77 / 128
第4章 天空編
第77話 腕試
しおりを挟む巨大な龍人は玉座へと座ると変身を解き、より巨大な竜の姿になった。
龍王達とは違い、その威容はドラゴンと呼ぶべき姿だった。
『そういえばまだ我が名を名乗っていなかったな。私はこの島、そしてこの国の王である竜王・天空竜!
さて、龍の御子と龍騎士らよ、まずは何から話すとしようか。』
天空竜は先程までの龍人の姿から竜の姿になったことでリラックスした様子で、それまで放っていた威圧感が薄れた。
だが、天空竜が話をしようというところで1人の若い龍人が前に出て訴えてきた。
『お待ちください!御子様はまだしも、龍騎士を名乗るこの者らにその資格があるのか見極める必要があるのではないでしょうか。』
『何を申すか!この島まで辿り着いたことこそ、その力がある証ではないか!客人達に対して無礼にも程があるぞ!』
若い龍人の申し出に対してデリウムが激昂するも天空竜は面白そうにニヤニヤとした表情を浮かべていた。
『ふむ、確かに龍騎士達の実力を見ないことに納得できないのもわかる。黙っているが他の者達もそうであろう?
ではお主が見極めてみろ。そうだな、国の皆が見れる広場でやった方が今後の手間も減るだろう。
申し訳ないが客人達もそれで良いだろうか?』
『ありがたき幸せ!』
天空竜の先程の表情は楽しそうな催しができることを喜んでいる様に見えた。
良いだろうかとは言いつつも、有無を言わせぬ空気になっていたため、アルクス達は受け入れるしかできなかった。
『わかりました。ここを案内された理由もわかっていないですが、実力を見ないと皆さんが納得できない以上頑張りたいと思います。』
『では善は急げだ。すぐ様皆に連絡し、中央広場へ向かうぞ!』
天空竜の指示で龍人や竜達は飛び立って我先にと広場へと向かって行った。
アルクス達も再度アーラに乗せてもらい、広場の中央へと降り立った。
『ここで戦うならわざわざ一度宮殿に行く必要はなかったんじゃないかな?』
『それはそうだが、段取りとかそう言うものがあるんじゃないか?いきなり降り立った俺達に喧嘩吹っ掛けるわけにもいかないだろ。』
『バルトロ兄さんの言う通りだね。格式とかを大事にしているのかもしれない。国や種族によってもそういうのは違うからね。』
無駄な手間をかけさせられたことにアリシアがぼやき、バルトロとアルクスが国ごとの段取りの重要性を説いているとクリオがアルクスの裾を掴んでいた。
『アルクス、今回私は参加しなくて大丈夫かな。魔術もあまり使えないし、多分役に立たないと思う…』
『そうだね、無理して怪我でもしたらよくないし今回は3人で戦うよ。』
環境的にクリオは戦えないため、3人で戦うことを決めたところ、先程の若い龍人が2人の龍人を連れてきた。どうやら3対3の戦いになる様子だった。
『待たせたな。改めて、我が騎士として授かった名はスペルビア。お前達を打ち負かす者の名だ。
すぐに地上へと帰ることになるだろうが、覚えておくがいいだろう。』
スペルビアは負けるはずがないといった様子で挑発してきて、残りの2人もニタニタと笑っていた。
『僕はアルクス。後ろにいるのがバルトロマエウスとアリシアです。貴方達に敗北を教える名前ですので覚えておいてくださいね。』
『なんだと、貴様…!』
『アルクスも挑発なんてするんだ…』
『言われっぱなしなのもつまらないしね。』
アルクスが挑発に対して売り言葉に買い言葉で返すとスペルビア達は激昂している様に見えた。
『おぉ、どうやら場も暖まって来た様子だし始めよう。龍王に認められた龍騎士達と天空竜の側近による腕試しだ。殺しは禁止だが、それ以外なら何をやっても良かろう。では始めよ!』
『こんな奴ら速攻で倒してやるぜ!』
『龍装鎧!』
開始の合図とともに少し大きめ龍人が、見た目に反して素早く突進をしてきた。
アルクス達3人は合図に合わせて龍装鎧を纏い、いつもの様にバルトロが前に出た。
激しい衝突音がして龍人の突進をバルトロが受け止めた。
『なんだ、大したことないな。同じ龍人ならウィルドっていう奴の方が強かったぜ。』
『なんだと、貴様!私の本当の力を見せてやる!』
龍人は怒りに合わせて力を込めるもバルトロは難なく受け続けた。
『だらしが無いですね。戦いには美しさも必要ですよ。こんな風にね!』
もう1人の龍人が空中に飛び上がると回転しながらアリシアに向かって何かを投げつけてきた。
『狙いが甘いよ!』
アリシアは全てを短剣で撃ち落とし、さらに油断していた相手の顔に球をぶつけるとその瞬間に頭部が紫色の煙に包まれた。
『な、なんだこれは!?』
『アルクスが作ってくれた毒草とか痺れるキノコとかを混ぜたやつ。少ししたらベタベタするから簡単にとれないはずだよ。
どう、美しくなったんじゃない?』
『この小娘が、私の美しい顔に…!』
龍人は激昂して手当たり次第に投擲するも、アリシアは当たりそうな攻撃だけ撃ち落としつつ少しずつ相手に攻撃を当てて体力を削っていた。
『2人とも何をしているんだ!遊んでないで本気を出せ!』
スペルビアは残り2人の戦いぶりに苛立ちを隠せなかったが、アルクスに向かって両手の爪を伸ばして斬りかかった。アルクスも双牙刃の両の刃で切り結んだ。
『あれだけ余裕を見せておいてこの程度ですか?』
『なめるなよ小僧!龍人の真の力を見せてくれる!』
スペルビアは後ろに跳躍した後、息を吸い込んだかと思うと炎のブレスを吐き出した。
『アルクス!』
炎のブレスに飲み込まれたと思ったアルクスだったが、なんとも無い様子であった。
『アチチチ…ふぅ、なんとかなった。足元から水の壁を作り出せるか試してみたけど、上手くいって良かった。闘技の練習ももっとしないとな… それじゃあ反撃行くよ!』
ブレスを受けて無事だったことに驚きを隠せずに動揺しているスペルビアに向かって走り出して跳躍した。
『トニー、お願い!』
召喚した後、ずっと近くにいたがすることがなかったトニーは急に自分の仕事の番だとやる気を出し、アルクスの双牙刃に向けて雷を放った。
トニーの雷を受けてバチバチと音を立てて放電する双牙刃。
アルクスがスペルビアに向けて斬りつけると余程鱗が硬いのか、火花を撒き散らした。
衝撃により膝をついた様子だったが、さらにトニーがスペルビアに向けて纏っていた雷を放ち、それがトドメとなりスペルビアは倒れた。
それが合図となった。
バルトロはいまだに龍人からの攻撃を受けて、耐え続けていた。
『くそっ、早く倒れやがれ!』
『お前の力はよくわかった。次はお前がそれを味わうといい。喰らえ!』
バルトロは今まで受けた攻撃を衝撃波として倍にして跳ね返した。
突然の衝撃に耐えられなかった龍人はそのまま気を失ってしまった。
『お前が強いってことはこれでよくわかったぜ。弱いと威力が出ないからな!』
バルトロはただひたすらに攻撃を受け、それを溜めて跳ね返すだけで勝利してしまった。
アリシアは雨の様に降ってくる敵の攻撃を必要なだけ撃ち落として、たまに威力の乗っていない攻撃を当てるということを繰り返していた。
『アルクスも勝ったみたいだし、そろそろいいかな。終わりにしよっか。』
『流石に疲れが出て来たみたいですね。そうですね、これで終わりにしましょう!』
龍人は攻撃を1つに絞り、力を溜めて矢を放った。
だが矢が地面に突き刺さった時、その場には誰もいなかった。
『何、どこへ消えた!?』
『後ろだよ!』
龍人が気づいた時には頭上から叩きつけられて地面へと墜とされていた。
『はぁ、ちょっと疲れたかも。』
『そこまで!これにて腕試しは終了とする。龍騎士達の勝利だ!』
そうしてスペルビアを含む3人の若い龍人は敗れ、アルクス達3人の龍騎士が勝利をすることとなり、観客達から割れんばかりの拍手が響き渡った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる