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新しい都市

一人違うゲームをしている奴がおる

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「理解しましたわ」

 理解したとは言っているけど、まだ何かを考えている様子だ。何を考えているかわからないけど、俺の想像のはるか上を行っているんだろうなぁ。
 なんて考えていると、外から牛の鳴く声が響いてきた。

「これは?」

「敵襲ですわ。行きましょう」

 敵襲とは言ってるけど、全く急ぐ様子は無い。
 扉を開けて、優雅にタラップを降りるモウカさんに続く。

「来たね。道が塞がれてるんだ。何とかしてくれるかい?」

「わかりましゅたわぁ!」

 エルフさんの声はちゃんと聞き取れたけど……俺の耳がおかしくなったんだろう。そうに違いない。
 前にいるのはウサギが3体で、可愛らしく口をもしゃもしゃと動かしている。
 モウカさんとテッケンさんが飛び出して攻撃を開始!
 かと思えば、モウカさんが突き出した拳から火球が飛び出して、ウサギを丸焦げにしてしまった。

「マジかよ……」

「ちょっと差が大きいな。次からサポートにしてもらおうか」

 モウカさん1人だけで倒してしまったら、俺たちの成長なんて皆無だしな。グスタフさんの言う通り、サポートしてもらうことになった。
 ウサギの素材を取ろうと思ったけど、肉まで廃棄物になっている。



 次の戦闘は意外と早くやってきて、再びウサギが3体現れた。

「ハッチさんは遠距離から!」

「了解!」

 テッケンさんが剣で斬りかかると2m程跳ねて回避する。他のウサギはスキを見て蹴りを入れてくるし、村近辺よりだいぶ強くなってるように感じた。

「ハッチさん! 着地を狙って」

 跳ねたウサギを狙ってスリングを発射すると、うまく当たった。グスタフさんが、すかさず追い討ちして倒す。

「よっし!」

「次行くぞ!」


 ◆ ◆ ◆


「動きは単調だから倒しやすかったね」

「竹林の連携が役立った感じだね」

 初対面での戦闘だったらもっとグダグダだったかもしれないな。テッケンさんの指示もわかりやすいし、グスタフさんのフォローも上手い。
 ……俺って何が上手いっけ? まぁいっか。

「さてさて、剥ぎ取りっと」

【草原うさぎの皮】【草原うさぎの肉】これが3つずつ。

「こんなものか」

「早く進みますわよ」

「あぁ。すんません」

 ささっとカバンにしまって牛車に乗り込む。

「グスタフさん。盾見てもらえる?」

「良いですよ」

 テッケンさんの盾をグスタフさんが直してる間に、皮は渡しておく。

「ありがとう。ここだと臭くなりそうだしな」

「私は構いませんわ」

 俺もグスタフさんも気にしない。

「じゃあちょっと作業するか」

 そう言って、テッケンさんはなめし作業に入ってしまった。

「ハッチさん」

 グスタフさんからお呼びがかかる。

「こっちのハンマーを見てください」

 少しだけ歪んでいる。
 これは金属部分じゃなくて柄がへたってきてるな。

「モウカさん。柄の予備とかありますか?」

「それでしたら、これでしょうか」

 楕円形で太さもぴったり。
 受け取ったら付け替え作業開始。
 なめし液の臭いと金属音がしばらく響き渡っている。

「こっちはしばらく放置かな」

 テッケンさんの声が聞こえた時、ちょうどこちらも終わった。

「グスタフさんも終わったかな。はい。ハンマーね」

「どうも。私も盾を」

 やってることは普段の劣化版だけど、いつもと変わりないね。

「なるほど。生産者が集まるとこうなるんですわね」

「俺たちはいつもこうだけど、モウカさんたちは違うの?」

「木工所は、少し近いかもしれませんが、ここまで修理しないですわ。戦闘職のチームだと、修理なんて戻るまでしませんわ」

 恐ろしいことを言ってるな。最低限でも、戦闘が終わったら武器の調子くらい見るだろ。
 グスタフさんもテッケンさん同じ気持ちだろう。

「ポックル村で一度だけ戦闘チームに入ったけど、彼らもそんな感じだったな」

 ほほお。
 そういえばテッケンさんはポックル村に行ったんだっけ。

「まぁ、ドワーフ村が特殊なんだろうね。あんなに生産寄りな所は他に無いと思うよ」

「へぇ。あそこしか知らないから、そういう話は新鮮だな」

「アルフヘイムにどれだけプレイヤーがいるかに寄るけど、他のチームに入っても面白いかもね」

 モウカさんみたいな人が多かったら遠慮するかもしれん。
 何もせずに一日が終わりそうだ。



「ぶもぉぉぉ」

「戦闘だ! 来てくれ!」

 先程の敵襲とは声色が違って、緊張感が伝わってくる。

「急ぎますわ」

 駆け足で飛び出すモウカさんに続く。
 降りると前方と後方に狼が1体ずつ見えた。

「ハッチさんはモウカさんと後ろへ!」

 返事を聞かずにテッケンさんたちが動き出す。
 後ろへ走ると……モウカさんはすでに狼の前にいるじゃないか!

「足止めしますわ。遠距離から攻撃を!」

 いつの間にか装着した手甲を使って、狼の攻撃を左右へ弾いている。
 ウサギ同様に着地点へ打ち込むと綺麗に直撃。
 すると狙いをこちらに変えてきた。

「そちらへ行きましたわ!」

 鉈を構えて迎撃しようと思ったけど、予想以上にデカイな。俺の身長が低いのもあるけど、腹ぐらいまで高さがある狼か。
 飛びかかる狼の爪は払えたけど、牙が右肩に刺さる。

「くっはぁ! 一撃で3割かよ!」

 さらに噛みつかれているとHPがすり減っていく。
 左手に鉈を持ち替えて横っ腹を斬りつけたら、やっと離してくれた。

「私が倒しますわよ?」

「はい」

 こんな体たらくでは「俺が」なんて言えなかった。

「火は使いませんわ。ただ、一部取れなくなりますわよ」

 そう声をかけてくると、手甲とかち合わせて低めの金属音が鳴らす。その後、青白い湯気を体から立ち上らせ始めた。

「ふぅ」

 一足飛びに狼へ向かうと、相手も噛みつこうとしている。

「はぁ!」

 鈍い破裂音がしたかと思えば、そこら中にポリゴンが飛び散っていた。

「あぁ。これはダメなやつだ」

 ゆっくり近づくと首無しの狼が横たわっている。

「もう後ろは来ませんので、前方行ってきますわ。あとはよろしく」

「あっ。はい」

 残りHPは5割。
 ポーション飲むか……。

「マッズ! ふぅ。剥ぎ取りしよ」
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