黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-

八束ノ大和

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第6章 帝国編

第113話 国境警備兵

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『止まれ。ここから先は帝国の領土だ。何用で王国から帝国へと入ろうとしている。』

もう少しで橋を渡り終えるというところで、アルクス達は獣人らしき帝国兵に止められた。

『僕達は探索者パーティ「碧龍の翼」と言います。活動の拠点を王国から帝国に移そうと思っていまして。』
『なるほどな。それにしてもお前、帝国語が上手いじゃないか。今までここに来たやつらは話が通じないから全て追い返していたんだ。』
『以前「雷吼狼牙」という帝国を中心に活動されている探索者パーティの方々に世話になりまして。その際に色々と教えていただきました。』
『雷吼狼牙!彼らは帝国内では有名な探索者だな。特にリーダーのヴォルナーさんは俺達帝国兵の中で密かに憧れている者も多いんだ。』

 アルクスが「雷吼狼牙」の話を出すと、帝国兵は興奮気味に食いついてきて、他の帝国兵も集まってきて話が盛り上がっていた。

「アルクスの新たな一面を見た気がするな。」
「でも楽しそうだよ。アルクスは「雷吼狼牙」の人達に対する憧れが強いもんね。」

バルトロ達がアルクスが楽しそうにしているのを眺めていると、遠くから1人の帝国兵が近づいてきているのが見えた。

『帝国民以外でヴォルナーさんの良さが分かる同士に出会えるとは思ってもいなかったよ。
 通してやりたいんだが、今王国から入るのはなぁ。上官がなんていうか…』
『おい、何を騒いでいるんだ。何かあったのか?』
『あ、隊長お疲れ様です。彼らは王国から帝国に拠点を移そうとしている探索者なのですが、通しても大丈夫でしょうか?』
『この時期に王国から入ってくる者を通すわけにはいかないに決まっているだろう。何かあったら責任を取るのは誰だと思っているんだ。王国からの密偵ということにして捕らえておけ。おい、聞こえているのか!』

後からやってきた隊長の指示により、他の帝国兵達は嫌そうな顔をしつつもアルクス達を取り囲み、アルクス達も臨戦態勢を整えた。
そして隊長と共にやってきた増援により、徐々に取り囲む帝国兵の数は増えていった。

『ヴォルナーさんの良さを理解する同士を捕らえたくはないんだが…すまない、上の命令に逆らうわけにはいかなくてな。』
『こちらもそう簡単に捕まるわけにはいかないですよ!』
「やっぱりそう簡単には通れないか。」
「あの隊長さえ倒してしまえばみんな通してくれないかな…」

戦いの火蓋が切られたとは言ってもそれは静かな戦いだった。
帝国兵達は目立った武器は持たずに、皆大盾を装備してアルクス達を包囲する輪を徐々に小さくしてきた。
アルクス達を抑え込もうと突撃してくる兵もいるが、それはなんとかいなしていった。
だが、アルクス達4人に対して、帝国兵の数は多く、その包囲から逃れる術はなく、周囲を囲まれてしまった。

「ここは橋の上だから、やっぱり龍脈が通っていないみたいだね。」
「全力を使えないとは言っても、あまりにも劣勢な気がするな。全然こちらの攻撃が響かない。」
「この帝国兵達は魔術を使ってこない代わりに闘気の扱いがうまい気がする…」

アルクス達は今までに戦ったことのない、盾を使った闘気を駆使する相手に攻撃を受け流され、苦戦を強いられていた。

『どうだ!我が国境警備兵は戦争に参戦した攻めるだけの兵士達とは違い、ここを通さないためにも帝国で随一の守備力を誇るのだ!』
「確かにこの戦い方は勉強になるな。」

敵の隊長の口上に、同じ盾使いとしてバルトロは感心していた。

「でもこのままだと皆捕まっちゃうよ。アルクスどうしよう。」
「ここは一度逃げるしかないかな。アーラ、巨大化してみんなを乗せて飛ぶことはできる?」
「キュー」

飛び出してきたアーラの答えに対して、アルクスは持てる限りの龍気を注ぎ込んだ。

「後は僕がなんとかする、飛んで!」

アーラは巨大化しアルクス以外の3人を背に乗せると空高く飛び上がった。
アルクスはアーラに群がろうとする帝国兵達を薙ぎ払うも力を使い切り、倒れてしまった。

「アルクスー!」
「今は一旦逃げるぞ。アルクスは大丈夫だ。必ず後で助けに向かう。」
『追え、飛行部隊を呼んでこい!』

アリシアの悲痛な叫びが響くも、アーラは急激な速度ですぐにアルクス達が見えないところまで飛び去っていった。
そして意識を失ったアルクスは帝国兵達に担ぎ上げられて捕らわれの身となってしまった。

その時、高台からアーラ達が飛び去るのを眺める1人の影があった。

「アルクス君が捕まってしまうとはね。早めにアリシアさん達に助け出してもらわないといけないかな。」



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