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新しい都市

妖精広場のスタンプラリー

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 初めて聞く種族を名乗られた。
 この妖精はフェアリー族のナツィータさん。
 性別が決まっておらず、気分で見た目も性別も変わるらしい。黒鯛が性別変わるんだっけ? あっちは何度も変わるものじゃなかったと思うけど、どうしても魚に繋げてしまうな。
 それにしてもここの神様は面白い種族を作ったものだ。

「やっぱり初めて来たんだね」

 俺たちの話もだいたい伝え、帰って来た反応は「やっぱり」だった。
 観光客っぽい動きはしてたと思うけど、そこまで露骨だったかな?

「ここは有名だから、初めて来た人はだいたい通るんだよ」

 そんなに有名な場所なのか。

「君たちに配達でもしてもらおうかな」

《お使いクエスト:手紙の配達》

 YES!
 2人の顔を見るまでもなく受注。
 もともと色々散策するつもりだったし、受ける以外無いでしょ。

「それじゃあ、これを渡しておこう。報酬もその紙だよ」

 貰った紙は、白紙にいくつもの点が描いてある。

「あぁ、やっぱり時計ですね」

 現在地が中心にあり、その周りに12の点が置かれていて、言われてみると確かに時計にも見える。

「北の広場からまわって、それぞれの一番大きな建物に手紙を届けてきてね」

 なかなか時間がかかりそうなクエストだな。

「ハッチさん! 呆けてないで、行きましょう」

「そうだぞー。今日中は難しそうだけど、ちょっとでも進めておこうよ」

 さっそく行くぞと息巻く2人に引っ張られて向かう。

 北大通りを30分程進むと、目的地が見えてきた。
 工房がある広場と同じような作りだけど、エルフたちがそこかしこで談笑しているところが違っている。

「見たいところはありますが、他の広場も行くんです。詳しいところは後日個人で行きましょう」

 一番大きな建物に入るとカウンターに店員らしき人が立っている。

「手紙を持って来ました」

 俺たちが渡した手紙を渡すと、代わりにスタンプカードを貰った。
 押されているのはエルフの横顔かな?

「さぁ! 次行きましょう!」

「あぁ。待って待って」




 そこからはスタンプラリーのために歩き回る。
 南の広場に到着し、その日は解散となって。2日目に西側のスタンプを完成させて、中央へ戻って来た。

「おつかれさまー」

《お使いクエスト:手紙の配達 が完了しました。》

 持ってた地図がアイテム欄から消えて、マップに表示されるようになる。
 グスタフさんが言ってた通り、12の広場が外周を囲っていた。

「じゃあ、一旦ここで解散ということで」

 2人とも行きたい広場があったようで、目的の場所へ走っていく姿が見える。
 俺も気になっていた所はあったので、そちらに向かおうかな。
 そういえば、この人は木材売ってる場所知ってるかな?

「すみませーん」

「はいはい」

「木材買いたいんですけど、売ってる場所知ってますか?」

「それならドリアード広場にあったと思うよ」

 エルフの次に行った場所だな。

「ありがとうございます」

 エルフが0時だから、1時の大通りだな。
 昨日は急ぎで周りを見れていなかったけど、大通りにも結構店があるな。

「ちょっとウィンドウショッピングと」

【鉄樹の鎧(ドリアード専用)】
 専用装備か!
 こういうのは初めて見た。どうやって作るのかな? というか何の素材だ!?

「そこに張り付いてるお客さん。ここはドリアード専用の店だよ」

「あ、すみません。ちょっと気になったもので」



 そそくさと逃げるように離れたけど、少し質問しても良かったよな。次は聞いてみよう。
 1時広場はドリアードたちの溜まり場で、足元に注意が必要だ。

「あ、そこ気をつけてよ」

 言われて足元を見ると、数歩先に土中で半身浴しているドリアードが鎮座していた。

「すみません」

 ところで素材屋はどこだろう。

「何か探し物?」

「えっと、木材売ってる店を探してて」

「それならあそこだよ」

 指された方を見ると『木』という看板があった。

「あれが店なの!?」

「そうだよ」

 木だけじゃわかんねーよ!
 店の中に入って意味がわかった。

「木だな」

「木でしょ?」

 なんでこいつは着いてくるんだ。
 ドリアードが椅子に「よっこいしょ」と腰掛ける。

「何が欲しいの?」

「え? ここの店員なの?」

「そうだよ」

 先にそれを言ってくれ!

「何が欲しいと言われてもなぁ。俺が欲しいのは竹なんだ」

「竹もあるよ。こっち」

 連れられた先にあったのは、小さな竹林。

「あるのは麻竹《まちく》と孟宗竹《もうそうちく》だけなんだ」

「へぇ。俺が取ったのはこっちかな」

「孟宗竹だね。大きさはどのくらいのにする?」

「釣竿用だから握れる太さで……」

 ん? そういえば所持金無かったんだっけ。

「これが良いかな」

「あのー」

「どうした?」

「あまり持ち合わせが無いんですよね」

「えー? どのくらい?」

 いくらあったっけな。

「500Gです」

「……今日のおやつは何にしようかなー」

「あー! 待って! 一応値段だけでも教えて!」

「えぇ? そんなに高くないよ」

「なにとぞ! なにとぞ!」

「さっき言ったサイズだと1本1000Gくらいかな」

 マジか!?
 竹ってそんなに高いのか。
 溜め込んでおけば良かったな。

「言っとくけど、野生の竹なんかと比べてウチのほうがランク高いからね!」

 そういうことか。
 だとしても、まずは素材か道具を売らないと何も買えないな。

「ちなみにですけど、肉とか皮とか売れるところ知りませんか?」

「にくぅ? それこそドワーフが食うでしょ。あとは、北側の種族以外なら使うんじゃない?」

「北は?」

「そっちは肉食うの少ないかな? 私たちに持ってくるなら、肥料にしてきてね」

 肥料か。
 そういうレシピは持ってないな。

「ありがとうございます。また来ますね」

「じゃあねー」
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