上 下
50 / 111
新しい都市

新たなクエスト

しおりを挟む
 釣竿の調子を見つつ数日遊んでいると、だんだん親方たちからのプレッシャーが強くなっていく。

 3日前の言葉だと「おう。クエストひと段落したか。おつかれさん」だった。
 昨日は「そろそろ祠に行ったか?」
 今日は「おい! いつまでいるつもりだ!」
 そう言われながら、祠へ行けと強制退去させられてしまった。

 仕方なく鉱山へ向かうと、グスタフさんと出会った。

「ハッチさん。ドワ活ですか?」

「いえ。早く魔法陣クエ受けろと追い出されちゃいましてね」

「あぁ。私と同じですね」

「え? グスタフさんも?」

 話を聞いていると、俺と同じ様に他のことをしていたら、強制退去となってしまったらしい。

「私はその帰りですけど、クエスト受けて良かったですね。ハッチさんもそう思うはずです」

 ニヤリと笑って、すたすたと歩いて行ってしまった。

「まったく言ってることがわからない」

 グスタフさんの言ったことを考えながら歩いていると、今度は村の出口でテッケンさんに遭遇する。

「お? テッケンさんもドワ活ですか?」

「ハッチさん。神官様のところに行く途中ですよ」

「俺も行くところだったんです」

 タイミングが良いということで、一緒に向かうことになった。
 もう途中の雑魚的も楽に倒せるが、2人の方が手間がかからなくて良い。
 2層に降りて祠へ向かう時、ふと3層はどうなってるのか気になった。

「テッケンさんは3層に行ったことありますか?」

「あー。行ったことはあるけど……」

 歯切れの悪い返事が返ってきた。

「えっと、なんか言えないやつですか?」

 たまにクエスト関係で、言えなかったりすることもあるんだよな。

「いや、言えるよ。簡単に言うと強過ぎて瞬殺されちゃったね」

「は? テッケンさんで?」

「そうそう」

 一応テッケンさんは、ずっと戦闘職をしていたから、スキルレベルは近くても動きはドワーフ村で一番良い。そんな彼が勝てなかったとなると、他の人も難しいんじゃないか?
 規格外の人はいるけどね。

「パーティだったらどうです?」

「いや、そういう問題じゃ無いかな。正面から盾越しに真っ二つにされちゃったよ」

「まさか!? 溶かされたとかじゃなくて?」

「真っ二つ」

 ハサミでチョキチョキと切る様に見せてくる。

「相手の名前は見れたんだけど、ソードマンティスだってさ。今までのカワイイ名前たちはどこへやら」

 名前からして物騒だな。テッケンさんもお手上げかー。
 聞いただけでも、行くのはまだまだ先になりそうだ。

「着いたね」

「神官様。クエスト受けにきましたー」

 奥からヌっと出てきたけど、そこ壁じゃないのか!?

「まだ奥があるの?」

「待っていたよ! 君は……君もだね!」

 え? テッケンさんも魔法陣クエ?

「お願いします」

 一緒にクエスト進められるなら心強い。
 神官様の後について、祠内の更に壁奥へ入る。
 そこには本棚がたくさん置いてあり、村長の家よりも多い。

「えっとどこだっけな。あった。これと……これね」

 神官様が持ってきた巻物は、俺とテッケンさんで結ぶ紐の色が違う。

「こっちが君」

 青い紐の巻物を受け取るとクエストが表示される。

《魔法陣入門クエスト:アルフヘイム魔法工房へ行け! が開始されました。》

「「はぁ?」」

 テッケンさんと声が重なってしまった。

「アルフヘイム魔法工房へ行け!」「アルフヘイム訓練所へ行け!」

 そこは違うのか。
 というか訓練所って、クエストも違う内容だったのかな?
 神官様はニコニコしたまま何も言わない。

「アルフヘイムって、エルフ村とかでは無くて?」

 そう言ったら、勝手にマップが表示されて、ルートが辿れるようになった。

「君たちは、そろそろ都市に行っても良いだろう。それはアルフヘイムに入るためと、工房と訓練所の紹介状だよ」

 つまりこれが無いと行けない場所だったのか。まさか、新しい場所に行くクエストだとは思ってなかった。

「これっていつ」
「明日出発の馬車を用意しているから、準備しておいてね」

 いきなり行けと言われてもな。やりたいことあったんだけど、強制クエストだったかぁ。隣のテッケンさんも苦笑いしている。

 祠からの帰り道で話していると、皮加工クエも一応区切りはついているけど、もうちょっと育てたかったと言っていた。
 俺の鍛冶もまだまだだけど、テッケンさんよりスキルも育っているのでマシだよな。弟子入り時期が遅かったから仕方ないんだけどね。

「強制だから仕方ないな。師匠も知ってるから聞いてみるよ」

「そうですね。じゃあ、また明日」

「またねー」

 雑貨屋に戻ると、親方が出迎えてくれた。

「おう。荷物準備しとけよぉ?」

「あぁ。だから早く行けって」

「今日行かなかったら、荷物無しだったな!」

 それは困る。屋根裏には素材が詰まっているんだ。
 親方に引っ越し収納BOXというのをもらった。

 荷物を大量に詰め込められて、新しい拠点が決まったら開くことができるようになる。と説明書きにあった。
 それに全てぶち込んだら、みんなに挨拶だ。

「いきなりだけど他の街に引っ越すことになった。先に行ってるから、育ったら来てくれなー」

 他の街というワードに引っかかったのか、予想以上に盛り上がってしまった。

「まさかの新都市!」
「掲示板にも載ってない情報だぞ!」
「しかし、ハッチ氏がいないとなると、一時的に生産レベルが下がるな」
「私たちが育てば良いのよ!」

 周りの弟子たちもぶち猫さんの言葉に呼応しはじめる。

「そうだな」
「よし!」
「いっぱい作ってやろう」

 なんか盛り上がっているな。

「あ、ハッチさん。着いたら少しで良いので配信お願いしますー」

「ん? 別に良いけど、ぶち猫さんが行った時じゃなくていいの?」

「そんなのまだまだ先ですよ」

「そう? じゃあ着いたら流してみるね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

freely fantastic online

nanaさん
SF
「この世界はただの仮想では無い第2の現実だ」 かつて誰もが願っただろう ゲームの世界が現実であればいいのにと 強大な魔王を倒し英雄となる自分の姿 仲間と協力して強大な生物を倒し達成感に包まれる自分の姿 ゲームの中の 現実とは全く違う自分の姿 誰もがゲームのキャラと自分を頭の中で置き換えたはずだ そんな中 ある会社が名を挙げた 『ゲームでは無く第2の現実となる世界を創る』 そんなスローガンを掲げ突然現れた会社 その名も【Fate】 【Fate】が創り出した 第2の現実となる世界となる舞台 【Freely Fantastic online】 通称FFO ごく普通のサラリーマンである赤鷺翔吾は後輩である新宮渚から勧められこのゲームを始めることとなる... *作者の自己満で書いてます 好きなことを好きに書きます それと面倒くさがりなので基本 誤字脱字の報告をしてくださっても直さないか後から纏めてやるパターンが多いです その点が大丈夫な方は是非読み進めてください

普通にやってたらイベントNPCに勘違いされてるんだけど

Alice(旧名 蒼韻)
SF
これは世の中に フルダイブゲーム 別名 VRMMOが出回ってる時 新しく出たVRMMO Yuggdracil online というVRMMOに手を出した4人のお話 そしてそこで普通にプレイしてた4人が何故かNPCに勘違いされ 運営も想定してなかった独自のイベントを作り出したり色々やらかし 更に運営もそれに協力したりする物語

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組

瑞多美音
SF
 福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……  「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。  「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。  「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。  リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。  そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。  出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。      ○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○  ※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。  ※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。

引退した元生産職のトッププレイヤーが、また生産を始めるようです

こばやん2号
ファンタジー
とあるVRMMOで生産職最高峰の称号であるグランドマスター【神匠】を手に入れた七五三俊介(なごみしゅんすけ)は、やることはすべてやりつくしたと満足しそのまま引退する。 大学を卒業後、内定をもらっている会社から呼び出しがあり行ってみると「我が社で配信予定のVRMMOを、プレイヤー兼チェック係としてプレイしてくれないか?」と言われた。 生産職のトップまで上り詰めた男が、再び生産職でトップを目指す! 更新頻度は不定期です。 思いついた内容を書き殴っているだけの垂れ流しですのでその点をご理解ご了承いただければ幸いです。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

VRMMOで神様の使徒、始めました。

一 八重
SF
 真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。 「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」  これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。 「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」 「彼、クリアしちゃったんですよね……」  あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~

NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。 「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」 完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。 「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。 Bless for Travel そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。

処理中です...