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第二章 クロノス

23 信頼 エルミス、クロノス視点

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 ゼフスを撃破した後、私は急いでアーリスのお店の下の洞窟へ向かった。

 お願い!
 間に合って!

 そう願いながら、私は全速力で走り続ける。
 しばらく走っていると少しの争った痕跡と、地上に向かって空いた大きな穴を見つける。

 最初にアーリスが私達の前から消えた時は文字通り、地面に

 なので今、地上に穴が空いているということは――

『申し訳ないが、それもできぬのじゃ。』

 エルミスはそう言いながら辛そうにハンマーをかまえる少女クロノスを思い出す。

「あの子のこと、救えたんだ」

 自分を殺そうとした人まで助けちゃうなんて本当にお人好しだな、アーリスは。

「Sランク特権を発動する」

 私がそう言うと、足元から水が湧き出てくる。その水を制御して、地上へ向かう穴を水で満たす。そして、上に向かって泳いでいく。

 時期に地上に到着した私の目に映ったのは……

「嘘……」

 血で赤くなった店内と――

「アーリス!アーリス!!……あああああああああああぁぁぁ!!」

 体を真っ赤にしながら発狂しているアフロディーティ、そして――

「ど、どういうこと……?ねぇ、アフロディーティ!説明してよ!なんで……なんで!?」

 ――お腹に穴が空いたアーリスだった。

 私はアフロディーティの肩を激しく揺らしながら怒鳴る。
 しかし、アフロディーティの目には私のことは写っていない。
 うつろな瞳でずっと質問を繰り返している。

「僕の……せいなのか?何が、僕の何が間違えていた?なぜアーリスはあんなことを?どうして……」

「早く、ポーションを!」

 そう言って辺りを見渡すが、全てのポーションが割られており、店には一つもポーションがなかった。

 私はポーションを求めて、急いで他の店に向かって走り出すのだった。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

「まあ、何はともあれ、これでそこの愚か者を殺せる」

「こ、殺す?冗談だよね?さすがにそれは……」

 アーリスは金髪の娘の言葉には動揺しながら返答する。
 金髪の娘は自分達に危害を加えた相手を殺そうとしているだけ、ワシが言うのも変な話じゃが、当然のことじゃ。

「いいや、本気だ。ソイツはアーリスを散々傷つけた挙句追放し、今度は君を奴隷にしようとしている。生かしておく価値などない」

 アーリスは何かを悟ったような顔をすると、こちらに顔を向ける。
 そういう状況じゃないのはわかっておるがアーリスに見られるとドキドキして、まともに目を合わせられんのう。

「クロノス!フェンガーリを解放して、この部屋にあるポーション全部壊して!!」

 な!?
 どういうことじゃ?
 まあ、アーリスが言うなら……。
 何か考えがあるのじゃろう。

「!! わ、わかったのじゃ。Sランク特権を発動するのじゃ」

 まずは紫髪の男をを解放して、ワシの特権で小石を大量に生成。まだ店内に残っている全てのポーションを粉々に破壊する。
 よし。完璧なのじゃ。

「クロノス、フェンガーリを連れてできるだけ遠くへ逃げて」

 コイツを連れて!?
 アーリスを散々貶めたこのドブネズミを?
 正直触れたくもないんじゃが。
 
「……なぜこんなやつを助けようとする?話を聞いた限り、コイツにそんな価値はないじゃろ?」

 ……なんか自分に言っいてるようなのじゃ。
 ワシのネズミも、似たようなものか。
 ネズミと同じか~。ワシも落ちる所まで落ちたのう。

 アーリスが不思議そうに首を傾げておる。可愛い!!
 小動物みたいな表情をしおって!

「生きる価値がないのは殺していい理由にはならないよ。それにフェンガーリさん、いい所もあるんだよ。この人を心の支えにして生きてる人もいっぱいいる。だから殺させる訳にはいかない」

「そういうもんかの、まあ、任せろ」

 ワシははジタバタするドブネズミ……ふぇんがーりと呼んでおったかの。フェンガーリを担いで店内から出ていく。

「お、おい!離せよ!」

 うるっさいのうこいつ!
 ワシとて好きで担いでるわけじゃないわ!

「少し黙っとれ」

「……なんだかんだ言って助けてくれるんだな。やっぱりお前の、俺のことを……」

 気持ち悪いのうこいつ。
 勘違いしすぎじゃろ。どんだけ自分に自信あるんじゃ?

「ふざけるなよネズミ。ワシの瞳にはアーリスしか映っておらん」

「……なあ、お前はアーリスに騙されてるんだ!目を覚ますんだ。だいたいあんなやつの何処がいい?顔はガキっぽいし、何の役にも立たねぇし――」

 殺してぇー。コイツ今すぐ殺したいのじゃー!もうキモすぎるのじゃ。
 アーリスはできるだけ遠くとか言っておったの。
 もう無理じゃ。これ以上コイツと話してると殺しかねん。ここができるだけ遠くじゃ。

 ワシはその場にフェンガーリを落として、再びアーリス達のいた建物に走り出す。

 何か後ろでフェンガーリが騒いでおるが面倒くさいので放っておくことにした。

 そういえばまだアーリスにきちんと謝罪をしておらんかった。
 謝って許されることでは無いのは百も承知じゃが、だからと言って謝らないのも違う気がするしの。

 お、着いたのじゃ。あ~こんなにボロボロになってしまったのじゃ……。
 すまんのうアーリス、後で直して――

「どいて!!」

 急にアーリスのいた建物のドアが開き、ワシを突き飛ばしながらアーリスと一緒にいた青髪の娘エルミスが飛び出して行く。

 どうしたんじゃろ。あんなに急いで。

 ワシは体を起こすと店には入る。
 その瞬間、ワシの目に映ったのは絶望的な光景じゃった。


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