上 下
7 / 7
番外編

違う未来

しおりを挟む
「……会う資格が……ない?……でも――」

「でもじゃないのよ!!」

 僕の声をかき消すようにグレイアが怒る。

「きっとアルフは今頃、私達のいない所で新しい大切な人と……幸せに暮らしているでしょうから……」

 シスタは目に涙を貯めながら俯いてそう言う。

「新しい大切な人……?何それ!?どういうこと!!ねぇ!シスタ!!!」

 僕はシスタに殴りかかる勢いでそう捲したてる。

 その僕の頬に激しい痛みが襲う。
 殴られたのだ。
 僕は驚きながら、僕を殴った幼なじみを、グレイアの方を見る。

「あんたいい加減気づきなさいよ」

 グレイアが僕のことを睨みつけている。

「気づくって……何を?」

「アタシ達がアルフの足を奪って、それでも着いてきてくれたアルフを罵って見捨ててから、もう二年もたっているのよ?」

「違う!!!あれは僕じゃない!僕がそんなことをするわけがない!!グレイアだってそうでしょ!?」

 の光景がフラッシュバックする。

 僕は後ずさりながら喚く。

「ミリス、現実を見なさい!」

 シスタが珍しく声を荒らげる。
 こんな怖い顔をしたシスタを僕は見たことがない。

 僕はその場にしゃがみこみ、頭を抱える。

「違う、あれは僕じゃない、別人だ、僕があんなことするわけがないじゃん。何かの間違えだ、そう、そうに決まってる。ありえないありえないありえない――」

 もうなんの音も聞こえない。
 何も聞きたくない。
 こんなの嘘だ。
 でも僕の記憶が嘘じゃないよってずっと主張してくるんだ。

 助けてよ。アルフ。
 もう嫌だ……。

「もう嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 僕は赤ちゃんみたいに泣きじゃくる。
 グレイアとシスタの表情は見えないけど、きっと呆れ返ってるんだろうな。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 今日もいつも通り、俺は木の実をかじりながら本を読んでいる。

 この本はたまたま森で迷った老婆を助けた際に、頂いたものだ。

 頂いたのが二日前くらいなのでそろそろ読み終わってしまう。

 そうしたらまた退屈な日々に逆戻りだ。

「これを機に外に出てみるのもありか……」

 俺はそうつぶやくが誰も答えてくれる人はいない。

 俺とて決して一人ぼっちが好きなわけではないのだ。ただ誰も信用できなくなってしまったので仕方なくここに一人でいる。

 信用しないんじゃない。信用できなくなってしまったのだ。

 この違いがわかるだろうか?
 わかんないだろうなぁ~。

 ……そういえばこの木の実、確か、シスタが昔これの美味しい調理の仕方を教えてくれたっけか。

 どうせやることもないしちょっと作ってみるか!

 車椅子の生活にも慣れてきたもんだ。
 もうこの車椅子は俺の体の一部みたいなものだ。

 俺は慣れた手つきで木の実を料理していく。

「……できたー!」

 完成だ。さらに盛り付けて口に頬張る。

「うまっ!この料理の味……グレイアが好きそうだな!」

 そうそう、こういう味が濃いのがグレイアの好みだった。それで――

 そこまで考えたところで俺の心のなかが急速に冷たくなっていく。

 俺はまだアイツらに未練があるのかよ。キモっ。

 俺は作った料理をゴミ箱に捨てて、ため息をつく。

 目をつむると、幼なじみの四人で過ごした、幸せな時間が思い出される。

『僕、アルフと結婚したい!大人になったら絶対僕をアルフのお嫁さんにしてね!』

『そんな、俺なんかよりもっといい人がいくらでもいるよ。ミリスは俺なんかとはつり合わねぇって』

『そんなことないよ!えいっ!』

『ちょっ!いきなり抱きついて――顔近いぞ!理性が……』

『ふふふっ。理性なんて捨てちゃいなよ♪既成事実を作って僕がアルフのお嫁さんに――』


『ちょっとミリス!?アンタ何してんのよ!』

『やっぱり後をつけてきて正解でした!引き剥がしますよグレイア』

『そうね、シスタ』

『うわっ!ちょっと二人とも!?嫌だぁ!アルフ助けてー!離れたくないよぉー!』

『ちょっ!?首がもげる!!いだだだだ!』

 俺は目を開けると自分の目から涙が出ていることに気づいた。

「そっか、俺……アイツらのことが……」

 大大大大大好きなんだ。酷いことをされたけど、これ以上ないくらいに傷つけられたけど、それでもまだ俺はアイツらのことが――

「クソ……クソッ!!好きにさせるだけさせといて……最悪だよ、アイツら」

 俺はガクリと車椅子にもたれ掛かる。

「頼むから……戻って来てくれよ……」



✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 この話は一旦ここで完結ということにさせていただきますが、また気まぐれにこの続きの話を書き足していく予定です。

 もし、少しでも面白いと思っていただけましたらお気に入り登録よろしくお願いします!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(12件)

ななしー
2024.03.16 ななしー

むなくそわるい

解除
ななしー
2024.03.16 ななしー

なにこの自己中なおんなどもはw

解除
ゆうちゃん
2022.05.17 ゆうちゃん

魅了がより強化され無理矢理性奴隷化させられる魅了により主人公を徹底的に嫌いにさせられる。

更に寝取られも強化され更に勇者が死ななかった場合のR-18バージョンを是非とも読んでみたいですね。

解除

あなたにおすすめの小説

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~

霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。  ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。  これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である

全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!

蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。 家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。 何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。 やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。 そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。 やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる! 俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!

高校デビューを果たした幼馴染みが俺を裏切り、親友に全てを奪われるまで

みっちゃん
恋愛
小さい頃、僕は虐められていた幼馴染みの女の子、サユが好きだった 勇気を持って助けるとサユは僕に懐くようになり、次第に仲が良くなっていった 中学生になったある日、 サユから俺は告白される、俺は勿論OKした、その日から俺達は恋人同士になったんだ しかし高校生になり彼女が所謂高校生デビューをはたしてから、俺の大切な人は変わっていき そして 俺は彼女が陽キャグループのリーダーとホテルに向かうの見てしまった、しかも俺といるよりも随分と嬉しそうに… そんな絶望の中、元いじめっ子のチサトが俺に話しかけてくる そして俺はチサトと共にサユを忘れ立ち直る為に前を向く

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。