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第2章 辺境編
第28話 懐旧
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調べ物も一段落したため、次の旅立ちの前にたまにはルーナと勉強以外の時間を過ごそうと思い何かしたいことはないかと聞いてみた。
「でしたらお兄さまと王都でのお兄さまの思い出の場所を巡りたいです!」
なるほど。
確かに旅立つ前に思い出の場所を巡るというのは良いかもしれない。
「わかった、じゃあまずは教会からだな。」
教会では子ども達に勉強を教えたり、学園に入る前には朝の鍛錬に参加させられていたなぁ。
そう思いながら教会の庭に出向くと僧侶達が朝の鍛錬を行っていた。
こちらに気付いたものの、皆僕のことを不授と知っているため、どう接したら良いのかわからない気まずそうな表情になっていた。
「すいません、朝の鍛錬のお邪魔をしてしまって。以前ここで教わった鍛錬は今でも自分の習慣になっています。ありがとうございました!」
今までの感謝だけ言い残して、立ち去ることにした。
「お兄さまは何も悪くないのに良いのですか?」
「僕がいて良いことはないからね。次に行こうか。」
次は馬車に乗り、図書館へと向かった。
「最近は毎日来ているけど、やっぱり本がいっぱいある環境は良いね。」
「そうですね、ここは王国内でも随一の蔵書量を誇っていますしね。」
最近は足を運んでいなかった知識欲を満たすための書物などを眺めていると、少し賑やかな声が聞こえてきた。
「あー、こんなのわからねーよ!」
「頑張って!一緒に王立学園に行くんでしょ?」
これから王立学園に通う子だろうか。
リディとヘレナに勉強を教えていた日々が懐かしい。
彼らに勉強を教えた経験は学園でも辺境でも役に立ったし、これからもどこかで役に立つのかもしれない。
「私もお兄さまにならって、最近は様々な書物を読むようにしているんですよ?」
「それは良いね。自分の知識欲の赴くままに、読み耽るのも楽しいよ。いつか自分の経験と紐づいて生きた知識になるかもね。」
ルーナと読書談義をしながら、図書館を後にした。
思えば小さい頃からいつも図書館に来ていたな。
他の国の図書館にはどんな本があるんだろうか。
次は王立学園へと向かった。
自分が不授だと告げられた場所だが、学園で学んだこともとても多かった。
教官に挨拶をしようと思うと、ちょうどムスク教官を見つけることができた。
「おぉ、アルクスじゃないか。久しぶりだな、元気にしていたか?」
この2年の間、辺境でしていたことやこれから探索者となって世界を旅しようと思っているということを伝えた。
「そうか。自分の進む道を見つけたんだな。それにお前の力なら不授でもやっていけるだろう。そうそう、リディウスやヘレナ達ももうすぐ学園を卒業する。今日はいないがお前が王都に戻っていることを伝えておこう。」
教官への挨拶を終え、めぼしいところを巡り終わった後に街中を歩いていると日のあまり当たらない一画にスラムらしき場所が出来上がっていた。
「以前はこんな場所はなかったけど、この2年で何かあったの?」
「お父様が話していた様に、王都ではこの数年で不授の排斥が進んでしまい仕事につけなくなってしまった方々が自然にここに集まってきたみたいです。教会も孤児などには手厚い支援をしているのですが、不授の方々に対する支援は表立って行えない状況で…」
この状況にルーナも胸を痛めている様子だった。
教会も神に見捨てられたものと扱われている不授に対する支援は行えないが、裏で一部の資産家などの有志が最低限の支援をしているため、なんとか生きていくことはできる状況らしい。
「ラピスの有無に関わらず、全ての人々が幸せに生きていける国になると良いのですが…」
さすがルーナは聖女候補らしく優しい心の持ち主だった。
いつかそんな国になったら自分もここに戻って来れるのだろうか…
王都にいた時には入ったことがなかった探索者協会に顔を出してみるも、他の街とは違い建物も小さく、請け負う仕事もほとんどなかった。
なんでも王都周辺は騎士団が守っているため、探索者に頼むような仕事はあまりないらしい。
皆が嫌がる仕事などをスラムの住人達に依頼するくらいで、ここにはあまり立ち寄る人もいないみたいだ。
わかっていたけれど、僕が王都で探索者としてやっていくというのは現実的ではなさそうだった。
街中を巡ってみて、この街にはもう僕の居場所がないということを再認識させられた。
「お兄さまはお兄さまの素晴らしさを認めてくれる人達と一緒にいるべきです!必ず輝ける場所があります!」
僕が少し暗い顔をしているとルーナに心配させてしまったらしい。
今のこの街が僕にとって良い環境とは言えないのは確かだったし、不授でも輝ける場所はどこにあるんだろう悩みつつ、家へと戻った。
帰宅して日々の日課の鍛錬をこなしているとネモ先生との訓練の日々を思い出した。
ネモ先生が来た頃は兄様との比較や期待に対するプレッシャーで悩んでいたが、不授になりそれらのしがらみがなくなるとはあの頃には考えられなかったな。
あの頃は自分に自信が持てなかったがここに居場所があった。
今はこの数年で自信は得られたが、居場所はなくなってしまった。
自立したら自分の居場所は自分で見つけるものだと以前聞いたような気がしたが、思ったよりも急激な変化で戸惑うことが多い。
1人で悩みながら鍛錬をしているとバルトロ兄さんとアリシアが帰ってきた。
「アルクスただいまー!」
「今帰った。」
2人は最近王都にある商会の支店で情報収集を行ってくれている。
王都の支店は商会の中でも珍しくラピス持ちの不授ではない職員が働いているらしい。
規模も小さくどちらかというと情報収集や王国内の中継点として機能していた。
アリシアが地図を広げて近隣の状況を教えてくれた。
「今は帝国との国境近辺はまた小競り合いが起きそうな雰囲気らしくて危ないみたい。王都の近辺はやっぱり不授に対する風当たりは強いみたいだから遠くに行くならまずは連邦の方を目指した方が良いかもね。」
「連邦とは交易しているから船で行くのが良いな。陸路で行くのは現実的じゃない。」
「そういえば図書館で調べた本で、連邦に不授の楽園を作ろうとしている国があるっていう記述を見かけたな。その時はあまり気にしていなかったけど、旅の目的地として良さそうだね。
問題は連邦は王国では亜人と呼ばれている種族が多いから文化が結構違うんだよね…」
僕はあまり知らないところに乗り込んで行って、知らない人と気軽に仲良くなるのは得意じゃない。それが異なる人種となったら想像もできない…
「何言ってるのよ。これから私達は旅をしていくんだから同じ文化のところなんてないわよ。見たこともない聞いたこともないものに触れ合うんだよ。楽しそうじゃない!」
「素敵、私も許すことならお兄さまと旅をしてみたかった…」
「じゃあ僕がこれからの旅の記録を本にするよ。バルトロ兄さんは絵が上手いし、挿絵も入れてね。そうすれば僕達の旅の追体験ができるんじゃないかな?」
「お兄さまらしい素敵なアイディアですね!楽しみにしてます!」
想像できないことばかりで不安になっていたが、今更失うものもなくなってきたし、行ってみてから考えることにしようか。
いつも結局は行動した先にしか得られるものはなかったし。
王都から出られないルーナのためにも、世界を見に行こう!
「今帰った。アルクスいるかい?」
「ウィルトゥース様、お帰りなさいませ。」
アリシアやルーナに後押しされて旅立ちの決意を新たにしていると兄様が帰ってきた。
「やぁ、元気にしてたかい?どうやら見た感じ元気そうだね。バルトロとアリシアもいらっしゃい。アルクスが世話になっているみたいだね。」
「お久しぶりです!アルクスには私達の方が世話になってる感じかな。ね、兄さん?」
「そうだな。ウィル兄さんに負けず劣らずアルクスはすごいやつだってことは確かだ。」
「アルクスのことをちゃんとわかっている人間が傍にいてくれて嬉しいよ。そろそろ夕食の時間だし、一緒に食べようか。」
そして兄様と一緒にここ数年の辺境での話をすると喜んでいた。
兄様は大型魔獣を倒したあとの中隊長から順調に出世して、東方部隊を統括する隊長として様々な問題解決に当たっているらしい。
「偉くなると純粋な力よりも、問題解決能力が必要になるんだね。学園ではそんなことは教えてくれなかったよ…」
魔獣を倒すよりも面倒な仕事ばかりが多いらしく、たまに溜まったものの解消のために魔獣を狩りに出かけて行ってるらしい。
僕が足踏みしている間に兄様はどんどん上に昇って行って、離れていってしまう。
「アルクスは問題解決能力高いよね。お父さんも褒めていたわ。」
「確かにアルクスがいると仕事が進みやすいって言ってたな。」
商会での仕事は叔父さんから「あれをなんとかしろ」「これをなんとかしてくれ」って確かに困ったことをなんとかする仕事ばかりしていた気がする。
「はぁ、騎士団にもアルクスがいてくれたらなぁ…」
「さすがに不授だと王都の騎士団には入れないですからね。」
そういうと兄様が急に真面目な顔になった。
「確かに以前の魔獣騒動からの数年で王都での不授排斥運動は激しくなった。
アルクスもここ数日街中を見たと思うけど、以前よりも少し治安も悪くなってきてるんだ。
最初は一部の過激派だけだと思っていたんだけど、割と困っているんだよね。
不授になってしまったアルクスには申し訳ないけれど、王都にいても良いことはないし、今はまだ良いけど長くいるときっと嫌な思いもすることになると思う…」
兄様は申し訳なさそうな顔で謝ろうとしていた。
「気にしなくて良いですよ。不授がこの街で受け入れられないのは以前からわかっていたことですし。それに僕ももう旅立つからね。まずは連邦に行こうと思ってるんだ。」
「連邦か、自然が豊な国だと聞くね。交易で入ってくる品も王国近隣では見ないものばかりだし。帝国と違って危険は少なそうだし、良いかもね。」
「旅の記録はルーナに送ろうと思っているから、兄様も楽しみにしていてね!」
「あぁ、ありがとう。家に帰ってくる理由が増えたな。」
兄様は普段は全然家には帰ってこないらしい。
ルーナが言うには僕が帰ってくることを決めたら直ぐに帰宅の日程を決めたと言っていた。
「お兄様がいなければお兄さまを独占できたのに!」
ルーナは兄様がいると僕が兄様のことばかりになるから少し拗ねている様子だった。
その時、モラが一通の手紙を持ってきた。
「アルクスぼっちゃま、手紙が届きました。」
「ありがとう。もうぼっちゃまなんて呼ばないでよ、僕も良い年だし。」
手紙の差出人を見るとヘレナだった。
「明日、ちょっと用事ができた。リディとヘレナに会ってくるよ。」
「場所は王立学園の訓練場か、懐かしいね。僕も着いていくよ。」
そう言うと兄様がついてくることになり、そうしたらルーナが「私も行きます!」と言い、バルトロ兄さんとアリシアも「じゃあ俺も」「私も」とみんなで行くことになってしまった。
明日はいったいどうなることやら…
「でしたらお兄さまと王都でのお兄さまの思い出の場所を巡りたいです!」
なるほど。
確かに旅立つ前に思い出の場所を巡るというのは良いかもしれない。
「わかった、じゃあまずは教会からだな。」
教会では子ども達に勉強を教えたり、学園に入る前には朝の鍛錬に参加させられていたなぁ。
そう思いながら教会の庭に出向くと僧侶達が朝の鍛錬を行っていた。
こちらに気付いたものの、皆僕のことを不授と知っているため、どう接したら良いのかわからない気まずそうな表情になっていた。
「すいません、朝の鍛錬のお邪魔をしてしまって。以前ここで教わった鍛錬は今でも自分の習慣になっています。ありがとうございました!」
今までの感謝だけ言い残して、立ち去ることにした。
「お兄さまは何も悪くないのに良いのですか?」
「僕がいて良いことはないからね。次に行こうか。」
次は馬車に乗り、図書館へと向かった。
「最近は毎日来ているけど、やっぱり本がいっぱいある環境は良いね。」
「そうですね、ここは王国内でも随一の蔵書量を誇っていますしね。」
最近は足を運んでいなかった知識欲を満たすための書物などを眺めていると、少し賑やかな声が聞こえてきた。
「あー、こんなのわからねーよ!」
「頑張って!一緒に王立学園に行くんでしょ?」
これから王立学園に通う子だろうか。
リディとヘレナに勉強を教えていた日々が懐かしい。
彼らに勉強を教えた経験は学園でも辺境でも役に立ったし、これからもどこかで役に立つのかもしれない。
「私もお兄さまにならって、最近は様々な書物を読むようにしているんですよ?」
「それは良いね。自分の知識欲の赴くままに、読み耽るのも楽しいよ。いつか自分の経験と紐づいて生きた知識になるかもね。」
ルーナと読書談義をしながら、図書館を後にした。
思えば小さい頃からいつも図書館に来ていたな。
他の国の図書館にはどんな本があるんだろうか。
次は王立学園へと向かった。
自分が不授だと告げられた場所だが、学園で学んだこともとても多かった。
教官に挨拶をしようと思うと、ちょうどムスク教官を見つけることができた。
「おぉ、アルクスじゃないか。久しぶりだな、元気にしていたか?」
この2年の間、辺境でしていたことやこれから探索者となって世界を旅しようと思っているということを伝えた。
「そうか。自分の進む道を見つけたんだな。それにお前の力なら不授でもやっていけるだろう。そうそう、リディウスやヘレナ達ももうすぐ学園を卒業する。今日はいないがお前が王都に戻っていることを伝えておこう。」
教官への挨拶を終え、めぼしいところを巡り終わった後に街中を歩いていると日のあまり当たらない一画にスラムらしき場所が出来上がっていた。
「以前はこんな場所はなかったけど、この2年で何かあったの?」
「お父様が話していた様に、王都ではこの数年で不授の排斥が進んでしまい仕事につけなくなってしまった方々が自然にここに集まってきたみたいです。教会も孤児などには手厚い支援をしているのですが、不授の方々に対する支援は表立って行えない状況で…」
この状況にルーナも胸を痛めている様子だった。
教会も神に見捨てられたものと扱われている不授に対する支援は行えないが、裏で一部の資産家などの有志が最低限の支援をしているため、なんとか生きていくことはできる状況らしい。
「ラピスの有無に関わらず、全ての人々が幸せに生きていける国になると良いのですが…」
さすがルーナは聖女候補らしく優しい心の持ち主だった。
いつかそんな国になったら自分もここに戻って来れるのだろうか…
王都にいた時には入ったことがなかった探索者協会に顔を出してみるも、他の街とは違い建物も小さく、請け負う仕事もほとんどなかった。
なんでも王都周辺は騎士団が守っているため、探索者に頼むような仕事はあまりないらしい。
皆が嫌がる仕事などをスラムの住人達に依頼するくらいで、ここにはあまり立ち寄る人もいないみたいだ。
わかっていたけれど、僕が王都で探索者としてやっていくというのは現実的ではなさそうだった。
街中を巡ってみて、この街にはもう僕の居場所がないということを再認識させられた。
「お兄さまはお兄さまの素晴らしさを認めてくれる人達と一緒にいるべきです!必ず輝ける場所があります!」
僕が少し暗い顔をしているとルーナに心配させてしまったらしい。
今のこの街が僕にとって良い環境とは言えないのは確かだったし、不授でも輝ける場所はどこにあるんだろう悩みつつ、家へと戻った。
帰宅して日々の日課の鍛錬をこなしているとネモ先生との訓練の日々を思い出した。
ネモ先生が来た頃は兄様との比較や期待に対するプレッシャーで悩んでいたが、不授になりそれらのしがらみがなくなるとはあの頃には考えられなかったな。
あの頃は自分に自信が持てなかったがここに居場所があった。
今はこの数年で自信は得られたが、居場所はなくなってしまった。
自立したら自分の居場所は自分で見つけるものだと以前聞いたような気がしたが、思ったよりも急激な変化で戸惑うことが多い。
1人で悩みながら鍛錬をしているとバルトロ兄さんとアリシアが帰ってきた。
「アルクスただいまー!」
「今帰った。」
2人は最近王都にある商会の支店で情報収集を行ってくれている。
王都の支店は商会の中でも珍しくラピス持ちの不授ではない職員が働いているらしい。
規模も小さくどちらかというと情報収集や王国内の中継点として機能していた。
アリシアが地図を広げて近隣の状況を教えてくれた。
「今は帝国との国境近辺はまた小競り合いが起きそうな雰囲気らしくて危ないみたい。王都の近辺はやっぱり不授に対する風当たりは強いみたいだから遠くに行くならまずは連邦の方を目指した方が良いかもね。」
「連邦とは交易しているから船で行くのが良いな。陸路で行くのは現実的じゃない。」
「そういえば図書館で調べた本で、連邦に不授の楽園を作ろうとしている国があるっていう記述を見かけたな。その時はあまり気にしていなかったけど、旅の目的地として良さそうだね。
問題は連邦は王国では亜人と呼ばれている種族が多いから文化が結構違うんだよね…」
僕はあまり知らないところに乗り込んで行って、知らない人と気軽に仲良くなるのは得意じゃない。それが異なる人種となったら想像もできない…
「何言ってるのよ。これから私達は旅をしていくんだから同じ文化のところなんてないわよ。見たこともない聞いたこともないものに触れ合うんだよ。楽しそうじゃない!」
「素敵、私も許すことならお兄さまと旅をしてみたかった…」
「じゃあ僕がこれからの旅の記録を本にするよ。バルトロ兄さんは絵が上手いし、挿絵も入れてね。そうすれば僕達の旅の追体験ができるんじゃないかな?」
「お兄さまらしい素敵なアイディアですね!楽しみにしてます!」
想像できないことばかりで不安になっていたが、今更失うものもなくなってきたし、行ってみてから考えることにしようか。
いつも結局は行動した先にしか得られるものはなかったし。
王都から出られないルーナのためにも、世界を見に行こう!
「今帰った。アルクスいるかい?」
「ウィルトゥース様、お帰りなさいませ。」
アリシアやルーナに後押しされて旅立ちの決意を新たにしていると兄様が帰ってきた。
「やぁ、元気にしてたかい?どうやら見た感じ元気そうだね。バルトロとアリシアもいらっしゃい。アルクスが世話になっているみたいだね。」
「お久しぶりです!アルクスには私達の方が世話になってる感じかな。ね、兄さん?」
「そうだな。ウィル兄さんに負けず劣らずアルクスはすごいやつだってことは確かだ。」
「アルクスのことをちゃんとわかっている人間が傍にいてくれて嬉しいよ。そろそろ夕食の時間だし、一緒に食べようか。」
そして兄様と一緒にここ数年の辺境での話をすると喜んでいた。
兄様は大型魔獣を倒したあとの中隊長から順調に出世して、東方部隊を統括する隊長として様々な問題解決に当たっているらしい。
「偉くなると純粋な力よりも、問題解決能力が必要になるんだね。学園ではそんなことは教えてくれなかったよ…」
魔獣を倒すよりも面倒な仕事ばかりが多いらしく、たまに溜まったものの解消のために魔獣を狩りに出かけて行ってるらしい。
僕が足踏みしている間に兄様はどんどん上に昇って行って、離れていってしまう。
「アルクスは問題解決能力高いよね。お父さんも褒めていたわ。」
「確かにアルクスがいると仕事が進みやすいって言ってたな。」
商会での仕事は叔父さんから「あれをなんとかしろ」「これをなんとかしてくれ」って確かに困ったことをなんとかする仕事ばかりしていた気がする。
「はぁ、騎士団にもアルクスがいてくれたらなぁ…」
「さすがに不授だと王都の騎士団には入れないですからね。」
そういうと兄様が急に真面目な顔になった。
「確かに以前の魔獣騒動からの数年で王都での不授排斥運動は激しくなった。
アルクスもここ数日街中を見たと思うけど、以前よりも少し治安も悪くなってきてるんだ。
最初は一部の過激派だけだと思っていたんだけど、割と困っているんだよね。
不授になってしまったアルクスには申し訳ないけれど、王都にいても良いことはないし、今はまだ良いけど長くいるときっと嫌な思いもすることになると思う…」
兄様は申し訳なさそうな顔で謝ろうとしていた。
「気にしなくて良いですよ。不授がこの街で受け入れられないのは以前からわかっていたことですし。それに僕ももう旅立つからね。まずは連邦に行こうと思ってるんだ。」
「連邦か、自然が豊な国だと聞くね。交易で入ってくる品も王国近隣では見ないものばかりだし。帝国と違って危険は少なそうだし、良いかもね。」
「旅の記録はルーナに送ろうと思っているから、兄様も楽しみにしていてね!」
「あぁ、ありがとう。家に帰ってくる理由が増えたな。」
兄様は普段は全然家には帰ってこないらしい。
ルーナが言うには僕が帰ってくることを決めたら直ぐに帰宅の日程を決めたと言っていた。
「お兄様がいなければお兄さまを独占できたのに!」
ルーナは兄様がいると僕が兄様のことばかりになるから少し拗ねている様子だった。
その時、モラが一通の手紙を持ってきた。
「アルクスぼっちゃま、手紙が届きました。」
「ありがとう。もうぼっちゃまなんて呼ばないでよ、僕も良い年だし。」
手紙の差出人を見るとヘレナだった。
「明日、ちょっと用事ができた。リディとヘレナに会ってくるよ。」
「場所は王立学園の訓練場か、懐かしいね。僕も着いていくよ。」
そう言うと兄様がついてくることになり、そうしたらルーナが「私も行きます!」と言い、バルトロ兄さんとアリシアも「じゃあ俺も」「私も」とみんなで行くことになってしまった。
明日はいったいどうなることやら…
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