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ボロ竿だろうが釣竿に変わりなし

再び祠へ

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「魔法を覚えたいのか? ほれ」

 村長からのクエストで、何かおつかいさせられるのかと思えば、あっさりと紹介状が貰えてしまった。

「拍子抜けですねー」

「ハッチは村長クエやってないんだっけ?」

「成人式で許可をもらったので、やってないですね」

 今は、オトシンさんを祠へ案内しながら話している。
 俺が知ってる場所も、残りは祠だけだろうから、案内も最後になるかな? なんだかんだで、ここ数日は生産以外一緒に居た気がする。
 釣りトークもはずむし、なかなか楽しかった。

「うちの会社がここに参入するって言ったろ?」

「そういえばそんな話も」

「それでイベントを考えてるみたいでな」

「ほうほう」

「お前は参加しろ」

 ん? 勧誘されてるのかな?

「ちょっと良く聞こえませんでした。参加の勧誘ですか?」

「いや。参加が決まってると言ったんだ」

「なぜ!? 何も聞いてないですよ!」

「アタシが申し込んでおいたからな! あっはっは! 運営も喜んでたぞ!」

 イベント参加はしたいから良いけど、ちょっと強引すぎやしないか? それになんで運営が喜ぶんだよ。俺1人参加したくらいじゃ変わらないだろ。
 そんな考えが表情に出ていたのか、それを見たオトシンさんがニヤリと笑っている。

「ブログにイベント告知載せといてくれな!」

「しょうがないですね。今度データ送ってくださいよ?」

「おうよ!」

 見てる人は少ないだろうけど、頼まれちゃったし、一応載せておくか。だとしてもどんなイベントにするんだろうか? そう思って聞いてみたが、詳細は決まってないらしい。それが決まってからデータを送ってくれることになった。

 イベントのことよりも、俺は今、触りたい衝動を抑えるので必死になっている。
 俺の前を歩くクルスが尻尾をブンブン振りながら、オトシンさんに纏わりついている様子が見える。特に洞窟に入ってからは、1戦ごとご主人の顔を見て、褒めてくれと言わんばかりに体を擦り付けている。
 我慢出来ずに手が動いてしまった!

「もう諦めろよ。種族特性なんだろ?」

「オトシンさんにはわかるまい! これは生殺し状態なんですよ!」

「クルスは動き早いから、無理じゃないかなぁ」

 その毛並みに埋もれることは出来ないのか! あな口惜《くちお》しや!
 隙を見てクルスに触ろうとするが、全部回避されている。一向に成果無く、とうとう目的地に到着してしまった。

「ん? どこに祠があるんだ?」

「この壁がマボロシなんです。そのまま入れますよ」

 先にカモフラージュされた壁に入り込む。
 相変わらず、殺風景……じゃない。
 置物が増えてるな。
 テーブルやベンチに戸棚。鍋や包丁も置いてある。

「失礼します。かなり物が増えてますね」

「いらっしゃい。弟子が世話になるとか言って、教え子たちが置いていったんだよ」

「あぁ。そういうことですか」

 品質の良い物ばかりだから、アップデートで追加されたのかと思ったが、師匠の作品なら納得だ。

「ハッチ! 置いてくなよ」

「その子は?」

「あれ? 人族がいるのか? なんか様子は違うな」

 パッと見ただけじゃわからないけど、人族を見慣れてるオトシンさんには違いを感じるようだ。神官さんが待ってくれているので、とりあえず紹介してしまおうか。

「こちらは村長に許可をもらった人族で、魔法を覚えたいそうです」

「これが許可証だ……です」

 神官さんは、オトシンさんから巻物を受け取ると、軽く流し読みして頷いていた。その後、ポイっと巻物を投げ返し、オトシンさんは慌ててキャッチしている。

「わ! それで、教えてくれるのか?」

「良いですよ。あなたはスキルの種も無いみたいなので、まずは魔力の取っ掛かりですね」

「スキルがゼロまで行けばポイント使えるからな。助かるよ」

 ポイント? どういうことだ?

「オトシンさん」

「どうした?」

「ゼロまで行けばポイント使えるというのは、どういうことですか?」

「ん? ゼロから1は、ポイント1入れれば上げられるだろ?」

 なんだと……。
 つまり、俺の行った数日間の苦行はポイント1の効果だと?

「神官さま!」

 慈悲深き天使のような微笑みに見えるが、目尻がピクピクしている。

「あなたは試練を耐え抜いて成果を得たのです。貯めた力《ポイント》は魔法陣に注ぎ込みなさい」

 この神官は、どんだけ魔法陣を覚えさせたいんだ……。

「魔法陣? そんなのもあるのか?」

「ありますよ。あなたも魔法を覚えたら案内してあげましょうか?」

「ありがたい! 是非頼む」

 そう言って、神官さまとオトシンさんは訓練を始めてしまった。
 確かにポイントを他に振れるのは良いけど、あの苦行を考えると、ポイント振ってた方が良いだろ。今になって知るとは、残念でしょうがない。

「神官さまの言う通り、魔法陣に注ぎ込めば良いか」

「あなたもついでに訓練していきなさい」

「え? 俺は別に」

「大地魔法には『土弾』という攻撃がありましてね」

「お願いします!」

「よろしい。それではこちらで」

 いかん。
 つい反応してしまった。
 まぁ、新しい攻撃魔法を覚えられるなら良いか。
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