上 下
55 / 111
新しい都市

狼に慣れ、戦闘で勝利。ただし補助輪付き

しおりを挟む
 およそ1日の接敵数は3回程度。
 通常の戦闘職であれば、装備の修理などを考えると無理はできない。
 そこは生産職の強みだろうな。

「装備を直せるから、強敵と何度も戦えるね」

「ハッチさん。それは違いますよ」

「え? 何が?」

「そもそも我々と戦闘職では、もともとの強さが違いますからね」

 確かにそうだな。
 狼程度には負けないのかもしれない。
 オトシンさんのリトルウルフも強いのかね?
 一緒に戦った感じだと、かなり動きが良かったし。

「ぶもぉぉぉ」

「敵が出たぞ!」

 本日2度目の戦闘は、狙った通りならば……。

「草原狼だ! 前回と同じで!」

「「了解!」」

 毎度ながらモウカさんと後方担当。
 さすがに4度目となれば狼の対応も上手くなるってもんよ。
 モウカさんが追い抜かれるところまでは織り込み済み。
 そこで鉄の玉を投擲。すぐに土弾も放つ。
 スリングをガシャコンするよりも、この方が早いし牽制できることに気づいた。
 体制が崩れたところで、すかさず鉈を振りかぶる。

 それを何度か繰り返すと、小さな振動が終わりを告げる。

「南無三。お前の体は大事に使わせてもらうぞ」

 祈りを捧げたら、剥ぎ取りの開始だ。

「ハッチさん」

「はい」

「その動きは手刀を切ると言って、お相撲さんの作法なのですが……」

「あれ? 何か間違ってました?」

「間違ってるとかではなく……。いや、受け取る時に使うから良いの? だけどこの場合は」

 考え込んでしまったな。
 こうなるとしばらく動きそうに無い。
 どうせ俺は剥ぎ取りをするだけだ。

 あれから1日に1度だけ、狼を呼び寄せている。
 モウカさんのフォローがあるうちに慣れてしまおうという、保護者付きの戦略だ。
 そして俺が他の人と一緒にやらないのは、簡単な話で、俺が一番弱いから!

 そもそもの武器威力も戦闘スキルも一番低い。
 安全牌《あんぜんぱい》を取りつつ、終わればモウカさんが駆けつけるという算段のはずだったんだけど。

「お疲れさまー」

「そっちは剥ぎ取りも終わったんですか?」

「2人がかりだからね」

 こんな感じで昨日から、先に倒されてしまっている。

「やっぱりテッケンさんの一撃は大きいですね」

「戦闘寄りだからね。まだまだ抜かれたくないよー」

 敵の動きに慣れるのが早く、強撃を当てるのが上手い。真似しようと思っても、なかなか動けないんだよなぁ。
 まぁ、こっちでは更に上の人がいるんだけどね。

「モウカさんどうかしたの?」

「いや、こうやったら考え込んじゃってさ」

 さっきの手の動きを見せると、テッケンさんは不思議そうにしていた。

「とりあえず埋めて中に入ろうよ」

 そういえばまだ埋めてなかったな。
 2人に手伝ってもらい、さっさと後処理を済ませる。

「モウカさん。中に戻るよー」

 動かないな。

「ほら。いつまでも止まってないで!」

「え? あ、すみません」

 モウカさん再起動!
 牛バスに押し込んでやっと出発した。



「予定だと明日到着だよね?」

「そうですわ」

「気になったんだけど」

「はい?」

「敵って2種類しか出ないの?」

 出てくるのは狼とうさぎばかりで、他の種類は見てないんだよね。
 街道とは言っても、もうちょっと種類が増えても良いと思うんだけどなぁ。
「私も気になってました」「同じく」とグスタフさんテッケンさんも同意してくれる。

「私も詳しいことは知りませんが、この馬車に乗ってるとその2種類だけですわね」

「馬車にってことは、乗ってなかったら他にも出るの?」

「他にもというか、他のしか出ませんわ」

 他のしかって、今出ているのは馬車専用のモンスターってこと?
 それなら特殊モンスターになるのかな? とか思ったけど、アルフヘイム近辺に出てくるみたい。

「徒歩で移動しようとすると、私程度では死にますわね」

「え? モウカさんで死ぬレベルなら俺ら無理じゃん」

 頷く影が隣から見えてきた。

「これはアルフヘイムに着いても、戦闘訓練した方が良さそうですね。ハッチさんもテッケンさんも、良かったらたまにチーム組みませんか?」

 それは願ったり叶ったりだ。1人じゃ厳しいし、他のプレイヤーがどのくらいいるかわからない。

「モウカさんもしばらくアルフヘイムならどうですか?」

「私は1ヶ月後に戻るので、それまでなら」

「そっかぁ。それでも色々知ってる人がいるのは頼もしい。是非お願いします」

「わかりましたわ。ハッチさんは入ってますけど、2人もフレンド追加しても?」

「「お願いします」」

 到着してからもなんとかなりそうかな?
 いや、生産拠点や素材の場所も探さないといけないな。
 思ったよりやることは多いぞ。

「ハッチさん? どうした?」

「いや、新しい拠点や素材集めをどうしようかと思ってね」

「確かに、皮加工も場所とるよな」

 そこでグスタフさんとモウカさんが会話に入ってくる。

「私の予想だと、拠点に関しては気にしなくて良いかと思います」

「生産場所も気にしなくて良いです。素材は……私も全部は知らないです」

 この2人が言うなら何かしらの心当たりがあるんだろう。
 それにしても、モウカさんが勝てない敵かぁ。
 どんな奴なんだろうな?
 ヤマトに鉄の玉を与えつつ考えていると、手を押し上げる感覚があった。
 みんなの視線もヤマトに集まっている。

「なんか光ってない?」
「え?」
「まさか進化!?」
「おぉぉぉ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

超ゲーム初心者の黒巫女召喚士〜動物嫌われ体質、VRにモフを求める〜

ネリムZ
SF
 パズルゲームしかやった事の無かった主人公は妹に誘われてフルダイブ型VRゲームをやる事になった。  理由としては、如何なる方法を持ちようとも触れる事の出来なかった動物達に触れられるからだ。  自分の体質で動物に触れる事を諦めていた主人公はVRの現実のような感覚に嬉しさを覚える。  1話読む必要無いかもです。  個性豊かな友達や家族達とVRの世界を堪能する物語〜〜なお、主人公は多重人格の模様〜〜

40代(男)アバターで無双する少女

かのよ
SF
同年代の子達と放課後寄り道するよりも、VRMMOでおじさんになってるほうが幸せだ。オープンフィールドの狩りゲーで大剣使いをしているガルドこと佐野みずき。女子高生であることを完璧に隠しながら、親父どもが集まるギルドにいい感じに馴染んでいる…! ひたすらクエストをやりこみ、酒場で仲間と談笑しているおじさんの皮を被った17歳。しかし平穏だった非日常を、唐突なギルドのオフ会とログアウト不可能の文字が破壊する! 序盤はVRMMO+日常系、中盤から転移系の物語に移行していきます。 表紙は茶二三様から頂きました!ありがとうございます!! 校正を加え同人誌版を出しています! https://00kanoyooo.booth.pm/ こちらにて通販しています。 更新は定期日程で毎月4回行います(2・9・17・23日です) 小説家になろうにも「40代(男)アバターで無双するJK」という名前で投稿しています。 この作品はフィクションです。作中における犯罪行為を真似すると犯罪になります。それらを認可・奨励するものではありません。

不遇職「罠師」は器用さMAXで無双する

ゆる弥
SF
後輩に勧められて買ってみたVRMMOゲーム、UnknownWorldOnline(通称UWO(ウォー))で通常では選ぶことができないレア職を狙って職業選択でランダムを選択する。 すると、不遇職とされる「罠師」になってしまう。 しかし、探索中足を滑らせて落ちた谷底で宝を発見する。 その宝は器用さをMAXにするバングルであった。 器用さに左右される罠作成を成功させまくってあらゆる罠を作り、モンスターを狩りまくって無双する。 やがて伝説のプレイヤーになる。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

戦闘職をしたくてVRMMOを始めましたが、意図せずユニークテイマーという職業になったので全力でスローライフを目指します

地球
ファンタジー
「え?何この職業?」 初めてVRMMOを始めようとしていた主人公滝沢賢治。 やろうと決めた瞬間、戦闘職を選んでいた矢先に突然出てきた職業は【ユニークテイマー】だった。 そのゲームの名はFree Infinity Online 世界初であるフルダイブ型のVRゲームであり、AIがプレイヤーの様子や行動を把握しイベントなどを考えられるゲームであった。 そこで出会った職業【ユニークテイマー】 この職業で、戦闘ではなくてスローライフを!! しかし、スローライフをすぐにはできるわけもなく…?

freely fantastic online

nanaさん
SF
「この世界はただの仮想では無い第2の現実だ」 かつて誰もが願っただろう ゲームの世界が現実であればいいのにと 強大な魔王を倒し英雄となる自分の姿 仲間と協力して強大な生物を倒し達成感に包まれる自分の姿 ゲームの中の 現実とは全く違う自分の姿 誰もがゲームのキャラと自分を頭の中で置き換えたはずだ そんな中 ある会社が名を挙げた 『ゲームでは無く第2の現実となる世界を創る』 そんなスローガンを掲げ突然現れた会社 その名も【Fate】 【Fate】が創り出した 第2の現実となる世界となる舞台 【Freely Fantastic online】 通称FFO ごく普通のサラリーマンである赤鷺翔吾は後輩である新宮渚から勧められこのゲームを始めることとなる... *作者の自己満で書いてます 好きなことを好きに書きます それと面倒くさがりなので基本 誤字脱字の報告をしてくださっても直さないか後から纏めてやるパターンが多いです その点が大丈夫な方は是非読み進めてください

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

処理中です...