おにぎりレシピ

帽子屋

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はじまっていた日 12:46〜

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梅先が紫野が指差す背後を振り返ると、まさにいま伝票を持って席を立とうとしていたらしいスーツの若者が険悪な表情で紫野を睨んでいた。
『これはこれは。紫野ってある意味、持ってるよなあ……しかし、目つきの悪い二人だなあ』
梅先が相手を確認すると、険悪な視線は梅先にも注がれたあと、自分を指差す相手へと戻っていった。
「……なんすか?」
「なんすか、じゃねーよ。おまえ、古津だろ?」
睨まれた返礼とでも言うべき目つきで紫野は答える。
『目つきの悪さは、紫野の方が年季入ってるよね』
梅先は、双方を観察しながら目つきの悪さは紫野に軍配を上げた。一瞬紫野の禍々しい視線に怯んだかのように見えた古津だったが、どうやら引く気はないらしい。
「ああ? おまえってなんだよ。てめぇ誰だよ。てか、何で俺の名前知ってんだよ」
「誰かって? んなことどうでもいいんだよ。いいから、そこ、座ってろ。動くんじゃねえ」
「はあ? てめえ、何様だよ。命令すんじゃねえよ」
『あーあ。強がっちゃって。古津君、そっちの手、ほんの少し震えてるよ。ほら、紫野もそんな素人相手にダメだよ』
ドスのきいた発声発言も、どうやら紫野に軍配があがったようだ。
「命令だと? するわ。俺の命がかかってんだからな。お前を捕まえて、鬼切さんのとこに連れてかないと俺がバラされちまうんだよ」
「し、知るか、ボケ。お前の命なんか知ったことか。どうでもいいわ」
「コラ古津、誰が動いていいって言ったよ……」
懸命に虚勢を張りながらも、さすがに相手が悪いと思ったのか古津は棄て台詞を残してこの場を離れようとしたが、紫野の圧がかかるこの結界からは逃れられなかったらしい。地を這うような紫野の一言に、古津は金縛りにでもあったように動きを止めた。
『あーあ。かわいそうに……』
古津がそのアイデンティティはドーベルマン、顔の眉間はパグ、しかしその実体は震えるチワワに見えてきた梅先は仕方ないなあと、一触即発の空気に緊張感のまるでない声でぬるま湯を浴びせかけた。
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