警視庁生活安全部ゲーターズ安全対策課

帽子屋

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Ch.1

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 ゲーターズ――それは、この世に生を受けたと同時に贈られたギフトを持って生まれてくる子供たち。
生まれながらに贈り物(ギフト)を持った子供たち、GATERS(ゲーターズ)(GIFTED(ギフテッド) AND TARRENTED(タレンテッド)-ers)と言う新たな言葉が世界に浸透する以前、ギフテッド、タレンテッドと言えば神から与えられた贈り物(ギフト)を持つ者を称していたが、ゲーターズの持つギフトは、人智を超えた存在から気まぐれに贈られるものではなく、親から生まれる我が子へ、人が選択し与える事のできる一定の遺伝子操作を言う。


 50年ほど前に起きたHIVに耐性のあるデザイナーベビーの誕生のニュースは、倫理的、技術的にと理由付けを行い牽制し小康状態だった世界に大きな一石を投じた。その後、技術的な問題がいくつもクリアされ続けていった結果、行き詰まりを見せていた世界を背景にゲーターズは誕生した。ゲーターズを世界が受け入れたとき、宣伝文句のように大国の大統領は演説した。

「人類は進化の門扉(ゲート)をついに自らの力によって開くのです。そしてその先にある新たなステージの担い手は、ゲーターズとしてこれから生を受ける皆さんのこどもたちです。ゲーターズは特別な子供ではありません。ただ、新たなステージの人類として生まれてくる子供たちなのです。そして人類を、この混迷した世界から希望ある未来へ導く存在なのです」

 ゲーターズは瞬く間に世界に広がっていった。
 
デザイナーベビーなどという言葉は死語となり、秘密裏に行われる存在ではなく、富裕層だけの特権でもなく、理想の遺伝子操作をオーダーし、そのギフトを受けた子供たちの誕生が望まれる時代の幕開けだった。
一度箱を開けてしまったら、その中身をもう知らないことには出来ない。それが、喉から手がでるほどほしかったギフトが燦然と詰まった箱だったならばなおさら。

 未来の人類の誕生とともに、世界はその機能をその存在に対する仕組みに作り変える必要があった。それはまさに洪水のごとく未曾有の世界改変であったが、先進国を中心に急激な変化を自ら望み進んで行った。それは、国々の行き詰まりを解消する最後の希望にすがるようでもあり……。


「焦りから来る見切り発車、とりあえず出発だけしてあとは後世になんとかしろってことなんでしょうか……だから、ゲーターズが誕生して20年近く経っても問題はわんさかあって波紋は留まることをしらないと」
 なるほどね、うんうん。
 野生司のおすはパトカーの助手席でモバイル片手に1人で頷いた。
「なになに? 突然、なに? なに見てるの? 突然独り言呟いて、頷いて」
運転席に座る羽田はたが野生司のモバイルに手を伸ばす。
「ちょ、ちょっと! 羽田先輩! 危ないです! ハンドルから手、離さないでくださいよ!」
「大丈夫よぉ。自動運転なんだから」
「いやいや。自動運転だからって、昼間っからパトカーのドライバーが、当たり前に警察官が、手放しで助手席にちょっかい出すのは問題ありますよ!」
 羽田の攻撃をかわしつつ、モバイルをしまうと両手で羽田の顔をつかみ前を向かせる。
「前見て運転してください。ちゃんとハンドル持って!」
「……かたい! かたいなあ! 野生司は! だから、本庁なんかに呼ばれちゃうんだよ。あ! もしかして、それがいやで、幼保教師を目指すつもり?転職するの?私、聞いた覚えない!どういうこと?」
「いや、言ってないですから。っていうか、転職しませんから」
「あやしい……」
 羽田が真面目な顔で野生司の顔を捉える。
「あやしいって……だから、先輩前見て運転してください!」
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