黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-

八束ノ大和

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第6章 帝国編

第124話 褒美

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 アルクス達の活躍により、屍兵の脅威は去り、真紅龍からも認められた彼らは、巨人の里に平穏が戻った。新たに魔王との関係も生まれアルクス達の旅は次なる段階へと進もうとしていた。

『アルクス、お主達のこの度の活躍に対して褒美を与えよう。』

真紅龍の声が、神殿内に響き渡る。龍王から授かる褒美がただの宝物であるわけはないと理解しているアルクス達は覚悟を固め、祭壇の上へと立った。

 『ありがとうございます、覚悟はできています。』

アルクスが発言した瞬間、真紅龍の巨大な爪が、アルクスの胸に突き刺さった。激痛と共に、何かが体内に流れ込む感覚。アルクスは悲鳴を上げたくなるのを必死で堪えた。

 『ぐっ…!』

 体の中が熱く、まるで張り裂けそうに力が膨れ上がる。アルクスの体は急速に変化を始める。目の色が光り輝く黄金色に変わり、肌には微かに鱗のような模様が浮かび上がる。そして周囲の龍脈が活性化し始め仲間達にも力が注がれていく。
 意識が遠のき、様々な記憶が走馬灯のように駆け巡る。ルーナとの子供時代、ウィルとの修行、アリシアたちとの出会い、そして旅の数々…。そして自分のものではない、各地の龍王から受け継いだ龍脈の記憶も混ざっていた。

「アルクス!」

 アリシアの叫び声が聞こえた気がした。だが、それも遠のいていく。そして、アルクスは意識を失った。

『1日もしたら目を覚ますだろう。』



翌日

『あっ、目を覚ましたよ!』

皆に見守られる中、アルクスはゆっくりと目を開けた。

『目覚めたか。』

真紅龍の声に、アルクスは身を起こす。

「僕は…」

意識が朦朧としているのかアルクスは現状を把握できていない様子だった。

『龍脈の記憶に触れて混乱しているのであろう。さて、仕上げといこう。』

 そう言うと、真紅龍は虹色に輝く宝玉を差し出した。

『これを飲み込め。お前の成長の鍵となろう。』

 アルクスは躊躇なくそれを飲み込んだ。すると、アルクスの体が光だし、辺り一帯が眩い光に包まれた。

『ふむ、成功だな。さあ、我のもとへ来い。』

 アルクスは立ち上がり、真紅龍の元へと向かった。

『お主は全ての龍王と出会い、試練を乗り越えた。そして世界の礎とまではいかないが、その一部となった。これからは我ら龍王と共に世界の調和を保つ役割の一端を担うことになる。』

真紅龍の言葉に、アルクスは深く頷いた。

『気づいているだろうが、もはやその体はただの人間とは呼べぬ。願いを叶えるための膨大な時間も力も手にしたと言えるだろう。再度問おう、お主は何を為す。』

アルクスは、迷いなく答えた。

『与えられた力ではなく、個々人の努力で勝ち取った力で人々が幸せに生きる世界を作ります。』

 真紅龍は満足げに頷いた。

『合格だな。力に溺れ、世界を手にするとか言っていたらかっさばいていたところだ。』

 その言葉に、アルクスは苦笑した。真紅龍は続けた。

『御子も仲間達も龍脈からの力が今まで以上にお主から注がれることで、力を発揮できるはずだ。御子はそこらの成龍並みのことはできるはずだぞ?そろそろ保護者の庇護を離れ、相棒となるべく自分で成長するタイミングかの。さて、これからどうする?』
『まずは土地を探したいと思います。三大国の影響下にない手頃な島があると良いのですが…』

 真紅龍は、しばし考え込んだ後、口を開いた。

『ある場所に、龍脈の力が溢れ出す人の住まぬ島がある。そこを案内しよう。』

アルクスが頷くと、一人の長身の若者が前に出た。

『アルクス様、私はパル・ウィースと申します。我が一族、そして我が父パガンが世話になった礼として、私にもアルクス様の夢を手伝わせていただけないでしょうか。』

彼は人間としては長身だったが、巨人の一族と聞き他の巨人達よりもとても小さかった。
パルの申し出に続いて病床のパガンが無理を押して起き上がってきた。

『パルは私の息子です。こんな小さな形ですが、巨人族です。力は人並みにありますし、石工の技術はなかなかのものです。ですが、我が一族でこの大きさですとなかなか肩身の狭いものがありまして…この地でその能力を腐らせるよりは外の世界の方が活躍できるでしょう。どうか息子の事をお願いできないでしょうか。』
『パガンさんの息子さんだったんですね。ありがとう、パル。君の力を借りられるのは心強いよ!あと僕に様付けは不要だよ、アルクスって呼んで欲しいかな。』
『わかった。アルクス、よろしく!』

アルクスが笑顔で答えると、パルは嬉しそうにはにかんだ。

その横で真紅龍は、アーラとスペルビアに向かって言った。

『さて御子と竜人よ、お前たちは少しここに残れ。御子には龍装に必要な力を、竜人には竜装の正しい扱い方を授けようではないか。魔王との関わりができた以上、強くなるに越したことはない。心配するな、いずれ再会の時は来る。それまでの間、お前たちはそれぞれの道を歩むといい。』

アーラは少し寂しそうな表情を浮かべたが、納得した様子だった。そしてアーラよりも再度スペルビアと離れることになったことを悲しむバルトロがいた。

『先に場所を見つけて、これからの土台作りをしておくよ。アーラも頑張って!』

アーラは覚悟を決めて表情で頷いた後、人型になるとアルクスに抱きついた。

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