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Ch.1
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「しかし野生司、おぬし罪作りなところあるのう」
「え?なんですか突然、罪とか人聞き、AI聞きの悪いことやめてください。私、悪いことなんて絶対してませんし、これから先もしませんから!警察官ですから!」
AIが聞いてたらどうするんですか!査定に響いちゃうじゃないですか!突然の罪製造発言にあたふたする野生司を見て、羽田は「あーかわいい、かわいい」と頭を撫でまくりたい衝動をこらえ、息子はこういう天然キャラが好みだったのかと、子煩悩な母は未来の息子のパートナーを思い描いた。
「あ、鶯太くん、特別講習は右です……やっぱり会場まで案内してきます!先輩、ちょっとここ、お願いします!」
あたふたから一転、いきなり行き先を間違えたとおぼしき鶯太の背中を、羽田の「え、ちょ、待って……」を無視した野生司が追った。
「すいません、ほんと、うちの子がお手数をお掛けして」
「いや、大丈夫ですよ。ほら、今、お客さん少ないですし」
「やっぱりギフトをオーダーするとき、頭のほうにも贈っとくべきだったかなぁ」
「あ、鶯太ってゲーターズなんだ」
「そう、ああ見えて。旦那が身体が弱くて苦労したから、せめて子供は先天的な病気や障害、生まれてからの罹患リスクを最小限にしようってことで、それをギフトにしたの。で、確かに生まれてこの方病気知らずだけど、本当に健康と体力だけが取り得って感じでねえ。ギフトには制限があるからあれもこれもってわけにはいかないけど、やっぱり頭のほうにもねぇ……」
「へぇ、ギフトってあれもこれもはダメなんだ?」
「そうなの!私も親になる前のセミナーで初めて知ったんだけど、結構、制限あるのよ。遺伝子もいじくりすぎちゃダメって言うか、国際法で定められた範囲での遺伝子操作しか出来ないの。それも、親の資質や経済的背景なんかでもグレード分けがあるって話も噂で聞いたし」
「せちがらっ 親になるのも大変だけど、理想の子供を持つってのは、ゲーターズが生まれたこの世の中でも難しいってことですか?」
「理想の子供を持つっていう発想自体、セミナーで散々諌められるの。いくらオーダーが出来ても、100%理想の子供が生まれることはないって。親が思う理想の子供が、発生の直後から存在するなんてことはありえませんって諭される」
「そりゃあそうかあ。あんまり考えたことなかったけど、やっぱり親になるのは大変だね」
「生まれる前も生まれてからも、大変なことは多いけど、でも子供がいて良かったと思う。野生司さんとパートナー考えてるなら、子供のことも考えるでしょ?同性パートナーでも、親の資格さえクリアすれば子供をもつことは、なんの問題もないんだし」
「親の資格取るとか、考えただけど溜息がでるー 私、座学嫌いなんですよー」
羽田の心底嫌そうな声に、鶯太の母は「羽田さんらしいわ」と笑った。
「わかります?」
「わかるわよ」
「何がわかるんです?」
鶯太を送ってきた野生司が頭の上に?を乗っけて受付機の前に戻って来た。
「羽田さんが、野生司さんとの子供を持つために奮闘する姿よ」
「え」
「そーだなー相当奮闘しなきゃだなー」
「え」
既成事実を作り、周りから固める作戦を展開する羽田の不敵な笑みに、いったい自分が受付を離れたこの数分間に何があったのかと、わたわたの野生司だったが、頭上のカメラが視界に入るなりはっと我に返った。
「先輩、職務中ですよ!」
「お仕事してますよー これは地域の方との交流の一環です。地域と地域警察が友好な関係を築く為のコミュニケーションです」
「それはそうかもしれませんが……?」
「ほら、お客さんきましたよ」
野生司を煙に巻きつつ、グッドタイミングだ少女たち!と、内心親指をサムズアップした羽田が示す先には、すらりと手足が長くスタイルの良いインド系とアフリカ系の二人が手を繋いでやってきた。羽田曰く、超がいくつもつくほど天然の野生司は、「お客さん」と言っている羽田にとってもお客であることに変わりはないことなど露とも思わず、慌てて受付機の前に立ち、警察官としての立ち居振る舞い表情を一生懸命意識する。
受付作業を開始した野生司より前に並ぶ二人は背が高かった。艶やかな髪にバランスの取れた顔のパーツと小さな頭の子供たちは、にこやかな笑顔と明快な受け答えですんなりと受付ゲートを通り抜けていく。
「やっぱり、頭にもスタイルにもギフトを贈るべきだったかしら……」
二人の少女のすらりと長い足を見送る鶯太の母の呟きに、羽田は苦笑いを浮かべ野生司はやはり頭に?を飛ばしていた。
「え?なんですか突然、罪とか人聞き、AI聞きの悪いことやめてください。私、悪いことなんて絶対してませんし、これから先もしませんから!警察官ですから!」
AIが聞いてたらどうするんですか!査定に響いちゃうじゃないですか!突然の罪製造発言にあたふたする野生司を見て、羽田は「あーかわいい、かわいい」と頭を撫でまくりたい衝動をこらえ、息子はこういう天然キャラが好みだったのかと、子煩悩な母は未来の息子のパートナーを思い描いた。
「あ、鶯太くん、特別講習は右です……やっぱり会場まで案内してきます!先輩、ちょっとここ、お願いします!」
あたふたから一転、いきなり行き先を間違えたとおぼしき鶯太の背中を、羽田の「え、ちょ、待って……」を無視した野生司が追った。
「すいません、ほんと、うちの子がお手数をお掛けして」
「いや、大丈夫ですよ。ほら、今、お客さん少ないですし」
「やっぱりギフトをオーダーするとき、頭のほうにも贈っとくべきだったかなぁ」
「あ、鶯太ってゲーターズなんだ」
「そう、ああ見えて。旦那が身体が弱くて苦労したから、せめて子供は先天的な病気や障害、生まれてからの罹患リスクを最小限にしようってことで、それをギフトにしたの。で、確かに生まれてこの方病気知らずだけど、本当に健康と体力だけが取り得って感じでねえ。ギフトには制限があるからあれもこれもってわけにはいかないけど、やっぱり頭のほうにもねぇ……」
「へぇ、ギフトってあれもこれもはダメなんだ?」
「そうなの!私も親になる前のセミナーで初めて知ったんだけど、結構、制限あるのよ。遺伝子もいじくりすぎちゃダメって言うか、国際法で定められた範囲での遺伝子操作しか出来ないの。それも、親の資質や経済的背景なんかでもグレード分けがあるって話も噂で聞いたし」
「せちがらっ 親になるのも大変だけど、理想の子供を持つってのは、ゲーターズが生まれたこの世の中でも難しいってことですか?」
「理想の子供を持つっていう発想自体、セミナーで散々諌められるの。いくらオーダーが出来ても、100%理想の子供が生まれることはないって。親が思う理想の子供が、発生の直後から存在するなんてことはありえませんって諭される」
「そりゃあそうかあ。あんまり考えたことなかったけど、やっぱり親になるのは大変だね」
「生まれる前も生まれてからも、大変なことは多いけど、でも子供がいて良かったと思う。野生司さんとパートナー考えてるなら、子供のことも考えるでしょ?同性パートナーでも、親の資格さえクリアすれば子供をもつことは、なんの問題もないんだし」
「親の資格取るとか、考えただけど溜息がでるー 私、座学嫌いなんですよー」
羽田の心底嫌そうな声に、鶯太の母は「羽田さんらしいわ」と笑った。
「わかります?」
「わかるわよ」
「何がわかるんです?」
鶯太を送ってきた野生司が頭の上に?を乗っけて受付機の前に戻って来た。
「羽田さんが、野生司さんとの子供を持つために奮闘する姿よ」
「え」
「そーだなー相当奮闘しなきゃだなー」
「え」
既成事実を作り、周りから固める作戦を展開する羽田の不敵な笑みに、いったい自分が受付を離れたこの数分間に何があったのかと、わたわたの野生司だったが、頭上のカメラが視界に入るなりはっと我に返った。
「先輩、職務中ですよ!」
「お仕事してますよー これは地域の方との交流の一環です。地域と地域警察が友好な関係を築く為のコミュニケーションです」
「それはそうかもしれませんが……?」
「ほら、お客さんきましたよ」
野生司を煙に巻きつつ、グッドタイミングだ少女たち!と、内心親指をサムズアップした羽田が示す先には、すらりと手足が長くスタイルの良いインド系とアフリカ系の二人が手を繋いでやってきた。羽田曰く、超がいくつもつくほど天然の野生司は、「お客さん」と言っている羽田にとってもお客であることに変わりはないことなど露とも思わず、慌てて受付機の前に立ち、警察官としての立ち居振る舞い表情を一生懸命意識する。
受付作業を開始した野生司より前に並ぶ二人は背が高かった。艶やかな髪にバランスの取れた顔のパーツと小さな頭の子供たちは、にこやかな笑顔と明快な受け答えですんなりと受付ゲートを通り抜けていく。
「やっぱり、頭にもスタイルにもギフトを贈るべきだったかしら……」
二人の少女のすらりと長い足を見送る鶯太の母の呟きに、羽田は苦笑いを浮かべ野生司はやはり頭に?を飛ばしていた。
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