黎明の翼 -龍騎士達のアルカディア-

八束ノ大和

文字の大きさ
上 下
51 / 128
第3章 連邦編

第51話 闘技

しおりを挟む
翌日出来上がった武器を受け取りに武器屋に行った。

『おぉ、お前さん達か。ちゃんと武器に闘玉を仕込めたぞ。
 ほら、とりあえず試し切りをしてみな。』

僕達は闘玉によって改造された武器を手に武器屋の裏庭に出て試し切りを行うことにした。

『親方気合い入っちゃって、あの後ずっと武器をいじってたんですよ。
 お陰でこっちは眠いのなんのって。ふわぁ…』
 
 店員さんはそう言うと寝てしまった。
 闘気を込めて武器を振るうと以前よりも武器に集まる闘気が増加したような手触りを覚えた。
 アリシアとバルトロ兄さんも同じことを感じたらしく、武器の強化は成功したらしい。

『おぉ、闘気の使いこなしは十分なようだな。ちゃんと闘玉で闘気が増幅されてる。
 さて、これで終わらないのが闘玉のすごいところだ。
 実は闘気使いの中には闘気に炎や雷を乗せることができるとんでもない奴らがいるんだが、闘玉と組み合わさった武器でも闘気に炎や雷を乗せることができるんだ。
 ちょっと最初の関門が難しいんだが、まずは精霊に会って闘玉に力を込めてもらう。
 それだけでしばらくの間、その精霊の力を闘気に乗せることができるようになるってわけだ。
 まぁ、精霊なんてそうそう会えるもんじゃないが、もし大森林に行くなら運が良ければ会えるかもな。』
 
親方が言うには、この闘玉で強化された武器を使えば以前ヴォルナーさんが見せてくれた雷牙のように、闘気に雷などを乗せることができるらしい。
確かヴォルナーさんは雷の精霊に愛されていると言ってたから僕の場合は水や土を乗せることができると言うことだろうか。
あまり武器を用いた接近戦で使えるイメージがないけどものは試しでとりあえず呼んでみるとしよう。

フルーとナトゥを召喚してみた。
「ナンジャラホイ」「キョウハナニスル」
「実は2柱の力をこの闘玉に込めて欲しいんだけど、それってできるかな?」
「トウギョクカ、ワカッタ」「カンタンダヨ」

フルーとナトゥから発せられた青と黄の光が武器の闘玉の中へと注がれていく。

そして親方は驚愕の表情でその様子を眺めていた。

『親方、どうしたの?』
『精霊はそんなに珍しいものなのか?』

一連の流れの途中、アリシアとバルトロ兄さんが親方の相手をしてくれていた。
普通はエレメントの源泉以外で精霊と会えることはほとんどなく、とても貴重なことらしい。
親方も鉱山で土の精霊、ドワーフの国の炉で火の精霊に会ったことがあるがそれ以外では全くないと言っていいらしい。

精霊の力が込められた後、どのような技を使えるかを考えた時に真っ先に思い浮かんだのが、兄様と戦った時に使ってきた光り輝く衝撃波だった。
闘気を込めてフルーの水の力が飛んでいくことを思い描いてから振り下ろした。
すると水でできた刃が地面を抉りながら前方へ飛んでいき、目の前にあった木にぶつかると木を切り倒して水飛沫が飛び散った。

『『『おぉ~!』』』
後ろから3人の歓声が聞こえた。

今度はナトゥの力を使ってみようと思い、土の力が地面を盛り上げることを思い描いてから薙ぎ払った。
すると放射上に土でできた槍が広がった。
これは複数の敵に囲まれた時に良いかもしれなそうだ。

『これはすごいですね!戦い方の幅が広がりそうです。』
『あぁ、精霊を呼び出せるなんて思ってもおらんかった。精霊の力は使い方次第で魔術よりも自由に使えるらしい。この技は闘技という。色々試して、自分なりの闘技を編み出してみると良いだろう。』
『私もやりたい!』
『俺にも頼む。』

アリシアとバルトロ兄さんも試してみたいということで、フルーとナトゥに力を込めてもらった。
しかしながらアリシアはどちらも使いこなせず、バルトロ兄さんはナトゥの土の力しか扱うことができなかった。

『これは相性だな。今うまく力が使えなかったとしても他の精霊の力を借りれば使えるかも知れない。自分と相性の良い精霊を見つけることだな。』
『よーし、絶対見つけてやるんだから!』
「アリシアハカゼカナ」「バルトロハテツガヨサソウ」

今回精霊の力を使うことができなかったアリシアは必ず自分と相性の良い精霊を見つけるんだと意気込んでいた。
フルーとナトゥが言うには、アリシアは風の精霊、バルトロ兄さんは鉄の精霊が相性が良いらしい。
金属の精霊がいるのかということがとても興味深く感じた。

『アルクス、さっきの技には名前は付けないの?』
『確かに、格好良い名前を付けると気合も入りそうだな。』

2人から技の名前と言われたが格好良い名前と言われても思い浮かばない。
少し考えてみたけど、こんなのはどうだろうか。
『うーん、名前か。水衝刃と地穿槍とかそんな感じはどうかな?』
『うん、アルクスらしい名前だと思う。』
『アクアウェイヴとかアースランサーとかそんな感じの方が格好良くないか?』
『名前を叫びながら戦うわけじゃないし、これでいいよ。』

バルトロ兄さんは格好良い名前にこだわりがあるらしい。

『親方、ありがとうございました。僕達はこれから大森林に向かうことにしました。』
『そうか、ならちょっと待ってろ。』

そう言うと親方は一通の手紙を書いて渡してきた。

『紹介状だ。大森林にいるエルフに渡せば便宜を図ってくれるはずだ。』
『親方、エルフと知り合いなんですか?ドワーフとエルフってあまり仲が良くないっていう話でしたが。』
『昔ちょっとな。仲が良くないと言うよりは文化が合わないと言うのが正しいな。お互い自分の領域にいれば問題はないさ。そうそう、俺の名前を伝えていなかったな。カリブルっていうんだ、覚えておいてくれよ。』

親方に礼を伝え、武器屋を後にした。
準備が整ったところで街の西側から出立した。
今回は特に馬車などもないのでのんびりとした徒歩の道程だ。
しばらく西へ進み、別れ道を北へと進む。

『ここを真っ直ぐ進んだら海に出るのかな?』
『ちょっと待って。地図を見る限りだとしばらく行けば海があるみたいだね。
 でも結構距離があるかもね。あとこっちの方角は龍脈が通っていない気がする。』
『そっかぁ。海沿いの街なら商会の支店があるかなと思ったんだけどね。』
『龍王様に会えたら、その後に行ってみるのも良いかもね。』

地図だとパラディースはコムニオの北東か。連邦に来てから結構長い距離を移動した気がする。
今回は龍脈沿いの道だから、せっかくだからフルーとナトゥを召喚して技の練習をしながら進もうと思う。
転移の練習をする機会がないけど、どうしたものかな。
コムニオに楔を打っておいたから、いざとなったら戻れるけど。

その後、ゴツゴツとした岩に囲まれた道を進みながら、時折現れる魔獣を倒しながら進んで行った。
合間に自生している薬草などを採取して、傷薬や毒消しなどの薬を作った。
コムニオにいる間、空いている時間に探索者協会が主催する調合講座に参加したかいがあった気がする。
基本的な薬の作り方を学んだおかげで、少しの応用で簡単な薬は書物を読みながら作ることができた。

『アルクスはすぐに何でも学んですごいね。』
『ちょっと器用貧乏の気があるけどね。アリシアやバルトロ兄さんみたいに特別優れているところがないから、できることを増やしているだけだよ。』
『逆に色々なことが何でもできるのも才能だ。俺達はできることはそんなに多くはないからな。
 この旅もアルクス、お前がいてこそだ。』
『そうかも知れないけど、やっぱり1つこれだという能力を見つけたいなって思うよ。』
『龍珠があって、龍術が使えるだけで十分すごいと思うよ?』
『うーん、それが特別って感じはあんまりしないんだけど。まだ使いこなせていないからかなぁ…』

そうして数日歩いたところ、小さい岩山と岩山との間にある大きな壁のような街にたどり着いた。
この国の国境の街テルミヌスだ。
ここから街を超えて一歩でも森へ入るとそこはもうエルフの国であるアルフグラーティらしい。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

白の皇国物語

白沢戌亥
ファンタジー
一人の男が、異なる世界に生まれ落ちた。 それを待っていたかのように、彼を取り巻く世界はやがて激動の時代へと突入していく。 魔法と科学と愛と憎悪と、諦め男のラブコメ&ウォークロニクル。 ※漫画版「白の皇国物語」はアルファポリス様HP内のWeb漫画セレクションにて作毎月二〇日更新で連載中です。作画は不二まーゆ様です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...