追放された最強剣士〜役立たずと追放された雑用係は最強の美少女達と一緒に再スタートします。奴隷としてならパーティに戻してやる?お断りです〜

妄想屋さん

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第一章 エルミス

10 噂話

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「おいおい、なんだアイツ、Sランクか?」

「でもあんなやつ見た事ねえぞ」

「他国のトップが視察にでも来たのか?」

 周りがザワザワとアーリスの噂をする。

「やっぱり規格外だね、アーリス」
 
 呆れたような、誇らしそうな顔をしたエルミスがアーリスの方へ近づいてくる。

「Sランク特権が使えるエルミスに言われると、嫌味みたいだよ」

 アーリスは苦笑しながら答える。

「毎日鍛錬を積んでいた私に、ずーと荷物持ちばっかりしていた、アーリスが勝っちゃったんだから、十分規格外だよ」

「? 自分ではよく分からないかも」

「それよりアーリス、なんでさっき私が来るまで何も抵抗しなかったの?」

 エルミスはさっきまでの表情とは打って変わって真剣な顔をする。

「……ずっと主人と奴隷みたいな関係だったから、そもそも抵抗するっていう発想がなかったよ」

 そう言いながら俯くアーリスをエルミスが優しく抱きしめる。

「でも、もうあなたは奴隷じゃない。これからは私がずっとそばにいるから」

「ちょっと急に何を、あれ?」

 アーリスの目から涙が溢れる。

「アーリス泣いてるの?」

「ごめん……なんか……止まらなくて……」

 自分の意思とは関係なく流れる涙にアーリスは動揺する。

「いいよ」

 アーリスはしばらくの間、エルミスの腕の中で泣いていた。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 アーリスに負けた少女は歯を食いしばりながら俯いて歩いている。
 その顔は怒りと羞恥で真っ赤になっている。

「おい、聞いたか?フェンガーリのパーティーメンバーに圧勝した冒険者が現れたって」

 すれ違う冒険者達がアーリスの噂をしているのが少女の耳にも入ってくる。

 (やめろ……)

 少女は耳を塞ぐ。

「今からスカウトしに行こうかな」

「お前のランクじゃ無理だろ」

 (聞きたくない……)

 少女は聴こえてくる噂から逃げるように走り出す。

「確か、相手はBランクだったんでしょ?」

「じゃあ、あの子はAランクかSランクってこと?!」

「黙れ!!」

 少女は我慢の限界になり思わず叫んでしまう。
 周りの人からすれば、なんの前触れもなく少女が叫んだので、何事かと少女の方を見る。

「ッ!クソ!」

 周りの視線に気づいた少女は、再び逃げるようにパーティの拠点に向かって走り出す。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 しばらくエルミスの腕の中で泣いていたアーリスは顔を上げる。

「落ち着いた?」

「……うん」

 先程の戦いの後、ということもあってアーリス達の周りには人だかりができていた。

「わわ!こんなに人がいたんだ。ごめん……」

「私からやったんだよ。謝らないで」

「うん」

 アーリスの目はまだ少し赤く、気まずそうにエルミスを見つめる。

(なんかアーリス、昔会った時より雰囲気幼い?なんか……かわいい……!)

 エルミスはにやけそうになるのを必死に堪えながらいつもの落ち着いた表情を作る。

「アーリスはこれからどうするの?」

「まだわかんないけど、ポーション屋さんを開こうと思うんだ。資金もないから、まだ先の話だけど」

「そっかー。でも、資金だけなら私が――」

「いやいやいや、さすがにそこまでは頼れないよ」

 アーリスに断られたエルミスは少し寂しそうな顔をする。

「……私はアーリスが大変な時、何もしてあげられなかった。だからこれくらいはさせて欲しいな」

「そんなことないよ。さっきのエルミスの言葉で俺がどれだけ救われたか……」

「さっきの言葉?」

 エルミスがなんのことだろう、と首を傾げる。

『大切なが傷つくのを見るのは、辛いんだよ?』

「覚えてないならいいや。それより、エルミスはどうしてここへ?」

「そうそう、朝壊しちゃったポーションの弁償しようと思って」

 思い出したようにエルミスが自分の財布を取り出す。

「別にいいのに……。ちなみにいくら位なの?」

「ええと、5000ゴールド位のポーションがだいたい30個くらいあったから、だいたい10万5000ゴールドかな」

「そんなに!?……やっぱりいいよ。エルミスが壊したわけじゃないし」

「そんなこと言わずに!あの子絶対に弁償しに来ないよ」

「あのゼブスって人?でも、元々ただで作ったものだし、ほんとに大丈夫だよ」

「でも……」

 エルミスは困ったように顔をしていたが、しばらくしたら諦めたように、ごめんね、と言って財布をしまう。

(でもこれでお金を貰わなかったらエルミス、負い目とか感じたりするのかな)

「そういえば、朝からご飯何も食べてないんだった。少しお腹すいたかも。どこかいいお店知らない?」

「そうなの?あっ!私が奢ってあげる!今度こそ断らないでね」

 エルミスはパッと顔を明るくして、待ってましたと言わんばかりにアーリスの手を取る。

「ほんと?!ありがとう!じゃあ10万5000ゴールドはそのお店の情報代ってことで」

「えー……。全然釣り合わないよ……」

 エルミスはさっきまでの表情とは打って変わって苦い表情をする。

「わかってないな。情報にはお金以上の価値があるんだよ」

「……どういうこと?」

 エルミスは、しばらくアーリスの言葉を考えていたがお手上げという風にアーリスに聞き返す。

「まあ、エルミスには多分分からないよ。行こ!お腹減っちゃった」

 そう言って歩き出してしまうアーリスにエルミスもついて行く、

「あ、待ってよ!私は納得してないからね!」
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