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何をするにも道具から

成人の儀式1

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 疲れ目を擦りながら、広場に向かって歩いている。
 見慣れた長閑《のどか》な道も、成人だと思うと気分が良くなり、頭が冴えてきた。

「よく考えると2度目の成人式か。これはこれで良いかもしれないな」

 独り言を呟きつつ歩いていると、数分で広場に辿り着く。
 グスタフさんの時の3倍は人が増えている。ここまで多いと、さすがに足を踏み出すのに躊躇する。

「早く来い!みんな待ってるんだぞ」

「あ、はい」

 親方に言われて1歩進むとイベントが始まった。

「みんな揃ったな。これより成人の儀式を行う。成人する者は前へ」

 言われるがまま長老のところに行くと、前回同様金属のローブを渡されて、装備を勧められる。
【小型地竜のローブ】
 すごい名前だけど、装備したら性能もすごかった。
 装備するだけで肉体だけでなく体力の自然回復も強化される。さらに、火と土の耐性が付与された。

《土耐性が0,1上昇》
《敏捷が0,1上昇》
《魔力が0,1上昇》
《魔力操作が0,1上昇》

 装備するだけで色々が上がってしまった。
 成人の儀式とは偉大なり!

「うむ。では皆の者。武器を掲げるのじゃ!」

 待ってました!
 俺の自慢の一品である鉈を掲げる。
 ふふん。良いだろう。

 同じ工房の奴らは大喜びし、武具店の弟子達は反応無し。
 くそ!この感動はお前達にはわからないか。

 今度は地響きが鳴る。
 しばらくするとおさまり、例のドワーフがやってきた。

「迎えにきた。成人する者よ。名前を言え」

「ハッチ!」

「これよりある場所へ連れていく。そこで儀式を続ける。良いな?」

「はい!」

 待ってました。この先が気になってたんだよ。
 いくらグスタフに聞いてもノイズが入ってわからなかった場所。
 案内のドワーフと闇の中に入ると、しばらくトンネルの中を歩かされた。
 数分は歩いたかもしれない。
 その中で、例のドワーフの容姿が、少しずつ変わっていることに気づく。
 それまでのずんぐり体型で筋肉質だったのが、すらりと背が高くなり、体が引き締まった。
 体は細くなったのとは逆に威圧感が増し、隣から良くわからない気配が、俺を押しているような感覚がある。
 そこで俺が気づいたのを感じ取ったのか、声をかけてくる。

「気づいているだろうが、説明は着いてからだ。もうすぐだぞ」

 指の先を見ると光が大きくなり、もうすぐ出口だとわかる。
 さぁ着いたと思えば、そこは洞窟の中だった。
 ただし、巨大なドーム状の中に作られた城と街。

「ようこそ。地下ドワーフ王国へ!」

「ドワーフ王国…すげー」

「そうだろう。今回は特別だが、いずれ自力で辿り着くんだな」

 ここに来れるってことか!
 辺りを見渡すと街だけでなく、地底湖もある!
 釣りできるじゃないか。
 ここに来る理由が出来たな。

「まだ案内は終わってないぞ。これから教会へ行く」

 そういえば村に教会無かったよな。
 ここにあるから作らなかったのかな?

 街中を先導されて進んでいると、周りのドワーフ達がクスクス笑っている。
 何か変な格好してるかな?

「気にするな。縁起《えんぎ》の良い時は笑うのが習わしだ」

「そうだったんですね。知りませんでした」

「これは地下だけの風習だからな。地上じゃやってないだろう」

 確かにそういう風習は無かったな。
 街の中央手前に大きな祠《ほこら》が作られており、良く言うとそこだけ自然な雰囲気がある。剥き出しの洞窟っぽくもある。

「この中で洗礼を行うんだ。俺はここまでだから、中に入ったら司教様の言葉に従え」

「はい」

 中に入っていくと、真っ白なローブを着た小さな女の子がいる。
 他に人を探しても見当たらない。
 何かの手違いか司教様がいないタイミングだった?

「司教様いないのか。すみません。司教様はお出かけ中ですか?」

 女の子であっても初対面だから敬語を使う。
 ただの人見知りなだけなんだけどな!

「…」

「あれ?聞こえませんでした?司教様はお出かけ中ですか?」

 何かの手違いか、まだ来ないし、女の子は顔を赤くしている。AIでも可哀想だろうに。

「私だ…」

「え?」

「私だ!」

 何を言いたいのだろうか。

「私が司教だ!バカ者!」

「ぐっはぁ」

 その言葉と共に女の子が持っていた聖典で脇腹を叩かれた。
 女の子の攻撃だから、一瞬大丈夫かと思ったが、全然大丈夫じゃない。
 俺のHPゲージがギュンギュン減っている。
 1撃で残り1割まで減らされて、すでに虫の息状態。
 バッドステータスの弱体化までついて立ち上がることすらできない。

「た、たしけて」

「おい!フーギン!いるんだろう!」

 少女司教様が叫ぶと、外からさっきのドワーフが入ってきた。

「今回は成功したか。はっはっは。お前面白かったぞ!」

《称号:フーギンの信頼 を獲得》
《称号:シルバーダンデの慈悲 を獲得》

 良くわからないが称号ゲット。
 しかし動けない。
 指だけを動かしてヘルプと地面に書く。

「むむ。少しやり過ぎたか、ハイヒール!」

「お?おぉ!治った」

 一瞬でHP全快!回復魔法も見れたし凄い良かったな。
 でも、生かすも殺すも自由か。
 怒らせないように気をつけよう。
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