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第6話 忘れて私と……上書きしましょ?

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 俺は悲しみに暮れていた。亜美との思い出、彼女の裏切り、そして絵里の言葉。すべてが心を重くしていた。ひたすら過去を反芻していた。

 その時、絵里ちゃんが現れた。彼女はいつものように明るい表情で、「悲しいですよね、先輩。でも、私がいるから大丈夫です」

 俺は彼女の言葉に反応できず、ただ無言でうなだれていた。そんな俺を見て、絵里ちゃんはさらに積極的になった。

「許せませんよね、姉のこと。でも、先輩、私たちで上書きしちゃいましょう?」彼女はそう言いながら、突然俺を押し倒した。

 俺は驚いて彼女を見た。絵里ちゃんの顔は真剣そのもので、「先輩、私たちで新しい記憶を作りましょう」

 俺は彼女の言葉に戸惑った。まだ亜美のことが頭から離れない。それに、絵里ちゃんのこの行動は、俺にとって少し急すぎる。

「絵里ちゃん、待って、俺、まだ……」

 俺は言葉を探しながら、彼女を押しのけようとした。

 しかし、絵里ちゃんは譲らなかった。

「先輩、私は先輩のためなら何でもします。新しい幸せを見つけましょう」

 絵里の「上書き」という言葉に、俺は思考を巡らせた。彼女が何を言っているのか、理解はすぐにできた。俺の体が無意識に反応する。あそこのベッドで亜美が別の男と愛し合っていたのは事実だ。だから絵里は、俺たちもベッドの上で愛し合って、その記憶を上書きしようと提案してきたのだ。

「絵里ちゃん、それは……」

 俺は言葉を詰まらせた。彼女の提案は、俺にとって衝撃的だった。亜美との記憶を上書きすることで、過去から解放されるのだろうか。

 絵里ちゃんは俺をじっと見つめていた。

「先輩、つらい記憶を新しい幸せな記憶で塗り替えることができるなら、それは素晴らしいことですよね! 私たちでそれを実現しましょう」

 俺は深く考え込んだ。亜美との思い出は辛く、それを上書きすることで新しいスタートを切ることができるのかもしれない。しかし、同時にそれは俺と絵里の関係にとっても重大な一歩になる。

「俺は……」

 俺の心は揺れていた。亜美との過去を引きずっている自分と、絵里ちゃんとの新しい関係を築きたいという思いが交差していた。

 絵里ちゃんの行動は、まるで性行為を強要しているかのようだった。彼女は俺を押し倒し、その力を強めていた。男として、こんな可愛い子に押し倒されたら、普通はたまらないだろう。彼女のいい香りと豊満な胸が、俺の理性を混乱させていた。

 でも、俺の心はまだ亜美との記憶に囚われていた。絵里ちゃんの提案は、俺にとって複雑すぎるものだった。

「絵里ちゃん、待ってくれ」

 俺は彼女をそっと押しのけた。

「俺はまだ、亜美とのことを忘れられないんだ……こんな状況で何かを始めるのは、俺には無理だよ」

 絵里ちゃんは少し驚いたようだった。でも、俺の言葉を受け入れてくれない。

「無理なんですか? 本当に駄目なんですか?」

 俺は深くため息をつき、そのまま床で寝ていた。絵里ちゃんの情熱は理解できるが、俺はまだ過去の影から抜け出せていなかった。

「絵里ちゃん、俺たち、もう少しゆっくりと進めないか?」俺は彼女に提案した。「俺たちの関係を大切にしたい。でも、まずは俺自身が過去を乗り越える必要があるんだ」

 絵里ちゃんは俺の葛藤を見ても。

「気持ちは忘れられないのはわかります。だからこそ、上書きしましょう。心も体も」

 彼女の言葉には、強い決意が感じられた。

「私は先輩のためなら何でもしますし、できます! 先輩は優しくてかっこよくて、いい男です! そんな人を裏切った姉を、私も許せません。だから、まずは先輩のことを気持ちよくしてあげます」

 俺は彼女の言葉に戸惑った。絵里ちゃんの提案は、俺にとってあまりにも直接的だった。しかし、彼女の目には真剣さがあった。彼女は本当に俺のことを思って、そう言っているのだ。

「絵里ちゃん、でも……」

 俺は言葉を詰まらせた。彼女の気持ちは嬉しいが、俺はまだ亜美のことを忘れられていない。それに、絵里ちゃんとの関係を急いで進めることに、俺はためらいを感じていた。

 絵里ちゃんは俺に近づく。

「先輩、私たちの時間を大切にしましょう。私は先輩を支えますから」と優しく言った。

 俺は彼女の優しさに心を動かされながらも、自分の感情と向き合うことを優先した。

「ありがとう、絵里ちゃん……でも、ごめん……まずは俺が過去を乗り越えることが大切だと思うんだ、それを何とかしないと俺は絵里ちゃんと向き合う資格もない」

「過去を乗り越えるって、もうそんなのどうでもいいじゃないですか。先輩も見ましたよね? もう姉は先輩のことなんてどうでも……」

 絵里ちゃんの言葉が続く前に、俺は遮った。

「もう今日は寝よう」

 俺の声は断固としていた。この話をこれ以上続ける気力が俺にはなかった。

「そこのベッドは使っていいよ……俺は床で寝るから」

 他の男と寝たベッドなど使いたくないから。
 俺は彼女にそう告げ、部屋の隅に布団を敷いた。

 絵里ちゃんは少し驚いた表情を浮かべたが、何も言わずにベッドに向かった。部屋には沈黙が降りて、俺たちの間には微妙な空気が流れていた。

 布団に横になりながら、俺は天井を見つめた。絵里ちゃんの提案と情熱を断ったこと、亜美との過去を乗り越えることの葛藤、それらすべてが心を重くしていた。

 絵里ちゃんの寝息が聞こえてくる中、俺は自分自身と向き合った。今はただ、心を落ち着けることが先決だった。亜美への未練、絵里ちゃんへの感謝と困惑、それらの感情が交錯していた。

 俺は深く息を吐き、目を閉じた。明日はまた新しい一日が始まる。今は、ただ休息を取ることに集中することにした。
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