上 下
22 / 22
1章

20.顔合わせ

しおりを挟む
~冒険者ギルド~

僕達は顔合わせのために朝早くから冒険者ギルドに来ていた。
「おはようアイン君。早いね」
「おはようございますサークレッドさん。あまり眠れなくて」
「ははは、もうすぐパーティーも来ると思うから座って待っててくれるかい?」
「はい」
僕サークレッドさんに言われてギルドの中にある椅子いすに座って待つことにした。

しばらくして、
「お久しぶりですサークレッドさん。森で護衛するのは彼ですか?」
「そうだよ。アイン君、彼はセーリオ。Cランクパーティーのリーダーだよ」
「よろしくお願いします。アインです」
「あぁ、よろしく。パーティーメンバーの紹介もしておこうか」

セーリオさんのパーティーは全員男性で、
リーダーで職業クラスが戦士のセーリオさん。
魔法使いのケインさん。
僧侶のプレテさん。
斥候せっこうのラドロさんの4人だ。
戦闘での役割が分担ぶんたんされていて、ほとんどのパーティーが似たような構成こうせいになる。

「さて、それじゃあ今日は顔合わせだし、私は仕事があるから奥にいるよ。何かあったら呼んでね」
「わかりました」
「ありがとうございます、サークレッドさん」
そう言ってサークレッドさんは受付のほうに戻って行った。

「さて、あらためて自己紹介じこしょうかいをしよう。俺がこのパーティーのリーダーをしているセーリオだ。従魔のことは聞いているから問題ない。よろしく頼む」
「僕がケインだよ。基本的には遠距離えんきょりから魔法で攻撃するから、よろしくね!」
「私がプレテです。回復は任せてくださいね。よろしくお願いします」
「・・・ラドロ、よろしく」
「みなさん、よろしくお願いします!あ、従魔のことも紹介したいので外に行きたいんですけどいいですか?」
「そうだな。じゃあ草原にでも行くか」
セーリオさん以外の3人も問題ないのか同意したため、僕達は草原に向かうことにした。


~草原~

草原に来た僕はグロウとラルゴを召喚してセーリオさん達に紹介していた。
「ジュエルスライムを見たのは久々だな、それにワームか。この依頼が終わったらランクDになれるかもしれないな」
「そうなんですか?」
「テイマーについては詳しくないが、大体の場合はそのランクの魔物を倒せるかどうかっていうのが影響えいきょうするらしいからな」

セーリオさんのパーティーは普段ふだん、別の街で活動しているが、今回サークレッドさんに頼まれたため、《イール》に戻ってきたらしい。
僕が知らないことを多く知っているため、色々なことを聞かせてもらった。
その中でのことも聞いてみた。
「ふむ、ウルフ種・竜種・地上でも活動できる水棲すいせいの魔物を連れたテイマーか。今まで多くのテイマーを見てきたが、そもそも竜種を連れたテイマーを見たことがないな」
「弱い竜種ならテイムした人が結構いるらしいけどね」
「そうですか・・・」

「うーん、出会ったのがかなり前なら引退している可能性もありますね。一度サークレッドさんに確認してもらうのがいいかもしれません」
僕が気を落としたのに気づいたのかプレテさんがそんなことを言ってきた。
「・・・現役げんえきで活動していたら目立ちすぎる。テイマーの中には自由に動く人も多い」
ラドロさんも既に冒険者ではないという意見のようだ。

冒険者や生産者の引退には2つのパターンがある。
1つは病気や怪我でそれぞれの活動を続けられなくなる場合。
もう1つは自分の意思で引退することだ。

前者ぜんしゃの場合、ギルドから以後いごの生活費が支払われることに加え、活動できるようになったらいつでも復帰することができる。
後者こうしゃは依頼などを受けることが出来なくなるため自活じかつすることになるが、それぞれのギルドで売買ばいばいは可能なため収入を得ることは出来る。ギルドからの要請ようせいがあった場合のみ復帰が可能。

「引退ですか・・・だとしたらどこにいるか分からないですね・・・」
「いや、そうでもない。テイマーなら最終的に向かう場所は限られるからな」
「・・・"秘境"か、"立ち入り禁止区域"」
「え!?」

この世界に数多くあるそれらは、人が行くことが出来る地形ちけいではなかったり、危険な魔物が多く生息しているため向かうことを禁止している場所のことをす。

「いくら立ち入り禁止とは言っても、別に何か罰則ばっそくがあるってわけじゃない。だからこそテイマーとして成功した冒険者はそういった場所を目指すんだ。まぁ帰ってきた奴らの話はあまり聞かないが・・・」
「たまにいるんだよね。Aランクの魔物をテイムしてるテイマー。そういうのは立ち入り禁止区域とかでテイムしたっていう噂があるよ」
「そうなんですね・・・宿に戻ったら調べてみます」
顔合わせも終わったので僕達は街に戻ることにした。


~冒険者ギルド~

僕達はサークレッドさんに会いに来ていた。
「引退した冒険者か・・・確かに調べてなかったね。明日までに調べておくよ。テイマーならそんなに多くないからね」
「ありがとうございます。お願いします」
「それじゃ俺たちはこれで。アイン、また依頼の時に会おう」
「はい!色々とありがとうございました」
セーリオさん達はギルドを出ていった。

「アイン君はどうするんだい?」
「宿に戻って秘境のことについて調べてみようと思います」
「ギルドで買った魔物図鑑だと秘境のことはほとんど書いてないから、本屋でちゃんとした図鑑を買ったほうが詳しくわかると思うよ」
「わかりました。ありがとうございます」
僕はお礼を言って冒険者ギルドを出た。


~宿屋~

本屋で魔物図鑑を買った僕は宿屋に戻ってきていた。ライム、ルゥ、ウォルフの三体はいつも通り休んでいる。

「ちゃんとした図鑑ってこんな感じなんだ・・・測定不能の魔物も何体か載ってるんだな」
魔物も見たかったが、僕は秘境の項目こうもくを見ることにした。

秘境・・・人がほとんど踏み入ったことがない地域の総称そうしょう。どのような魔物が生息しているかなど不明な点は多いが、過去の文献ぶんけんを見るとBランク以上の魔物が多く生息していると思われる。
また、未発見の種も多くいると考えられており、調査に向かうさいは、多くの冒険者を必要とする可能性がある。ーーー魔物図鑑より引用

「過去の文献っていうのは・・・調査に向かった冒険者のランクと人数かな?これで魔物のランクを判別してるのかぁ」
参考にした文献には過去の調査に向かった冒険者のランクが載っていた。

「秘境が1番多く存在しているのは・・・"グランデ大陸"か・・・」
僕達が今いる大陸は"ヴェスト大陸"と呼ばれていて、世界で最も大きい大陸である"グランデ大陸"の西に位置しているらしい。
"グランデ大陸"は秘境の他にも特殊とくしゅな環境や珍しい魔物が存在しており、他の大陸から多くの冒険者や生産者が集まる。

「新しい大陸・・・行ってみたいな。東に港街みなとまちがあるから・・・一度父さんと母さんに会ってからになるかな?」

僕はこの依頼が終わった後、新しい大陸に向かうことに決めて、今日は休むことにした。





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

アルカナセイド【ARCANUM;SEDO】

臂りき
ファンタジー
現代日本から転生した人々の手により捻じ曲げられた異世界『アルカナ』。 転生者たちはアルカナの世界にて前世での鬱憤を晴らすかのように他種族の排除、支配を繰り返し続けた。 果ては世界そのものを意のままにするため、彼らは浮遊島を生み出し大地はおろか空の安寧をも脅かした。 幾千年もの後、前世で不遇の死を遂げた若者たちの中から強大な力を持つ者<権能者>が現れ始めた。 権能者たちは各々に前世での時代背景は違えど、人が人を支配する世界の在り方に強い不安や怒りを抱いていた。 やがて権能者の内の一人、後に「大賢者」と呼ばれることとなる少女と仲間たちの手によって浮遊島は崩落した。 大賢者は再び世界に哀しみが訪れぬよう崩落の難を免れた地上の人々に教えを説いた。 彼女の教えは数百年もの時を重ね『魔術信奉書』として編纂されるに至った。 しかし人と人との争いが尽きることはなかった。 故に権能者たちは、かつて世界に存在しなかった<魔物>を生み出し、人々の統制を図った。 大賢者と最も親交の深かった権能者の少女は自らを<魔王>と名乗り、魔の軍勢を率いて人々に対抗した。 権能者やその意志を継ぐ者たちはアルカナの世界に留まらず、やがて異世界にまで影響を与える存在<ネクロシグネチャー>として世界の安寧を求め続けた。

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...