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幕間2 ―― 緑夢
しおりを挟む大樹と美花が店を出たのと同時に、奥のドアからマリーとリジィは顔を出した。
「ねっ、セツ、どうだった?」
楽しそうに訊くリジィに、雪はにやりとして見せる。
「愚問だって? ははっ、そりゃ失礼。でも今のあの二人を見て、さっき兄が妹を殺しただなんて、誰も思わないだろーね」
リジィは大樹と美花の後ろ姿を店のガラス越しに眺め、豪快に笑った。
「……マスター。今回の代償、少し甘いんじゃないかしら」
「いいんだよ。今回は他の悪魔を喚び出さなくて済んだし。何しろ、うちには腕の確かな専門家がいるからね」
「お褒めに預かり光栄です。雪様」
「相変わらず堅苦しいなぁ」
雪はやれやれ、とノヴァの肩を叩く。
「それに、こっちの道を選択した彼には、これから楽しませてもらう事だしね」
「アレは欠陥があるもんねぇ」
「次週をお楽しみに♪ってね」
「あっははは。セツ、おもしろいっ」
少女のような口調でおどける雪に、リジィはまた高い笑い声を上げる。いつにも増してテンションの高い二人に、マリーは首を傾げた。
北沢美花の何処に欠陥があるというのか。寧ろ以前より性格が良くなったのではないだろうか。
代償だって、安すぎる。通常、死者を生き返らせるには依頼者、もしくは別の人間一人分の魂を頂く。契約が執行され次第である。
今回の依頼人はまだ十七歳と若い。若い魂ほど貴重なのに、何故わざわざ待つなどと言ったのだろう。
マリーは雪の横顔を見つめながら、これからについて思案を巡らせた。
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