上 下
65 / 111
新しい都市

2層から3層へ

しおりを挟む
 魔法工房へ顔出しに行くと、パッドたちはすでに出かけたようで、教授だけいつもの研究机にいる。
 教えてもらった鉱山のお礼を言うと、どこまで潜ったのか尋《たず》ねられた。

「2層までですね」

「そうか。3層から敵が魔素材を持っているから、行ったら取り忘れるなよ?」

 おぉ!?
 ついにファンタジー素材か!
 ウーゴの装備が良さそうなら行ってみるか。

 意気揚々と外に出ると、完全武装のグスタフさんとウーゴが話していた。

「待ってたぞー!」

 ウーゴの武器もメイスになっている。
 先に渡してくれたのか。

「今日は私も行きます」

「メイスの使用感を見たいってさ」

 そういうことか。
 ふむ。
 グスタフさんが来てくれるなら3層まで足を伸ばしてみようかな?




「うさぎもネズミも一発だけですね」

 坑道まで来たけど、途中の雑魚程度だとメイスの強さがわからないな。
 そのまま2層へ向かう。

 グスタフさんには先に坑道の説明をしていたんだけど、ヘビ以外は興味が無さそう。
 それよりも3層の魔素材を面白そうに聞いていた。

「ヘビ出ないな」「出ませんねー」

 これで5戦目だけど、出てこないな。
 ヘビもレアだったのかさらに5戦しても出てこない。

「場所変えてみようか」

 3層へ行く通路を探すついでに徘徊《はいかい》していると、カサカサと動く音が聞こえてきた。

「来たか!」「ヘビですか?」

 やっとお目当てのやつが来たみたいだ。

「よし! ウーゴ頼む……ぞ?」

「うっへぇ。こいつはキツイな!」

 ドワーフ鉱山でも見かけた奴に似ているが、こいつはサイズが2倍もありそうだ。

「ヤスデですね」

「とりあえず一撃当てるぞ!」

 ウーゴが飛びかかってメイスを振り下ろすと、簡単に胴体が千切れてしまった。
 まだ蠢《うごめ》いている頭部に土弾を当てると、すぐに動きが止まる。

「見た目のわりに結構やわらかいね」

 振り返ると、顔を隠しているウーゴが見えた。

「どうした? ダメージ受けてたっけ?」

「う……うぅ」

「ポーション使いますか?」

「く、くせぇ!」

 それだけ言うと回収もせずに離脱してしまった。
 多少臭いはするけど、そこまで臭いかな?
 グスタフさんもわからないようだし、種族的なものだろうか?

 それで、素材はまるで使えそうにない。
 外殻も柔らかく、中身もグズグズしている。
 一応少量取っておくけど、使い道が思いつかないな。

「ウーゴ! 回収終わったぞ」

「うわ! お前ら臭いから来んな!」

 そこまで言うか!?

「どうやら、かなりの臭いみたいですね。水は持ってるので流しておきましょうか」

 グスタフさんにもらった水を浴びると、多少ましになったのかウーゴが近づいてきた。

「お前らよくあんな臭いの解体できるな?」

「そこまで臭いしたかなぁ? オークは鼻が良いとか?」

「そんなことねーよ」

 わからないなぁ。ドワーフの鼻が悪いのかな?
 どちらにしてもヤスデは素材もマズイ。あまり戦いたくない相手だな。
 2人も同じ考えで、早く3層へ向かうことになった。



 3層へ切り替わると、辺りが少し明るくなる。
 ところどころから飛び出す岩が薄く光っていて、幻想的な景色に見える。

「おぉ! 一気に雰囲気が変わったな!」

 道幅も奥に向かうほど広くなっていて、道の脇には水がちょろちょろと流れている。

「グスタフさん!」

「わかってますよ!」

 降りたばかりなのに採掘スポットを発見!
 飛びつくようにそこへツルハシを振り下ろし、一心不乱に掘っていく。

「俺っちも混ぜろー!」

 1時間くらい掘ってたかな?
 終わってから気づいたのは、敵が一切出なかったこと。
 たまたま運が良かっただけかもしれないけど、セーフティーゾーンじゃないかという話になった。他の場所なら採掘2回に1回は敵が出てくる。

 集中して掘ったせいか、ドロップ量も良かったので、鉄は十分だろう。

「鉄は良いとして、私は魔素材を取りたいんですよ」

 教授の言ってたやつだね。
 採取か採掘か、それとも剥ぎ取りなのか?
 そこら辺を聞かずに出てきちゃったのは失敗だな。

「じゃあ、もちょっと奥行ってみようや」

 ところどころに見える岩が道標になっていて、通りやすくなっている。

「そういえばこの光ってる岩は取らないのか?」

 ウーゴは試してなかったのか。

「ちょっと見ててね」

 光る岩にツルハシを叩きつけると、カン高い音を鳴らしながら跳ね返ってきた。

「こんな感じで掘れないんだよ。加えて耐久度も一気に削れるから、取れないオブジェクトか上位素材のツルハシが必要だと思う」

 ウーゴが納得したようなので、引き続き進んでいくと、ペタペタという音が俺たちを出迎えてくれた。
 新しい敵はピョコピョコと跳ねるカエルが2体。

 どっちが言ったのか「デカイ」という声が聞こえた。
 俺らより若干小さい程度なので、ウーゴの大きさと良い勝負じゃないか?

 様子見していると、カエルからコポコポと音がしてきた。

「ハッチ氏! 避けて!」

「え?」

 戦闘では今まで受けたことのない衝撃だったので、かなりのダメージを受けた感覚はある。
 体に受けた衝撃に驚いて、気づいた時には、数メートル後方から2人の戦闘を眺めていた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

Freedom Fantasia Online 不遇種族、魔機人《マギナ》で始めるVRMMO生活〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:429

処理中です...