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第三章 ゼフス

27 天罰

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「おい、お前か!この辺りをこんなんにしたのは!何者だ!?」

 フェンガーリはその橙色の髪の男に向かって叫ぶ。

「誰が発言の許可を与えた?」

 橙色の髪をした男はゆっくりと地上に降りながらそう言う。

「今の声、ランクアップした時に聞こえてくる声と同じよね?」

 ギーはフェンガーリに耳打ちする。

 フェンガーリは一瞬顔をだらしなくさせるがすぐに我に帰り、その男に剣を構える。

「その上から目線な態度、気に入らねぇな!街をこんな風にしたんだ。ただで帰れると思うなよ!!Sランク特権を発動するぜぇー!!」

 フェンガーリは自分の剣から毒を凝縮させたような紫色の斬撃を飛ばす。

 しかし、男が手をかざすだけでその斬撃は消えてしまった。

「嘘でしょ!?」

「Sランクであるフェンガーリの攻撃をこんなにあっさりと!」

 パーティメンバー達からは驚きの声が上がっている。

「今を生きる人間はこの特権を誰から与えられたのか知らないのか。嘆かわしい」

 男は侮蔑の目をさらに強める。

「特権を……与えられた?何の話だ!?」

 フェンガーリは男に向かって斬りかかりに行く。
 しかし、男が手をかざすと、上空に空を飲み込むような無数の大きい岩が出現し、フェンガーリ達に降ってくる。

「嘘だろ!?」

 フェンガーリパーティのメンバーはそのほとんどがBランク以上なので誰も死ぬことは無かったが、全ての岩が落とされた後、まともにたっていられたのはSランクのフェンガーリとAランクのギーだけだった。

「そんな……強すぎでしょ」

「半端ねぇなあ」

 二人はよろよろとしながらも、なんとか剣を構える。

「この程度の攻撃でそのダメージか、弱い、弱すぎる」

 男はため息をつきながらゆっくりとフェンガーリ達の方へ向かって歩いていく。

「はああああ!!」

 フェンガーリとその男の間に割り込む様にして、騎士団本部から駆けつけて来たゼフスが斬り込む。

 しかし、その攻撃も軽く避けられてしまう。

「な!?」

「貧弱な」

 男はゼフスを蹴り飛ばす。
 吹き飛ばされた彼女は痛そうにお腹を抑えている。

「……どういう状況よ」

 たくさんの団員を連れて駆けつけたエルミスもSランクのフェンガーリと騎士団で自分に次ぐ実力をもつゼフスがボロボロになっているのをみて動揺する。

「おい、エルミス。手ぇかせ」

「……命令しないで」

 フェンガーリとエルミス、ギー、ゼフスが同時に男に襲いかかる。

「Aランク特権を発動するっす!」

 ゼフスの特権、植物を操る能力を使い、植物のツタで男を拘束する。

「Sランク特権を発動するぜぇ!死ねぇ!」

 フェンガーリは動けない男に向かって紫色の斬撃を飛ばす。

「即死効果の毒だ!終わったな、お前」

 フェンガーリが得意げに鼻を鳴らす。

 しかし、斬撃が当たっても男は何事もなかったかのように、不思議そうな顔をしながら立っている。

「だったらギーがいくわ。Aランク特権を発動!ギーの奴隷になりなさい!」

 ギーは自分の特権である、洗脳を発動し、彼をあやつり人形にしようとするがこれも失敗に終わる。

 男はツタを力任せに引きちぎり、ため息をつく。

「それらの特権は本来全ての。私に効くわけがないだろう」

「ならこういうのは――」

 エルミスは男に向かって剣を構えている。そして男の頭上には空を飲み込むくらいの水がふわふわと浮いていた。

「――どうかな!!」

 エルミスが剣を振り下ろすと、その水が全て、男の頭上に向かって落ちていく。

 エルミスは水圧で男を潰してしまうつもりだろう。

 男が軽く避けようとするが、ゼフスが邪魔をする。
 今度は木の根を操り、男の足に巻き付ける。

「逃がさないっすよ」

「無駄なことを……」

「俺も忘れんなよ!オラッ!」

 フェンガーリも麻痺毒の込められた斬撃を男にぶつける。

 続いてギーも、特権を使い、相手の判断を鈍らせるべく、洗脳の特権を使う。

「聞こえなかったのか、無駄なことだと」

 しかし、男が指を鳴らすと、空にあった大量の水も男を縛っていた木の根も、フェンガーリとギーが放った斬撃も初めからなかったかのように、消えてしまう。

「どういうこと!?」

「一体何をしたっすか!?」

 エルミスとゼフスは動揺を隠せず目を見開いてその場に固まる。

「お前はこれがしたかったのだろう?代わりにやってやる」

 男は何も無いところから先程の比じゃない量の水を出す。
 しかもただの水ではない。
 フェンガーリ生成した、即死効果の毒を溶かした水だ。

「消えろ」

 男がそういうと、その水がエルミス達はもちろん、街すべてを飲み込んでいく。

「この数万年で、人間もここまで弱くなったか。なんとも嘆かわしい」

 男はそう言うと、今日何度目かも分からないため息をつく。



 




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