4 / 4
これからも
しおりを挟む
まだ少し肌寒い風。
それと一緒に飛んでゆくのは桜の花びら。近くの大学に進学するって言ってたから何時だって会えるはずなのに、ここで一緒に過ごすのは最後だと思うとなにか寂しくなる。
今までこんな気持ちになったこと、なかったのに。
「……そういえば、ここで一人で過ごすの初めて」
やっと一人になれる場所を見つけたと思ったら先輩が居て、いつの間にか一緒になってて──楽しかった。
だから、笑って見送ろうと思ってたのに。
卒業式を勝手に休んで、なにやってるんだろうわたし。
「やだ……」
伝ってくる雫を指で拭う。けれど止まるどころかどんどん溢れてきて、ハンカチを取り出して目元に当てる。
これからの学生生活に先輩がいないと思うとやっぱり寂しい。
後で先輩にこの事を話そう。もしかしたら、わたしが居ないことに気づいてたかもしれないし。
◇◇◇
「って感じにちょっとしんみりしちゃって……すみません。先輩」
放課後の帰り道。先輩は待っててくれて一緒に帰ることになり、歩きながら今日のことを話していると先輩にため息をつかれた。酷いと思うんですけど。
「色々言いたいことはあるがひとまずこれだけは言っておく。アホか」
「アホかって何ですか! こっちは本当に寂しかったんですよ?」
「大袈裟すぎるだろ。学校で会えないくらいで」
むぅ。先輩は全然分かってない。わたし、怒ってるんですよ?
「学校で会えない、くらい? くらいと今言いましたね? 一緒に過ごす時間。減るんですよ?」
「いや、そんな変わらないだろ。僕たち学年も違うし。一緒に居たの帰りと休み時間くらいじゃないか?」
それが大事な時間だと言いたいんですよ。なんで分かってくれないかなあ。
「いいですか? 先輩。わたしはこれから学校が始まったら休み時間の度にあ……先輩いないんだって寂しくなるんですよ! 帰りだってずっと一人です!」
「出来るだけ連絡はとる。それで良いだろ。というか付き合い始めたら急にベタベタするせいであれだけ人気の無かった屋上に野次馬が来るようになったりこっちは結構恥ずかしかったんだ。正直僕はほっとしてる」
言われてみれば確かに先輩と付き合い出したくらいから屋上に人がちょくちょく覗きに来てた気がする。
それまで誰も来ること無かったのに。先輩で頭の中いっぱいになってた……
冷静になって考えると、あの場を見られてたのは自分でもどうかしてる。……なにやってるんだろ私。
「まさか今まで気づいてなかったのか?」
本当は認めたくない。認めたく、ないですけど。私の負けです。
「……はい。確かに気づいてなかったです。あー凄い恥ずかしいですね。ちょっと今顔見られたくありませんもん」
「その調子でよく今まであんな大胆なこと出来てたな」
先輩の言葉が痛い。穴があったら入りたいとはこういう事ですか。出来れば知りたくなかったな……。でも仕方がないじゃないですか。初めて恋人が出来て舞い上がってたんですもん。
「恋は盲目。というでしょう?」
「なんかこう……冬華ってもっとちゃんとしてる子だと思ってたんだけどな……」
そんな呆れた目でわたしを見ないでください。また泣きますよ? わたし。
「まぁでもその……なんだ冬華が好きなのは変わらないし、何度も言うようだけど連絡はちゃんとするから」
照れながらでもしっかりこういう言葉をかけてくれるのずるい。でもそういう所好きです。
「はい。これからも宜しくお願いしますね! 先輩」
「こちらこそ」
「そうだ。ちょっと寄り道して帰りませんか?」
これからもずっと一緒にいましょうね。
それと一緒に飛んでゆくのは桜の花びら。近くの大学に進学するって言ってたから何時だって会えるはずなのに、ここで一緒に過ごすのは最後だと思うとなにか寂しくなる。
今までこんな気持ちになったこと、なかったのに。
「……そういえば、ここで一人で過ごすの初めて」
やっと一人になれる場所を見つけたと思ったら先輩が居て、いつの間にか一緒になってて──楽しかった。
だから、笑って見送ろうと思ってたのに。
卒業式を勝手に休んで、なにやってるんだろうわたし。
「やだ……」
伝ってくる雫を指で拭う。けれど止まるどころかどんどん溢れてきて、ハンカチを取り出して目元に当てる。
これからの学生生活に先輩がいないと思うとやっぱり寂しい。
後で先輩にこの事を話そう。もしかしたら、わたしが居ないことに気づいてたかもしれないし。
◇◇◇
「って感じにちょっとしんみりしちゃって……すみません。先輩」
放課後の帰り道。先輩は待っててくれて一緒に帰ることになり、歩きながら今日のことを話していると先輩にため息をつかれた。酷いと思うんですけど。
「色々言いたいことはあるがひとまずこれだけは言っておく。アホか」
「アホかって何ですか! こっちは本当に寂しかったんですよ?」
「大袈裟すぎるだろ。学校で会えないくらいで」
むぅ。先輩は全然分かってない。わたし、怒ってるんですよ?
「学校で会えない、くらい? くらいと今言いましたね? 一緒に過ごす時間。減るんですよ?」
「いや、そんな変わらないだろ。僕たち学年も違うし。一緒に居たの帰りと休み時間くらいじゃないか?」
それが大事な時間だと言いたいんですよ。なんで分かってくれないかなあ。
「いいですか? 先輩。わたしはこれから学校が始まったら休み時間の度にあ……先輩いないんだって寂しくなるんですよ! 帰りだってずっと一人です!」
「出来るだけ連絡はとる。それで良いだろ。というか付き合い始めたら急にベタベタするせいであれだけ人気の無かった屋上に野次馬が来るようになったりこっちは結構恥ずかしかったんだ。正直僕はほっとしてる」
言われてみれば確かに先輩と付き合い出したくらいから屋上に人がちょくちょく覗きに来てた気がする。
それまで誰も来ること無かったのに。先輩で頭の中いっぱいになってた……
冷静になって考えると、あの場を見られてたのは自分でもどうかしてる。……なにやってるんだろ私。
「まさか今まで気づいてなかったのか?」
本当は認めたくない。認めたく、ないですけど。私の負けです。
「……はい。確かに気づいてなかったです。あー凄い恥ずかしいですね。ちょっと今顔見られたくありませんもん」
「その調子でよく今まであんな大胆なこと出来てたな」
先輩の言葉が痛い。穴があったら入りたいとはこういう事ですか。出来れば知りたくなかったな……。でも仕方がないじゃないですか。初めて恋人が出来て舞い上がってたんですもん。
「恋は盲目。というでしょう?」
「なんかこう……冬華ってもっとちゃんとしてる子だと思ってたんだけどな……」
そんな呆れた目でわたしを見ないでください。また泣きますよ? わたし。
「まぁでもその……なんだ冬華が好きなのは変わらないし、何度も言うようだけど連絡はちゃんとするから」
照れながらでもしっかりこういう言葉をかけてくれるのずるい。でもそういう所好きです。
「はい。これからも宜しくお願いしますね! 先輩」
「こちらこそ」
「そうだ。ちょっと寄り道して帰りませんか?」
これからもずっと一緒にいましょうね。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
それは、恋でした。
むう
恋愛
梅雨が明け、夏が目の前まで来始めた頃。
相沢沙奈(あいざわさな)は、兄の相沢裕大(あいざわゆうだい)にサッカー部の臨時マネージャーを頼まれる。
人助けだと思って了承したが、次第にマネージャーの仕事が楽しくなり、やり甲斐を覚え始める。
そして、裕大と一緒に臨時マネージャーを頼みに来た三浦悼矢(みうらとうや)の笑顔と優しさに少しずつ引かれ始めるがー…
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
放課後の生徒会室
志月さら
恋愛
春日知佳はある日の放課後、生徒会室で必死におしっこを我慢していた。幼馴染の三好司が書類の存在を忘れていて、生徒会長の楠木旭は殺気立っている。そんな状況でトイレに行きたいと言い出すことができない知佳は、ついに彼らの前でおもらしをしてしまい――。
※この作品はpixiv、カクヨムにも掲載しています。
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
彼女の浮気現場を目撃した日に学園一の美少女にお持ち帰りされたら修羅場と化しました
マキダ・ノリヤ
恋愛
主人公・旭岡新世は、部活帰りに彼女の椎名莉愛が浮気している現場を目撃してしまう。
莉愛に別れを告げた新世は、その足で数合わせの為に急遽合コンに参加する。
合コン会場には、学園一の美少女と名高い、双葉怜奈がいて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる