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新しい都市

モウカさんはシティガール

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 ゴトゴトと牛バスの動く音はすれど、振動は無し。
 まだまだ敵も出てこないし、静かなものだ。

 すまん。
 静かというのは取り消させてくれ。

「フォオオオオ!」

 奇怪な鳴き声とともに、パシャパシャとスクショが連写される音が鳴り響く。

「ハッチさん。止めないの?」

「テッケンさんが止めたら良いじゃん」

「いや。モウカさんの担当はハッチさんだからさ」

 担当って何だ!?

「我々ではダメなんですよ」

「いや、そんなことは……」

「あるんです。私もそこらへんは謎だと思ってますが、そういうルールみたいですし」

 グスタフさんまで……。
 だけど、ただ止めるというのもなぁ。

「何か話題があれば、止めやすいんだけど」

「それなら。道中のことを知ってそうですし、それを聞きましょう」

 グスタフさんの言う通り、確かに知って風な話をしていたな。それで行こう。



「生エルフさいこー!」

「あ、あの」

「ああん?」

「うお。ちょ、ちょっと聞きたいことがありまして」

 めっさ怖いな。
 目が座ってるし、ゲーム内なのに角が生えてるような幻覚が見える。
 木工所での発言といい、この人の対応の答えが知りたいところだ。
 モウカさんの視線が、御者とこちらを何度も往復する。その後しばらく目を瞑った後ため息を吐いた。

「ふぅ。ちょっと落ち着きましたわ」

「へ、へぇ」

「それで、何か用ですか?」

「あぁ。街道について詳しそうだったので、それを聞こうと思いまして」

 今度は視線をあちこちへ振った後に、「行ったことが」とボソボソ呟く。
 ハッとした顔して、自分で驚いてるから、こっちも追いつけない。

「なるほど、もう言えるのですわね」

 どういうことだろうか?
 モウカさんが牛バスの真ん中まで歩き、俺たちの対面にある座席に腰掛けると、カバンから紙を取り出した。

「ここがドワーフ村」

 指した地点を見ると、草原に囲まれた街道。
 その地図の右下には『ドワーフ村』と書かれている。

「ここから、ズビビーっと進んでいって」

「それ地図の端っこ越してますよ!」

「ですから、そのズズズイーっと先まで行くと」

 もう一枚地図を取り出す。
 そちらには、『アルフヘイム』と書かれている。

「アルフヘイムに到着するのですわ」

「へぇ。かなり遠いんですね」

「この車ですと、5日くらいでしょうか」

 それを聞くとなかなか離れた距離だと感じる。

「ちょっと待ってくれ」

 グスタフさんが声を出し、テッケンさんも頷いている。

「期間まで知っていると言うことは誰かに聞いたか……」

「一度行きましたわ」

「やっぱりな。他にも行った人はいるのか?」

「いいえ。1人だけですわ」

 ん? だけど何人か集まらないとって言ってなかったっけ?
 グスタフさんもそこらへんを聞きたいんじゃないかな。

「言いたいこともわかりますわ。だけどそもそもが間違っていますの」

「どういうこと?」

「行ったのではなく。『アルフヘイム』から来たのですわ。ポックル村を辿り、エルフ村へ行き、ドワーフ村に着いたのですわ」

 おぉ!? ここらの妖精族の村制覇してるじゃないか!
 驚いて何も言えないな。

「まさか来たとは思わなかったな。種族も違ったりするのかい?」

「ポックルは変わりません。なぜアルフヘイムだったかという部分は、私も謎部分ですわ」

「ふむ。ランダムスポーンかな?」

「それも考えましたが、投稿もできないので調べようもありませんわ。私としては、ハッチさんの機獣の方がシークレットレベルは高いと思いますけどね」

 ヤマトか?
 そういえば出してなかったな。
 馬車の中で卵が獣になっていくのを眺めていると、前より展開速度が早くなってる気がした。これも成長したってことかな?

「この機獣はどの村にも、アルフヘイムにも居ませんわ」

 そうなのか。相変わらず顔を拭《ぬぐ》う動作が可愛い。

「くぅ。ハッチさん良いなぁ」

 そう言うのはテッケンさん。前から欲しい欲しいって言ってたもんな。
 そう言えば、アルフヘイムには図書館あるんだっけ。

「テッケンさん。都市には図書館あるみたいですよ」

「そうだったな! 図書館で探してみよう。確か言語だったよね?」

「えぇ。機械言語ですよ」

 モウカさんが眉間にシワを寄せている。

「どうかしましたか?」

「今何言語と言いましたか?」

「えっと機械言語ですよ」

「やっぱり、私には言語の前が聞き取れませんわ」

 ん? どういうこと?

「あぁ。それはドワーフしか聞き取れてないですよ」

「え? 工房のポックルたちからは、言われたこと無いけど?」

「ハッチさんの話はよく禁止ワード入ってるから、みんな気にして無いだけですよ。結構すぐに情報開示されることが多いですからね。いちいち突っ込んでると作業できないって」

 そんな話聞いたこと無いぞ。だけど、結構放置されてることは多いかもしれない。
 何か聞かれる時も話がまとまってるから、簡単に答えるだけだしな。

「雑貨屋工房に限らず、ドワーフ村のプレイヤーたちって優しいからな」

 その一言は納得できる。

「そうですわね」

 前言撤回だ! 一部優しく無い場所もある!
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