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④ 婚約者はやるせないⅠ──sideアーロン

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 「兄上に嵌められたな」

 湯浴みをしながら独りごつ。

 心の何処かで兄を信じたかった自分の甘さが今回の騒動に繋がったのだ。

一人で入るには広すぎる浴槽に浮かび溜息を吐き、もう一度水の中に沈もうとしたその時声が掛けられた。

 「ボーリスを連れて来た。ネイマンはグレーよりの黒だな」

 侍従であり乳兄弟のロドニーだ。

 「直ぐに出るよ」



 髪の水分をしっかりふき取り、自分で着れる簡易な服を身にまとい側近であるボーリスが待つ対面に座る。

ロドニーが用意してくれた水を飲み私の横に座った事を確認しボーリスへ今日の騒動を改めて聞く。


 「つまり、ボーリスが出仕して直ぐにネイマンが私が居ないと報告して来た。
客室の方が騒がしくなり向かったら、私が令嬢と裸で寝台の上にいた。移動する際に純血の証を見たと・・・・・・。君はネイマンをどう思った?」

ボーリスの瞳から目を逸らさずにきいてみる。

 「ネイマンは殿下の護衛にも関わらず居場所が分からないと巫山戯た事を言っていました。
殿下が婚約者と一緒に過ごしていようといまいと護衛対象の居場所を把握していない事はありえない。
婚約者と一緒に居るはずだ様子をみよう等と巫山戯た事を!」

どうやらボーリスもネイマンに疑いを向けているみたいだ。それから気まずそうに報告を続けてくれる。

 「今朝、殿下と一緒にいた令嬢ですが、ストレハイア伯爵家のヘイディー嬢です。あの時世話を任せた侍女に王太子殿下の所在を訊ねたそうです。
殿下の事ではなく、その・・・・・・令嬢の口からは王太子殿下の事しか出てこなかったそうです。
その侍女は純潔の確認をする際、女官長と同じ部屋に控えておりました。
陛下にも報告されている頃だと思われます」

 ボーリスの報告は予想通りだった。

 「そう。
今頃、ローズマリーを呼び出している頃だろうね。
──少しマリーとの婚約解消が早まったな」

 「少し早まったとは?婚約解消の予定があるとは伺っておりませんが」


 隣に座る乳兄弟をみて、軽く頷き私の秘密を話すことにした。

 
 「ボーリス、私は女を抱けない。
──その令嬢の純潔も奪っていない」
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