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新しい都市

中央広場にスケスケの木

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「あれ? モウカさんは?」

「今日は配達品届けるクエストでソロだってさ」

「残念だなぁ」

「案内が欲しいだけでしょ? とか言っている俺も案内が欲しい」

 我々3人は『おのぼりさん』なので道案内がいると助かったんだけど、今日は直感力が試されそうだな。

「さてどっちに行こうか。右だと思う? 左だと思う?」

「前後もあるよ?」

 広場は東西南北に道が通っている。
 後ろは通って来た道だから、行っても街の入り口へ向かうことになる。横道に入ればまた違うんだろうけど、迷うのがわかっているから選ばないよ。
 ということは残りの3方向なんだけど、西と北は良いとして、東って街の外壁方向でしょ?
 街に入る前から壁が見えてるのに、しょっぱなから見たいとは思わないなぁ。

「というわけで、今日は探索気分だから西か北の2択なんです」

「ほおぉ。もっとテキトーに決めているのかと思ってた」

「まぁ、今日も配信なんで、ちょっとは面白そうな場所へと思ってね。グスタフさんはどう?」

「私は北が良いですね」

 なんでか聞いてみたら、グスタフさんの脳内地図だと、ここはまだ産業区の入り口付近らしい。中心地を目指してショップを探す目的みたい。
 俺もテッケンさんもそれに賛同して、北へ行くことになった。

「看板だと妖精大通り6って書いてあったけど、こんな道がいっぱいあるのかな?」

「昨日ミコノスと似てるって話しましたよね」

「グスタフさんが? 言ってたっけ?」

「ハッチさんが聞いてなかっただけじゃないか? 俺は聞いてたよ」

 テッケンさんは聞いてたらしい。そしてコメントにも話してたと流れている。街並みばっかり見てたから、話の内容はほとんど覚えてないな。

「それで、ミコノスの街はもっと複雑なんです。曲がりくねり行き止まりも多々あって、それに比べるとわかりやすい道ですよ」

「俺にはわからないなぁ。大通りと言うだけあって、道幅は広いけど、階段の上下もあるよ?」

「それですよ!」

「へ?」

「上下しているということは、下に」

 グスタフさんは面白そうに地面を指さしている。

「あ!」

「テッケンさんはわかったの?」

「たぶんだけど、地下があるのかもしれないな」

「それです! まぁ、すぐには行けないと思いますが、そのうちに期待しておきましょう」

 地下と言えば、ドワーフ国があったのも地下だったな。地下があるなら、ここから繋がっているかも?
 落ち着いたら調べてみようか。




 上り下りはあるけれど、門から最初の広場までと比べると、確かに真っ直ぐな道。
 ドワーフ村内の端から端までの距離は歩いたんじゃ無いか? なんて思っていると、前方が開けてきた。

「私の予想通り。ここが中心街でしたね」

 大きな看板には『コネクト中央広場』と書かれている。真ん中には変わった木が一本生えていて、周りでくつろぐ小さな妖精たちがいる。

「あの透明な木はなんだ!? 周りの種族も初めて見たぞ」

 テッケンさんに先を越されて言われたけど、同じ気持ち。

「綺麗だねー。木も見たいし、妖精っぽいのも話してみようよ」

「行こう!」

 木に近づくほどに大きさの感覚が狂っていく。

「さっきより木がでかくなってない?」

「俺も思ってたんだ。妖精も大きくなってないか?」

 後ろを見ると、周囲の建物も大きくなっているように見える。

「私たちが小さくなってる? 面白いですね」

「結界だよ。フェアリー族以外は、中心部に近づくと体が小さくなるようにしてあるんだ」

 聞き慣れない声の主に振り返ると、羽の生えた妖精が頭上で飛んでいた。

「え? うわ!」
「おぉ……」
「飛んでる」

 外から見るのと違って同じくらいの大きさ。
 それが頭の上にいるもんだから、ビックリもするよ。

「驚かせてごめんね。中から見えてたから気になってさ」

「あ、どうも」

「あそこが気になるんだろ? 着いてきなよ」

 その妖精に先導されて中央の木にたどり着くと、自分たちが小さくなったせいか、透明な木が樹齢1000年を超える大樹のように見える。

「これって何の木なんですか?」

「これはジュエルマザーツリー。名前のまんま宝石が成る樹だよ」

「触ってみたい」

「良いよー」

 許可ももらったので触れてみたが、ひんやりとして気持ちがいい。

「特別変わったことは無いですね。いや、変わった樹ではあると思いますが」

「ハッチさん。ちょっと肩車してくれ」

「え? いいですけど」

 テッケンさんを肩に乗せると、右へ左へ指示される。周りの妖精たちも面白そうにこちらを観察している。

「もちょい右!」

「このくらい?」

「よし! 採れた!」

「え?」

 テッケンさんが降りてくると、右手に掴んだ何かを自慢げに見せてくる。

「これだよ」

「んー? これってジュエルマザーツリーの実?」

「そそ。取れるか試したけど、何も言われないからさ」

 この人はたまーに恐ろしい行動に出る。大事そうに植えてあるし、何か祟《たた》りでも起きそうで俺はできないな。
 テッケンさんは、手の上で虹色の宝石を転がしていると、だんだん煙が出始める。

「うわ!? ど、どうした」

 煙が立ち上り樹に向かっていくと、木の実は小さくなっていき、とうとう無くなってしまった。

「ぷぷ。思った通りの行動してくれて良かったよ!」

 案内妖精が面白そうに話す後ろで、他の妖精たちも楽しそうに飛び回り、あちこちで笑い声が飛び交っている。

「半分くらいはそうやって試すんだけど、取っても消えるだけさ!」

「えぇ? だったら先に言ってくれても良いじゃない」

 テッケンさんがそれを言うのもな。
 何か言われてもやったとしか思えないぞ。

「これも僕らの楽しみなんだよ。気になるだろうから説明してあげるよ」

 近くにあるテーブルに案内されると、妖精が自己紹介を始めた。
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