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「今日をもって、俺はこのパーティを抜けるよ」

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それにしても、みんなは優しいな。こんな無能な俺でも、仲間として接してくれる。
 でも本当は俺なんてすぐに追放して、もっと上を目指すべきだ。
 だからこそ、俺はいつまでもみんなの足枷になってはいけない。
 俺は覚悟を決めてきたんだ。
 これは俺にできる、最初で最後のパーティ孝行だ。

「みんな、聞いてくれ」

「何よ。今お腹が減ってイライラしてるの!あんなの声なんざ聞きたくないわ」

 グレイアがイライラした様子でこちらを見る。

「今日をもって、俺はこのパーティを抜けるよ。今まで何もできない俺を仲間として扱ってくれてありがとう」

 俺の言葉を聞いていたみんなは固まっており、何を言っているかわからない、というような顔をしている。

 ……こちらもそれなりに覚悟を決めて口にしたのだから、後悔はない。
 俺みたいな役立たずが消えてみんなも清々するだろう。

 まあ、みんなにとって俺はその程度の存在のはずだ。少し寂しいが当然といえば当然だ。
 出口に向かって歩き出そうとした俺だったが、急に誰かが背中から抱きついてくる。

「うお!どうしたんだ急に?」

 驚いて振り返ると、俺に抱きついてきた誰かはミリスだった。
 もう仲間のフリはしなくていいのに……。

「……なさい」 

「え?」

 ミリスが何かを言っているが声が小さくて聞こえない。
 
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!きっと僕達が何かアルフの気に触ることをしちゃったんだよね!謝るから!お願い。私を見捨てないで……」

 ミリスがポロポロと涙を零しながら俺に懇願してくる。

 どうして泣く?俺はみんなに喜んで欲しくて――

「ね、ねぇアルフ」

 今度はグレイアが遠慮がちに俺に話しかけてくる。

「その……悪かったわよ。今までアルフにきついこと言って、でも、その、本当にそういう風に思ってた訳じゃなくて、その……本当は、その……」

 グレイアはなぜか顔を赤くしながらモジモジとしている。
 どうした?いつものグレイアじゃないぞ。普段のお前なら、やっと消えてくれるのねゴミ虫!清々するわ。くらい言いそうなものだが。

「なぜ、アルフさんがこのパーティを抜けるという結論に至ったかは、わかりませんが、一度ゆっくりと話して見ませんか?アルフさんが仰っていただければ可能な限りあなたの待遇を改善いたしますので!」

 普段は冷静で感情を表に出さないシスタが焦っているように早口で言う。
 ……可能な限り改善って、これ以上ない好待遇だったよ。これ以上どこを改善するんだよ。

「み、みんなもう本当に大丈夫だぞ?今までありがとな!」

「……理由を、教えてくれないかな?」

 ミリスが泣きながら俺に聞いてくる。
 だから俺は、今思っていたことを正直に話すことにした。

「俺はもう、みんなの足を引っ張りたくないんだ」

「……何それ」

「どういう意味ですか?」

 グレイアとシスタが俺に聞き返してくる。声のトーンで二人がものすごく怒っていることが分かる。
 なぜ怒っているのか、俺には分からない。

「俺がいなければお前たちはもっと上に行ける。でも俺がいるからお前たちは――」

「ふざけないで!」

 グレイアが俺の胸ぐらを掴む。

「あんたは確かに、戦闘ではあまり役に立たないかもしれない。でも、いつもダンジョンの情報を調べてくれたり、必要な荷物を集めてくれたり、その時に最適な武器や防具を選んでくれたり……
冒険者になってからだけじゃない!
小さい頃からあんたがずっと支え続けてくれたから、アタシはここまでやってこれた!だから……」

 グレイアは目に涙をうかべながら、俺に言う。

なんて二度と言うな!!」

「グレイア……」

 そう言い終わると、グレイアはそのまま膝をついて、子供みたいに泣き出してしまう。

 俺の前で泣いているミリスとグレイアを見て途方にくれている俺をシスタが強く抱きしめる。

「グレイアの言う通りです。一度、話し合いませんか?アルフさん」

 シスタの声は震えていて、必死に泣くのを我慢しているのがわかる。

 こんな俺でも今まで一緒にいた人と離れるのは彼女らにとっては辛いことらしい。

「ごめん。お前らの気持を何も考えてなかった」

 そうだ。何もわかってなかった。
 俺は多分がかかっているのだ。
 だからいつまでも、俺が不必要な存在だと気づかない。

 だからみんなが気づくまでは俺はみんなと一緒にいよう。

 はあ、みんなが冒険者になるまでは一緒にいよう。
 みんながSランクになるまでは一緒にいよう。
 そうやって俺はみんなへの寄生をやめるのを何度も先送りにしてきた。

 しかたないだろ。

 俺こいつらのこと、大好きだから。

 

 

 

 
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