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ボロ竿だろうが釣竿に変わりなし

釣具を作るために3

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 竹林に入ると、5分もしないうちに敵が現れた。
 名前は『子いのしし』。1体のみだったので、囲んで攻撃したらすぐ倒せた。

「ナイーン! イジメみたいじゃないか!」

「グスタフさん落ち着いて、変なドイツ語出てます」

「僕ら紳士はこんなことをしたいわけじゃない!」

「ネズミを散々倒した人のセリフじゃないですよ」

 変なスイッチが入っちゃったな。確かに今のは簡単に倒せたけど、他のゲームの傾向からすると、イノシシ系は結構ヤバい。何がと言うと……。

「アウチ! やっぱりイジメじゃないです!」

「油断するから……はい。包帯です」

「ありがとうございます」

 重装備のグスタフさんですら一撃でHP1割を持っていかれた。軽装の俺とかテッケンさんだったら、倍は食らってるかもしれないな。やっぱり侮れない『子いのしし』。
 ちょっと気になるんだけど、なんで『うりぼう』にしないのかね? 運営も翻訳サボりすぎじゃないか? これも報告案件だな。

「テッケンさんはこの名前どう思います?」

 振り返るとテッケンさんがいない。どこ行ったんだ?

「プフィー! ハッチさんあそこ!」

「え? えぇ!?」

 跪いた状態で、テッケンさんの頭が埋まっていた。

「どういう状況よ!? とりあえず出さないと」

「掘りますよー!」

 グスタフさんにスコップを投げ渡し、それを使って2人で掘り起こすと、テッケンさんが安堵する。

「助かったー。 急に髪を引っ張られたと思ったら埋まっちゃってさ」

「これはトラップ?」

「いや、鳴き声が聞こえたからモンスターじゃないか?」

 すると穴から大きめのモグラが顔を出してきた。
『いたずらモグラ』

「ジッジッジッジッジ!」

 馬鹿にしたような声で、こっちを指している。

「イラつくやつだ!」

 テッケンさんの剣も、空を斬るだけ。
 その後も攻撃を続けたが、結局倒すまでに30分も掛かってしまった。穴にすぐ隠れるし、穴も4箇所も出来て、なかなか攻撃が当たらない。運良く、絡繰スリングの玉が当たったので、穴からはじき出すことが出来た。地上に出してしまうとしばらく動けなかったので、あとはタコ殴り。

「アルデンさんの仲間と行けって忠告、聞いておいてよかった」

「本当だな。まだ2種しか出てないのに、こんなに苦労してる」

 3人の意見は、しばらく通って、戦闘スキルも上げた方が良さそうと一致した。とりあえず、近場のタケノコ掘りを開始。テッケンさんにもスコップを譲り、一緒に掘ってもらう。俺とグスタフさんの分で、合計10本も必要なので、それなりに大変だ。
 タケノコ1本につき、敵1体というペース。竹も取りたいので、最終的にどれだけ戦ったか……。

「タケノコ完了! グスタフさんも良いかな?」

「こっちも終わりましたよ」

 竹は4本ずつと少なめだが、長さがあるので今回は十分だろう。
 モンスターの剥ぎ取り品についてだけど、いのしし肉と皮は均等に配分できた。
 モグラは微レアみたいで、あの後1体だけしか出てこなかった。剥ぎ取ったモグラの爪と毛皮は何かに使えそう。

「生産持ちの2人にあげるよ。その代わり良いの出来たら優先してくれ」

 テッケンさんに譲ってもらったので、有効な使い道を探すか。

 帰り道も『子いのしし』を何度か倒し、やっとこ入り口に辿り着いた。もう帰ろうかと思ったんだけど、ニョッキリ生えている3つのタケノコが気になる。

「ハッチさんがやりたいなら良いですよ」

 2人に許可を貰ったので、掘っていくと3本目を掘ってる最中に、スコップの耐久が残り少ないと気づく。だけど、もう少しで採れそうなので、そのまま掘ってしまった。

 掘り終わったと同時に鳴った音は、何度も工房で聞いた。甲高い金属音で、どういう状況かすぐにわかる。グスタフさんも知っている音だからか、すぐに振り向く。

「ハッチさん!」

「お、おおおおぉぉぉぉ! 折れたー!」

 一番性能の良いものを持ってきたのに、それを折ってしまった。2人に渡した物も、修理して使う予定なので、回収出来ない。

《アイテム破壊回数が一定数を超えました。アーツ【装備破壊】を覚えました。》

「え? 装備破壊?」

「んん!? 新スキルですか?」

「アーツ【装備破壊】を覚えました」

「おぉぉぉ!」「マジか!?」

 2人のテンションが高い。どうやって覚えるか教えろと言うので、前述されてた内容を伝える。
 グスタフさんは生産意欲が沸いたようだが、スキルが無いテッケンさんは難しい顔になった。

「やっぱり生産は必要かぁ。雑貨も武具も頼んだ方が良いしな」

「うーん。木工はお勧め出来ないし」

「やめてくれよ! ドワーフ村でアンタッチャブルなのあそこだけだぞ?」

 他にも薬屋も危険だと思うが、まぁ木工工房が一番か。
 あとは、……あそこはどうかな?

「テッケンさん!」

「ん? どうかしたか?」

「皮加工はどうですか!? 夜INも多いから、結構合ってると思うんですよ」

「そうか。皮加工は弟子もいなかったな」

 そう。事前情報で、皮加工店は夜開業だとわかっていたので、弟子が付かなかった。やりたい奴は、最初から人族や獣人族になったと聞いている。

「だから、これは渡しますね」

 預かった皮類は全部渡すし、グスタフさんも全部渡していた。

「うん。これで弟子入り頼んでみるよ……のじゃ」

 もうずっとやってなかったのに、思い出したようにお爺さんぽくするの止めなよ。
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