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第6章 帝国編
第114話 虜囚
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アルクスが気付くとそこはとても暗い場所だった。
おそらく室内であることはわかるのだが、外からの光も一切入っていないため、時間の感覚もなかった。
「おっ、兄ちゃん気がついたのか。全然動かないから死んだのかと思ってたよ。」
アルクスは声がした方向を見つめると、どうやら複数の人間がいることに気がついた。
「王国語… ここは王国内ですか?」
「いや、ここは帝国の帝都の地下にある牢屋さ。この前の戦争の時に逃げ遅れて結構な人数が連れて来られたんだよ。お前さんは1人だけ放り込まれていたが、王国語がわかるってことは王国民なんだろ?一体何したんだい。」
周囲にいた他の人達もあまり気力は感じられなかったものの、アルクスが何故今頃になって1人だけ連れてこられたのかは気になっている様子だった。
「ちょっと国境の橋を渡ろうとしたら、国境警備兵に捕まってしまいまして。仲間達はなんとか逃げられたと思うのですが。」
「この時期にあの橋を渡ったのか?そりゃあ仕方ないだろ。帝国に何か用でもあったのか?」
「探索者をしていると仕事柄色々とありまして。以前帝国に来た時は問題なかったのですが。」
探索者という発言に反応を示した人が多くいた。
「お前さん、探索者っていうともしかしてそれなりに強いのかい?いや、でも捕まってやってくるぐらいだからそうでもないのか。」
強いのかという質問に対して、アルクスは考え込んだ。
今までそれなりに努力をして強くなったという自負があったものの、多勢に無勢でどうしようもなくなるという経験をしてしまったため、その自信は揺らいでいた。
「おいおい、どうしたんだ。もしかして結構弱いのか?」
「1対1なら、そんなに弱くはないかと思います。でも多数を相手にするのはまだまだ全然ですね。ここに来る前に思い知らされました。」
「そうだよな。そう簡単に希望の光が灯るわけはないか…」
話を聞いていた人達は皆落胆した様子だった。
「脱出でも考えていたんですか?」
「あぁ、ほとんどの奴らはもう諦めているみたいだが、俺達はまだ諦められなくてな。こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ。だがこの牢屋に来てから皆魔術が使えなくてな。腕っぷしが強いやつは別の場所に連れて行かれて、打つ手がなくてどうしようもなかったんだ。」
アルクスはその話を聞いて魔術を使えるか、自分も試してみた。
確かに魔術が発動しないというよりも、体内で魔力を上手く練れない様な感覚だった。
然しながら闘気に関しては問題なく練ることができた。
ならばと今度は龍脈を探ってみた。
帝都の下にも龍脈を感じ取ったアルクスは手元に武器がなかったため、試しに床に向かって拳を叩きつけたところ、大きな穴が出来上がった。
その時、少し大きな揺れが発生したため、看守達は「地震か!」と戸惑い、アルクスが大穴を開けたことに気づく者はいなかった。
「魔術も使えないのにどうやって…」
「もしかして私達逃げられるの…?」
アルクスの力は囚われた者達にとって希望の光を灯すのに十分な一撃であった。
「どうやらお前さんはどうやら俺達普通の王国民とは違うみたいだな。さすがは探索者ってことか。」
「すまないが、俺達の希望をお前さんに託させてはくれないだろうか?」
「僕もやることがあるので、ずっとここにいることはできないですし、僕が協力できることであれば。」
そうしてアルクス達は牢からの脱出を企てていた数名と脱出経路やどのタイミングで脱出を行うのかといった計画を詰めていった。
アルクスがフルーやナトゥ達精霊を呼び出すことで牢の外側の情報も集めることができた。
以前帝都に来たことがある者も数名いたため、外へ出た後にどこへ向かえば良いかなども決まった。
そして、準備が整い翌日の夜間に決行することが決まり久しぶりの緊張感と共にアルクスは寝入るのだった。
おそらく室内であることはわかるのだが、外からの光も一切入っていないため、時間の感覚もなかった。
「おっ、兄ちゃん気がついたのか。全然動かないから死んだのかと思ってたよ。」
アルクスは声がした方向を見つめると、どうやら複数の人間がいることに気がついた。
「王国語… ここは王国内ですか?」
「いや、ここは帝国の帝都の地下にある牢屋さ。この前の戦争の時に逃げ遅れて結構な人数が連れて来られたんだよ。お前さんは1人だけ放り込まれていたが、王国語がわかるってことは王国民なんだろ?一体何したんだい。」
周囲にいた他の人達もあまり気力は感じられなかったものの、アルクスが何故今頃になって1人だけ連れてこられたのかは気になっている様子だった。
「ちょっと国境の橋を渡ろうとしたら、国境警備兵に捕まってしまいまして。仲間達はなんとか逃げられたと思うのですが。」
「この時期にあの橋を渡ったのか?そりゃあ仕方ないだろ。帝国に何か用でもあったのか?」
「探索者をしていると仕事柄色々とありまして。以前帝国に来た時は問題なかったのですが。」
探索者という発言に反応を示した人が多くいた。
「お前さん、探索者っていうともしかしてそれなりに強いのかい?いや、でも捕まってやってくるぐらいだからそうでもないのか。」
強いのかという質問に対して、アルクスは考え込んだ。
今までそれなりに努力をして強くなったという自負があったものの、多勢に無勢でどうしようもなくなるという経験をしてしまったため、その自信は揺らいでいた。
「おいおい、どうしたんだ。もしかして結構弱いのか?」
「1対1なら、そんなに弱くはないかと思います。でも多数を相手にするのはまだまだ全然ですね。ここに来る前に思い知らされました。」
「そうだよな。そう簡単に希望の光が灯るわけはないか…」
話を聞いていた人達は皆落胆した様子だった。
「脱出でも考えていたんですか?」
「あぁ、ほとんどの奴らはもう諦めているみたいだが、俺達はまだ諦められなくてな。こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ。だがこの牢屋に来てから皆魔術が使えなくてな。腕っぷしが強いやつは別の場所に連れて行かれて、打つ手がなくてどうしようもなかったんだ。」
アルクスはその話を聞いて魔術を使えるか、自分も試してみた。
確かに魔術が発動しないというよりも、体内で魔力を上手く練れない様な感覚だった。
然しながら闘気に関しては問題なく練ることができた。
ならばと今度は龍脈を探ってみた。
帝都の下にも龍脈を感じ取ったアルクスは手元に武器がなかったため、試しに床に向かって拳を叩きつけたところ、大きな穴が出来上がった。
その時、少し大きな揺れが発生したため、看守達は「地震か!」と戸惑い、アルクスが大穴を開けたことに気づく者はいなかった。
「魔術も使えないのにどうやって…」
「もしかして私達逃げられるの…?」
アルクスの力は囚われた者達にとって希望の光を灯すのに十分な一撃であった。
「どうやらお前さんはどうやら俺達普通の王国民とは違うみたいだな。さすがは探索者ってことか。」
「すまないが、俺達の希望をお前さんに託させてはくれないだろうか?」
「僕もやることがあるので、ずっとここにいることはできないですし、僕が協力できることであれば。」
そうしてアルクス達は牢からの脱出を企てていた数名と脱出経路やどのタイミングで脱出を行うのかといった計画を詰めていった。
アルクスがフルーやナトゥ達精霊を呼び出すことで牢の外側の情報も集めることができた。
以前帝都に来たことがある者も数名いたため、外へ出た後にどこへ向かえば良いかなども決まった。
そして、準備が整い翌日の夜間に決行することが決まり久しぶりの緊張感と共にアルクスは寝入るのだった。
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