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どんなジャンルならいいのだ。ブロ…?え?なにそれ?ちょっとまて
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俺は数秒前にいだいた目の前の男に報いる気持ちにすでに疑問を投げかけていた。
そんな俺には構うことなく「お冷ください。新しいコップで」イケメンスマイルはカウンターに声を掛けている。背後ではミーちゃんの熱い吐息とひっくり返った返事の相槌のように、ダンッ!と音が聴こえた。きっと、旦那が、出刃包丁をまな板に叩き付けたに違いない。
だいたいお前お冷って、のびたくんのデートかよ。
「サイトに好みがあるのはわかった。純文学が好まれ……」
「却下」
「じゅん……」
「却下」
「……」
「ダメです」
「何も言ってないだろ?!」
「頭とか顔とかいろいろと」
「なんだって?」
「いえ。こちらの話です。お気になさらず」
する! 気にする!
モジャお。何故、純文学に拘る。
「とにかく。純文学は、さっき言いましたけどダメです。どこのサイトでもダメです。稼ぎに直結しません」
「じゃあなんだったらいいんだ。そのゲームとか、別世界じゃないとダメなのか?」
「異世界、です。純文学と不純文学以外にネタないんですか? このジャンルだとどちらも骨と心が折れるだけで売れません。まあ、その方が先輩のためかもしれませんが」
「じゃあ、SF」
じゃあ?
じゃあってなんですか。そんなに簡単にネタが出てくるのか?
モジャお、そのモジャモジャの中に何を仕込んでいる……。
「SFは敷居が高いかもしれませんよ?」
「そうなの?」
「読者も選びますしね」
「う゛ーん゛ーーむ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」
どっからそんな音を出しているのだ。
うめき声らしき低い奇声をあげながら、モジャモジャがももっさもっさと前後左右に揺れている。
邪魔です。
「妄想、いや、錯乱した思いつきの不純文学 “主夫が小説家になるまでエッセイ” ですけど、それを軸にブロマンスやBLネタを充実させたらどうです? ただ主夫の生活をだらだら書くよりよっぽど需要があると思いますよ」
妄想ってなにが? 錯乱ってだれが?
って言うか、ブロマンス? BLってなに?
「ブロマンス……BL……」
さすがのモジャおでも赤裸々な日常をさらけ出すには躊躇があるのか?
綺羅から発せられた未知なる単語へのモジャおのとまどいは、別の形でのとまどいに受け取られていた。
「鬼切さんとのことはもういいじゃないですか。ネタにしてしまえばいいんです」
ピシ。俺の脳天にヒビが入った音が聴こえた。
「は? なんで、そこでヤツの名前が出てくんだよ」
「先輩が会社辞めた理由は鬼切さんとの痴情が、頭同様もつれたって社家君から聞きましたよ」
社家……。
可愛い顔して小悪魔的な後輩の笑顔が浮かぶ。小悪魔っていうかあのおしゃべりは魔物的なんだけど、ちっさいから小悪魔。いや子悪魔の方がしっくりくるか? おこちゃまサイズとフェイスで最後の最後まで誤情報爆撃しやがって……。だいたいちじょうってなんだ。ちじょうって。地上か? 俺の足は地に着いてる。離れたら生きていけないって最後の王妃も言っていただろ。まさかと思うが痴情じゃないよな?
「ちじょう?! ちじょうってなんだ?」
「痴情って言ったら、痴情しかないでしょう。情事ですよ。もつれた情事」
あ。やっぱり。そっちか。じゃなくて!
「あ、あのな。そらおそらしいこといってんじゃねえ! なんでそんな事情が俺とヤツに起こるんだよ! あってたまるか! 辞めた理由は……俺は羽目られたっていうか、気付いたらはまってたっていうか……あれ、結局なんだったんだろう……?」
「え。ハメられた……。そんな……鬼切さん、まさかそこまで……」
「バカかお前は! どういう脳内変換してんだよ!」
俺が必死に誤情報の訂正を試みているなか、背後のカウンターではヒソヒソ話が聞こえてくる。いや、まるぎこえだよ。ヒソってないよ。なんだよ。その昼メロ的展開。マスター、ミーちゃん、その手の話しが大好物なのはわかるけどそこに俺、登場させないで! 違うんだよ!
そして目の前のイケメン君はなぜか黙った。なんで黙った? ちょっと、沈黙が恐いんですけど。
そんな俺には構うことなく「お冷ください。新しいコップで」イケメンスマイルはカウンターに声を掛けている。背後ではミーちゃんの熱い吐息とひっくり返った返事の相槌のように、ダンッ!と音が聴こえた。きっと、旦那が、出刃包丁をまな板に叩き付けたに違いない。
だいたいお前お冷って、のびたくんのデートかよ。
「サイトに好みがあるのはわかった。純文学が好まれ……」
「却下」
「じゅん……」
「却下」
「……」
「ダメです」
「何も言ってないだろ?!」
「頭とか顔とかいろいろと」
「なんだって?」
「いえ。こちらの話です。お気になさらず」
する! 気にする!
モジャお。何故、純文学に拘る。
「とにかく。純文学は、さっき言いましたけどダメです。どこのサイトでもダメです。稼ぎに直結しません」
「じゃあなんだったらいいんだ。そのゲームとか、別世界じゃないとダメなのか?」
「異世界、です。純文学と不純文学以外にネタないんですか? このジャンルだとどちらも骨と心が折れるだけで売れません。まあ、その方が先輩のためかもしれませんが」
「じゃあ、SF」
じゃあ?
じゃあってなんですか。そんなに簡単にネタが出てくるのか?
モジャお、そのモジャモジャの中に何を仕込んでいる……。
「SFは敷居が高いかもしれませんよ?」
「そうなの?」
「読者も選びますしね」
「う゛ーん゛ーーむ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛」
どっからそんな音を出しているのだ。
うめき声らしき低い奇声をあげながら、モジャモジャがももっさもっさと前後左右に揺れている。
邪魔です。
「妄想、いや、錯乱した思いつきの不純文学 “主夫が小説家になるまでエッセイ” ですけど、それを軸にブロマンスやBLネタを充実させたらどうです? ただ主夫の生活をだらだら書くよりよっぽど需要があると思いますよ」
妄想ってなにが? 錯乱ってだれが?
って言うか、ブロマンス? BLってなに?
「ブロマンス……BL……」
さすがのモジャおでも赤裸々な日常をさらけ出すには躊躇があるのか?
綺羅から発せられた未知なる単語へのモジャおのとまどいは、別の形でのとまどいに受け取られていた。
「鬼切さんとのことはもういいじゃないですか。ネタにしてしまえばいいんです」
ピシ。俺の脳天にヒビが入った音が聴こえた。
「は? なんで、そこでヤツの名前が出てくんだよ」
「先輩が会社辞めた理由は鬼切さんとの痴情が、頭同様もつれたって社家君から聞きましたよ」
社家……。
可愛い顔して小悪魔的な後輩の笑顔が浮かぶ。小悪魔っていうかあのおしゃべりは魔物的なんだけど、ちっさいから小悪魔。いや子悪魔の方がしっくりくるか? おこちゃまサイズとフェイスで最後の最後まで誤情報爆撃しやがって……。だいたいちじょうってなんだ。ちじょうって。地上か? 俺の足は地に着いてる。離れたら生きていけないって最後の王妃も言っていただろ。まさかと思うが痴情じゃないよな?
「ちじょう?! ちじょうってなんだ?」
「痴情って言ったら、痴情しかないでしょう。情事ですよ。もつれた情事」
あ。やっぱり。そっちか。じゃなくて!
「あ、あのな。そらおそらしいこといってんじゃねえ! なんでそんな事情が俺とヤツに起こるんだよ! あってたまるか! 辞めた理由は……俺は羽目られたっていうか、気付いたらはまってたっていうか……あれ、結局なんだったんだろう……?」
「え。ハメられた……。そんな……鬼切さん、まさかそこまで……」
「バカかお前は! どういう脳内変換してんだよ!」
俺が必死に誤情報の訂正を試みているなか、背後のカウンターではヒソヒソ話が聞こえてくる。いや、まるぎこえだよ。ヒソってないよ。なんだよ。その昼メロ的展開。マスター、ミーちゃん、その手の話しが大好物なのはわかるけどそこに俺、登場させないで! 違うんだよ!
そして目の前のイケメン君はなぜか黙った。なんで黙った? ちょっと、沈黙が恐いんですけど。
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