ぼっち後輩と屋上先輩

星しぐれ

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これからも

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 まだ少し肌寒い風。

 それと一緒に飛んでゆくのは桜の花びら。近くの大学に進学するって言ってたから何時だって会えるはずなのに、ここで一緒に過ごすのは最後だと思うとなにか寂しくなる。

 今までこんな気持ちになったこと、なかったのに。

「……そういえば、ここで一人で過ごすの初めて」

 やっと一人になれる場所を見つけたと思ったら先輩が居て、いつの間にか一緒になってて──楽しかった。

 だから、笑って見送ろうと思ってたのに。

 卒業式を勝手に休んで、なにやってるんだろうわたし。

「やだ……」

 伝ってくる雫を指で拭う。けれど止まるどころかどんどん溢れてきて、ハンカチを取り出して目元に当てる。

 これからの学生生活に先輩がいないと思うとやっぱり寂しい。

 後で先輩にこの事を話そう。もしかしたら、わたしが居ないことに気づいてたかもしれないし。


 ◇◇◇

「って感じにちょっとしんみりしちゃって……すみません。先輩」

 放課後の帰り道。先輩は待っててくれて一緒に帰ることになり、歩きながら今日のことを話していると先輩にため息をつかれた。酷いと思うんですけど。


「色々言いたいことはあるがひとまずこれだけは言っておく。アホか」

「アホかって何ですか! こっちは本当に寂しかったんですよ?」

「大袈裟すぎるだろ。学校で会えないくらいで」

 むぅ。先輩は全然分かってない。わたし、怒ってるんですよ?

「学校で会えない、くらい? くらいと今言いましたね? 一緒に過ごす時間。減るんですよ?」

「いや、そんな変わらないだろ。僕たち学年も違うし。一緒に居たの帰りと休み時間くらいじゃないか?」

 それが大事な時間だと言いたいんですよ。なんで分かってくれないかなあ。

「いいですか? 先輩。わたしはこれから学校が始まったら休み時間の度にあ……先輩いないんだって寂しくなるんですよ! 帰りだってずっと一人です!」

「出来るだけ連絡はとる。それで良いだろ。というか付き合い始めたら急にベタベタするせいであれだけ人気の無かった屋上に野次馬が来るようになったりこっちは結構恥ずかしかったんだ。正直僕はほっとしてる」

 言われてみれば確かに先輩と付き合い出したくらいから屋上に人がちょくちょく覗きに来てた気がする。

 それまで誰も来ること無かったのに。先輩で頭の中いっぱいになってた……

 冷静になって考えると、あの場を見られてたのは自分でもどうかしてる。……なにやってるんだろ私。

「まさか今まで気づいてなかったのか?」 

 本当は認めたくない。認めたく、ないですけど。私の負けです。

「……はい。確かに気づいてなかったです。あー凄い恥ずかしいですね。ちょっと今顔見られたくありませんもん」

「その調子でよく今まであんな大胆なこと出来てたな」

 先輩の言葉が痛い。穴があったら入りたいとはこういう事ですか。出来れば知りたくなかったな……。でも仕方がないじゃないですか。初めて恋人が出来て舞い上がってたんですもん。

「恋は盲目。というでしょう?」

「なんかこう……冬華ってもっとちゃんとしてる子だと思ってたんだけどな……」

 そんな呆れた目でわたしを見ないでください。また泣きますよ? わたし。

「まぁでもその……なんだ冬華が好きなのは変わらないし、何度も言うようだけど連絡はちゃんとするから」

 照れながらでもしっかりこういう言葉をかけてくれるのずるい。でもそういう所好きです。

「はい。これからも宜しくお願いしますね! 先輩」

「こちらこそ」

「そうだ。ちょっと寄り道して帰りませんか?」


 これからもずっと一緒にいましょうね。
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