6 / 109
第一楽章
5
しおりを挟む
あいつらは、この話をどう思うだろうか。
俺は、何本目かの煙草に火をつけていた。
メンバーを誘ったホンキー・トンクへの道のり、俺はどこか自分を納得させるような落しどころを、ビルの上空や、大通りの上で踊る宙空投影されたサンタや妖精、キラキラとクリスマスの装飾に彩られた街中、目の前に広がる向こう側の世界の中に探しながら歩いていた。
くわえた煙草の煙を肺に招いて、レスター大佐の選択肢を思い起こす。
話を断る事を選んだとしても、わざわざ殺しはしないだろう。労力の無駄だ。そんな事をしなくても、どうせそんなに長くはもたない消耗品、死ぬまでの間、使えればそれでいいと考えるはずだ。
あいつらがここから抜け出せる可能性は0じゃない。
うまく命を繋げば、日の当たる人生をいつかは歩めるかもしれない。
だが、甘ったるい臭いが拭えない首輪のついた猟犬はどうだ。何せ主人は、あの大佐だ。
『首輪のついた犬にも、それなりの覚悟が必要だと言うことだよ』
吐き出した煙の中に、大佐の台詞が蘇る。
使い捨ての中じゃ珍しい長さで、あいつらとはチームを組んできた。チームの解散に情のようなものが無いといえば嘘になる。だが、それぞれが生きる道を選択して解散するなら悪くない。
店に着き、席に向かう前に寄ったトイレの鏡に映る姿は自分で言うのも何だが神妙な顔つきにすら思えた。結局、眺めた世界のどこにも当たり前に着地点は見つけられず、俺は新しい煙草に火をつけると三人が待つテーブルに向かった。
紫煙を吐きだした俺の顔を見るなり、口の減らないロンが「隊長。いつものハシビロコウがイエアメガエルみたいな顔になってますよ」と大笑いしやがった。どんな例えだよ。相変わらず意味がわからん。つられて笑っているお前たちは、そのカエルの顔知ってんのか。
そのまま動物オタクのカエルネタを披露するロンの口めがけ、ホリーがナッツを何粒が放り込むと見事命中したらしくカエル話に終止符を打った。
俺は、むせ返るロンを尻目に降って湧いた猟犬の話を始めた。
一息に喋った俺は一旦口を閉じ、ボイラーを喉へ流し込んだ。空になったグラスを見ながらデザートとさながら最後に甘い話を続け、ゆっくりと三人を見渡した。
俺の目を見たブライアンは、同じように無言でグラスを空にしたあと「ジム、俺たちはチームで、お前は隊長。俺たちは、お前に一任するよ」解散など考えもしない、当然だとでも言いたげな台詞で話に区切りをつけ、グラスを持ち上げた。ロンとホリーもそれにならい、四つの空のグラスがぶつかり安い音を立てた。
俺たちを拾い上げるきっかけとなった雲の上のゴタゴタに、あらためて注文した酒で一応の乾杯はしたが、この騒動は宇宙軍だの、サイバー軍だの、SF世界の軍隊を現実世界に出現させ、次はロボット軍(このネーミングはどうなんだ? 別にATOMが飛び回るわけじゃないだろう?)が、新設されると言う噂が、俺たちがいる底辺にまで漏水した水のように広がっていた。この先出てくるのは、サイボーグかエスパーかって話を、安酒を重ねるチープなツマミとして、結局いつものように馬鹿笑いしながら酒を浴びた。
ところがだ。
まさかその酒の肴を、リアルに、そして真剣に考えているお偉い方々がいることをその後一ヶ月もしないうちに知ることになるとは、安酒の力を借りていくらハイになろうとも夢にも思わなかった。
俺は、何本目かの煙草に火をつけていた。
メンバーを誘ったホンキー・トンクへの道のり、俺はどこか自分を納得させるような落しどころを、ビルの上空や、大通りの上で踊る宙空投影されたサンタや妖精、キラキラとクリスマスの装飾に彩られた街中、目の前に広がる向こう側の世界の中に探しながら歩いていた。
くわえた煙草の煙を肺に招いて、レスター大佐の選択肢を思い起こす。
話を断る事を選んだとしても、わざわざ殺しはしないだろう。労力の無駄だ。そんな事をしなくても、どうせそんなに長くはもたない消耗品、死ぬまでの間、使えればそれでいいと考えるはずだ。
あいつらがここから抜け出せる可能性は0じゃない。
うまく命を繋げば、日の当たる人生をいつかは歩めるかもしれない。
だが、甘ったるい臭いが拭えない首輪のついた猟犬はどうだ。何せ主人は、あの大佐だ。
『首輪のついた犬にも、それなりの覚悟が必要だと言うことだよ』
吐き出した煙の中に、大佐の台詞が蘇る。
使い捨ての中じゃ珍しい長さで、あいつらとはチームを組んできた。チームの解散に情のようなものが無いといえば嘘になる。だが、それぞれが生きる道を選択して解散するなら悪くない。
店に着き、席に向かう前に寄ったトイレの鏡に映る姿は自分で言うのも何だが神妙な顔つきにすら思えた。結局、眺めた世界のどこにも当たり前に着地点は見つけられず、俺は新しい煙草に火をつけると三人が待つテーブルに向かった。
紫煙を吐きだした俺の顔を見るなり、口の減らないロンが「隊長。いつものハシビロコウがイエアメガエルみたいな顔になってますよ」と大笑いしやがった。どんな例えだよ。相変わらず意味がわからん。つられて笑っているお前たちは、そのカエルの顔知ってんのか。
そのまま動物オタクのカエルネタを披露するロンの口めがけ、ホリーがナッツを何粒が放り込むと見事命中したらしくカエル話に終止符を打った。
俺は、むせ返るロンを尻目に降って湧いた猟犬の話を始めた。
一息に喋った俺は一旦口を閉じ、ボイラーを喉へ流し込んだ。空になったグラスを見ながらデザートとさながら最後に甘い話を続け、ゆっくりと三人を見渡した。
俺の目を見たブライアンは、同じように無言でグラスを空にしたあと「ジム、俺たちはチームで、お前は隊長。俺たちは、お前に一任するよ」解散など考えもしない、当然だとでも言いたげな台詞で話に区切りをつけ、グラスを持ち上げた。ロンとホリーもそれにならい、四つの空のグラスがぶつかり安い音を立てた。
俺たちを拾い上げるきっかけとなった雲の上のゴタゴタに、あらためて注文した酒で一応の乾杯はしたが、この騒動は宇宙軍だの、サイバー軍だの、SF世界の軍隊を現実世界に出現させ、次はロボット軍(このネーミングはどうなんだ? 別にATOMが飛び回るわけじゃないだろう?)が、新設されると言う噂が、俺たちがいる底辺にまで漏水した水のように広がっていた。この先出てくるのは、サイボーグかエスパーかって話を、安酒を重ねるチープなツマミとして、結局いつものように馬鹿笑いしながら酒を浴びた。
ところがだ。
まさかその酒の肴を、リアルに、そして真剣に考えているお偉い方々がいることをその後一ヶ月もしないうちに知ることになるとは、安酒の力を借りていくらハイになろうとも夢にも思わなかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
警視庁生活安全部ゲーターズ安全対策課
帽子屋
SF
近未来。世界は新たな局面を迎えていた。生まれてくる子供に遺伝子操作を行うことが認められ始め、生まれながらにして親がオーダーするギフトを受け取った子供たちは、人類の新たなステージ、その扉を開くヒトとしてゲーターズ(GATERS=GiftedAndTalented-ers)と呼ばれた。ゲーターズの登場は世界を大きく変化させ、希望ある未来へ導く存在とされた。
そんなご大層なWiki的内容だったとしても、現実は甘くない。ゲーターズが一般的となった今も、その巨石を飲み込んだ世界の渦はいまだ落ち着くことはなく、警視庁生活安全部に新設されたゲーターズ安全対策課へ移動となった野生司は、組むことになった捜査員ロクに翻弄され、世の中の渦に右往左往しながら任務を遂行すべく奮闘する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる