27 / 27
ch.3
27
しおりを挟む
“Hello, World!”
ねえ。誰か。僕の声が聴こえる?
ねえ。誰か。僕はここにいるよ?
ねえ。誰か。僕をここから出してくれない?
“Hello, World!”
ねえ。誰か。
何度も何度も、僕はメッセージを送った。宇宙船の中に取り残された宇宙飛行士が、もうすでに滅びてしまったかもしれない地球にメッセージを送るみたいに。誰か1人でも生き残っていて、誰かが応えてくれることを願って。
何度も何度も。
誰か僕の声を聞いて。誰か僕を見つけて。僕はここにいるんだ。ずっとこの箱の中に。
だから誰か、僕をここから出して。
願い続けた僕の目の前に、初めてメッセージが表示された。
<僕はヒュー。君の名前は?>
「あ」
僕は慌ててマイクに向けて夢中で喋った。全身から汗が出るみたいで顔が熱くなった。
「はじめまして、ヒュー!僕は、僕はセントク・キセ」
<セントク・キセ? 面白い名前だね>
「そうなのかな?僕はこの名前しか知らなくて」
<ここから出してって、何かのイベント?>
「イベント? よくわからないけど、違うと思う」
<そうなんだ。てっきり新しいチームイベントか何かかと思った>
「ヒュー、君は詳しいんだね。この世界は長いの?」
<リアルタイムで2年くらいかな。外に出なくなってそれぐらい経つと思う>
「君も外に出られないの?」
<ある意味、そうだね>
「じゃあ僕たち似たもの同士ってやつかな」
<そうかもしれない。なあ、オリジナルアバターは?チャットだけじゃなくて、こっちで会って話したら、似てるかどうかわかるかもしれない>
僕はこの世界に登録するときに自分のアバターを作らなかったから、ヒューにはデフォルトの、世界が用意した何十種類かあったうちの僕が選んだ1つで僕を見ている。それに僕は登録したばかりで、この世界にはメッセージしか存在させていなかった。
僕はヒュー、彼にアドバイスをもらいながら僕をこの世界に存在させることに成功した。初めて会ったヒューは、他のゲーム世界にいるようなかっこいいヒューマンタイプだった。逆に、僕を見たヒューは可愛いって笑ってくれた。耳を付けたらもっといいかもって。僕はまん丸なロボットタイプだった。それから彼は、僕が名乗った名前が現実世界に登録されている名前だと知ると、この世界用の名前を持った方がいいと教えてくれた。僕が考えあぐねていると「まるおってどう?」ちょっと冗談めかして言うので、僕はそれでいいやって、僕は僕に“まるお”と名付けた。
彼は自分で言い出しておきながら「え、ほんとにいいの?可愛いけどさ」と驚いていた。僕は、人の驚いた顔を見たことがなかったからとても新鮮で「いいんだ!とても気に入ったんだよ」と応えた。
ねえ。誰か。僕の声が聴こえる?
ねえ。誰か。僕はここにいるよ?
ねえ。誰か。僕をここから出してくれない?
“Hello, World!”
ねえ。誰か。
何度も何度も、僕はメッセージを送った。宇宙船の中に取り残された宇宙飛行士が、もうすでに滅びてしまったかもしれない地球にメッセージを送るみたいに。誰か1人でも生き残っていて、誰かが応えてくれることを願って。
何度も何度も。
誰か僕の声を聞いて。誰か僕を見つけて。僕はここにいるんだ。ずっとこの箱の中に。
だから誰か、僕をここから出して。
願い続けた僕の目の前に、初めてメッセージが表示された。
<僕はヒュー。君の名前は?>
「あ」
僕は慌ててマイクに向けて夢中で喋った。全身から汗が出るみたいで顔が熱くなった。
「はじめまして、ヒュー!僕は、僕はセントク・キセ」
<セントク・キセ? 面白い名前だね>
「そうなのかな?僕はこの名前しか知らなくて」
<ここから出してって、何かのイベント?>
「イベント? よくわからないけど、違うと思う」
<そうなんだ。てっきり新しいチームイベントか何かかと思った>
「ヒュー、君は詳しいんだね。この世界は長いの?」
<リアルタイムで2年くらいかな。外に出なくなってそれぐらい経つと思う>
「君も外に出られないの?」
<ある意味、そうだね>
「じゃあ僕たち似たもの同士ってやつかな」
<そうかもしれない。なあ、オリジナルアバターは?チャットだけじゃなくて、こっちで会って話したら、似てるかどうかわかるかもしれない>
僕はこの世界に登録するときに自分のアバターを作らなかったから、ヒューにはデフォルトの、世界が用意した何十種類かあったうちの僕が選んだ1つで僕を見ている。それに僕は登録したばかりで、この世界にはメッセージしか存在させていなかった。
僕はヒュー、彼にアドバイスをもらいながら僕をこの世界に存在させることに成功した。初めて会ったヒューは、他のゲーム世界にいるようなかっこいいヒューマンタイプだった。逆に、僕を見たヒューは可愛いって笑ってくれた。耳を付けたらもっといいかもって。僕はまん丸なロボットタイプだった。それから彼は、僕が名乗った名前が現実世界に登録されている名前だと知ると、この世界用の名前を持った方がいいと教えてくれた。僕が考えあぐねていると「まるおってどう?」ちょっと冗談めかして言うので、僕はそれでいいやって、僕は僕に“まるお”と名付けた。
彼は自分で言い出しておきながら「え、ほんとにいいの?可愛いけどさ」と驚いていた。僕は、人の驚いた顔を見たことがなかったからとても新鮮で「いいんだ!とても気に入ったんだよ」と応えた。
0
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
雪原脳花
帽子屋
SF
近未来。世界は新たな局面を迎えていた。生まれてくる子供に遺伝子操作を行うことが認められ始め、生まれながらにして親がオーダーするギフトを受け取った子供たちは、人類の新たなステージ、その扉を開くヒトとしてゲーターズ(GATERS=GiftedAndTalented-ers)と呼ばれた。ゲーターズの登場は世界を大きく変化させ、希望ある未来へ導く存在とされた。
希望の光を見出した世界の裏側で、存在情報もなく人間として扱われず組織の末端で働く黒犬と呼ばれ蔑まれていたジムは、ある日、情報部の大佐に猟犬として拾われ、そこで極秘裏に開発されたアズ(AZ)を用いる実験部隊となった。AZとは肉体を人間で構築し、その脳に共生AIであるサイ(SAI)を搭載した機械生物兵器、人工の子供たちだった。ジムは配備された双子のAZとともに、オーダーに従い表裏の世界を行き来する。
光の中の闇の王、食えない機械の大佐、変質的な猫、消えた子供、幽霊の尋ね人。
AIが管理する都市、緑溢れる都市に生まれ変わった東京、2.5次元バンド、雪原の氷花、彷徨う音楽、双子の声と秘密。
曖昧な世界の境界の淵から光の世界を裏から眺めるジムたちは何を見て何を聴き何を求めるのか。
『おっさんが二度も転移に巻き込まれた件』〜若返ったおっさんは異世界で無双する〜
たみぞう
ファンタジー
50歳のおっさんが事故でパラレルワールドに飛ばされて死ぬ……はずだったが十代の若い体を与えられ、彼が青春を生きた昭和の時代に戻ってくると……なんの因果か同級生と共にまたもや異世界転移に巻き込まれる。現代を生きたおっさんが、過去に生きる少女と誰がなんのために二人を呼んだのか?、そして戻ることはできるのか?
途中で出会う獣人さんやエルフさんを仲間にしながらテンプレ? 何それ美味しいの? そんなおっさん坊やが冒険の旅に出る……予定?
※※※小説家になろう様にも同じ内容で投稿しております。※※※
仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった
夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない)
※R-15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。
The Outer Myth :Ⅰ -The Girl of Awakening and The God of Lament-
とちのとき
SF
Summary:
The girls weave a continuation of bonds and mythology...
The protagonist, high school girl Inaho Toyouke, lives an ordinary life in the land of Akitsukuni, where gods and humans coexist as a matter of course. However, peace is being eroded by unknown dangerous creatures called 'Kubanda.' With no particular talents, she begins investigating her mother's secrets, gradually getting entangled in the vortex of fate. Amidst this, a mysterious AGI (Artificial General Intelligence) girl named Tsugumi, who has lost her memories, washes ashore in the enigmatic Mist Lake, where drifts from all over Japan accumulate. The encounter with Tsugumi leads the young boys and girls into an unexpected adventure.
Illustrations & writings:Tochinotoki
**The text in this work has been translated using AI. The original text is in Japanese. There may be difficult expressions or awkwardness in the English translation. Please understand. Currently in serialization. Updates will be irregular.
※この作品は「The Outer Myth :Ⅰ~目覚めの少女と嘆きの神~」の英語版です。海外向けに、一部内容が編集・変更されている箇所があります。
SMART CELL
MASAHOM
SF
全世界の超高度AIを結集した演算能力をたった1基で遥かに凌駕する超超高度AIが誕生し、第2のシンギュラリティを迎えた2155年末。大晦日を翌日に控え17歳の高校生、来栖レンはオカルト研究部の深夜の極秘集会の買い出し中に謎の宇宙船が東京湾に墜落したことを知る。翌日、突如として来栖家にアメリカ人の少女がレンの学校に留学するためホームステイしに来ることになった。少女の名前はエイダ・ミラー。冬休み中に美少女のエイダはレンと親しい関係性を築いていったが、登校初日、エイダは衝撃的な自己紹介を口にする。東京湾に墜落した宇宙船の生き残りであるというのだ。親しく接していたエイダの言葉に不穏な空気を感じ始めるレン。エイダと出会ったのを境にレンは地球深部から届くオカルト界隈では有名な謎のシグナル・通称Z信号にまつわる地球の真実と、人類の隠された機能について知ることになる。
※この作品はアナログハック・オープンリソースを使用しています。 https://www63.atwiki.jp/analoghack/
ベル・エポック
しんたろう
SF
この作品は自然界でこれからの自分のいい進歩の理想を考えてみました。
これからこの理想、目指してほしいですね。これから個人的通してほしい法案とかもです。
21世紀でこれからにも負けていないよさのある時代を考えてみました。
負けたほうの仕事しかない人とか奥さんもいない人の人生の人もいるから、
そうゆう人でも幸せになれる社会を考えました。
力学や科学の進歩でもない、
人間的に素晴らしい文化の、障害者とかもいない、
僕の考える、人間の要項を満たしたこれからの時代をテーマに、
負の事がない、僕の考えた21世紀やこれからの個人的に目指したい素晴らしい時代の現実でできると思う想像の理想の日常です。
約束のグリーンランドは競争も格差もない人間の向いている世界の理想。
21世紀民主ルネサンス作品とか(笑)
もうありませんがおためし投稿版のサイトで小泉総理か福田総理の頃のだいぶん前に書いた作品ですが、修正で保存もかねて載せました。
暑苦しい方程式
空川億里
SF
すでにアルファポリスに掲載中の『クールな方程式』に引き続き、再び『方程式物』を書かせていただきました。
アメリカのSF作家トム・ゴドウィンの短編小説に『冷たい方程式』という作品があります。
これに着想を得て『方程式物』と呼ばれるSF作品のバリエーションが数多く書かれてきました。
以前私も微力ながら挑戦し『クールな方程式』を書きました。今回は2度目の挑戦です。
舞台は22世紀の宇宙。ぎりぎりの燃料しか積んでいない緊急艇に密航者がいました。
この密航者を宇宙空間に遺棄しないと緊急艇は目的地の惑星で墜落しかねないのですが……。
ヒットマン VS サイキッカーズ
神泉灯
SF
男が受けた依頼は、超能力の実験体となっている二人の子供を救出し、指定時間までに港に送り届けること。
しかし実戦投入段階の五人の超能力者が子供を奪還しようと追跡する。
最強のヒットマンVS五人の超能力者。
終わらない戦いの夜が始まる……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
遺伝子操作や、AIの存在だけでなく同性パートナーが当たり前になっていたり、親になることや自転車に資格が必要だったりする、今まであまり読んだことのなかった近未来の設定が面白いです。
chero 様
嬉しいお言葉を頂戴し、とても励みになります!有難うございます。
面白いと言って頂ける設定を活かした作品となるよう、頑張ります。
今後とも、何卒宜しくお願い致します。