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第12話 次なる標的

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 パーティ会場での出来事がイザベラの心に深く刻まれていた。彼女は独り、豪華な居間のソファに腰掛け、暖炉の炎を見つめながら考え込んでいた。その夜の記憶が何度も彼女の頭をよぎる。クララとの対決、フレデリックの困惑、エマの怒り。しかし、彼女にはまだそれだけでは満足できなかった。イザベラの復讐心は、まだ消えることなく燃え続けていた。

「まだ全然足りないわ……」

 イザベラは心の中でつぶやいた。彼女の目には、未だに復讐の火が燃えていた。そんな彼女のもとに、エミリアからの情報が届いた。クララには姉がいるという。イザベラはその情報を手に取り、思慮深く眺めた。

「クララの姉……」

 イザベラは静かに言葉を紡いだ。彼女にとって、クララの姉、エレナは未知の存在だった。高貴で、年上の女性。一度も顔を合わせたことがないにもかかわらず、彼女はイザベラの計画に完璧にフィットしていた。

 イザベラはにやりと笑いながら、自分の内なる声に耳を傾けた。

「次はこいつね」

 この言葉と共に、彼女の心に新たな計画が生まれ始めていた。エレナを標的にすることで、クララへの復讐をより深く、より痛烈なものにすることができる。イザベラの心は、復讐への情熱と次なる一手への期待で満たされていた。


 イザベラは、エミリアの住む屋敷を訪れた。この屋敷は、古典的な美しさと威厳を持ち合わせており、エミリアの趣味の良さが随所に感じられた。エミリアは、イザベラの親友であり、クララとも友達関係にあるが、イザベラとの一応の協力関係を優先していた。

 イザベラは、細かく打ち合わせた後、エミリアに報酬を手渡した。この報酬は、イザベラとの協力の代価だった。エミリアはその報酬を受け取りながら、イザベラに対して若干の疑念を抱いていた。


 エミリアの屋敷で、イザベラは紅茶を飲みながら、最近の出来事をエミリアと共有していた。エミリアは驚いた様子でイザベラに言った。

「本当にやったのね……あんた。気持ち悪いけど、よくやったわ」

「ええ、やったわ」

 イザベラはしてやったりという表情で答えた。彼女の目には、達成感と次なる計画への期待が見て取れた。

 エミリアは、最近のクララに対する不満を表明した。

「クララのこと、あまり好きじゃなかったの。もともと苦手だったのよ」

 イザベラは、エミリアの言葉にほっとして笑みを浮かべながら。

「次はクララの姉、エレナを狙うの。フレデリックの弟のようにはいかないけれどね」

「どうやって何を奪うの?」

 エミリアが興味深げに尋ねた。

「男」とイザベラは即答した。しかし、エミリアは首を傾げながら言った。

「でもクララの姉には現在、彼氏がいないらしいわよ」

 イザベラは一瞬考え込んだ後、「それならば、新たな駒を用意しなくちゃ。」と決意を固めた。彼女の目には、緻密な策略を練る知性が輝いていた。

 エミリアはイザベラの計画に興味を示し、「あなたの計画はいつも驚かされるわ」と感心の意を表した。

 イザベラは紅茶を一口飲みながら、エレナを巡る新たな計画に思いを馳せていた。彼女にとって、エレナはクララへの復讐を完遂するための重要な駒だった。
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