信見てたので、私だけ覚えてて……失礼しました」
「いえいえ」
挨拶もここまでにして、事前の相談と採取道具の配布だ。
予定より素材多く取りたいって話をしたら、問題なくOKが貰えた。
それよりも採取道具を譲るって言うと、そちらを驚かれたよ。
話は色々あるけど、道すがらにしようと出発。
「ということは、モジョコさんはいくつも魔法が使えるの?」
「はい。と言ってもまだ火と風の2系統ですね」
「ほうほう。とすると残りは土と水だけですかね?」
「一応他にも属性があるんですけど、なんと言えば良いか」
「あ! まさか未公開情報」
「ということで、言っても伝わらないんですよね」
そういうことなら仕方ない。
だとしても、4属性以外にもあることがわかったのは良かった。
もしかしたら、工房の本棚にあったりしないかな?
「到着しましたわ」
鬱蒼《うっそう》とした草木のしげる森は、見通しが悪く暗い印象がある。
前回入った時は、ヤマトの索敵無しでは厳しかった。
「モジョコさんは最後尾で、ハッチさんは警戒重視でお願いしますわ」
「「はい」」
この森の厄介なところが、モンスターがやってくる時は大体奇襲してくること。
「前方の樹上にいるみたいです。モジョコさんも火器厳禁でお願いしますね」
「了解です」
サイズの大きくなったヤマトの教えてくれる方法はストンピング。
敵を見つけると足踏みをして、敵のいる方を見ているので、大まかな方向だけわかる。
警戒していれば、そうそう負けることはない。
飛びかかってくる虫もモウカさんのクリティカルな一撃で倒せてしまう。
「馬車の時はペットかと思いましたが、そんな能力があったのですね」
「いえ、これは最近付いた技ですよ」
以前潜った洞窟のちょっと奥。
地底湖の先にいたコウモリから取れた魔石を与えたら覚えたんだ。
最初は何も覚えなかったと思ったよ。何度か探検してると、敵の襲撃時に足踏みしてるのに気づいて、索敵スキルがついたことが判明した。
「機獣って初めて見ましたけど、意外と可愛いし私も欲しいなぁ」
「あー。ちょっと特殊なタイプでドワーフ以外は難しいかなーと……」
「えー!?」
残念がるモジョコさんに説明するも、半分も伝えられない。
「ほら、次が来るみたいですわよ」
タシタシタシと足元のヤマトが注意してくれている。
「出たデカホタル!」
「モジョコさん。目眩し注意ですわ」
「はい!」
俺とモジョコさんが遠距離で牽制しつつ、強くはないけど目眩しと硬いのがやっかいだ。
強烈な打撃を繰り出すも、モウカさんの一撃を耐えやがった。
「くぅぅ。やっぱり硬いですわね」
「『土弾』! 装甲剥がすので、気を逸らしてください」
「わかりましたわ。モジョコさんも援護を!」
「了解です! 『風弾』!」
見えづらい位置に移動して装備交換をしていると、チラ見したモウカさんが不思議そうにしている。
これしないと出来ないんだよね。
まだまだこちらに気が向いてない。
これなら鈍足のドワーフでも、気づかれずに近寄ることができる。
『装備破壊』
狙ったのは外郭の翅《つばさ》の付け根。
ジャストヒットしたおかげで剥がれ落ち、内側の柔らかい翅がむき出しになる。
「ふふんふん!ふふんふん!」
おぉ!
左右右。左右右のコンボが決まった!
これは光虫もたまらずノックアウト!
最後のフィニッシュブローは得意技の火炎撃!
ん?
「まって! 火は!」
俺の声は間に合わず、綺麗に決まった拳が光虫を燃やす。
「あ。やってしまったーーー!」
もう遅いよモウカさん。
「は、はなれろー!」
「え? えぇぇぇ!?」
飛び退くように退避すると、引火した火が光虫のおしりに辿り着く。
それと同時に、強烈な爆発音が森中に響いた。
この森。引火物多数のため火器厳禁なり。
あとは例のドリアード店で作ってもらった麻の糸。
草原に生えているものを採取してきて頼み込んだ。
あまり性能が良く無いと言われたものの、俺のスキルレベルならこれで十分でしょう。
ヤマトを起動して、約束の正門へ向かう。
「まだ早かったかな?」
誰もいないので、糸術のスキル上げでもやっておこうか。
手に持った糸を狙った場所に振り下ろす。
そして近くの雑草に糸の先を当てるんだけど、これがなかなかに難しい。
ウーゴがやってくれた時は、糸で草を切り飛ばしていた。
俺がやっても葉っぱが揺れるだけ。
ただこれだけやってても飽きてしまったので、今は新しい方法を試している。
これが意外とスキルの伸びが良い。
「ヤマト! 次行くぞ!」
振り下ろした糸が地面を叩く。
小さな砂埃が出る程度だけど、成長した方でしょ。
「良い避け具合だ! さぁ、次だ」
「何してますの?」
声の主はモウカさん。
その後に……見たことはあるんだけど名前がわからない。
木工所に居たとんがり帽子のキミ。
「えっと、糸術のスキル上げかな」
「そんなやり方があったんですね」
「知り合いに教えてもらったんだよ。覚えてたらやってみて」
「私は持ってませんが、会員の中に持ってる子がいるので、教えてあげてみましょう」
後ろの人が気になって仕方ない。
とりあえず、自己紹介した方が良いかな?
「えっと、ハーフドワーフのハッチです。よろしくお願いします」
「え? よろしくお願いします」
……え? それだけ?
もしかして名前聞いたことあった人か!?
名前なんだろ?
アルデンさんのところのお弟子さんは、名前が普通だったり変わってたりするからわからんぞ。
「モジョコさん。もしかして、自己紹介したこと無いんじゃありませんの?」
自己紹介したことあるのか、無いのか。
どっち!?
「あぁ! すみません。私モジョコって名前です」
「良かった。がっつり紹介されたことがあったのかと思いましたよ」
「たまに配信見てたので、私だけ覚えてて……失礼しました」
「いえいえ」
挨拶もここまでにして、事前の相談と採取道具の配布だ。
予定より素材多く取りたいって話をしたら、問題なくOKが貰えた。
それよりも採取道具を譲るって言うと、そちらを驚かれたよ。
話は色々あるけど、道すがらにしようと出発。
「ということは、モジョコさんはいくつも魔法が使えるの?」
「はい。と言ってもまだ火と風の2系統ですね」
「ほうほう。とすると残りは土と水だけですかね?」
「一応他にも属性があるんですけど、なんと言えば良いか」
「あ! まさか未公開情報」
「ということで、言っても伝わらないんですよね」
そういうことなら仕方ない。
だとしても、4属性以外にもあることがわかったのは良かった。
もしかしたら、工房の本棚にあったりしないかな?
「到着しましたわ」
鬱蒼《うっそう》とした草木のしげる森は、見通しが悪く暗い印象がある。
前回入った時は、ヤマトの索敵無しでは厳しかった。
「モジョコさんは最後尾で、ハッチさんは警戒重視でお願いしますわ」
「「はい」」
この森の厄介なところが、モンスターがやってくる時は大体奇襲してくること。
「前方の樹上にいるみたいです。モジョコさんも火器厳禁でお願いしますね」
「了解です」
サイズの大きくなったヤマトの教えてくれる方法はストンピング。
敵を見つけると足踏みをして、敵のいる方を見ているので、大まかな方向だけわかる。
警戒していれば、そうそう負けることはない。
飛びかかってくる虫もモウカさんのクリティカルな一撃で倒せてしまう。
「馬車の時はペットかと思いましたが、そんな能力があったのですね」
「いえ、これは最近付いた技ですよ」
以前潜った洞窟のちょっと奥。
地底湖の先にいたコウモリから取れた魔石を与えたら覚えたんだ。
最初は何も覚えなかったと思ったよ。何度か探検してると、敵の襲撃時に足踏みしてるのに気づいて、索敵スキルがついたことが判明した。
「機獣って初めて見ましたけど、意外と可愛いし私も欲しいなぁ」
「あー。ちょっと特殊なタイプでドワーフ以外は難しいかなーと……」
「えー!?」
残念がるモジョコさんに説明するも、半分も伝えられない。
「ほら、次が来るみたいですわよ」
タシタシタシと足元のヤマトが注意してくれている。
「出たデカホタル!」
「モジョコさん。目眩し注意ですわ」
「はい!」
俺とモジョコさんが遠距離で牽制しつつ、強くはないけど目眩しと硬いのがやっかいだ。
強烈な打撃を繰り出すも、モウカさんの一撃を耐えやがった。
「くぅぅ。やっぱり硬いですわね」
「『土弾』! 装甲剥がすので、気を逸らしてください」
「わかりましたわ。モジョコさんも援護を!」
「了解です! 『風弾』!」
見えづらい位置に移動して装備交換をしていると、チラ見したモウカさんが不思議そうにしている。
これしないと出来ないんだよね。
まだまだこちらに気が向いてない。
これなら鈍足のドワーフでも、気づかれずに近寄ることができる。
『装備破壊』
狙ったのは外郭の翅《つばさ》の付け根。
ジャストヒットしたおかげで剥がれ落ち、内側の柔らかい翅がむき出しになる。
「ふふんふん!ふふんふん!」
おぉ!
左右右。左右右のコンボが決まった!
これは光虫もたまらずノックアウト!
最後のフィニッシュブローは得意技の火炎撃!
ん?
「まって! 火は!」
俺の声は間に合わず、綺麗に決まった拳が光虫を燃やす。
「あ。やってしまったーーー!」
もう遅いよモウカさん。
「は、はなれろー!」
「え? えぇぇぇ!?」
飛び退くように退避すると、引火した火が光虫のおしりに辿り着く。
それと同時に、強烈な爆発音が森中に響いた。
この森。引火物多数のため火器厳禁なり。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる